練習姿だけでも嬉しい…/原ゆみこのマドリッド

2020.05.12 17:05 Tue
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©Atlético de Madrid
「何だかよくわからないわね」そんな風に私が首を捻っていたのは月曜日、ラ・リーガのテバス会長が1部2部の42チーム、総勢2500人余りの新型コロナウィルス感染検査をした結果、陽性だったのは選手が5人、その他スタッフが3人と言っているのを聞いた時のことでした。いやあ、個人情報保護のため、ラ・リーガは各クラブに陽性者がいても名前を公表しないよう指導していたんですけどね。先週金曜にはアトレティコのロディがPCR検査陽性だったことが、当人の周辺からブラジル・メディアに伝わったかと思いきや、ベティスのGKジョエルなど、自身のツイッターで陽性告白する始末。

加えてベティスではペドラサとフアンミが抗体検査で引っかかり、同様のグラナダのヤンヘル・エレーラ、レアル・ソシエダのGKラミロなどもためらいなく、クラブが情報公開しているとなれば、AFE(サッカー選手の労働組合)が早速、抗議の声を上げていたのも当然だった?ただ、テバス会長の言う陽性というのが、PCRなのか、抗体検査なのかがはっきりせず、今名前を挙げた選手たちは血液中のIgMが多かったため、練習場でのセッションには参加できず、あと数日、自宅トレを続けるというんですけどね。アトレティコなんて、抗体検査でIgGが見つかり、コロナに感染から、すでに完治している選手が9人もいたというんですが、いやあ。どうもこのウィルスも検査は訳わからないことが多すぎるのが、困った点ではあります。

え、それでもテバス会長は25~30人はいるだろうと予想していた陽性者の数が意外と少なかったことに力づけられたか、6月12日にはリーガの今季残り11節を再開する腹積もりでいるんだろうって?その通りでこの1カ月余りのプレシーズン期間、保健省の指示に従って予防すれば、1つのチームに5人も感染者が出ることはありえないとのこと。試合開始の24時間前にも選手全員を検査し、陽性が出た者はプレーさせないことで、「El riesgo de un partido va a ser cero o prácticamente cero/エル・リエスゴー・デ・ウン・パルティードー・バ・ア・セル・セロ・オ・プラクティカメンテ・セロ(試合での危険度はゼロ、もしくは実質的にゼロ)」になるそうですが、うーん。

彼曰く、ドイツの衛生研究では1選手が他の選手と正面から顔を突き合わせている時間は67秒しかないというんですが、誤差5%以内というPCR検査でも陽性陰性が時々、ひっくり返るようですからね。一瞬でも近づいて、ウィルスを含んだ飛沫を吸い込んだらアウトなんじゃないかと、私なんか思うため、午後8時から11時の外出許可タイムに散歩する時、ジョギングしている人とすれ違うのが恐怖だったりするんですが、同じピッチに立つ審判たちも毎試合、48時間前には検査を実施。ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設にあるVAR(ビデオ審判)ルームもシールド板を置いたり、人数を減らして対応するとかで、皆が再開に向けて努力しているのは評価しないといけませんよね。

ここで先週末から順次、練習を始めたマドリッド勢の様子を伝えていくことにすると、トップバッターを飾ったのは金曜の午後から、シュダッド・デポルティバ・ブタルケで個人セッションをしている弟分のレガネス。17位セルタまでの勝ち点3差を早めに覆いして、残り試合で残留を達成したいというアギーレ監督がマスクをしていたのは、CSD(上級スポーツ委員会)のマニュアルに従ったもので、別に当人が感染している訳ではありませんが、まあこれはどのチームのスタッフもしているため、徐々に当たり前の風景になるかと。

冬の市場ではエン・ネシリ(セビージャ)を、2月には特例移籍でブライトワイテ(バルサ)を失った彼らにとっての朗報は、昨年7月にヒザの靭帯を断裂し、その前のシーズンも長期負傷でほとんど棒に振っているシマノフスキがチームと別建てですが、スタジアムのピッチで練習を開始したこと。兄貴分のレアル・マドリーでも似たような時期にケガしたアセンシオがこのparon(パロン/リーガの停止期間)のおかげで、6、7月の試合に出られるまで回復したように、レガネスもチーム1の技巧を誇るキャプテンが残り試合に戻って来てくれれば、頼もしい戦力になるのは間違いありませんって。

そして翌土曜にスタートとなったのはアトレティコで午前9時には、ロディを除いて、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に集合。施設に入る前に検温した後、DF組、MF組、FW組、GK組とグラウンドを分け、それぞれ最多6人の選手が距離をとって、お馴染みのフィジカルトレに取り組むことに。何せ、今の段階ではロッカールームの使用が禁止されていますからね。代わりにピッチには折り畳み椅子があり、各自、ビニール袋に入れた私物をそこに置いて、シューズの履き替えなどをしていたんですが、ボールが出て来てからの方が大変だったんですよ。

というのも予防策のせいで、選手は自分のマイボール以外、触ってはいけない上、いつもは大勢いるヘルプスタッフも蹴り損ねたボールを拾いには行ってくれず。それこそ、「Se pierde el dia a dia, el toque con el balon, las distancias largas y ahora costara un poco/セ・ピエルデ・エル・ディア・ア・ディア、エル・トケ・コン・エル・バロン、ラス・ディスタンシアス・ラルガス・イ・アオラ・コスタラ・ウン・ポコ・マス(ボールや長い距離のタッチは日々、失われていくんだよ。だから、今はちょっと手こずるかも)」と言っていたコケなど、初心者同士のテニスでどちらも打ち返せず、ひたすらボールを拾いにいくだけだった若き日の私の苦い思い出を理解してくれる?

