大卒選手の台頭でますます狭き門の五輪代表/六川亨の日本サッカー見聞録

2020.12.25 20:50 Fri
©︎J.LEAGUE
天皇杯の準決勝は、順当に川崎F対秋田、G大阪対徳島のJリーグ勢同士の顔合わせとなった。そして新型コロナウイルスの影響か、海外から監督を招聘したり選手を補強したりする動きは今のところ数えるほどと言っていい。その代わり、国内での監督と選手の移動はかつてないほど賑やかだ。

来シーズンは降格チームの数が増えることと、東京五輪が開催されればJ1リーグは今シーズン同様過密日程が予想されるため、チーム編成(作り)を早めに進めたいという思惑があるからだろうか。

監督に関して言えば、1位・川崎Fの鬼木監督、2位・G大阪の宮本監督、3位・名古屋のフィッカデンティ監督と、6位・FC東京(長谷川監督)、8位・広島(城福監督)、9位・横浜FM(ポステゴグルー)、11位・大分(片野坂監督)、13位・鳥栖(金明輝監督)、15位・横浜FC(下平監督)、18位・湘南(浮嶋監督)は続投を決定した。
一方、4位のC大阪(クルピ)、10位の浦和(ロドリゲス)、16位の清水(ロティーナ)、17位の仙台(手倉森誠か大槻毅)は新監督を招聘することを表明。残る札幌や鹿島、柏などは続投がかなり濃厚だが、25日時点で正式な発表はない。

反町JFA(日本サッカー協会)技術委員長は、来シーズンはW杯予選と五輪の活動が重なるため、森保監督の了解を得て同監督をサポートするための人材補填を認めていた。公表時期はJリーグが終了する12月20日以降としていたものの、いまだに氏名は漏れ伝わってこない。
となると、まだシーズンが終わっていない(天皇杯とルヴァン杯決勝がある)川崎F、G大阪、FC東京、柏の4チームの関係者ということだろうか。

そしてもう1つ気になるのが、森保監督をサポートしていた関塚ナショナルチームダイレクターが11月末日に退任したものの、同氏のその後の動向も一向に伝わってくる気配がないことだ。コロナの変異種で感染が拡大している現状では、西野タイ代表監督のように海外(東南アジア)で監督を務めることも難しいだろう。

まさか西野技術委員長とハリルホジッチ監督の時のように、ナショナルチームダイレクターを辞任してから東京五輪の監督に就任(ロンドン五輪ではベスト4に進出した実績がある)するという“ウルトラC"(という言い方がいまも通用するかどうか)の再現でもあるのだろうか。

こちらは自分で書いていても信じられないため、現実的ではないだろうが……。

さて昨日23日は、午前は五輪代表候補キャンプを、午後からはU-19日本代表候補対慶応大学のトレーニングマッチを取材した。五輪代表の候補キャンプには23名が招集されたものの、2名の選手が負傷で辞退したため新たに3名が追加招集され、さらに1名が負傷で離脱したため±0で、23名になった。

改めて言うまでもないが、五輪の登録人数は18名とかなりの“狭き門"だ。そして今回のキャンプには27日に天皇杯を控えている川崎Fの三笘、田中碧、旗手と今シーズン活躍した3選手が呼ばれていない。

さらに10~11月のA代表にも冨安(ボローニャ)を始め中山(ズヴォレ)、板倉(フローニンゲン)、久保(ビジャレアル)ら五輪候補7名の海外組が呼ばれたし、堂安(ビーレフェルト)も好調を取り戻しつつある。

こうして見ると五輪代表候補のラージグループは35名にも膨れ上がる。ここからOA枠3名を引いたら果たして今いるメンバーから何名が残れるのか……と思いながら練習を見てしまった。

今回は初招集の選手もいたが、それは今シーズンのJリーグで結果を残したからである。その代表格が安部(FC東京)だろう。「自分は世代別の代表に入ったことがなく、今回が初の代表でうれしかったし目標だったので、素直にうれしいです」と喜びを表した。そして五輪が1年延期されたことで「出たいなという思いはあったけど、現実的ではなかった」のが、今回選ばれたことで「近づいたかな」と五輪への思いを強くした。

同じFC東京の先輩である渡辺は、今回の招集を違った角度で見ていた。

昨シーズン夏以降の活躍で代表に初招集され、今年1月のU-23アジア選手権にも参加したが、「アジアレベルで活躍できなかった。元々は(五輪代表に)滑り込んでやろうと思った」ところ、「(五輪が)1年延びたことで実力を見てもらえるようになったと思う。立場は変わり、実力を見て選ばれたのだと思う」と今回の招集に自信を深めつつ、アピールを狙っていた。

そんな2人とはちょっと違うスタンスなのが、ルビン・カザンへの移籍が決まった齋藤(湘南)だ。年代別の代表に選ばれたことで国際経験が豊富なせいか、「森保監督も横内コーチも言っていますが、五輪代表の先にA代表がある。僕もそのつもりで活動しています」と先を見据えている。カザンは日本代表がロシアW杯の際にキャンプ地として利用し、U-19日本代表も一緒にキャンプをした思い出の地でもある。

