不思議な勝ち方もある…/原ゆみこのマドリッド
2019.02.26 11:55 Tue
「本当にそこまで判別できたのかな」そんな風に私が訝っていたのは月曜日、チームバスから降り、シュタット・デ・バレンシア入りするベイルがスマホで熱心に見ていたのはゴルフのWGCメキシコ選手権最終日の中継だったと、ラ・セクスタ(スペインの民放)のサッカー番組が報じているという記事をAS(スポーツ紙)のサイトで見つけた時のことでした(https://bit.ly/2SXDgVI)。いやあ、先日はGKクルトワが何かのインタビューの中で「あまりにゴルフ好きだから、チームメートは彼をgolfista(ゴルフィスタ/ゴルファー)と呼んでいる」と暴露したのも、スペイン語ではgolfo(ゴルフォ)という単語が怠け者を意味する形容詞であるせいもあって、世間にいい印象は与えていなかったんですけどね。
選手たちがお気に入りのミュージックを聞きながらスタジアム入りというのは普通に見かける風景なのに、ベイルに限って、こうも騒がれてしまうのはやっぱり、控えだった日曜のレバンテ戦でアップ中に水を飲みたいからとベンチに戻り、そのまま座り込んでしまったり、出場を指示されてからの支度に時間がかかっていたり、極めつきはレアル・マドリーの決勝点となるPKゴールを挙げた後の振る舞い。ええ、お祝いに駆けつけたルーカス・バスケスの手を払いのけると、仏頂面のままピッチ中央に戻り、仲の良いモドリッチに諫められてようやく機嫌を直しているとなれば、いくらソラーリ監督が「Me pareció fantástico su partido/メ・パレシオ・ファンタステイィコ・ス・パルティードー(彼は素晴らしい試合をしたように見えた)」とフォローしてくれても何がしか、当人が不満を抱いているのは明白だったかと。
まあ、マドリーの試合についてはまた後で話すことにして、先週末のリーガの様子をお伝えしていくと、いやあ、時代も変わったものですね。今週のリーガ順位表には前代未聞の快挙があって、CL出場圏の4チーム中、マドリッド勢が3つを占めることに。そう、常連のマドリー、アトレティコに続き、ヨーロッパリーグ出場経験はあるものの、エリートチームの大会であるCLなどとは縁が遠いと思われていたヘタフェがついに4位に上がったんですよ。それが1部に出戻りした今季、なかなか降格圏を脱出できない弟分仲間、ラージョを下したおかげというのは少々、心が痛みますが、とはいえリーガは弱肉強食。
実際、コリセウム・アルフォンソ・ペレスで土曜に行われたミニダービーでは前半31分、フルキエがエリア内奥から出したボールをマタが決めて先制点をゲット。ラージョも後半にはエースのラウール・デ・トーマスが気を吐き、13分に個人技から同点ゴールを決めたものの、ヘタフェには2トップがどちらも当たっているという強みが。ええ、この日も23分にはポルティージョのボールに抜け出したマタがエリア内でホルヘ・モリーナへラストパスを送り、自分と同じ今季通算10得点目となる勝ち越しゴールを決めてくれたとなれば、こちらもサラ(スペイン人得点王)ランキングのトップに並んだラウール・デ・トーマスがいるとはいえ、一馬力のラージョが太刀打ちできなくても仕方ない?
