【CL決勝特集③・戦術分析】万能型同士の対戦、策士トゥヘルは正攻法か?
2020.08.23 18:30 Sun
2019-20シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)決勝、パリ・サンジェルマン(PSG)vsバイエルンが日本時間8月23日28時からポルトガル・リスボンのエスタディオ・ダ・ルスで開催される。
初のファイナル進出で悲願のビッグイヤー獲得を目指すフランス王者と、7年ぶり6度目の優勝を目指すドイツ王者による大一番を前に、注目の一戦のタクティカルプレビューを紹介する。
◆万能型同士の対戦。主導権を握るのは…
共に国内リーグにおいては圧倒的にボールを保持して常に主体的に戦うスタイルを貫いている。また、CLの舞台においてもPSGはレアル・マドリー、バイエルンはバルセロナを相手に主導権を争う能動的なスタイルで戦っており、このファイナルでも自陣深くに引いて構えるなど、極端な戦いをする可能性は低いはずだ。
そのため、互いにいつも通り後方からボールを繋ぎ、守備側はハイプレス、あるいはボールの奪いどころを定めたミドルプレスで応対し、序盤から主導権争いが繰り広げられることになりそうだ。
そういった主導権争いにおいては後方のビルドアップの質で勝るバイエルンが、ある程度ボールを支配する展開が想定される。守備対策でジューレやパヴァールを起用しない限り、GKノイアー、アラバやキミッヒを中心とするバイエルンのビルドアップの質は高く、2セントラルMFに入るチアゴとゴレツカも豊富な運動量、立ち位置の巧さでボールを引き出すことが可能だ。さらに、ビルドアップに詰まったとしても、アルフォンソ・デイビスやアラバはドリブルでの局面打開が可能であり、前線で競れるペリシッチやミュラー、レヴァンドフスキへのロングボールを含め、相手のプレッシングを回避する各種オプションを持っている。
ただ、全体を大きく押し上げて相手陣内に押し込む形を作るバイエルンのハイラインへの対策に関しては、同じフランス勢のリヨンが有効なオプションを与えてくれており、最終ラインやサイドに流れるヴェッラッティからのタッチダウンパスにムバッペら前線の選手が一気に抜け出す形も、狙っているかもしれない。
◆策士トゥヘルもさすがに正攻法?
今回の一戦はトゥヘル監督、フリック監督のドイツ人指揮官対決にも注目が集まる。
その中でフリック監督に関してはアラバのセンターバック起用、A・デイビスの左サイドバックへの本格コンバートとセンターバックの離脱者の多さもあり、大胆な用兵を敢行しているが、それ以外の采配では比較的オーソドックスな戦いを志向している。前線からの猛烈なプレスや積極的なポジションチェンジなど、一見するとリスキーに見える戦い方だが、各選手が味方の空けたスペースをきっちり埋め、連動したネガティブトランジションなどリスク管理も徹底されている。
一方、より策士として知られるトゥヘル監督に関しては、基本的にボールを保持して能動的な戦い方を志向するものの、ビッグマッチにおいてはたびたび相手に合わせた奇策を講じるきらいがある。今シーズンのCLにおいてもラウンド16初戦のドルトムント戦で3バック、準々決勝のアタランタ戦でもイカルディを右ウイングに配置する策を講じたが、いずれもあまり機能していなかった。
その失敗もあり、今回の一戦ではさすがに正攻法で戦うはずだ。ただ、スタメンの選考に関しては相手のプレスをいなすキープ力、パスセンスを持ち背後を狙うミドルレンジのパスを出せるパレデスを抜擢する可能性はありそうだ。また、左ウイングでの起用が続くムバッペをあえて右ウイングに置き、積極果敢な攻撃参加が売りのA・デイビスへの抑止力としてぶつけるなど、マイナーチェンジを施す可能性は十分に考えられる。
◆総力戦の中でラッキーボーイ現れるか?
