最高級の“赤ワイン”に飲まれ、対応力に頼りコントロールを失った日本/日本代表コラム

2019.11.20 12:20 Wed
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©︎CWS Brains, LTD.
ここまでの試合を観たのはいつ以来だろうか。あまりにも酷い45分間に、平日夜にパナソニックスタジアム 吹田に駆けつけた日本代表サポーターからは、大きなブーイングが浴びせられた。

森保一監督が就任してから、ベネズエラ代表戦でキリンチャレンジカップは通算11試合目。昨年11月のキルギス代表を除いては、中南米の国を呼び、これまでの10試合は7勝2分け1敗の成績だった。

唯一敗れた試合は今年3月のコロンビア代表戦だったが、その試合も0-1のロースコア。前半だけで4失点もするとは、誰も想像していなかっただろう。

◆最高級の“Vino Tinto”
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前半からたたみかけられた要因はいくつかある。まずは、ベネズエラが素晴らしいコンディションでこの試合に臨んだということだろう。

ベネズエラは、このインターナショナル・マッチウィークで2試合を行う予定だった。しかし、日本戦の前に予定されていたパラグアイ代表との試合が中止となった。

そのため、14日から大阪でトレーニングキャンプをスタート。キルギスでカタール・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選を戦った日本代表よりも、良いコンディションで試合に臨んだことは間違いない。
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キリンチャレンジカップといえば、長距離移動してきた中南米チームが時差ボケとコンディション不良の中で戦う事が多かった。そのため、日本が結果を残せていたのもうなづける。ホームで、コンディション面で分があればだ。

しかし、今回対戦したベネズエラは違った。主力選手も呼び、若い選手も加え、さらに来年3月にスタートするカタールW杯の出場権をかけた南米予選に向けたラストマッチ。最高級の“Vino Tinto(ベネズエラ代表の愛称である赤ワイン)”が用意され、日本は飲まれてしまったということだ。

◆相手を裏切るインテンシティなき戦い
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さて、話は日本代表に移すが、様々な要因がある中の1つは、“インテンシティ”がなかった事だろう。ラファエル・ドゥダメル監督は前日会見で日本代表について「組織的なプレーが非常に素晴らしく、ダイナミックでインテンシティの高い試合を披露することができるチーム」と評していた。

しかし、この試合のピッチに立っていた日本代表からは、組織的なプレーも、ダイナミックなプレーも、インテンシティの高さも感じられなかった。

この試合は[4-4-2]のシステムでスタート。キルギス戦のみで帰国した主力メンバーを含め、キルギス戦からはDF植田直通(セルクル・ブルージュ)、MF柴崎岳(デポルティボ・ラ・コルーニャ)、MF原口元気(ハノーファー)以外の8名が変更となった。あまり出場機会のない選手に加え、普段の[4-2-3-1]とは違う並びとなったが、このチームの特徴でもある前からのプレスは行っていた。

しかし、プレスは行っても連動性を欠いていた。後ろがついてこないために、2列目との間にはスペースが生まれ、後手を踏んだプレスの影響で、その後ろとの間にもスペースが空いた。また、プレスの強度、相手選手との距離感という点でも数メートル足りず、ベネズエラの選手がスペースにポジション取る事で簡単に回避されていた。

前からの守備がハマらず、さらにシステムが違うこともあって、攻撃時にも日本代表のポジショニングには問題があった。そのため、縦パスを狙ってはカットされ、細かいパス交換で突破するというシーンも阻まれた。
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唯一効果があったのは、ディフェンスラインの裏に抜けるFW浅野拓磨(パルチザン・ベオグラード)の動きぐらいだろう。しかし、浅野はアタッキングサードでのプレー精度を欠き、決定機を作るまでには至らなかった。また、守備の強度で言えば、後半のメンバーの方が高い。とりわけ、MF古橋亨梧(ヴィッセル神戸)、FW永井謙佑(FC東京)が入り、推進力が生まれてからの方が攻守にわたってアグレッシブであり効果的なプレスがかけられていた。

◆噛み合わせの悪さによるコントロール不全
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もう1つは、試合中のコントロールを挙げたい。ベネズエラは、[4-3-3]の布陣で臨み、[4-4-2]で臨んだ日本にとっては、噛み合わせの悪いシステムだ。さらに、ベネズエラはインテリオールの選手がワイドに開く動きを見せ、最大5人で攻め込むパターンを持っていた。

日本としては、左右のスライドを行う必要性があり、マークの受け渡しもスムーズに行わなければいけない状況だったが、常にプレーしているわけではないメンバーでは、その対応が追いつかなかった。