これで2-1と勝利を手にしたヘタフェは同日、セビージャがバルサに2-4と逆転負けを喫したため、少なくとも次節までは4位にいられることが確定。試合後、かつてローマやディナモ・キエフ、マラガでCL出場15試合の経験があるアントゥネスなど、「Yo también tengo el sueño de jugar en Europa, ¿quien no lo tiene?/ジョ・タンビエン・テンゴ・エル・スエニョ・デ・フガール・エン・エウロッパ、キエン・ノー・ロ・ティネ(ボクにもヨーロッパの大会でプレーしたいという夢はあるからね。そうじゃない選手がいる? )」なんて言っていましたが、まだリーガは13試合も残っていますしね。とりあえずはこの日曜のベティス戦でも相手がコパ・デル・レイ準決勝2ndレグで疲弊しているのを利用して、この高みを維持できればいいかと。この日はベンチ外だった柴崎岳選手にもそろそろ、チャンスが回ってきてほしいところです。
そして翌日曜の正午にはブタルケにレガネスの応援に行った私だったんですが、相手のバレンシアは先週木曜にはEL32強対決セルティック戦2ndレグ、今週木曜はコパ準決勝ベティス戦2ndレグと厳しい日程の狭間にあったため、ガメイロやパレホを温存してスタメンをローテーション。それでも前半22分には、「La falta es clara, no me dejó disputar el balón/ラ・ファルタ・エス・クラーラ、ノー・メ・デホ・ディスプタール・エル・バロン(ボールを争えなくしたんだから、ファールは明らかだ)」というブスティンサを潰しながら、コンドグビアがヘッドで決めたゴールがスコアに上がり、ホームチームは後手に回ってしまうことに。
でも満員のブタルケの観衆に支えられたこの日のペジェグリーニ監督は勇敢だったんですよ。ええ、後半には先発デビューしたクラベツを下げ、エル・ザハルの投入で4人DF制に変えると、更にはカリージョも入れて、元々ピッチにいたブラースヴァイト、エン・ネリシに加え、とうとうFWが4人になったから、ビックリしたの何のって。その狙いは、「Ellos han buscado el centro lateral constantemente/エジョス・アン・ブスカードー・エル・セントロ・ラテラル・コンスタンテメンテ(彼らはサイドからのクロスを頻繁に探していた)」とマルセリーノ監督も言っていたように、2人の大型CFの頭で撃ち込むことだったようですが、意外にも43分、同点ゴールを奪ってくれたのはブラースヴァイト。
ええ、エル・ザハルが折り返したパスをシュートすると、一度は跳ね返されたものの、2度目のトライで成功。いえ、1-1で試合が終わり、引き分けが15回目と今季は稀に見るドロー街道を驀進しているバレンシアの将は、「勝ち点2が消えてしまったが、それは相手のメリットではない。Sino que fútbol nos está quitando mucho/シノ・ケ・フトボル・ノー・エスタ・キタンドー・ムーチョ(そうではなく、サッカーがウチから沢山奪っている)」とツキのなさを嘆いていましたけどね。それにしたって、先日ブタルケで3-0の完敗を喰らったベティスのセティエン監督といい、皆、もうちょっとレガネスのサッカーをリスペクトしてくれてもいいのでは?
実際、ロスタイムにエン・ネシリの1対1のシュートがGKネトに防がれていなければ、逆転勝ちもありましたしね。ペジェグリーニ監督はいつものように「Nosotros jugamos a nuestro fútbol/ノソトロス・フガモス・ア・ヌエストロ・フトボル(ウチはウチのサッカーをプレーする)。プレーは常にコントロールが全てではないよ。ウチにはヘディングに秀でた選手がいて、空中戦だってプレーのうちだ。自分たちの武器を磨かないといけない」と落ち着いていましたが、彼らの現在の順位は12位。EL出場圏にも降格圏にも等しく勝ち点7差ともなると、程よい余裕が出てくるのかもしれませんね。
え、それで午後2時半にブタルケを出て、午後4時15分までにワンダ・メトロポリターノに私は移動できたのかって? 大丈夫、午後12時キックオフの試合とのダブルヘッダーはヘタフェから同様、ムリなんですが、セルカニアス(国鉄近郊路線)でサラケマダ駅からアトーチャ駅まで行き、あとはメトロを乗り継いで大体、1時間15分ぐらいで着くため、せっかくのマドリッド滞在時にリーガの試合をできるだけ沢山見たいファンの方は覚えておくといいかと。ちなみにその日、プレーした両チームはどちらもミッドウィークに、アトレティコは水曜にCL16強対決ユベントス戦1stレグ、ビジャレアルは木曜にEL32強対決スポルティングCP戦2ndレグとハードな試合を戦ったばかりだったんですが…。
