キリン杯にW杯メンバー招集の是非/六川亨の日本サッカー見聞録
2023.02.10 17:30 Fri
JFA(日本サッカー協会)は、3月28日にヨドコウ桜スタジアムで開催するキリンチャレンジカップ2023の対戦相手がコロンビアに決まったと発表した。24日に国立競技場で開催される試合に関しては、ウルグアイやアルゼンチンの名前が取り沙汰されているものの正式なアナウンスはまだない。
とはいえ3月のヨーロッパ勢はEUROの予選があり、アフリカも北中米・カリブ海も公式大会を控えているだけに来日は不可能だ。消去法から招待チームはアジアか南米に限られるのはここ数年と同じ傾向でもある。
強化はもちろんのこと、興行的にもヨーロッパ勢を呼べないのは“痛手"となっているが、こればかりは手の打ちようがない。
そんな状況で2月8日、ドイツ滞在の森保一監督がズームでの記者会見に応じた。
まず28日のコロンビア戦については「過去の成績も我々にとって分が悪い(1勝1分け2敗)。26年に向けて強化できるように、招集した選手の個の力を上げられるようにしたい。ホームなので、勝利でサポーターとともに喜びたいと思う」と抱負を語った。
「まずはワールドカップを経験した選手たちを中心に、新戦力もたくさんピックアップできると思う。ワールドカップのメンバーに選ぶことのできなかった選手もたくさんいたので、そこに入ってくるかもしれない。ベースはワールドカップのメンバーです」と断言した。
その理由としてロシア大会後との違いを指摘した。
「ロシアのメンバーはワールドカップを何度も経験している選手が多い中での(森保ジャパンの)スタートだった。今回は(W杯が)初出場が20人でのスタートになる。次のワールドカップを見据えて、目の前の活動にベストの人選をしながらの活動と、(来年1月の)アジアカップに向けての活動になるが、まずは目の前の活動にベストを尽くしたい」
指揮官としては当然の発想だろう。代表チームの活動期間は限られているだけに、チーム戦術の確認とアップデートは集合するたびに欠かせない。
その一方で、3月の状況がどうなっているかわからないものの、久保はすっかりチームの中心選手として活躍しているが、オーバーワーク気味だと伝えられている。三笘はここ数週間、ファンタスティックなプレーとゴールで注目の的だ。しかしプレミアリーグは年末年始も試合があり、リーグ戦に加えリーグカップとFAカップで超過密日程だった。
3月の2試合はあくまで親善試合である。その試合に、CLの出場権争いをしている久保や、チーム初のEL出場権を目指している三笘を、長旅や時差のハンデを負わせてまで招集する必要があるのかどうか。
普通の感覚なら、声を大にして「招集反対」と言いたいところである。
国内組であるJリーガーをメインにした日本代表でもいいのではないか。そこにパリ五輪世代の選手を招集してもいい。国内組と海外組の2つの日本代表である。
とはいえ今回は声を大にできない理由もある。選手にとってはW杯後の凱旋(?)帰国であり、報告会とお披露目を兼ねるからだ。
2万人収容のヨドコウ桜スタジアムでのコロンビア戦はともかくとして、国立競技場での試合には多くの観客を動員して入場料収入を獲得したいところ。そのためにはW杯で活躍した選手の帰国はマストとなることは想像に難くない。
森保監督からすれば、いつでもベストメンバーを招集したいと思うのは当然だ。それに対して意見できるのは反町技術委員長だろう。しかし、監督の意向を汲んで仕事をしやすくするのが反町技術委員長の役割であり、サッカーの普及と発展という立場からすれば、多くのファン・サポーターに興味を持ってもらうためにもW杯戦士の参戦は必要だ。
こうしたジレンマをどう解消していくのか。技術委員会に課せられた難しいテーマと言える。
3月の2試合に誰を招集するのかは先の話だが、会見で唯一明らかになったことがある。GK権田は清水がJ2のため、今回の招集は見送るということだ。大会中もJ2リーグは開催されていることに加え、「優先順位としてJ1が国内最高峰のリーグ。選手はそこを目ざしている。よりレベルの高いところから選手を招集するべきだと思う」(森保監督)という考えからだ。