今大会を通じて両チームは比較的メンバーを固定し、いずれも安定した成績を収めている。だが、コロナ禍でリスボンでの短期トーナメント形式に変更されたことで、過密日程による疲労も溜まってきており、このファイナルは新たに採用された5枚の交代枠を含め総力戦の構えだ。そういった中で戦局を変える交代出場の選手のパフォーマンスにも注目したい。
ここまで盤石の勝ち上がりを見せてきたバイエルンに対して、アタランタ戦で薄氷の逆転劇を経験してきたPSGは、より交代選手のパフォーマンスが重要視されるところだ。中盤ではコンディションの問題で途中出場が濃厚なグイエ、前述のパレデス、チャンスメイクに長けたドラクスラーあたりが攻守のオプションとなる。
さらに、最後の一押しがほしい攻撃に関しては調子は今一つも今季の公式戦で20ゴールを挙げているストライカーのイカルディ、高さという明確な武器と前線の複数ポジションをこなせるチュポ=モティング、意外性を持つサラビアが控える。
その中で注目はアタランタ戦でチームをベスト4進出に導く決勝点を挙げたチュポ=モティング。2018年にストーク・シティから加入したカメルーン代表FWは前線のバックアッパーが定位置で、さしたる結果を残せていなかった。だが、その優れた人間性で多くのチームメートの信頼を勝ち得た、ロッカールームの重要な存在だ。今季限りでの退団が決定している中、自身を呼び寄せたマインツ時代からの恩師トゥヘルを男にできるか。
一方、バイエルンではペリシッチが左ウイングでいぶし銀の仕事を見せているが、ベンチには同選手とそん色ない働きができる古巣対戦のコマンに加え、ここに来て決定的な仕事が続くMFコウチーニョというオプションが控える。
とりわけ、今夏の買い取りが見送られる可能性が高いコウチーニョに関しては新天地を探すためにアピールが必要な状況。準々決勝のバルセロナ戦では保有元相手に無慈悲な2ゴールを叩き込み、直近のリヨン戦でも短い出場ながら積極性が光っている。
また、コウチーニョ同様に来季の去就が不透明なトリソは、PSGとの前回対戦でチームを勝利に導くドッペルパックを記録しており、チュポ=モティング同様にラッキーボーイとなる可能性を秘めている。
初のファイナル進出で悲願のビッグイヤー獲得を目指すフランス王者と、7年ぶり6度目の優勝を目指すドイツ王者による大一番を前に、注目の一戦のタクティカルプレビューを紹介する。
◆万能型同士の対戦。主導権を握るのは…
Getty Images
共に国内リーグにおいては圧倒的にボールを保持して常に主体的に戦うスタイルを貫いている。また、CLの舞台においてもPSGはレアル・マドリー、バイエルンはバルセロナを相手に主導権を争う能動的なスタイルで戦っており、このファイナルでも自陣深くに引いて構えるなど、極端な戦いをする可能性は低いはずだ。
そういった主導権争いにおいては後方のビルドアップの質で勝るバイエルンが、ある程度ボールを支配する展開が想定される。守備対策でジューレやパヴァールを起用しない限り、GKノイアー、アラバやキミッヒを中心とするバイエルンのビルドアップの質は高く、2セントラルMFに入るチアゴとゴレツカも豊富な運動量、立ち位置の巧さでボールを引き出すことが可能だ。さらに、ビルドアップに詰まったとしても、アルフォンソ・デイビスやアラバはドリブルでの局面打開が可能であり、前線で競れるペリシッチやミュラー、レヴァンドフスキへのロングボールを含め、相手のプレッシングを回避する各種オプションを持っている。
対するPSGは先発起用濃厚なGKセルヒオ・リコに足元の不安があり、それ以外の最終ラインの選手もワールドクラスのビルドアップ能力が備わっているとは言えず、バイエルンの猛烈なプレスにハマる可能性が高い。その圧力に飲み込まれた場合の結末はバルセロナの大敗で確認しており、リスク回避のロングボールを蹴るのか、相手のプレスをいなすための何らかの工夫が必要だ。
ただ、全体を大きく押し上げて相手陣内に押し込む形を作るバイエルンのハイラインへの対策に関しては、同じフランス勢のリヨンが有効なオプションを与えてくれており、最終ラインやサイドに流れるヴェッラッティからのタッチダウンパスにムバッペら前線の選手が一気に抜け出す形も、狙っているかもしれない。
◆策士トゥヘルもさすがに正攻法?
Getty Images
今回の一戦はトゥヘル監督、フリック監督のドイツ人指揮官対決にも注目が集まる。
その中でフリック監督に関してはアラバのセンターバック起用、A・デイビスの左サイドバックへの本格コンバートとセンターバックの離脱者の多さもあり、大胆な用兵を敢行しているが、それ以外の采配では比較的オーソドックスな戦いを志向している。前線からの猛烈なプレスや積極的なポジションチェンジなど、一見するとリスキーに見える戦い方だが、各選手が味方の空けたスペースをきっちり埋め、連動したネガティブトランジションなどリスク管理も徹底されている。
一方、より策士として知られるトゥヘル監督に関しては、基本的にボールを保持して能動的な戦い方を志向するものの、ビッグマッチにおいてはたびたび相手に合わせた奇策を講じるきらいがある。今シーズンのCLにおいてもラウンド16初戦のドルトムント戦で3バック、準々決勝のアタランタ戦でもイカルディを右ウイングに配置する策を講じたが、いずれもあまり機能していなかった。
その失敗もあり、今回の一戦ではさすがに正攻法で戦うはずだ。ただ、スタメンの選考に関しては相手のプレスをいなすキープ力、パスセンスを持ち背後を狙うミドルレンジのパスを出せるパレデスを抜擢する可能性はありそうだ。また、左ウイングでの起用が続くムバッペをあえて右ウイングに置き、積極果敢な攻撃参加が売りのA・デイビスへの抑止力としてぶつけるなど、マイナーチェンジを施す可能性は十分に考えられる。
◆総力戦の中でラッキーボーイ現れるか?