その結果起こったのが世にも珍しい、走るより歩いている方が多いという、ゆとりサッカーだったんですが、いやあ、もうアトレティコの最近のリーガ戦はマドリーダービー以外、ずっとこんな調子ですからね。前半9分にはエカンビが1人、オブラクの前に迫ってきたんですが、今週中にも手取り年棒がGKとして、ヨーロッパ最高額となる1000万ユーロ(約13億円)にアップする契約延長にサインするという彼が当たり前のようにparadon(パラドン/スーパーセーブ)で失点を回避すると、31分にはいよいよ、チャンスが巡ってきます。フィリペ・ルイスが送ったラストパスをモラタがワンタッチで流し込み、GKアセンホを破ったんですが、うーん、この場合、スタンドが即座に歓喜できなかったのは仕方ないかと。
だって、1月にチェルシーからレンタル移籍、4試合目の出場となるこの日は双子の赤ちゃんを抱えてキックオフ前の集合写真を撮っていたモラタですが、彼はマドリーダービーでもユベントス戦でもスピーカーのゴールコールにファンが声を揃えて絶叫した後、VAR(ビデオ審判)で取り消しになるという不運の持ち主。おかげでしばし待った後、ようやく主審のOKが出て、3度目の正直でアトレティコ初ゴールを祝えることに。残念ながら、後半序盤にフネス・モリの手が顔に当たって倒れたプレーはペナルティに取ってもらえませんでしたけどね。何事も一歩一歩前進するのが肝心、先制点を取るという役目を終えたモラタは後半12分でジエゴ・コスタと交代です。
すると丁度、後半からビジャレアルが5人DF体制から、チュクウェゼを投入して、DFを1人減らしたおかげもあったんですが、アトレティコはコスタ目掛けてロングボールを放るというカウンター戦法に移行。やはりまだ、実戦のリズムは取り戻せていないのか、グリーズマンやコケがいいパスを出してもフィニッシュに失敗ばかりしていた彼ですが、何と42分にはそのコスタ自身が送り手に。エリア内で追いついたサウールが迫ってきたGKアセンホの頭上を越えるvaselina(バセリーナ/ループシュート)を放ったところ、ゴールライン上にいたビクトル・ルイスがどういう訳か、落ちて来るボールをお見送り。これで2点目が入ったとなれば、もう大船に乗った気でいていい? おかげでここ4年間、7試合に渡って白星なしと苦渋を飲まされていたビジャレアルに引導を渡すことができたのは本当に助かりましたっけ(最終スコア2-0)。
え、これでトロトロとプレーするアトレティコでも勝てることがわかったんだから、常にユベントス戦のようなサッカーができなくても安心できるんじゃないかって? まあ、その通りで変に力が入りすぎると、例のシメオネ監督がゴール祝いで見せた、ちょっと(かなり? )下品なポーズみたいなのも出てしまったりしますからね。ちなみにその件について、彼はビジャレアル戦前の記者会見で詫びていたんですが、試合の後には「No pedí perdón, sino disculpas/ノー・ペディ・ペルドン、シノ・ディスクルパ(自分は赦しを求めたのではなく、謝ったんだ)」と説明。要はユーベ側に向けた悪意のあるポーズではないため、気分を悪くした人がいたら済まなかったかという趣旨のようですが、まったくもう。すでにUEFA倫理委員会が不適切な行動ということで調査しているって、またベンチ入り停止になっちゃうんでしょうかねえ。
まあ、その結論が出るのはまだ先ですし、2ndレグは3月とあって、今週は土曜のレアル・ソシエダ戦に焦点を合わせて調整すればいいアトレティコなんですが、最後にお隣さんの試合がどうだったかというと。いやあ、ミッドウィークにコパ準決勝2ndレグのクラシコが控えているとはいえ、前節ジローナ戦にまさかの逆転負けを喰らい、後のなくなったソラーリ監督はレバンテ戦にベストメンバーを投入。ただその甲斐もなく、前半はロジェールに2度もゴールポストを叩くシュートを撃たれるなど、かなり劣勢に立っていたんですが、ハーフを終わった時点でマドリーが0-1とリードとはこれいかに。
というのも43分、いきなりVARから連絡が入り、数分前にモドリッチのクロスをエリア内でクリアしたバルディがボールを手に当てていたのが発覚。これがペナルティとされ、ベンゼマがPKを決めたからですが、勢いの衰えないレバンテが後半15分、とうとうモラレスのパスからロジェールが決め、同点に追いつかれてしまったから、さあ大変! そのまま引き分けると、首位バルサとの差が勝ち点11まで開いてしまうため、私も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で眉をしかめていたんですが、でもねえ。まさか30分過ぎ、CKからのボールをクリアしようとしたドゥクレの足にかすめられたカゼミロが倒れ込み、ペナルティを主審が宣告。更にリプレー画面を見ているはずのVARまでがそれを認めてしまうなんてこと、あってもいい?
