【CL決勝特集②・キーマッチアップ】変幻自在のミュラーvsマルキーニョス
2020.08.23 16:45 Sun
2019-20シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)決勝、パリ・サンジェルマン(PSG)vsバイエルンが日本時間8月23日28時からポルトガル・リスボンのエスタディオ・ダ・ルスで開催される。
初のファイナル進出で悲願のビッグイヤー獲得を目指すフランス王者と、7年ぶり6度目の優勝を目指すドイツ王者による大一番を前に、戦局を左右する3つのマッチアップに焦点を当てて、両チームのキープレーヤーを紹介していく。
◆絶好調のメガクラック相手に守備の真価試される
今回のファイナルにおいてもハイラインを敷くバイエルンはリヨン戦同様に快足アタッカーのムバッペが最も脅威になる存在だが、攻撃の全権を握るメガクラックへの対応も同様に重要な課題となる。その中でセンターバックとして存在感を放つアラバの真価が試される。
◆FWネイマール(28歳/パリ・サンジェルマン)
CL出場試合:6試合(先発5)、出場時間:495分
得点数:3、アシスト数:4
献身性と共に自由を謳歌するメガクラック。今季は実質4トップともいえる[4-4-2]の超攻撃的な布陣の左サイドを主戦場にしてきたが、イカルディの不調やカバーニの退団を受け、CL準々決勝以降は[4-3-3]の3トップの中央でフリーマンとしてプレー。アタランタ戦では絶妙な立ち位置でボールを引き出し、そこから相手DF2枚と対峙してもファウルすらさせない圧巻のドリブル突破、高精度のラストパスで相手守備を翻弄する見事な働きを見せた。
一方、ライプツィヒ戦ではムバッペとディ・マリアの復帰に伴い、アタランタ戦同様に中盤に落ちて前線の起点役を担いながらも、よりシンプルにプレーし、勝負どころで持ち味の積極的な仕掛けでアクセントを作った。今回のファイナルではアタランタ同様のプレッシング強度に加え、より組織的で狡猾な相手のハイプレスを前にボールを引き出し、縦に速い攻撃の起点役を担いたい。また、直近2試合では再三の決定機を逸しているだけに、フィニッシュの精度改善が必須だ。
CL出場試合:7試合(先発7)、出場時間:586分
得点数:0、アシスト数:0
世界屈指の万能型センターバック。キャリア初期はセントラルMFとして台頭も、アスリート能力や運動量、守備センスを買われて左サイドバックに定着したオーストリア代表はフリック監督の下でセンターバックに完全コンバート。180cmと屈強なターゲットマン相手にはさすがに分が悪いが、簡単に当たり負けする場面はほぼなく、アジリティやプレーリードを武器にワールドクラスのアタッカーを封じ込める守備能力を有す。さらに、一度ボールを持てば、局面を変えるドリブルでの運び、長短織り交ぜた正確なパスで攻撃の出発点として多大な貢献を見せている。
決勝に向けては相棒がボアテング、ジューレのいずれになるかは不明だが、攻守両面で最終ラインをけん引する働きが求められる。とりわけ、前線でフリーマンを担うネイマールに対しては、2人のセントラルMFと密にコミュニケーションを取りながら、フリーでボールを受けさせない、簡単に前を向かせないソリッドな対応が必要だ。加えて、ムバッペ、ディ・マリアと対峙するサイドバックへのサポートも求められる。
◆変幻自在のアシストマシーンを捕まえ切れるか
一方、PSGの守備陣も前線で神出鬼没の動きを見せるミュラーをいかに抑え込むかが、重要な課題となる。その中でアンカーに入るマルキーニョスのパフォーマンスが鍵を握る。
◆DFマルキーニョス(26歳/パリ・サンジェルマン)
CL出場試合:10試合(先発10)、出場時間:880分
得点数:2、アシスト数:0
守備的MFで新境地開く世界屈指のセンターバック。ローマ時代からスピード派センターバックとして高い評価を集めたマルキーニョスは、PSG加入後に同胞チアゴ・シウバと長らくセンターバックコンビを築いてきた。だが、トゥヘル監督の就任以降は守備的MFにタレントが不在ということもあり、アンカーが主戦場となっている。なまじ機動力、守備範囲が広いと色んな局面に顔を出して危険なポジションを空けてしまうきらいがあるものの、26歳にして百戦錬磨の経験を持つブラジル代表は的確な判断、ポジショニングで守備のバランスを整えている。
