日本対ウルグアイ戦戦評/六川亨の日本サッカー見聞録
2023.03.25 20:30 Sat
ウルグアイ代表を招いてのキリンチャレンジカップ2023が3月24日に開催され、日本はMFフェデリコ・バルベルデに先制点を奪われたものの、交代出場のMF西村拓真の同点弾で1-1のドローに持ち込んだ。
カタールW杯から約3ヶ月、森保ジャパン第2クールの初戦だったが、試合そのものは「こんなものだろう」という想定内の内容だった。日本代表の海外組は20日と21日に分かれて集合。このため実質的な戦術練習は22日と23日の2日間だけ(冒頭15分を除き非公開)。長距離移動と時差ボケを考えればコンディションは万全なはずはない。それは欧州や南米から選手が集結したウルグアイも同様だ。それでもウルグアイは前線からの忠実なプレスで日本を苦しめた。
日本のスタメンはほぼ想定通り――というのが正直なところ残念だった。カタールW杯では格上のドイツとスペイン相手にカウンターから2ゴールを奪って世界を驚かせた。しかし、W杯で“ベスト8や優勝"を狙うためにはカウンターだけでなく、「ボールを握って攻める」時間も増やすことが森保ジャパンの課題だったはず。
そのため、前線で精力的にプレスを掛けつつ、ポストプレーもできてゴールも決められる1トップの理想として前田遼一をコーチに招聘したのではなかったのか。
ただ、森保一監督は優しい。ドイツ戦で決勝点を決めた浅野拓磨をリスペクトしてスタメン起用するのは十分に予想できた。顔ぶれが一新されたDF陣に比べ、攻撃陣には“序列"があるのだろう。しかしである。
ボールを握って攻めたいが、浅野は1トップのポストプレーヤーとしてボールが収まらないし、サイドに流れても簡単にボールをロストしていた。カタールW杯では劣勢の試合が予想されたため、前線からの守備を期待されての起用だった。しかし日本は、森保ジャパンは新たな攻撃パターンを構築していくのではないのか。
そう思うと、浅野の起用は想定内でありつつ、森保監督の采配は期待外れでもあった。そして上田綺世である。後半20分にはリターンパスで、伊東純也が倒されPK獲得かと思われたが、オンフィールドレビューで取り消された。法政大学時代から将来を嘱望され、今シーズンはセルクル・ブルージュでゴールを量産して“覚醒"を期待したが、決定機に絡むことはなく、いまだ日本代表ではノーゴールが続いている。この日の大仕事と言えば、西村の同点ゴールの際にニアに走り込んでダミーとなって、マークを引きつけたことだろう。
その他にも、左MF三笘薫と左SB伊藤洋輝の連係や、トップ下の鎌田大地の存在感のなさなど気になる点は多々あった。それでもドローで終われたのは、CB板倉滉を中心としたDF陣の奮闘があったからだ。個人的には右SB菅原由勢のパフォーマンスがこの試合の最大の発見だった。
【文・六川亨】
カタールW杯から約3ヶ月、森保ジャパン第2クールの初戦だったが、試合そのものは「こんなものだろう」という想定内の内容だった。日本代表の海外組は20日と21日に分かれて集合。このため実質的な戦術練習は22日と23日の2日間だけ(冒頭15分を除き非公開)。長距離移動と時差ボケを考えればコンディションは万全なはずはない。それは欧州や南米から選手が集結したウルグアイも同様だ。それでもウルグアイは前線からの忠実なプレスで日本を苦しめた。
日本のスタメンはほぼ想定通り――というのが正直なところ残念だった。カタールW杯では格上のドイツとスペイン相手にカウンターから2ゴールを奪って世界を驚かせた。しかし、W杯で“ベスト8や優勝"を狙うためにはカウンターだけでなく、「ボールを握って攻める」時間も増やすことが森保ジャパンの課題だったはず。
ただ、森保一監督は優しい。ドイツ戦で決勝点を決めた浅野拓磨をリスペクトしてスタメン起用するのは十分に予想できた。顔ぶれが一新されたDF陣に比べ、攻撃陣には“序列"があるのだろう。しかしである。
ボールを握って攻めたいが、浅野は1トップのポストプレーヤーとしてボールが収まらないし、サイドに流れても簡単にボールをロストしていた。カタールW杯では劣勢の試合が予想されたため、前線からの守備を期待されての起用だった。しかし日本は、森保ジャパンは新たな攻撃パターンを構築していくのではないのか。
そう思うと、浅野の起用は想定内でありつつ、森保監督の采配は期待外れでもあった。そして上田綺世である。後半20分にはリターンパスで、伊東純也が倒されPK獲得かと思われたが、オンフィールドレビューで取り消された。法政大学時代から将来を嘱望され、今シーズンはセルクル・ブルージュでゴールを量産して“覚醒"を期待したが、決定機に絡むことはなく、いまだ日本代表ではノーゴールが続いている。この日の大仕事と言えば、西村の同点ゴールの際にニアに走り込んでダミーとなって、マークを引きつけたことだろう。
その他にも、左MF三笘薫と左SB伊藤洋輝の連係や、トップ下の鎌田大地の存在感のなさなど気になる点は多々あった。それでもドローで終われたのは、CB板倉滉を中心としたDF陣の奮闘があったからだ。個人的には右SB菅原由勢のパフォーマンスがこの試合の最大の発見だった。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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