Getty Images
今大会を通じて両チームは比較的メンバーを固定し、いずれも安定した成績を収めている。だが、コロナ禍でリスボンでの短期トーナメント形式に変更されたことで、過密日程による疲労も溜まってきており、このファイナルは新たに採用された5枚の交代枠を含め総力戦の構えだ。そういった中で戦局を変える交代出場の選手のパフォーマンスにも注目したい。
ここまで盤石の勝ち上がりを見せてきたバイエルンに対して、アタランタ戦で薄氷の逆転劇を経験してきたPSGは、より交代選手のパフォーマンスが重要視されるところだ。中盤ではコンディションの問題で途中出場が濃厚なグイエ、前述のパレデス、チャンスメイクに長けたドラクスラーあたりが攻守のオプションとなる。
さらに、最後の一押しがほしい攻撃に関しては調子は今一つも今季の公式戦で20ゴールを挙げているストライカーのイカルディ、高さという明確な武器と前線の複数ポジションをこなせるチュポ=モティング、意外性を持つサラビアが控える。
その中で注目はアタランタ戦でチームをベスト4進出に導く決勝点を挙げたチュポ=モティング。2018年にストーク・シティから加入したカメルーン代表FWは前線のバックアッパーが定位置で、さしたる結果を残せていなかった。だが、その優れた人間性で多くのチームメートの信頼を勝ち得た、ロッカールームの重要な存在だ。今季限りでの退団が決定している中、自身を呼び寄せたマインツ時代からの恩師トゥヘルを男にできるか。
一方、バイエルンではペリシッチが左ウイングでいぶし銀の仕事を見せているが、ベンチには同選手とそん色ない働きができる古巣対戦のコマンに加え、ここに来て決定的な仕事が続くMFコウチーニョというオプションが控える。
とりわけ、今夏の買い取りが見送られる可能性が高いコウチーニョに関しては新天地を探すためにアピールが必要な状況。準々決勝のバルセロナ戦では保有元相手に無慈悲な2ゴールを叩き込み、直近のリヨン戦でも短い出場ながら積極性が光っている。
また、コウチーニョ同様に来季の去就が不透明なトリソは、PSGとの前回対戦でチームを勝利に導くドッペルパックを記録しており、チュポ=モティング同様にラッキーボーイとなる可能性を秘めている。
パリ・サンジェルマンの関連記事
UEFAチャンピオンズリーグの関連記事
|
パリ・サンジェルマンの人気記事ランキング
1
PSGやリバプールから関心のクワラツヘリア、コンテ監督に退団の意思を明言
パリ・サンジェルマン(PSG)やリバプールが獲得に迫っているナポリのジョージア代表FWクヴィチャ・クワラツヘリア(23)が、アントニオ・コンテ監督に退団の意思を伝えた。 12日に行われるセリエA第20節ヴェローナ戦前日会見に臨んだコンテ監督は、残留を願いながらも退団する決意を固めたクワラツヘリアに失望している。 「彼は言葉を濁さず、クラブに自分を売却をするよう要請したと私に伝えてきた。個人的に非常に残念だ。なぜならこの6カ月、クヴィチャにはプロジェクトの中心に居ると感じてもらうよう努め、彼と協力して何か素晴らしいことを成し遂げられることを示し、クラブと契約更新に向けて努力してきたからだ」 「私にとっては大きな失望だ。今日、私は一歩後退しなければならない。移籍を望む選手を縛り付けておくことはできない。私は夏以降、解決策を見つけるために全ての関係者を説得するために6カ月動いていた。このニュースが突然の出来事だったことは承知しているが、今は一歩引いてクラブと彼の代理人が状況を解決するのを待ちたい。クヴィチャはヴェローナ戦でプレーしない。重要な選手を失うことになるが、今はヴェローナ戦に集中しよう」 移籍市場に精通するジャーナリストのファブリツィオ・ロマーノ氏ら複数メディアによると、PSGとナポリは8000万ユーロ(約130億円)前後の金額での交渉を行っており、選手サイドとはナポリで受け取る現行給与の4倍近くの好条件を掲示されているようだ。 2025.01.12 10:20 Sun2
クワラツヘリアのPSG移籍が今週半ばにも決定か、移籍金は100億円超えの模様