決勝に向けては世界最高のストライカーであるレヴァンドフスキを相手に、さすがのセンターバックコンビも対応に手いっぱいとなるはずだ。そういった中、局面に応じて嫌らしいポジショニング、守備の裏を欠くプレーでカオスをもたらす“自由人”への対応はマルキーニョスの担当となる。普段通り、危険なスペースを埋めながら、ミュラーを捕まえ、且つゴレツカらの飛び出しへの対応など局面に応じた的確なプレー判断が求められる。
◆MFトーマス・ミュラー(30歳/バイエルン)
CL出場試合:9試合(先発6)、出場時間:619分
得点数:4、アシスト数:2
神出鬼没のチャンスメーカー。フリック監督就任以降はトップ下、セカンドトップの絶対的な主力として、その空間把握能力、チャンスを嗅ぎ分ける独特な嗅覚を生かしたプレーで、多くの決定機を創出し続けている。今季はブンデスリーガ新記録となるシーズン21アシストを記録した中、CL決勝トーナメントの舞台でも圧巻のパフォーマンスを継続。とりわけ、バルセロナ相手に8-2の歴史的大勝を飾った準々決勝では2ゴールとチャンスメークに加え、ハイプレスをけん引する出色のパフォーマンスを披露し、マン・オブ・ザ・マッチに輝いた。
中央の守備のトライアングルが非常に堅固なPSGに対しては、普段通りサイドを起点とした攻めがベースとなるが、それは相手も徹底的に対策してくるはずだ。そういった中、自身や3列目から飛び出す2セントラルMFがアンカー脇のスペースをいかに効果的に使えるかが、堅守攻略の第一歩となる。さらに、守備面ではレヴァンドフスキと共にセンターバックコンビとマルキーニョスの3人にきっちり制限をかけたい。
◆中盤の主導権を掴むのは
互いに前線と最終ラインに強力なタレントが揃っているため、攻撃陣vs守備陣の構図が色濃い一戦となるが、共にボールを大事にするプレースタイルを志向するため中盤での主導権争いが勝敗のカギを握る。その中で2人の司令塔のプレーに注目が集まるところだ。
◆MFマルコ・ヴェッラッティ(27歳/パリ・サンジェルマン)
CL出場試合:8試合(先発6)、出場時間:562分
得点数:0、アシスト数:0
パリの巨人の絶対的司令塔。PSG加入8年目で絶対的な主力に君臨するヴェッラッティは、今季も中盤に安定と創造性をもたらす唯一無二のプレーで存在感を放っていた。ただ、CL決勝トーナメントにおいてはドルトムントとの2ndレグをサスペンションで、アタランタ戦をケガで欠場しており、チームに決勝へ連れてきてもらった格好だ。そのため、このファイナルではチームを勝利に導くゲームメイクを期待したいところだ。
チェルシー、バルセロナとポゼッション志向のチームが相次いで大敗したようにバイエルンの組織的且つ強度が高いプレッシングは、どんな相手もボール保持を困難にする威力を持つ。当然、トゥヘル監督もリヨンほどではないにしろ、状況に応じて後方から繋ぐことを断念するプランも考えているはずだ。ただ、バルセロナ同様に前線に高さや強さを持たないPSGが勝利する上ではある程度のボール支配が必要となる。そういった中、卓越したキープ力、打開力、展開力を持つヴェッラッティのプレーが相手のプレスを回避する上で重要なポイント。ゴレツカ、チアゴとのマッチアップを制し、正確なボールを自慢の3トップに届けたい。
◆MFチアゴ・アルカンタラ(29歳/バイエルン)
CL出場試合:9試合(先発8)、出場時間:737分
得点数:0、アシスト数:2
ラストマッチで有終の美を飾るゲームメークを。2013年に加入しブンデスリーガ7度の優勝に貢献してきた魔術師も、今回のファイナルを持ってクラブを去ることが決定的な状況だ。今季のリーグ再開後はそ径部の手術を受けた影響もあり、このままフェードアウトの形での退団も予想されたが、何とかこのCL決勝トーナメントに間に合った。さらに、DFパヴァールの負傷に伴い、MFキミッヒが右サイドバックに移ったことで、セントラルMFの主力として出番が与えられると、直近の全3試合で先発出場し、ハイパフォーマンスを継続中だ。
プレッシングの応酬が想定される中、最終ラインと近いポジションでボールを引き出し、ビルドアップをサポートするチアゴに対してはヴェッラッティやエレーラを中心に相手の中盤や前線からの徹底監視が予想される。そこで不用意にボールを失えば、相手十八番のショートカウンターを浴びることになるが、逆にプレスを剥がせれば、一気に局面を変えることが可能。立ち位置、ボールの置き所に人一倍こだわりを持つスペイン代表MFの相手をいなすプレーに注目したい。