いやあ、このプレーについては「Me creo lo que dice Casemiro/メ・クレオ・ロ・ケ・ディセ・カセミロ(私はカゼミロの言うことを信じる)。足首を蹴られたそうだ」というソラーリ監督と、「ドゥクレは絶対、蹴っていないと何度も言っていた」というパコ・ロペス監督が完全に水掛け論になってしまうのは当然ですが、その映像は世界中の人が見ていますからね。挙句の果てに「Estaba a 25 metros y escucho la patada/エスタバ・ア・ベインティシンコ・メトロス・イ・エスクーチョ・ラ・パタダ(自分は25メートル離れたところにいたけど、足が当たった音を聞いた)」(カルバハル)とまでなると、いや、カセミロが大袈裟に叫んだのを聞いただけではと突っ込んでしまうのは私だけ?
結局、このPKをベイルが決め、最初にお話しした物議を醸すシーンが展開された訳ですが、1-2で負けてしまったレバンテにとって、泣きっ面に蜂だったのは、このプレーでドゥクレが左ヒザ前十字靭帯断裂。今季絶望になってしまったことだったかと。一方、何とか首位との差を勝ち点9に保ったマドリーにも逆境はあって、終盤に2枚目のイエローカードをもらって退場したナチョが土曜のリーガ・クラシコに出場できないことに。
とはいえ、当面の課題は水曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのコパ・クラシコで、1stレグはカンプ・ノウで1-1だったとはいえ、その試合、メッシは途中出場でしたからねえ。レバンテ戦では出場停止だったセルヒオ・ラモスはスタメンに戻れるんですが、今回は相手がセビージャ戦でのハットトリックで勢いをつけて、サンティアゴ・ベルナベウに乗り込んで来るとなると心配もひとしおかと。翻ってマドリーの攻撃陣で期待が持てるのはここ毎試合、冴えたプレーを見せているヴィニシウスなんですが、こちらは決定力不足というハンデがありますし、ベイルもまた控えではご機嫌が直らない可能性も。となると、やはり最後はやっぱり、ラモスの頭頼りということになるんでしょうか。
選手たちがお気に入りのミュージックを聞きながらスタジアム入りというのは普通に見かける風景なのに、ベイルに限って、こうも騒がれてしまうのはやっぱり、控えだった日曜のレバンテ戦でアップ中に水を飲みたいからとベンチに戻り、そのまま座り込んでしまったり、出場を指示されてからの支度に時間がかかっていたり、極めつきはレアル・マドリーの決勝点となるPKゴールを挙げた後の振る舞い。ええ、お祝いに駆けつけたルーカス・バスケスの手を払いのけると、仏頂面のままピッチ中央に戻り、仲の良いモドリッチに諫められてようやく機嫌を直しているとなれば、いくらソラーリ監督が「Me pareció fantástico su partido/メ・パレシオ・ファンタステイィコ・ス・パルティードー(彼は素晴らしい試合をしたように見えた)」とフォローしてくれても何がしか、当人が不満を抱いているのは明白だったかと。
まあ、マドリーの試合についてはまた後で話すことにして、先週末のリーガの様子をお伝えしていくと、いやあ、時代も変わったものですね。今週のリーガ順位表には前代未聞の快挙があって、CL出場圏の4チーム中、マドリッド勢が3つを占めることに。そう、常連のマドリー、アトレティコに続き、ヨーロッパリーグ出場経験はあるものの、エリートチームの大会であるCLなどとは縁が遠いと思われていたヘタフェがついに4位に上がったんですよ。それが1部に出戻りした今季、なかなか降格圏を脱出できない弟分仲間、ラージョを下したおかげというのは少々、心が痛みますが、とはいえリーガは弱肉強食。
