【マラドーナの思い出③】神になった瞬間、愛される理由

2020.12.06 14:30 Sun
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サッカー選手としての才能は認めるが、薬物使用などスキャンダラスな面からディエゴ・マラドーナに眉をひそめるファンもいるようだ。しかし、そうしたファンはごく少数ではないだろうか。ましてアルゼンチンでは“神"として崇められている。母国でマラドーナが嫌いだという国民を見つけるのは至難の業に違いない。



では、なぜマラドーナはこれほどまでアルゼンチン国民に(と同時に世界中のファンから)愛されるのか?

W杯なら自国開催となった78年に初優勝している。FWマリオ・ケンペスはオランダとの決勝戦で延長に入り決勝ゴールを決めたし、大会の得点王とMVPにもなった。キャプテンのDFダニエル・パサレラは強いリーダーシップでチームを牽引した。

おそらく78年の優勝は、彼ら以外にも名選手が揃い、「チームとしての優勝」というイメージが強かったのではないだろうか。

ところが86年メキシコW杯は、カルロス・ビラルド監督が「マラドーナのチーム」を作り上げて優勝した。そうしたチーム作りにはアルゼンチン国内でも批判も多かったそうで、結果を出したことで試合後のスタジアムにはサポーターが「PERDON(ごめんね)BILARDO」の横断幕を掲げていた。

そしてマラドーナに関して言えば、たった1人で、と言ったら語弊があるあるかもしれないが、1人の選手がチーム全体を掌握して世界の頂点に立ったことが、78年との決定的な違いだ。

準々決勝のイングランド戦では「神の手」や「5人抜き」という後世に語り継がれるゴールも決めた。このため「マラドーナの、マラドーナによる、マラドーナのための大会」として長く記憶されることになった。

そしてこのイングランド戦は、マラドーナが“神"になった試合でもある。それには次のような伏線があった。

両国がW杯で初めて対戦したのは62年のチリ大会で、このときはイングランドが3-1で勝利した。続く66年イングランド大会の準々決勝でも対戦したが(1-0)、アルゼンチンのたび重なるラフプレーに対し西ドイツの主審は、執拗に抗議するキャプテンのラティンに退場を命じた(当時はまだ退場という処分がルール化されていなかったために時間がかかった。これを機にFIFAは70年メキシコ大会からイエローカードとレッドカードを採用することになる)。

そしてイングランドのアルフ・ラムゼー監督はアルゼンチンのラフプレーを「アニマル」と非難した。日本語に訳すなら「動物」ではなく「獣(けだもの)」に近いニュアンスだろう。

時は流れアルゼンチンが前回優勝国としてW杯を迎えた82年の3月、アルゼンチンの沖合にあるイギリス領フォークランド諸島(アルゼンチン名でマルビーナス諸島)の領有を巡り、両国は3ヶ月にわたって軍事衝突を繰り返した。

紛争は両国にとどまらず、EC(欧州共同体)やNATO(北大西洋条約機構)も巻き込んだ結果、西ドイツ、フランス、スペインなどはアルゼンチンに経済制裁を科した。そして3ヶ月に及ぶ紛争はイギリスの勝利に終わった。

この紛争でアルゼンチン側の死者は645人、負傷者1048人、そして捕虜は11313人にのぼった。アルゼンチン代表MFのオズワルド・アルディレス(後に清水の監督などを歴任)の義兄は戦死し、スパーズのFAカップ獲得に貢献したアルディレス自身もイングランドではプレーできなくなり、パリSGへのレンタル移籍を余儀なくされた。

幸か不幸か82年スペインW杯で両国は2次リーグで敗退したため対戦することはなかった。

そして86年メキシコW杯準々決勝である。アルゼンチンにとってW杯で3度目の対戦にして初めての勝利。それもマラドーナの「歴史に残る」2ゴールでのベスト4進出だったが、この勝利にはそれ以上の重みがあった。

愛する領土を、肉親を奪ったイングランドを、1人の若者が叩きのめしたのだ。

マラドーナが“神"になった瞬間でもあった。

アルゼンチンには「マラドーナ教」があり、ブエノスアイレスには2000年に設立された「マラドニアン教会」があって、誕生日の10月30日は「クリスマス」、神の手ゴールを決めた6月22日は「イースター」としてお祝いをするという。

こうしたエピソードは09年に公開されたフランスとスペインの合作で、カンヌなど世界3大映画祭すべてを受賞しているエミール・クストリッツア監督のドキュメンタリー映画「マラドーナ」で紹介されていた。

クストリッツア監督は旧ユーゴスラビアのサラエヴォ出身で、98年にはコソボ紛争が勃発してアメリカ主導により国連の決議なしにNATO軍の空爆で祖国の市民が犠牲になった。そんな2人が撮影を通じてシンパシーを抱くのも自然の成り行きだろう。

狂信的なファンから“神"と崇められながらも、カモッラ(ナポリを拠点とするマフィア)との交際による薬物中毒や愛人とのスキャンダルなどで、幼なじみの妻クラウディア、最愛の娘ダルマとジャンニーナとも別れなければならなかったマラドーナ。

その苦悩を映画「マラドーナ」と、来年6月に公開予定の映画「ディエゴ・マラドーナ 二つの顔」ではマラドーナ自身が赤裸々に告白している。

自業自得とはいえ、絶えず等身大の自分自身をさらけ出してきたディエゴ。だからこそマラドーナはファンにとって「身近な存在」として、“永遠のアイドル"になったのではないだろうか。

死後のいま現在も彼の周辺は喧しいが、安らかな永遠の眠りにつくことを願いたい。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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東京V永井監督のコメント力。FC東京はミスから自滅/六川亨の日本サッカーの歩み