初のファイナル進出で悲願のビッグイヤー獲得を目指すフランス王者と、7年ぶり6度目の優勝を目指すドイツ王者による大一番を前に、戦局を左右する3つのマッチアップに焦点を当てて、両チームのキープレーヤーを紹介していく。
◆絶好調のメガクラック相手に守備の真価試される
Getty Images
今回のファイナルにおいてもハイラインを敷くバイエルンはリヨン戦同様に快足アタッカーのムバッペが最も脅威になる存在だが、攻撃の全権を握るメガクラックへの対応も同様に重要な課題となる。その中でセンターバックとして存在感を放つアラバの真価が試される。
CL出場試合:6試合(先発5)、出場時間:495分
得点数:3、アシスト数:4
献身性と共に自由を謳歌するメガクラック。今季は実質4トップともいえる[4-4-2]の超攻撃的な布陣の左サイドを主戦場にしてきたが、イカルディの不調やカバーニの退団を受け、CL準々決勝以降は[4-3-3]の3トップの中央でフリーマンとしてプレー。アタランタ戦では絶妙な立ち位置でボールを引き出し、そこから相手DF2枚と対峙してもファウルすらさせない圧巻のドリブル突破、高精度のラストパスで相手守備を翻弄する見事な働きを見せた。
一方、ライプツィヒ戦ではムバッペとディ・マリアの復帰に伴い、アタランタ戦同様に中盤に落ちて前線の起点役を担いながらも、よりシンプルにプレーし、勝負どころで持ち味の積極的な仕掛けでアクセントを作った。今回のファイナルではアタランタ同様のプレッシング強度に加え、より組織的で狡猾な相手のハイプレスを前にボールを引き出し、縦に速い攻撃の起点役を担いたい。また、直近2試合では再三の決定機を逸しているだけに、フィニッシュの精度改善が必須だ。
◆DFダビド・アラバ(28歳/バイエルン)
CL出場試合:7試合(先発7)、出場時間:586分
得点数:0、アシスト数:0
世界屈指の万能型センターバック。キャリア初期はセントラルMFとして台頭も、アスリート能力や運動量、守備センスを買われて左サイドバックに定着したオーストリア代表はフリック監督の下でセンターバックに完全コンバート。180cmと屈強なターゲットマン相手にはさすがに分が悪いが、簡単に当たり負けする場面はほぼなく、アジリティやプレーリードを武器にワールドクラスのアタッカーを封じ込める守備能力を有す。さらに、一度ボールを持てば、局面を変えるドリブルでの運び、長短織り交ぜた正確なパスで攻撃の出発点として多大な貢献を見せている。
決勝に向けては相棒がボアテング、ジューレのいずれになるかは不明だが、攻守両面で最終ラインをけん引する働きが求められる。とりわけ、前線でフリーマンを担うネイマールに対しては、2人のセントラルMFと密にコミュニケーションを取りながら、フリーでボールを受けさせない、簡単に前を向かせないソリッドな対応が必要だ。加えて、ムバッペ、ディ・マリアと対峙するサイドバックへのサポートも求められる。
◆変幻自在のアシストマシーンを捕まえ切れるか
Getty Images
一方、PSGの守備陣も前線で神出鬼没の動きを見せるミュラーをいかに抑え込むかが、重要な課題となる。その中でアンカーに入るマルキーニョスのパフォーマンスが鍵を握る。
◆DFマルキーニョス(26歳/パリ・サンジェルマン)
CL出場試合:10試合(先発10)、出場時間:880分
得点数:2、アシスト数:0
守備的MFで新境地開く世界屈指のセンターバック。ローマ時代からスピード派センターバックとして高い評価を集めたマルキーニョスは、PSG加入後に同胞チアゴ・シウバと長らくセンターバックコンビを築いてきた。だが、トゥヘル監督の就任以降は守備的MFにタレントが不在ということもあり、アンカーが主戦場となっている。なまじ機動力、守備範囲が広いと色んな局面に顔を出して危険なポジションを空けてしまうきらいがあるものの、26歳にして百戦錬磨の経験を持つブラジル代表は的確な判断、ポジショニングで守備のバランスを整えている。
決勝に向けては世界最高のストライカーであるレヴァンドフスキを相手に、さすがのセンターバックコンビも対応に手いっぱいとなるはずだ。そういった中、局面に応じて嫌らしいポジショニング、守備の裏を欠くプレーでカオスをもたらす“自由人”への対応はマルキーニョスの担当となる。普段通り、危険なスペースを埋めながら、ミュラーを捕まえ、且つゴレツカらの飛び出しへの対応など局面に応じた的確なプレー判断が求められる。