齋藤は「馴染みがあるのでしっかりプレーしたいです」と抱負を述べながらも、「いまここでしっかりやることも大事だし、ロシアに行ってもしっかりやることが重要になる」と常に足下を見つめていた。

今回のキャンプは最終日に関東大学選抜との練習試合で打ち上げとなり、次回の活動は来年3月26日の親善試合までない。この3月の2試合と6月の2試合はインターナショナルマッチデーのため、海外組の招集が可能だ(コロナの感染が深刻な状況にならない限り)。恐らくこの4試合が最終テストで、7月上旬のキリンチャレンジ杯2試合を経て五輪本大会に臨むことになるだろう。

こうして見ると、やはり五輪代表に残るのは、アピールする機会も限られているので改めて“狭き門"だと思う。

左右からクロスを入れてのシュート練習や、ハーフコートでの紅白戦で森保監督と横内コーチはどこまで選手の実力をチェックできるのか。半日ほどの取材では到底うかがい知ることはできないが、やはり選手にとっては新シーズンのリーグ戦がアピールする格好の場になるのではないだろうか。

そんな思いにとらわれた、五輪代表候補のキャンプを取材したインプレッションだった。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた

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“兄弟対決”に森保一監督「最後まで鎬を削って良い試合だった」、北海道にも恩返し「お礼の試合になれば」

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五輪メンバー決定と過去のOA枠/六川亨の日本サッカー見聞録

東京五輪に臨む18名の選手とバックアップメンバー4名の選手が22日に発表された。大方の予想通り、入るべき選手、入るだろう選手が順当に名を連ね、“サプライズ”はほとんどなかった。 過去のメンバー発表でも、“サプライズ”はOA枠の3人だった。この点についてJFA(日本サッカー協会)の反町技術委員長は「北京(五輪)のときはクラブとの交渉があまり上手くいかなくて、最後までドタバタした。それを踏まえていい態勢を作る。ヨーロッパに拠点を置いて交渉できたし、6月からOA枠を入れて活動できたのはアドバンテージだと思う」と胸を張った。 実際その通りだと思う。 反町技術委員長が監督を務めた北京五輪では、その後の日本代表を牽引する本田圭祐、吉田麻也、長友佑都、内田篤人、香川真司、岡崎慎司らが五輪に挑んだ。その際に反町監督はOA枠としてG大阪の遠藤保仁、神戸の大久保嘉人を招集しようとしたが、2人とも所属クラブが首をタテに振らなかった。 当時は5月18日から6月18日にかけては南アW杯アジア予選があり、さらに五輪本大会に出場となると選手は2ヶ月近くチームを離脱しなければならなくなる。「W杯予選は協力するかわりに五輪は勘弁して欲しい」というのがチーム関係者の偽らざる心境だったはずだ。 OA枠で難しかったのが16年リオ五輪だった。DF陣(CBと左SB)に不安を抱えていたため手倉森誠監督はOA枠での選手起用を想定していた。しかし、目標通り決勝まで進出すると、8月20日までブラジルに滞在することになる。 ところが9月1日にはロシアW杯アジア最終予選の初戦・UAE戦が埼玉スタジアムで開催される。ブラジルから帰国して1週間しかない。このためヴァイッド・ハリルホジッチ監督は手倉森監督の希望したOA枠の選手の出場に難色を示した。 そこでハリルホジッチ監督時代に代表に招集されたものの主力に定着できなかった藤春廣輝(G大阪)と塩谷司(当時広島)の2人を、代表定着に向けて頑張って欲しいという気持ちを込めてリオ五輪のOA枠に選出した(もう1人はFWの興梠慎三)。 しかしリオ五輪では不安視された守備陣が崩壊し、初戦のナイジェリア戦を4-5で落とす。続くコロンビア戦は2-2で引き分けて決勝トーナメント進出に望みをつないだが、最終戦のスウェーデン戦に矢島慎也のゴールで1-0と勝ったものの、すでに2勝をあげていたナイジェリアがメンバーを落としたためコロンビアも勝利を収め、日本は3位でグループリーグ敗退となった。 東京五輪に関しては、まず秋から始まるカタールW杯アジア最終予選の対戦相手と日程は7月1日に決まる。国際Aマッチデーは8月30日から9月7日が最短だが、東京五輪の決勝は8月7日のため、3週間以上空いている。このためA代表と五輪代表を兼任している森保監督も、両大会に吉田、酒井、遠藤航の3選手を起用できると判断してOA枠で招集したのだろう。 スタメンの予想も難しいものではないが、大会は中2日とはいえ森保監督はターンオーバー制のリスクを犯さず、極力主力メンバーで固めながら、試合展開に応じて選手を交代で休ませていく気がする。 五輪代表が活動を再開するのは7月5日から。その前の1日にはW杯アジア最終予選の組分けが決定する。今回も日本は第1ポッドのためイランとは同居しない。過去の例からすると、日本はオーストラリアと同じグループになることが多く、イラン、韓国、中国とは別グループが多かった。 もしも韓国と同じグループになったら、97年のフランスW杯アジア最終予選以来となる。それはそれで、痺れる試合が期待できるので歓迎したいと思っているが……。 2021.06.25 12:45 Fri

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