もう権田も33歳。GKとしてはまだまだ現役世代だが、4年後を考えると世代交代もやむを得ないだろう。そして3月の2試合を含めて、キャプテン吉田の処遇も今年の森保ジャパンの大きなテーマと言っていいだろう。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
とはいえ3月のヨーロッパ勢はEUROの予選があり、アフリカも北中米・カリブ海も公式大会を控えているだけに来日は不可能だ。消去法から招待チームはアジアか南米に限られるのはここ数年と同じ傾向でもある。
そんな状況で2月8日、ドイツ滞在の森保一監督がズームでの記者会見に応じた。
まず28日のコロンビア戦については「過去の成績も我々にとって分が悪い(1勝1分け2敗)。26年に向けて強化できるように、招集した選手の個の力を上げられるようにしたい。ホームなので、勝利でサポーターとともに喜びたいと思う」と抱負を語った。
そして気になる招集メンバーである。
「まずはワールドカップを経験した選手たちを中心に、新戦力もたくさんピックアップできると思う。ワールドカップのメンバーに選ぶことのできなかった選手もたくさんいたので、そこに入ってくるかもしれない。ベースはワールドカップのメンバーです」と断言した。
その理由としてロシア大会後との違いを指摘した。
「ロシアのメンバーはワールドカップを何度も経験している選手が多い中での(森保ジャパンの)スタートだった。今回は(W杯が)初出場が20人でのスタートになる。次のワールドカップを見据えて、目の前の活動にベストの人選をしながらの活動と、(来年1月の)アジアカップに向けての活動になるが、まずは目の前の活動にベストを尽くしたい」
指揮官としては当然の発想だろう。代表チームの活動期間は限られているだけに、チーム戦術の確認とアップデートは集合するたびに欠かせない。
その一方で、3月の状況がどうなっているかわからないものの、久保はすっかりチームの中心選手として活躍しているが、オーバーワーク気味だと伝えられている。三笘はここ数週間、ファンタスティックなプレーとゴールで注目の的だ。しかしプレミアリーグは年末年始も試合があり、リーグ戦に加えリーグカップとFAカップで超過密日程だった。
3月の2試合はあくまで親善試合である。その試合に、CLの出場権争いをしている久保や、チーム初のEL出場権を目指している三笘を、長旅や時差のハンデを負わせてまで招集する必要があるのかどうか。
普通の感覚なら、声を大にして「招集反対」と言いたいところである。
国内組であるJリーガーをメインにした日本代表でもいいのではないか。そこにパリ五輪世代の選手を招集してもいい。国内組と海外組の2つの日本代表である。
とはいえ今回は声を大にできない理由もある。選手にとってはW杯後の凱旋(?)帰国であり、報告会とお披露目を兼ねるからだ。
2万人収容のヨドコウ桜スタジアムでのコロンビア戦はともかくとして、国立競技場での試合には多くの観客を動員して入場料収入を獲得したいところ。そのためにはW杯で活躍した選手の帰国はマストとなることは想像に難くない。
森保監督からすれば、いつでもベストメンバーを招集したいと思うのは当然だ。それに対して意見できるのは反町技術委員長だろう。しかし、監督の意向を汲んで仕事をしやすくするのが反町技術委員長の役割であり、サッカーの普及と発展という立場からすれば、多くのファン・サポーターに興味を持ってもらうためにもW杯戦士の参戦は必要だ。
こうしたジレンマをどう解消していくのか。技術委員会に課せられた難しいテーマと言える。
3月の2試合に誰を招集するのかは先の話だが、会見で唯一明らかになったことがある。GK権田は清水がJ2のため、今回の招集は見送るということだ。大会中もJ2リーグは開催されていることに加え、「優先順位としてJ1が国内最高峰のリーグ。選手はそこを目ざしている。よりレベルの高いところから選手を招集するべきだと思う」(森保監督)という考えからだ。
もう権田も33歳。GKとしてはまだまだ現役世代だが、4年後を考えると世代交代もやむを得ないだろう。そして3月の2試合を含めて、キャプテン吉田の処遇も今年の森保ジャパンの大きなテーマと言っていいだろう。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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