週末のJを襲ったコロナ禍/六川亨の日本サッカーの歩み
2020.08.04 21:05 Tue
なんとも慌ただしい週末だった。
さらに金監督は「あそこの守備(レアンドロ)の強度というか、どういう言い方をしていいのか、スキがあるような感じがするので十分に突けると思ったと同時に、サイドバック(小川諒也)が出てくるのが速いので逆手に取れるかなと。どのチームも狙っていると思いますけど」と勝因を指摘した。
金監督は正直な人だなと思った。これが日本人監督だと「まだシーズンの途中なので」とか、「戦術的なことはちょっと」と口を濁すことが多い。特に対戦相手の弱点を指摘することはほとんどないと言っていいだろう。
まずは21時30分、JFA(日本サッカー協会)の反町技術委員長がweb会見で、1日から始まる予定だったU-19日本代表の合宿初日に、参加者の1名からスマートアンプ法とPCR検査で陽性反応が出たことを報告。当該選手以外は全員陰性で、保健所により濃厚接触者がいないことも確認されたが、反町技術委員長はキャンプを中止し、選手は所属クラブに帰すことを発表した。
そして時をほぼ同じくして会見に臨んだFC東京の長谷川監督は、試合直前に鳥栖から前日に発熱した選手がいたが東京遠征のメンバーには入らなかったこと、Jリーグ側に連絡したが中止ではなく予定通りキックオフすることを知らされたことを明らかにした。
これは判断が非常に難しいケースだ。
7月26日の広島対名古屋戦が中止になったのは、PCR検査で明らかな「陽性者」がいたことと、濃厚接触者の特定に時間がかかり試合開始に間に合わないからだった。
しかし鳥栖の場合は、「発熱者」がいたものの「陽性」とは断定されていない。一般人でも「37.5度の発熱が5日続いたら保健所に連絡」ということになっている。発熱=コロナに感染ではないのだ。
とはいえ、指揮官が「選手の生活と健康を預かっている監督として、強引にやらせるというのは苦しい選択があった」と葛藤するのは当然だし、「安心が担保できないなかで試合をやらせるというのは、今後は考えてもらいたい」と訴えたのも頷ける。
試合直前に対戦相手に発熱した選手がいたことを知らされれば、例え陽性でなくても動揺するだろう。それはFC東京の選手だけでなく、チームメイトの鳥栖の選手も同様ではないだろうか。
では、発熱した鳥栖の選手は帯同しておらず、濃厚接触者も特定されなかったので、FC東京にそれらの事実を隠して試合に臨んだ場合はどうか。長谷川監督を始めFC東京の選手たちが動揺することはなく、普段通りの試合ができたかもしれない。
しかし試合後に何らかの形で実状を知れば、鳥栖とJリーグに対して不信感を抱く可能性は高いだろうし、簡単に払拭することはできないだろう。
そして“コロナ禍”は、これだけでは済まなかった。
翌2日の17時より、J2町田の大友社長が会見を開いた。前日のUー19日本代表合宿で陽性反応が出たのは町田のFW晴山岬であり、現在も37.2度の熱があること。先月31日に実施したJリーグのPCR検査で晴山以外の全員が陰性であることと、保健所の確認で濃厚接触者がいないことから、当日18時30分キックオフの京都対町田戦は予定通り行うことを発表した。
ところが、その1時間15分後には村井満チェアマンと大宮の森社長、福岡の川森社長が合同で会見を実施。福岡の選手1名の陽性の可能性が高く、濃厚接触者の有無も試合前までの判別が難しいことから、19時キックオフの試合を中止にすることを決定した。
Jリーグが金曜に実施しているPCR検査は、結果判明が週明けの火曜だ。これは水曜のリーグ戦やカップ戦に向けての検査である。しかし今回の鳥栖、町田、福岡の3例から、週末の試合開催に向けても検査の必要性が高まった。
今後、村井チェアマンはPCR検査に加え、Uー19日本代表の合宿でJFAが実施したスマートアンプ法の併用も検討していくとコメントした。スマートアンプ法は1時間程度で陽性の可能性が検討できるため、検査のスピードアップが期待できる。残る課題としては、濃厚接触者の特定のため、週末における各地域での保健機関との連携となるだろう。
来週末もJ1~J3の試合が数多く組まれている。「Jリーグのある日常」に加え、「何も起きない週末」が戻ることも期待したい。