先制点のシーンは、左インテリオールのトマス・リンコン(トリノ)がワイドに広がり、左ウイングのジェフェルソン・ソルテド(サントス)がハーフスペースに侵入。ボックス内で室屋成(FC東京)と対峙したが、細かいステップで翻弄しクロス。最後はロンドンがヘディングで叩き込んだ。
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このシーンは、ソルテドのテクニックも高かったが、日本の守り方にも問題があった。得点時にベネズエラの選手はソルテドとロンドン以外に2人がボックス内にいたが、日本は7人がボックス内にいた。しかし、ソルテドの対応をしていた室屋以外はアプローチしていない。ほとんどがボールウォッチャーになっていた。

ニアサイドにいた植田や橋本拳人(FC東京)はもっと寄せるべきであり、畠中槙之輔(横浜F・マリノス)や佐々木翔(サンフレッチェ広島)はロンドンに警戒すべきだ。結果として、ファーサイドに挙げられたクロスを佐々木が競り合い決められたが、予測できたシュートシーンと言える。

2失点目も似ている。日本は最終ラインに4枚が揃っていたが、佐々木がつり出されている状況に。すると、ジャンヘル・エレーラ(グラナダ)の縦パスをロンドンがダイレクトではたき、走り込んだダルウィン・マチス(グラナダ)が抜け出すと、グラウンダーのパスをロンドンが押し込んだ。

佐々木が釣り出された部分を埋めていたのは中島翔哉(ポルト)であり、畠中との間を見事に突かれたもの。畠中はロンドンへの縦パスをケアしに行ったため、見事に穴を突かれた形となった。

いずれの得点も局面での対応のまずさもあるが、そもそもはラインが低く設定されたこともある。ロンドンがいることで徐々に最終ラインが下がり、前に押し出す守備ができなかったこと。結果として、攻撃まで機能しなくなったわけだ。この部分は経験不足が出た場面と言ってもいいだろう。

◆局面の弱さ、対応力に頼りすぎた戦い方
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最大の問題点は、キルギス戦でも感じられた局面での弱さと、ピッチ内での対応力に委ねるスタイルと言える。

キルギス戦では0-2で勝利こをおさめたものの、それぞれの局面では負けるシーンが散見された。キルギスがしっかりと日本への対策を練ってきたこともあり、システムのミスマッチ、ピッチコンディション以上に、周到に用意してきたことで負けた。

そしてベネズエラ戦でも同じシーンが見られた。一対一のシーンでは、キルギス以上に個の能力に長けているベネズエラの選手相手に、ことごとく負けた。それは守備だけでなく、攻撃時も同様だ。プレーのクセを読まれてブロックされるシーンや、フィジカル勝負で負けてボールロストするシーンが散見されていた。

これは、17日にU-22コロンビア代表と対戦した、U-22日本代表でも見られたもの。チームも相手も違うが、日本が長年抱える問題と言っていいだろう。浅野も試合後に「どうすればあそこにボールを持っていかなくていいのかをチームとして考えないといけない」と語るなど、個の問題であると同時に、組織の問題でもあることを感じさせた。

その理由は、選手の対応力に依存度が高いということだ。前述の通り、キルギス戦のメンバーは現状のベストメンバーに近いが、そこから8名が入れ替わっている。チーム戦術を遂行しながら、ピッチ上で起こっていることに対応できる選手がレギュラー組と考えるならば、この日は控え組であり、その対応力も自ずと低くなる。

個々の能力、特長はあったとしても、相手とのミスマッチをどうやって埋めていくのか。チームとして組織として動く場合、その対応力がなければ、ズルズルとやられるだけ。それが完全に露呈した試合となっただろう。
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柴崎は「全責任は僕にあると思います」と試合後に語った。この言葉の重みをどう考えるかだろう。森保一監督は「結果の責任については、準備の段階からの私の選手に対しての、チームに対しての働きかけだったと思う」と試合後の会見で語ったが、似たような試合をU-22日本代表とA代表で続けて見せてしまった。ピッチ内の対応力だけでは、ベストメンバーを揃える以外に解決策はなくなってしまう。

森保監督は「反省しなくてはいけない」とも口にしたが、ベストメンバーが組めない試合での出来をどう改善していくかが大きな課題として残ったと言えるだろう。そういった意味で、しっかりと熟成された最高級の“Vino Tinto”を用意したドゥダメル監督に、気づきを与えてもらったことに感謝すべきかもしれない。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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