これで2-1と勝利を手にしたヘタフェは同日、セビージャがバルサに2-4と逆転負けを喫したため、少なくとも次節までは4位にいられることが確定。試合後、かつてローマやディナモ・キエフ、マラガでCL出場15試合の経験があるアントゥネスなど、「Yo también tengo el sueño de jugar en Europa, ¿quien no lo tiene?/ジョ・タンビエン・テンゴ・エル・スエニョ・デ・フガール・エン・エウロッパ、キエン・ノー・ロ・ティネ(ボクにもヨーロッパの大会でプレーしたいという夢はあるからね。そうじゃない選手がいる? )」なんて言っていましたが、まだリーガは13試合も残っていますしね。とりあえずはこの日曜のベティス戦でも相手がコパ・デル・レイ準決勝2ndレグで疲弊しているのを利用して、この高みを維持できればいいかと。この日はベンチ外だった柴崎岳選手にもそろそろ、チャンスが回ってきてほしいところです。
一方、1月の好調から一転、あれよあれよという間に4連敗となってしまったラージョですが、そのうち3試合がレガネス、アトレティコ、ヘタフェとのダービーだったのは本当にお気の毒。しかも4敗とも全て1点差負けとなれば、ミチェル監督の悔しさも半端じゃないでしょうが、幸い4月末のマドリー戦までもう近隣対決はありませんからね。まずはこの金曜のジローナ戦から態勢を立て直して、17位のセルタとの勝ち点差が2と少ない今のうちに降格圏を抜け出してくれることを期待しています。
そして翌日曜の正午にはブタルケにレガネスの応援に行った私だったんですが、相手のバレンシアは先週木曜にはEL32強対決セルティック戦2ndレグ、今週木曜はコパ準決勝ベティス戦2ndレグと厳しい日程の狭間にあったため、ガメイロやパレホを温存してスタメンをローテーション。それでも前半22分には、「La falta es clara, no me dejó disputar el balón/ラ・ファルタ・エス・クラーラ、ノー・メ・デホ・ディスプタール・エル・バロン(ボールを争えなくしたんだから、ファールは明らかだ)」というブスティンサを潰しながら、コンドグビアがヘッドで決めたゴールがスコアに上がり、ホームチームは後手に回ってしまうことに。
でも満員のブタルケの観衆に支えられたこの日のペジェグリーニ監督は勇敢だったんですよ。ええ、後半には先発デビューしたクラベツを下げ、エル・ザハルの投入で4人DF制に変えると、更にはカリージョも入れて、元々ピッチにいたブラースヴァイト、エン・ネリシに加え、とうとうFWが4人になったから、ビックリしたの何のって。その狙いは、「Ellos han buscado el centro lateral constantemente/エジョス・アン・ブスカードー・エル・セントロ・ラテラル・コンスタンテメンテ(彼らはサイドからのクロスを頻繁に探していた)」とマルセリーノ監督も言っていたように、2人の大型CFの頭で撃ち込むことだったようですが、意外にも43分、同点ゴールを奪ってくれたのはブラースヴァイト。
ええ、エル・ザハルが折り返したパスをシュートすると、一度は跳ね返されたものの、2度目のトライで成功。いえ、1-1で試合が終わり、引き分けが15回目と今季は稀に見るドロー街道を驀進しているバレンシアの将は、「勝ち点2が消えてしまったが、それは相手のメリットではない。Sino que fútbol nos está quitando mucho/シノ・ケ・フトボル・ノー・エスタ・キタンドー・ムーチョ(そうではなく、サッカーがウチから沢山奪っている)」とツキのなさを嘆いていましたけどね。それにしたって、先日ブタルケで3-0の完敗を喰らったベティスのセティエン監督といい、皆、もうちょっとレガネスのサッカーをリスペクトしてくれてもいいのでは?
