FC東京の暫定監督が決定。ベトナム戦のスタメンは?/六川亨の日本サッカー見聞録
2021.11.11 18:25 Thu
11月6日のJ1リーグ第35節で横浜FMに0-8の大敗を喫したFC東京。翌7日には長谷川健太監督が辞意を表明し、チームも受理した。それから3日後の10日、FC東京はGKコーチの森下申一氏(60歳)が今シーズンの残り3試合の指揮を執ることになった。
残りは3試合なのだから、長谷川監督は辞める必要があったのかという声があるかもしれない。しかし8日のコラムでも書いたように、自信を失って崩壊の危機があるチームを立て直すには“指揮官の辞任”という「ショック療法」が必要だった。
問題は誰がその後のチームを率いるのかということになる。長谷川監督は今シーズンでの退任が濃厚だっただけに、すでに次期監督候補とは交渉を進めているかもしれない。しかし残り3試合での新監督招聘は現実的ではない。
となると現有戦力での代役ということになり、S級ライセンスを保持しているのは古矢武士トップチームマネジメント(強化部長)と森下GKコーチしかいなかった。となれば、長谷川前監督(56歳)、古矢強化部長(51歳)より年長で、元日本代表でもある森下GKコーチに落ち着いたのは当然の流れと言える。
森下監督は就任会見で「突然の監督要請、ショッキングな結果の後なので、すぐには返事ができなかった」と戸惑いつつ、「コーチングスタッフが残っているので私がやるのが当然かなと思った」と監督受諾の経緯を語った。
GKコーチとしては2016年から17年にかけてG大阪のコーチを務め、長谷川監督をサポートしたものの、残念ながらタイトルとは無縁だった。
現役時代にGKで、引退後に監督に転身した例はあまりない。海外で有名な選手としてはイタリアのディノ・ゾフ、ブラジルのエメルソン・レオン(清水の監督も歴任)くらいだろうか。日本に目を移しても、前述した横山監督と、JSL(日本サッカーリーグ)黎明期の東洋工業(現・広島)や、その後は藤和不動産(現・湘南)の黄金時代を作った下村幸男氏くらいしか思い浮かばない。
その点について森下監督は「日本では(監督に)移行するタイミングがなかなかない。こういう機会を頂いて、後ろから見ているイメージがあるので、それをどう選手に伝えるか。勝たせるサッカーを伝えたい」と言ったように、GKはまずGKコーチからスタートするので、なかなか監督に転身するのは難しいかもしれない。
森下新監督の初陣は20日の第36節、ホームでの徳島戦だ。チームを立て直す時間は10日ほどあるので、どんな仕事をするのか楽しみにしたい。すでに新シーズンに向けてのチーム編成(契約更改)は佳境を迎えているだろうから、こちらも注目したいところだ。
話は変わり11日はカタールW杯アジア最終予選グループBの第5節が行われ、日本はアウェーでベトナムと対戦する。オランダに集合した吉田麻也ら海外組11人はチャーター機でハノイ入りする予定だったが、給油先のロシアで足止めをくらい、入国できたのは9日の深夜だった。このため全体練習は10日の1回だけ。
それでも森保監督は「明日のメンバー選考ではプレーできると考えている。最終的に今日の練習を見て決める」と絶大な信頼を寄せていた。果たしてどのようなスタメンになるのか、こればかりはキックオフを待つしかない。そこで、いまだからできる仮想スタメンを考えてみた。
現在の日本代表は吉田や長友佑都を始め、ちょっと前までは本田圭祐、香川真司ら08年北京五輪の選手が長く主力を務めてきた。一時期は山口蛍や永井謙佑らロンドン五輪のメンバーが代表入りしたが、定着したのは酒井宏樹くらいで、北京五輪に比べると圧倒的に少なかった。
16年リオ五輪からは南野拓実、遠藤航、室屋成、浅野拓磨の4人が今回もメンバー入りを果たした。彼らに加えてコンディションが上向けば中島翔哉も有力な代表候補になるだろう。そこで、それを一歩進めて東京五輪のメンバーで代表チームを編成してみた。
GKは谷晃生、DFは右から冨安健洋(山根視来)、谷口彰俉(冨安)、板倉滉、中山雄太。中盤はボランチに守田英正、右に田中碧、左に旗手怜央。そして3トップは右から前田大然、上田綺世、三笘薫という11人である。東京五輪世代からは9人、川崎Fからは現役とOBも含めて6(7)人というチーム編成だ(もちろん久保建英と堂安律も有力な候補)。チームの世代交代を図りつつ、バイエルン・ミュンヘンやバルセロナのように単独チームの選手をベースにするチーム作りだ。
