アジアカップの歴史/六川亨の日本サッカーの歩み

2024.01.16 16:30 Tue
Getty Images
アジアカップ2023の開幕戦で、一時は逆転を許すなどベトナムに苦戦を強いられた森保ジャパン。しかし結果は4-2と後半は危なげない試合運びで勝点3を手にして、アジアカップ最多となる5度目の優勝へ好スタートを切った。

森保一監督自身も「相手がワンチャンスを狙ってくるという戦い、カウンターであったりセットプレーであったり」とベトナムの狙いを想定しながら失点したことは「反省しないといけないところ」と認めつつ、「この痛い思いを修正して、勝つ確率を高めたい」とイラク戦への決意を話していた。
恐らくどのチームも日本に対してはカウンターやセットプレーからゴールを狙ってくるだろう。ただ、ベトナム戦ではリードを許しても慌てたり、焦ったりすることなく「自分たちの戦い」を貫いたことが前半での逆転劇につながった。ここらあたりが4年前の開幕戦でトルクメニスタンに3-2と苦戦した試合から比べ、4年間で大きく成長した証と言っていいだろう。

そのアジアカップだが、1956年に第1回大会がスタートと、1916年に始まったコパ・アメリカに次いで国際的にも歴史のある大会である。

しかしながら日本は、90年代に入るまでアジアカップに本腰を入れることはなかった。その主な理由は3つある。1つは予選を突破しなければならなかったこと。もう1つは本大会が年末に開催されるなど、JSLや天皇杯と日程が重なっていたこと。そして最大の理由が、60~80年代の日本にとってアジアカップは目標とすべき大会ではなかったことがあげられる。
言うまでもなく当時の日本は、まず五輪に出場することが最大の目標だった。サッカー単一競技の最高峰であるW杯の出場は「夢のまた夢」で、現実味は皆無だった。

同じようにアジアにおける最大の目標は、五輪と同様にさまざまな種目がそれぞれアジアの覇を競うアジア大会だった。

日本が出場していないアジアカップは、当然のことながら試合結果すら報道されない。一方のアジア大会は、柔道や水泳、体操などは日本のお家芸としてメダル獲得がテレビや新聞で大々的に報道された。サッカーも、活躍すれば結果くらいは報道されたのである。

「オリンピック至上主義」が、そのまま「アジア大会」重視につながった。

一方、過去18大会で10大会を開催と大会招致に積極的だった中東勢は、ことサッカーにおいては五輪よりもW杯、アジア大会よりもアジアカップを重視してきたと言える。78年アルゼンチンW杯はイランが、82年スペインW杯はクウェートが、86年メキシコW杯はイラクが、そして90年イタリアW杯はUAEが出場権を獲得したように、極東勢よりもW杯が身近だったせいかもしれない。

日本が初めてA代表で臨んだ92年アジアカップ広島大会にしても、ビッグアーチの建設を含め、94年広島アジア大会のプレ大会という位置づけだった。Jリーグ開幕を翌年に控え、オフト・ジャパンはアジアカップで初優勝を遂げたものの、JFA(日本サッカー協会)やサッカーファンはともかくとして、一般的にアジアカップの知名度はかなり低く、アジア大会が「アジアの祭典」という時代だった。

そんな風潮に風穴を開けたのが、アジアカップ初優勝だった。大会を認知させただけでなく、Jリーグ開幕にも弾みをつけると同時に、アメリカW杯予選にも大いなる期待を抱かせた。

結果は、残念ながら「ドーハの悲劇」でW杯出場の夢は断たれた。しかしながら2011年にアジアカップの開催されたドーハでは、決勝でオーストラリアを破って4度目の優勝を達成した。88年にドーハで開催されたアジアカップでも、日本は学生主体のB代表が予選を突破して本大会に出場した(本大会はグループリーグで敗退)。

3度目となるドーハでのアジアカップ、果たして森保ジャパンはどのような結果を残すのか楽しみでもある。


【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた

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