そんな選手たちの間を走り回り、指導に余念のなかったシメオネ監督もマスク姿で、今週は気温が下がったため、まだいいんですが、真夏日がやって来たら、かなりヤバいかも。日曜は筋肉痛回復の休養日に充て、月曜から再び始まったアトレティコの練習の様子はオフィシャルウェブのビデオで見られるんですが、何よりファンを勇気づけてくれたのは、あのアンフィールドでの激闘から早2カ月。リバプールの猛攻を数々のparadon(パラドン/スーパーセーブ)で凌ぎ、CL準々決勝進出に繋げてくれたGKオブラクがまったくブランクを感じさせず、無病息災な姿を見せてくれたことでしょうか。

一方、ヘタフェも日曜からコリセウム・アルフォンソ・ペレス近くの練習場で個人トレーニングを始めたんですが、実はいきなり、バルサがククレジャを買い戻すかもしれないというバッドニュースが飛び込んでくることに。いやあ、昨季のエイバル同様、レンタルでプレーしていた彼については先日、クラブが600万ユーロ(約7億円)の買取オプションを行使。これで当人も心おきなく、マドリッドの第3のチームとして、初のCL出場権獲得の目標に挑めるはずだったんですが、何と1500万ユーロ(約18億円)で買い戻しできる条項がついていたなんて、寝耳に水とはまさにこのこと?

そう、要は差額の900万ユーロ(約11億円)を払えば、バルサは加齢により負傷が増えたジョルディ・アルバと今季、ベティスから入ったジュニオール・フィルポの力不足のせいで、不安定になっている左SBのポジションをボルダラス監督こそ、左サイドのアタッカーとして使うことが多いんですけどね。マシア(バルサのカンテラ)を離れてから、成長著しいククレジャで補おうという話らしいんですが、いや、それじゃまさに先日、アンヘル・トーレス会長が「ERTE(不況時の雇用調整法)を申請したクラブがお金を積んで、ヘタフェの選手をさらっていくのでは意味がない」と言っていた通りになってしまうかと。

まあ、その辺は職員や選手の給料カットと補強は別腹という考え方もあるようですが、今やマドリーも夏には再度、年棒3割減という計画をしているようですからね。このコロナウィルス禍では試合停止による入場料やオフィシャルショップやミュージアムの収入がなくなり、財政的に厳しいのはどこも同じ。そうなると、バルサがラウタロウ(インテル)やピアニッチ(ユベントス)といった大物獲得より、安上がりなカンテラーノ回収に動くのは大いにありそうで怖いですよね。

そして活動再開の大トリを飾ったのがマドリーで、いやホント、羨ましいですよね、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場内に選手全員の個室完備という恵まれたクラブは。他の3チームは皆、練習着着用で自家用車を運転して通勤して来たのに比べ、こちらは私服。各自の部屋で着替え、グラウンドに出られるのはちょっと贅沢だったかも。ちなみにその、「GKコーチは選手ごとにグローブとボールを代えていた。Hay que desinfectarlos, también los pies/アイ・ケ・デスインフェクタールロス、タンビエン・ロス・ピエス(それらは消毒しなくちゃいけなくて、足もだよ)」(クルトワ)という初日の練習の様子はオフィシャルウエブのビデオで見ることができます。

ただ初日、リーガ中断前は負傷のリハビリ中だったアザールとアセンシオも合流していたんですが、欠席者もいて、それは右足踵骨を骨折したヨビッチと、おかげでチャンスが増えそうなマリアーノの2人。いやあ、後者は軽い筋肉痛のようですが、月曜にセルビアから帰国した前者が実は、ケガしたのは戻って来てからの自宅練習ではなく、外出禁止中だった母国にいる時に壁に足をぶつけたせいという話も出てくるとは。実際、真相はよくわかならいんですが、まあマドリーはリーガ再開しても、ホームゲームの残り6試合を改修工事真っ盛りのサンティアゴ・ベルナベウではなく、シーズン打ち切りとなったRMカスティージャ(2部B)の使うエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノで実施する許可をラ・リーガやサッカー協会からもらっていますからね。

いざ、練習フェーズが進み、最初はグループ練習開始からとされていた超長期合宿も最初の感染テストの結果を受け、テバス会長が試合再開1週間前からに変更。隔離生活に入ったとしても彼らに限っては、全てをバルデベバス内で完結できるとあって、「Nos gusta estar con la familia pero también hay que ser flexibles/ノス・グルタ・エスタル・コン・ラ・ファミリア・ペロ・タンビエン・アイ・ケ・セル・フレキシブレス(ボクらは家族といるのが好きだけど、フレックスに対応しないとね)」(セルヒオ・ラモス)と、あまり反対意見は出ていないんですが、こればっかりは成り行きを見守らないと。今はとにかく、久々にハードに体を動かすようになった選手たちが、まあマジョルカで練習開始した久保建英選手がドリブルで転んでいたことなど、微笑ましいで済みますが、誰もケガをせず、試合再開の日を迎えてくるのを願うばかりです。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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