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先週8月1日はJ1リーグのFC東京対鳥栖戦を取材した。今シーズン未勝利の鳥栖だったが、4-3-3のフォーメーションから20歳の右FW石井快征がトップ下のポジションに入ることでフリーとなり、鳥栖の攻撃陣を牽引。前半30分には樋口雄太が右サイドをえぐると、その折り返しを石井が決めて鳥栖が先制した。さらに43分には明治大卒のルーキーSB森下龍矢が右サイドを攻め上がり、目の覚めるようなロングシュートを突き刺す。金明輝監督は試合後に「今日のゲームは石井が肝だということは彼に伝えました。あそこ(バイタルエリア)がぽっかり空くのがFC東京の守備なので、そこでしっかりと起点を作って、相手の矢印(カウンター)をへし折ってくれた」と勝利の殊勲者を称えた。金監督は正直な人だなと思った。これが日本人監督だと「まだシーズンの途中なので」とか、「戦術的なことはちょっと」と口を濁すことが多い。特に対戦相手の弱点を指摘することはほとんどないと言っていいだろう。
試合終盤は3-1とリードしたこともあり、金監督は高校2年生のSB中野伸哉をデビューさせると、FC東京も交代出場の長身FW原大智(21歳)がJ1初ゴールを決めるなど、見どころの多い試合だったが、試合後の会見が思わぬ緊張感をもたらした。
まずは21時30分、JFA(日本サッカー協会)の反町技術委員長がweb会見で、1日から始まる予定だったU-19日本代表の合宿初日に、参加者の1名からスマートアンプ法とPCR検査で陽性反応が出たことを報告。当該選手以外は全員陰性で、保健所により濃厚接触者がいないことも確認されたが、反町技術委員長はキャンプを中止し、選手は所属クラブに帰すことを発表した。
そして時をほぼ同じくして会見に臨んだFC東京の長谷川監督は、試合直前に鳥栖から前日に発熱した選手がいたが東京遠征のメンバーには入らなかったこと、Jリーグ側に連絡したが中止ではなく予定通りキックオフすることを知らされたことを明らかにした。
これは判断が非常に難しいケースだ。
7月26日の広島対名古屋戦が中止になったのは、PCR検査で明らかな「陽性者」がいたことと、濃厚接触者の特定に時間がかかり試合開始に間に合わないからだった。
しかし鳥栖の場合は、「発熱者」がいたものの「陽性」とは断定されていない。一般人でも「37.5度の発熱が5日続いたら保健所に連絡」ということになっている。発熱=コロナに感染ではないのだ。
とはいえ、指揮官が「選手の生活と健康を預かっている監督として、強引にやらせるというのは苦しい選択があった」と葛藤するのは当然だし、「安心が担保できないなかで試合をやらせるというのは、今後は考えてもらいたい」と訴えたのも頷ける。
試合直前に対戦相手に発熱した選手がいたことを知らされれば、例え陽性でなくても動揺するだろう。それはFC東京の選手だけでなく、チームメイトの鳥栖の選手も同様ではないだろうか。
では、発熱した鳥栖の選手は帯同しておらず、濃厚接触者も特定されなかったので、FC東京にそれらの事実を隠して試合に臨んだ場合はどうか。長谷川監督を始めFC東京の選手たちが動揺することはなく、普段通りの試合ができたかもしれない。
しかし試合後に何らかの形で実状を知れば、鳥栖とJリーグに対して不信感を抱く可能性は高いだろうし、簡単に払拭することはできないだろう。
そして“コロナ禍”は、これだけでは済まなかった。
翌2日の17時より、J2町田の大友社長が会見を開いた。前日のUー19日本代表合宿で陽性反応が出たのは町田のFW晴山岬であり、現在も37.2度の熱があること。先月31日に実施したJリーグのPCR検査で晴山以外の全員が陰性であることと、保健所の確認で濃厚接触者がいないことから、当日18時30分キックオフの京都対町田戦は予定通り行うことを発表した。
ところが、その1時間15分後には村井満チェアマンと大宮の森社長、福岡の川森社長が合同で会見を実施。福岡の選手1名の陽性の可能性が高く、濃厚接触者の有無も試合前までの判別が難しいことから、19時キックオフの試合を中止にすることを決定した。
Jリーグが金曜に実施しているPCR検査は、結果判明が週明けの火曜だ。これは水曜のリーグ戦やカップ戦に向けての検査である。しかし今回の鳥栖、町田、福岡の3例から、週末の試合開催に向けても検査の必要性が高まった。
今後、村井チェアマンはPCR検査に加え、Uー19日本代表の合宿でJFAが実施したスマートアンプ法の併用も検討していくとコメントした。スマートアンプ法は1時間程度で陽性の可能性が検討できるため、検査のスピードアップが期待できる。残る課題としては、濃厚接触者の特定のため、週末における各地域での保健機関との連携となるだろう。
来週末もJ1~J3の試合が数多く組まれている。「Jリーグのある日常」に加え、「何も起きない週末」が戻ることも期待したい。
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