実際、ロスタイムにエン・ネシリの1対1のシュートがGKネトに防がれていなければ、逆転勝ちもありましたしね。ペジェグリーニ監督はいつものように「Nosotros jugamos a nuestro fútbol/ノソトロス・フガモス・ア・ヌエストロ・フトボル(ウチはウチのサッカーをプレーする)。プレーは常にコントロールが全てではないよ。ウチにはヘディングに秀でた選手がいて、空中戦だってプレーのうちだ。自分たちの武器を磨かないといけない」と落ち着いていましたが、彼らの現在の順位は12位。EL出場圏にも降格圏にも等しく勝ち点7差ともなると、程よい余裕が出てくるのかもしれませんね。
え、それで午後2時半にブタルケを出て、午後4時15分までにワンダ・メトロポリターノに私は移動できたのかって? 大丈夫、午後12時キックオフの試合とのダブルヘッダーはヘタフェから同様、ムリなんですが、セルカニアス(国鉄近郊路線)でサラケマダ駅からアトーチャ駅まで行き、あとはメトロを乗り継いで大体、1時間15分ぐらいで着くため、せっかくのマドリッド滞在時にリーガの試合をできるだけ沢山見たいファンの方は覚えておくといいかと。ちなみにその日、プレーした両チームはどちらもミッドウィークに、アトレティコは水曜にCL16強対決ユベントス戦1stレグ、ビジャレアルは木曜にEL32強対決スポルティングCP戦2ndレグとハードな試合を戦ったばかりだったんですが…。
その結果起こったのが世にも珍しい、走るより歩いている方が多いという、ゆとりサッカーだったんですが、いやあ、もうアトレティコの最近のリーガ戦はマドリーダービー以外、ずっとこんな調子ですからね。前半9分にはエカンビが1人、オブラクの前に迫ってきたんですが、今週中にも手取り年棒がGKとして、ヨーロッパ最高額となる1000万ユーロ(約13億円)にアップする契約延長にサインするという彼が当たり前のようにparadon(パラドン/スーパーセーブ)で失点を回避すると、31分にはいよいよ、チャンスが巡ってきます。フィリペ・ルイスが送ったラストパスをモラタがワンタッチで流し込み、GKアセンホを破ったんですが、うーん、この場合、スタンドが即座に歓喜できなかったのは仕方ないかと。
だって、1月にチェルシーからレンタル移籍、4試合目の出場となるこの日は双子の赤ちゃんを抱えてキックオフ前の集合写真を撮っていたモラタですが、彼はマドリーダービーでもユベントス戦でもスピーカーのゴールコールにファンが声を揃えて絶叫した後、VAR(ビデオ審判)で取り消しになるという不運の持ち主。おかげでしばし待った後、ようやく主審のOKが出て、3度目の正直でアトレティコ初ゴールを祝えることに。残念ながら、後半序盤にフネス・モリの手が顔に当たって倒れたプレーはペナルティに取ってもらえませんでしたけどね。何事も一歩一歩前進するのが肝心、先制点を取るという役目を終えたモラタは後半12分でジエゴ・コスタと交代です。
すると丁度、後半からビジャレアルが5人DF体制から、チュクウェゼを投入して、DFを1人減らしたおかげもあったんですが、アトレティコはコスタ目掛けてロングボールを放るというカウンター戦法に移行。やはりまだ、実戦のリズムは取り戻せていないのか、グリーズマンやコケがいいパスを出してもフィニッシュに失敗ばかりしていた彼ですが、何と42分にはそのコスタ自身が送り手に。エリア内で追いついたサウールが迫ってきたGKアセンホの頭上を越えるvaselina(バセリーナ/ループシュート)を放ったところ、ゴールライン上にいたビクトル・ルイスがどういう訳か、落ちて来るボールをお見送り。これで2点目が入ったとなれば、もう大船に乗った気でいていい? おかげでここ4年間、7試合に渡って白星なしと苦渋を飲まされていたビジャレアルに引導を渡すことができたのは本当に助かりましたっけ(最終スコア2-0)。