◆MFトーマス・ミュラー(30歳/バイエルン)
CL出場試合:9試合(先発6)、出場時間:619分
得点数:4、アシスト数:2
神出鬼没のチャンスメーカー。フリック監督就任以降はトップ下、セカンドトップの絶対的な主力として、その空間把握能力、チャンスを嗅ぎ分ける独特な嗅覚を生かしたプレーで、多くの決定機を創出し続けている。今季はブンデスリーガ新記録となるシーズン21アシストを記録した中、CL決勝トーナメントの舞台でも圧巻のパフォーマンスを継続。とりわけ、バルセロナ相手に8-2の歴史的大勝を飾った準々決勝では2ゴールとチャンスメークに加え、ハイプレスをけん引する出色のパフォーマンスを披露し、マン・オブ・ザ・マッチに輝いた。
中央の守備のトライアングルが非常に堅固なPSGに対しては、普段通りサイドを起点とした攻めがベースとなるが、それは相手も徹底的に対策してくるはずだ。そういった中、自身や3列目から飛び出す2セントラルMFがアンカー脇のスペースをいかに効果的に使えるかが、堅守攻略の第一歩となる。さらに、守備面ではレヴァンドフスキと共にセンターバックコンビとマルキーニョスの3人にきっちり制限をかけたい。
◆中盤の主導権を掴むのは
Getty Images
互いに前線と最終ラインに強力なタレントが揃っているため、攻撃陣vs守備陣の構図が色濃い一戦となるが、共にボールを大事にするプレースタイルを志向するため中盤での主導権争いが勝敗のカギを握る。その中で2人の司令塔のプレーに注目が集まるところだ。
◆MFマルコ・ヴェッラッティ(27歳/パリ・サンジェルマン)
CL出場試合:8試合(先発6)、出場時間:562分
得点数:0、アシスト数:0
パリの巨人の絶対的司令塔。PSG加入8年目で絶対的な主力に君臨するヴェッラッティは、今季も中盤に安定と創造性をもたらす唯一無二のプレーで存在感を放っていた。ただ、CL決勝トーナメントにおいてはドルトムントとの2ndレグをサスペンションで、アタランタ戦をケガで欠場しており、チームに決勝へ連れてきてもらった格好だ。そのため、このファイナルではチームを勝利に導くゲームメイクを期待したいところだ。
チェルシー、バルセロナとポゼッション志向のチームが相次いで大敗したようにバイエルンの組織的且つ強度が高いプレッシングは、どんな相手もボール保持を困難にする威力を持つ。当然、トゥヘル監督もリヨンほどではないにしろ、状況に応じて後方から繋ぐことを断念するプランも考えているはずだ。ただ、バルセロナ同様に前線に高さや強さを持たないPSGが勝利する上ではある程度のボール支配が必要となる。そういった中、卓越したキープ力、打開力、展開力を持つヴェッラッティのプレーが相手のプレスを回避する上で重要なポイント。ゴレツカ、チアゴとのマッチアップを制し、正確なボールを自慢の3トップに届けたい。
◆MFチアゴ・アルカンタラ(29歳/バイエルン)
CL出場試合:9試合(先発8)、出場時間:737分
得点数:0、アシスト数:2
ラストマッチで有終の美を飾るゲームメークを。2013年に加入しブンデスリーガ7度の優勝に貢献してきた魔術師も、今回のファイナルを持ってクラブを去ることが決定的な状況だ。今季のリーグ再開後はそ径部の手術を受けた影響もあり、このままフェードアウトの形での退団も予想されたが、何とかこのCL決勝トーナメントに間に合った。さらに、DFパヴァールの負傷に伴い、MFキミッヒが右サイドバックに移ったことで、セントラルMFの主力として出番が与えられると、直近の全3試合で先発出場し、ハイパフォーマンスを継続中だ。
プレッシングの応酬が想定される中、最終ラインと近いポジションでボールを引き出し、ビルドアップをサポートするチアゴに対してはヴェッラッティやエレーラを中心に相手の中盤や前線からの徹底監視が予想される。そこで不用意にボールを失えば、相手十八番のショートカウンターを浴びることになるが、逆にプレスを剥がせれば、一気に局面を変えることが可能。立ち位置、ボールの置き所に人一倍こだわりを持つスペイン代表MFの相手をいなすプレーに注目したい。
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