パリ・サンジェルマン(PSG)が今週半ばにもナポリのジョージア代表FWクヴィチャ・クワラツヘリア(23)を獲得する可能性が高まっているようだ。フランス『レキップ』が報じている。 11日にナポリを率いるアントニオ・コンテ監督がクワラツヘリアの退団希望を明かしていた中、12日に行われたセリエA第20節ヴェローナ戦では招集外となったクワラツヘリア。 『レキップ』によると今週半ばにも移籍金6500万ユーロ(約104億8000万円)から7000万ユーロ(約112億8000万円)の間でPSGとナポリが合意に達すると報じている。 無名の存在だった中、2022年夏にディナモ・バトゥミからナポリに加入したクワラツヘリアは公式戦107試合30ゴール29アシストを記録。移籍初年度の2022-23シーズンにはナポリを33季ぶりのスクデットに導いていた。今季もここまでセリエA17試合5ゴール3アシストを記録し、首位に立つナポリを牽引していた。 一方、PSGではフランス代表FWランダル・コロ・ムアニ(26)がユベントス、ドルトムントへの移籍が報じられている。 2025.01.13 12:00 Mon3
PSGがクワラツヘリア獲得へ本腰! クラブ間・個人間で交渉が進行中
パリ・サンジェルマン(PSG)がジョージア代表FWクヴィチャ・クワラツヘリア(23)獲得の動きを本格化させている。移籍市場に精通するジャーナリストのファブリツィオ・ロマーノ氏ら複数メディアが報じている。 ナポリとの契約が2027年夏までとなっている23歳は、昨年から契約延長交渉が行われている一方、昨夏の段階からPSGから熱視線が注がれていた。さらに、ここにきてマンチェスター・ユナイテッドなどプレミアリーグのクラブも獲得レースに参戦の構えを見せている。 そんななか、フランス代表FWランダル・コロ・ムアニ(26)の今冬退団が濃厚とみられるPSGは、前線補強を画策。昨夏からのターゲット獲得へ本腰を入れ始めている。 報道によると、PSGとナポリは8000万ユーロ(約130億円)前後の金額での交渉を行っており、選手サイドとはナポリで受け取る現行給与の4倍近くの好条件を掲示。クラブ間・個人間の双方で交渉を進めている段階だ。 なお、一部ではPSGが構想外であるスロバキア代表DFミラン・シュクリニアル(29)の譲渡を契約に盛り込むことで、移籍金の減額を目指しているとの報道もあるが、ナポリ側はあくまで前述の移籍金を売却条件に設定している模様だ。 また、クワラツヘリアの流出を覚悟するナポリでは、リールのコソボ代表FWエドン・シェグロヴァ(25)、トッテナムのスウェーデン代表MFデヤン・クルゼフスキ(24)、ユベントスからリバプールにレンタル中のイタリア代表FWフェデリコ・キエーザ(27)らを後釜候補としてリストアップしているという。 2025.01.10 15:16 Fri4
コロ・ムアニがトリノ到着、ユベントスのメディカルチェック受診へ
パリ・サンジェルマン(PSG)のフランス代表FWランダル・コロ・ムアニ(26)が15日、ユベントスのメディカルチェックを受診するためトリノに到着した。トリノのカゼッレ空港を後にする姿がXに投稿された。 イタリア『スカイ』によると16日にメディカルチェックを受診し、今季終了までとなる買い取りオプションなしのレンタル契約を結ぶとのこと。その間の給与はユベントスが全額負担するとされている。 2023年夏にフランクフルトから移籍金9500万ユーロでPSGに加入したコロ・ムアニは昨季、公式戦39試合出場9ゴールとフランクフルト時代の輝きは見せられず。 そして今季もルイス・エンリケ監督の信頼を得られず公式戦14試合出場2ゴール1アシストに留まっていた。 18日にはミランとのビッグマッチを控えるユベントスだが、PSGで1カ月以上試合に出場していないためコロ・ムアニのデビューはまだ先になると見られている。 <span class="paragraph-title">【動画】ロマーノ氏がコロ・ムアニの現地入り動画伝える</span> <span data-other-div="movie"></span> <blockquote class="twitter-tweet" data-media-max-width="560"><p lang="in" dir="ltr"> Randal Kolo Muani has just landed in Turin to join Juventus! <a href="https://t.co/P7XYS3STcd">pic.twitter.com/P7XYS3STcd</a></p>— Fabrizio Romano (@FabrizioRomano) <a href="https://twitter.com/FabrizioRomano/status/1879601503964659845?ref_src=twsrc%5Etfw">January 15, 2025</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> 2025.01.16 07:45 Thu5