え、これでトロトロとプレーするアトレティコでも勝てることがわかったんだから、常にユベントス戦のようなサッカーができなくても安心できるんじゃないかって? まあ、その通りで変に力が入りすぎると、例のシメオネ監督がゴール祝いで見せた、ちょっと(かなり? )下品なポーズみたいなのも出てしまったりしますからね。ちなみにその件について、彼はビジャレアル戦前の記者会見で詫びていたんですが、試合の後には「No pedí perdón, sino disculpas/ノー・ペディ・ペルドン、シノ・ディスクルパ(自分は赦しを求めたのではなく、謝ったんだ)」と説明。要はユーベ側に向けた悪意のあるポーズではないため、気分を悪くした人がいたら済まなかったかという趣旨のようですが、まったくもう。すでにUEFA倫理委員会が不適切な行動ということで調査しているって、またベンチ入り停止になっちゃうんでしょうかねえ。
まあ、その結論が出るのはまだ先ですし、2ndレグは3月とあって、今週は土曜のレアル・ソシエダ戦に焦点を合わせて調整すればいいアトレティコなんですが、最後にお隣さんの試合がどうだったかというと。いやあ、ミッドウィークにコパ準決勝2ndレグのクラシコが控えているとはいえ、前節ジローナ戦にまさかの逆転負けを喰らい、後のなくなったソラーリ監督はレバンテ戦にベストメンバーを投入。ただその甲斐もなく、前半はロジェールに2度もゴールポストを叩くシュートを撃たれるなど、かなり劣勢に立っていたんですが、ハーフを終わった時点でマドリーが0-1とリードとはこれいかに。
というのも43分、いきなりVARから連絡が入り、数分前にモドリッチのクロスをエリア内でクリアしたバルディがボールを手に当てていたのが発覚。これがペナルティとされ、ベンゼマがPKを決めたからですが、勢いの衰えないレバンテが後半15分、とうとうモラレスのパスからロジェールが決め、同点に追いつかれてしまったから、さあ大変! そのまま引き分けると、首位バルサとの差が勝ち点11まで開いてしまうため、私も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で眉をしかめていたんですが、でもねえ。まさか30分過ぎ、CKからのボールをクリアしようとしたドゥクレの足にかすめられたカゼミロが倒れ込み、ペナルティを主審が宣告。更にリプレー画面を見ているはずのVARまでがそれを認めてしまうなんてこと、あってもいい?
いやあ、このプレーについては「Me creo lo que dice Casemiro/メ・クレオ・ロ・ケ・ディセ・カセミロ(私はカゼミロの言うことを信じる)。足首を蹴られたそうだ」というソラーリ監督と、「ドゥクレは絶対、蹴っていないと何度も言っていた」というパコ・ロペス監督が完全に水掛け論になってしまうのは当然ですが、その映像は世界中の人が見ていますからね。挙句の果てに「Estaba a 25 metros y escucho la patada/エスタバ・ア・ベインティシンコ・メトロス・イ・エスクーチョ・ラ・パタダ(自分は25メートル離れたところにいたけど、足が当たった音を聞いた)」(カルバハル)とまでなると、いや、カセミロが大袈裟に叫んだのを聞いただけではと突っ込んでしまうのは私だけ?