まあ、あり得ないイレブンとは思うが、万が一の時はこれくらい思い切った若返りも必要ではないだろうか。
【文・六川亨】
残りは3試合なのだから、長谷川監督は辞める必要があったのかという声があるかもしれない。しかし8日のコラムでも書いたように、自信を失って崩壊の危機があるチームを立て直すには“指揮官の辞任”という「ショック療法」が必要だった。
となると現有戦力での代役ということになり、S級ライセンスを保持しているのは古矢武士トップチームマネジメント(強化部長)と森下GKコーチしかいなかった。となれば、長谷川前監督(56歳)、古矢強化部長(51歳)より年長で、元日本代表でもある森下GKコーチに落ち着いたのは当然の流れと言える。
森下監督は就任会見で「突然の監督要請、ショッキングな結果の後なので、すぐには返事ができなかった」と戸惑いつつ、「コーチングスタッフが残っているので私がやるのが当然かなと思った」と監督受諾の経緯を語った。
森下監督は、現役時代は1980年代半ばから末にかけて日本代表として活躍し、森孝慈監督、石井義信監督、横山謙三監督と3人の監督の下でプレーした。身長180センチは、当時のGKとしては長身の部類に入り、しなやかなセービングが持ち味だった。
GKコーチとしては2016年から17年にかけてG大阪のコーチを務め、長谷川監督をサポートしたものの、残念ながらタイトルとは無縁だった。
現役時代にGKで、引退後に監督に転身した例はあまりない。海外で有名な選手としてはイタリアのディノ・ゾフ、ブラジルのエメルソン・レオン(清水の監督も歴任)くらいだろうか。日本に目を移しても、前述した横山監督と、JSL(日本サッカーリーグ)黎明期の東洋工業(現・広島)や、その後は藤和不動産(現・湘南)の黄金時代を作った下村幸男氏くらいしか思い浮かばない。
その点について森下監督は「日本では(監督に)移行するタイミングがなかなかない。こういう機会を頂いて、後ろから見ているイメージがあるので、それをどう選手に伝えるか。勝たせるサッカーを伝えたい」と言ったように、GKはまずGKコーチからスタートするので、なかなか監督に転身するのは難しいかもしれない。
森下新監督の初陣は20日の第36節、ホームでの徳島戦だ。チームを立て直す時間は10日ほどあるので、どんな仕事をするのか楽しみにしたい。すでに新シーズンに向けてのチーム編成(契約更改)は佳境を迎えているだろうから、こちらも注目したいところだ。
話は変わり11日はカタールW杯アジア最終予選グループBの第5節が行われ、日本はアウェーでベトナムと対戦する。オランダに集合した吉田麻也ら海外組11人はチャーター機でハノイ入りする予定だったが、給油先のロシアで足止めをくらい、入国できたのは9日の深夜だった。このため全体練習は10日の1回だけ。
それでも森保監督は「明日のメンバー選考ではプレーできると考えている。最終的に今日の練習を見て決める」と絶大な信頼を寄せていた。果たしてどのようなスタメンになるのか、こればかりはキックオフを待つしかない。そこで、いまだからできる仮想スタメンを考えてみた。
現在の日本代表は吉田や長友佑都を始め、ちょっと前までは本田圭祐、香川真司ら08年北京五輪の選手が長く主力を務めてきた。一時期は山口蛍や永井謙佑らロンドン五輪のメンバーが代表入りしたが、定着したのは酒井宏樹くらいで、北京五輪に比べると圧倒的に少なかった。
16年リオ五輪からは南野拓実、遠藤航、室屋成、浅野拓磨の4人が今回もメンバー入りを果たした。彼らに加えてコンディションが上向けば中島翔哉も有力な代表候補になるだろう。そこで、それを一歩進めて東京五輪のメンバーで代表チームを編成してみた。
GKは谷晃生、DFは右から冨安健洋(山根視来)、谷口彰俉(冨安)、板倉滉、中山雄太。中盤はボランチに守田英正、右に田中碧、左に旗手怜央。そして3トップは右から前田大然、上田綺世、三笘薫という11人である。東京五輪世代からは9人、川崎Fからは現役とOBも含めて6(7)人というチーム編成だ(もちろん久保建英と堂安律も有力な候補)。チームの世代交代を図りつつ、バイエルン・ミュンヘンやバルセロナのように単独チームの選手をベースにするチーム作りだ。
まあ、あり得ないイレブンとは思うが、万が一の時はこれくらい思い切った若返りも必要ではないだろうか。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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