【東本貢司のFCUK!】赤と青の名門を襲う「魔の期間」

2016.01.07 13:22 Thu
▽リーグカップ準決勝ファーストレッグでともに先勝したマージーサイドの赤と青。ただしこれ、見方次第で「快勝」とも「辛勝」とも取れる結果で、あえて決勝進出をかけた第二戦の行方が予想し辛くなったと言っておきたい。最大の焦点は、やはりストークだ。近年「イングランドいち厄介な相手」とお墨付きをいただいているストークだが、ここ半年前後の戦績を振り返ると、実に顕著で奇妙な事実が浮かび上がる。ここまでのプレミア20戦、アウェイで敗れたのはわずか3戦のみ。一方、ホーム「ブリタニア・スタジアム」では苦戦続きで勝ち点が積み上がらない。それでも、チェルシー、マン・シティー、マン・ユナイテッドをねじ伏せて来た金星3つは地元ファンのプライドの拠り所・・・・大雑把に集約すると「アウェイで滅法強く、目上の大敵に強い」。やはり「奇特で厄介」なチームなのだ。

▽26日にアンフィールドで迎え撃つリヴァプールにとって、鳴り物入りで新監督クロップを迎えた決断の証しのためにも、このリーグカップのタイトルは何が何でも欲しい。その意味でも先勝は大きな収穫だが、代償も小さくなかった。エースのコウティーニョに、復活したロヴレン、さらにコロ・トゥーレも故障リタイア。すでにスクルテルとサコは治療ベッドにてリハビリ中、これでフルフィットネスが計算できるセンターバックは現時点で一人もいなくなってしまった。ロヴレン退場後のストーク戦では、急きょルーカスが代役に回らねばならなくなったほどだ。他でも、オリギに続いてスタリッジの鮮烈離脱が先ごろ発表され、今月の解禁期間「補強はしない」と断言していたクロップもさすがに「考えないと」。ただ気になるのは、以上7名のほぼ全員がハムストリングを傷めている事実。一部にはクロップのトレーニングメニューが厳しすぎるのではないか、という声もある。

▽さて、昨年12月以降のエヴァートンは、プレミア6戦でわずか1勝(対ニューカッスル)。決して内容に乏しいわけではないのだが、接戦に持ち込まれる率が異常に高く、特にレスターとストークにホームで痛い星を落としたのは悔やまれよう。ただし、赤いライバルと少し違うのは、いくつかの希望と伸びしろの幅。ベインズ、ジャギエルカが復帰した今、目立った故障者もなく、バークリー、ストーンズの次代のエース二人は充実一途、ルカクの得点力も戻った。何よりも、昨シーズン不振を囲って後退が示唆されていたベテラン、バリーが、全盛期並みの「若返った」溌剌さで中盤を仕切っているのが嬉しい。後継者と目されるベシッチもかなりプレミアの水に慣れてきたようで、チーム全体のまとまりとバランスは(贔屓目ながら?)どこよりも好もしく見える。このチームの“永遠の課題”は「層」だとはわかっていても、このまま乗り切って充実をというのは酷な期待だろうか。
▽今週末はFAカップ本戦3回戦。リヴァプールはエクセターに遠征、エヴァートンはグディソンにダゲナムを迎える。油断さえなければ「軽く突破」は間違いないだろう。が、問題はこのリーグカップ・セカンドレッグまでのプレミア3試合だ。レッズはともにホームながらアーセナルとマン・ユナイテッドの連戦、ブルーズに至ってはマン・シティー、チェルシーの地元を訪れねばならない。さらに言えば、リヴァプールにとって“直前”のアウェイ、ノリッチ戦こそ最も大事な試合になるかもしれない。リーグカップが大詰めを迎え、FAカップが始まる今が、シーズン中で最も「波乱」が勃発しやすい時期。というより、掛け替えのないプレーヤーの体調維持により気を使わねばならない、真の正念場なのだ。それを思うにつけ、改めて現行のスケジュールは過酷で遣る瀬無いほど恨めしい。あの、プレミア指揮期間ではアーセン・ヴェンゲルに匹敵する、いや“それ以上”の歴戦の将、サム・アラダイスでさえ「これはもう悪魔的な日程、何とかしてくれ」と嘆くほどに。


【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】
1953年大阪府生まれ
青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。

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