結局、このPKをベイルが決め、最初にお話しした物議を醸すシーンが展開された訳ですが、1-2で負けてしまったレバンテにとって、泣きっ面に蜂だったのは、このプレーでドゥクレが左ヒザ前十字靭帯断裂。今季絶望になってしまったことだったかと。一方、何とか首位との差を勝ち点9に保ったマドリーにも逆境はあって、終盤に2枚目のイエローカードをもらって退場したナチョが土曜のリーガ・クラシコに出場できないことに。
とはいえ、当面の課題は水曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのコパ・クラシコで、1stレグはカンプ・ノウで1-1だったとはいえ、その試合、メッシは途中出場でしたからねえ。レバンテ戦では出場停止だったセルヒオ・ラモスはスタメンに戻れるんですが、今回は相手がセビージャ戦でのハットトリックで勢いをつけて、サンティアゴ・ベルナベウに乗り込んで来るとなると心配もひとしおかと。翻ってマドリーの攻撃陣で期待が持てるのはここ毎試合、冴えたプレーを見せているヴィニシウスなんですが、こちらは決定力不足というハンデがありますし、ベイルもまた控えではご機嫌が直らない可能性も。となると、やはり最後はやっぱり、ラモスの頭頼りということになるんでしょうか。
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レアル・マドリーは17日、ボーンマスに所属するスペイン代表DFディーン・ハイセン(20)の獲得合意を発表した。契約期間は2025年6月1日~2030年6月30日までの5年間となる。 なおボーンマスによれば、マドリーは契約解除金として5000万ポンド(約97億円)を支払ったとのことだ。 ハイセンは197cmの高さを備え、両足でボールを扱えるモダンなセンターバック。ユベントスの下部組織に所属し、昨シーズン後半にはローマへ加入して公式戦13試合に出場するなど存在感を示した。 その後、ユベントスへ復帰するもクラブは売却に動き、昨夏の移籍市場でボーンマスに完全移籍。アンドニ・イラオラ監督から徐々に信頼を得ると、20歳ながらチームの主力センターバックに定着。 プレミアリーグ30試合3ゴールを記録し、3月にはスペイン代表を選択してデビューしていた。 2025.05.17 20:00 Sat3
21世紀の出場試合数ランキング発表! 首位は1145試合のC・ロナウド、トップ10に日本人選手がランクイン
IFFHS(国際サッカー歴史統計連盟)が、21世紀で最もプレーした選手のランキングを発表。トップ10には日本人選手もランクインした。 様々な統計を行うIFFHS。2022年までのデータを集計し、21世紀に入ってからのプレーした試合数をもとにランキングを作成した。 対象となるのは、各国のリーグ戦やカップ戦、国際カップ戦、代表チームの試合も含まれ、全ての公式戦が対象になっている。 今回の統計では1000試合以上プレーした選手が3人に増加。首位は昨年と変わらず、サウジアラビアへ活躍の場を移したポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(アル・ナスル)となり、1145試合を記録した。 2022年に1000試合を突破したのは、ブラジル代表DFダニエウ・アウベス(UNAMプーマス)とアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(パリ・サンジェルマン)。アウベスは1033試合、メッシは1003試合となった。メッシはカタール・ワールドカップ(W杯)での試合で1000試合を超えたことになる。 そんな中、8位には日本人がランクイン。941試合に出場したMF遠藤保仁(ジュビロ磐田)だ。遠藤はガンバ大阪と磐田、そして日本代表での試合が21世紀に含まれている。なお、アジア人でも唯一となり、900試合以上を達成しているのも12名となっている。 ◆21世紀の出場試合数ランキング 合計(国内リーグ/国内カップ/国際カップ/代表) 1位:クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル) 1145試合(651/93/205/196) 2位:ダニエウ・アウベス(ブラジル) 1033試合(620/115/172/126) 3位:リオネル・メッシ(アルゼンチン) 1003試合(559/102/170/172) 4位:イケル・カシージャス(スペイン) 974試合(585/57/171/161) 5位:ジョアン・モウティーニョ(ポルトガル) 958試合(563/107/142/146) 6位:ズラタン・イブラヒモビッチ(スウェーデン) 948試合(603/72/152/121) 7位:ルカ・モドリッチ(クロアチア) 947試合(569/69/146/162) 8位:遠藤保仁(日本) 941試合(606/117/66/152) 9位:チャビ・エルナンデス(スペイン) 937試合(536/95/174/132) 10位:セルヒオ・ラモス(スペイン) 935試合(534/70/151/180) 11位:アンドレス・イニエスタ(スペイン) 933試合(552/98/152/131) 12位:ロジェリオ・セニ(ブラジル) 904試合(675/71/149/9) 2023.01.12 12:45 Thu4