【J1クラブ通信簿】戸惑いの2位フィニッシュ…手にしたのは「強さ」か「脆さ」か《サンフレッチェ広島》

2018.12.20 21:45 Thu
Getty Images
▽優勝争いから残留争いまで手に汗を握る接戦、熱戦が続いた2018シーズンの明治安田生命J1リーグ。超ワールドサッカー編集部は、J1全18クラブの通信簿(トピックやチームMVP、補強成功度、総合評価)をお届けする。第17弾は2位のサンフレッチェ広島を総括!
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シーズン振り返り
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▽命からがら残留を手にした昨季と比べれば、2018年の広島は見事だった。おおよそ前半戦までは。▽開幕前に、ヴァンフォーレ甲府やFC東京の監督を歴任してきた城福浩監督を招へい。それ以前にはアンダー世代の日本代表監督を務め、FC東京では育成部門の統括も手掛けていたこともあり、世代交代が必要と叫ばれていた広島の若返りに期待が持てた。だが一方で、その手腕に疑問を呈する声もあり、期待と不安が交錯する中で新シーズンの幕は開けた。
▽するとどうだろう。広島は浦和レッズや鹿島アントラーズといった難敵相手に開幕から3連勝を収め、第9節までは8勝1分けとこの上ないスタートダッシュを切った。第10節でFC東京に初黒星を付けられるも、その後は4連勝でもろともしなかった。城福監督の特長である「ムービング・フットボール」、縦に速いサッカーが功を奏し前半戦をダントツで折り返した。

▽しかし、ロシア・ワールドカップ明けから少しずつ歯車が狂い始める。誰もが予想しなかった快進撃から、ほぼノーマークだった広島が研究されるようになり、頼みの綱だったパトリックの勢いにも徐々に陰りが見え始めた。終盤戦の広島はまるで勝ち方を忘れてしまったように大失速。第28節から魔の6連敗を喫するなど、第25節の鹿島戦を最後に勝利を手にすることが出来なかった。
▽結果として、広島は第28節に最大「13」あった勝ち点差を川崎フロンターレに引っくり返され首位を明け渡すと、前述のような自滅もありながらその差を広げられ、2試合を残した時点で優勝を決められてしまった。期待された若返りも出来ず、ジェットコースターのようなシーズンの功績はAFCチャンピオンズリーグのプレーオフ出場権だけだった。

MVP
FWパトリック(31)
明治安田生命J1リーグ33試合出場(先発31試合)/20得点
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▽今年の広島の躍進の秘訣はこの男の覚醒にほかならない。ヴァイオレットのユニフォームを纏って2年目を迎えたブラジル人ストライカーは昨季4ゴールのイメージを払拭。今季は得点ランク2位の20ゴールを挙げた。チームが調子の良かった前半戦は2度も3戦連続ゴールを決めるあたりは、その愛称どおり“重戦車”だった。

▽しかし、相手が警戒力を強めた後半戦は動きを封じられ試合から消える時間帯が長くなった。パトリックが苦しめばチーム全体が窮地に陥る。今年はそれだけパトリック依存は強かったのだ。

▽とはいえ、J1リーグ20ゴールは胸を張って誇れる数字だ。20ゴールという大台は広島では佐藤寿人以来2人目の快挙。外国人としてはクラブ史上最多だ。

補強成功度《D》※最低E~最高S
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▽MF川辺駿やFWティーラシン、FW渡大生など実力者を補強した今季だったが、どれも活躍したとは言い切れない。城福スタイルのキーマンになると期待され古巣に戻ってきた川辺は、リーグ戦出場は33試合であるもののそのほとんどが途中出場。完全にバックアッパーに甘んじた。また、“タイの英雄”ティーラシンや、昨季の徳島ヴォルティスで23得点を挙げた渡も、好調パトリックの前に鳴りを潜めた。

▽そんな中で結果を残したのは大宮アルディージャから完全移籍で加入したDF和田拓也だ。開幕から右サイドバックでレギュラーを掴むと、最終的にリーグ戦33試合に出場。そのうち32試合に先発出場し、2ゴール3アシストの記録を残した。

総合評価《B》※最低E~最高S
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▽今年の広島の評価は意見が分かれるところだが、優勝を目前にしてそれを掴み切れなかったことは見過ごせない。昨季薄氷の残留を掴んだことを考慮すると、2位という成績は間違いなく大成功のシーズンだったと言える。しかし、前半戦のような快進撃があったからこそ、それを継続できなかったどころか昨季のような不甲斐ない姿が余計に目立つ格好となった。

▽パトリック戦術から抜け出せなかったこと、その術を持っていなかったことは来季に向けて大きな課題となる。パトリックに次ぐゴールスコアラーのティーラシンがわずか6得点だったというのも好調さが続かなかった大きな要因の一つだった。守備が固く最少得点で勝てていた前半戦も、対策を練られた後半戦は複数失点が増え白星が極端に減った。城福監督の引き出しが少なすぎたのかもしれない。

▽城福監督は就任会見時、「目の前の結果に徹底的にこだわること、サッカーを楽しむこと」とあえて具体的な目標設定はしなかった。寡黙な男の真の目標はどこにあったのだろうか。2018年の成績を監督はどう捉えているのか。ひとつの試合に徹底的に精魂込めて戦えた前半戦と、楽しめなかった後半戦。全く異なる2つの表情を見せたチームをどう見たのか。すでに続投が決定している来季に向けて、「今季よりもいい成績を」というのは簡単ではないが、城福監督の手腕が本当の意味で発揮されるのは来季以降。より“ICHIGAN”となって戦えることを期待したい。

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