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Jリーグは抗原検査の実施を承認/六川亨の日本サッカーの歩み

先週末の4月3日と4日、J1リーグは久しぶりに9試合を実施した。新型コロナの影響でクラスターの発生したG大阪は6試合が中止となっていたが、3日の第7節は開幕戦以来となるアウェーの広島戦に臨み結果は0-0のドローに終わったものの35日ぶりに試合ができた。待ち望んだ試合ができたことで、選手はもちろんチーム関係者も胸をなで下ろしたことだろう。 しかしながら最近も浦和やC大阪、福岡、岐阜に感染者が出るなど新型コロナの脅威は変わらない。そうした状況で4月5日に第29回となるJリーグとNPB(日本野球機構)と専門家による対策連絡会議が開催された。 会見の冒頭で挨拶に立った村井チェアマンがG大阪の感染者のゲノム解析を行った結果、感染源はバスの車中ではなく、ロッカーの可能性が高いことを報告した。 賀来満夫ドクター(東北医科薬科大学)によると、バスの車中での会話や狭いトイレは感染の危険が高いものの、G大阪の陽性の選手5名のゲノムを解析したところ、感染経路の調査によりウイルスの種類が違うことが判明。試合後のロッカーでの会話が感染経路となった可能性が高いと報告した。 試合後、勝ったチームの選手はつい大声を出してしまうかもしれないし、距離も近くなってしまう可能性がある。このため愛知医科大学の三鴨廣繁ドクターも「ロッカー内での会話でもマスクが必要ということ」と警鐘を鳴らした。 G大阪に関しては、6日に開催されたJリーグの実行委員会後、中止となった6試合の新たな開催日程が発表された。第11節のアウェー名古屋戦(3月3日開催予定)は4月22日で、その後の第2節から6節の5試合は7月24日、27日、30日と8月3日、6日の東京五輪期間中に開催される(J1リーグは7月11日の第22節終了後、8月9日まで試合はない)。 いくらナイトゲームとはいえ、夏場の暑い時期に中2日(1試合だけ中3日)の連戦が5試合も続くかなりハードな日程となっている。しかし試合を開催できなければ0-3の負けという『みなし開催』のルールがあるだけに、チーム一丸となって乗り切るしかないだろう。 5日の対策連絡会議では、プロ野球のヤクルトが出入り業者から選手が感染した事例も報告され、今後は出入り業者に加えてマッサーなどもPCR検査の実施や体温表の提出などを義務づけた方がいいというアドバイスもあった。 そしてJリーグは独自に『オンサイト検査(抗原検査)』を実施することを発表。ただし詳細は6日の実行委員会で説明してからということで、5日の対策連絡会議では具体的な話はなかった。なお、オンサイト検査はJリーグだけが実施予定で、NPBは従来通り月1回のPCR検査で対応する体制に変わりはない。 そのオンサイト検査である。村井チェアマンは「変異株が増えて感染力が増している。従前以上に厳しくする環境にある。機動的な対応が望まれている。専門家の意見を踏まえて今回の判断に踏み切った」と危機感を強めていた。 具体的には、『3名以上の陽性反応者か判定保留者』、あるいは『5名以上の濃厚接触と濃厚接触疑い者』が出たら実施する。検査は試合のキックオフ3時間30分前に、鼻咽頭と鼻腔から献体を採取し、15分ほどの判定時間の結果、陰性になったら試合出場が可能になるというシステムだ。 この抗原検査は『疑陽性』の可能性があるものの、PCR検査での陽性と陰性の全体の一致率は97・8%とかなり高い精度を誇っている。現在は自主隔離中の新規外国人選手も毎日の抗原検査と3日に1回のPCR検査を受けているが、肉体的にも精神的にも負担にはなっていないそうだ。ネックは1回2万円ほどかかる費用負担だが、安心・安全なリーグ戦を実施するためには仕方のないところ。 実施は「詳細な規約を作ってから」ということだが、それほど規約作りに時間はかからないだろう。 6日の実行委員会では、宮城県、大阪府、兵庫県に出された『まん延防止等重点措置区域』によりガイドラインを改定したことも報告された。すでに観客数について発表しているクラブもあるが、5000人か50%の少ない方で、ビジター席の設置は当該チームと対戦相手の自治体の見解を確認するか協議して有無を決める。キックオフ時間とアルコール販売は自治体の要請に準拠することとなっている。 緊急事態宣言が解除されたものの、第4波の到来も予想されるだけに、賀来氏と三鴨氏の両ドクターは、体調不良だったらスタジアム行きを諦めることと、試合後はどこにも寄らずに自宅へ帰ることを推奨していた。 余談ではあるが、実行委員会では現在15チームが参加しているJ3リーグが、将来20チームになったらJリーグ全体で60チームになる。その後はJFL(日本フットボールリーグ)との入替え戦の実施を、検討するかどうかの検討を始めた。そして木村専務は新聞等に出ていた「スパーリーグの構想は一切ない!」と断言した。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2021.04.06 22:15 Tue
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アルゼンチンとモンゴル戦でのゴールラッシュの要因/六川亨の日本サッカーの歩み

3月29日、U-24日本は親善試合でU-24アルゼンチンを3-0と撃破。翌30日は日本が22年カタールW杯アジア2次予選で、モンゴルを14-0の記録的大差で圧勝した。 新型コロナの影響で、海外から呼べない選手もいた。それでも日本代表では山根、守田、稲垣、古橋が代表初ゴールを決めるなど収穫があった。 そしてU-24日本である。3月26日のアルゼンチンとの第1戦は0-1で敗れたが、しっかりと反省点を修正するリカバリー能力の高さを見せた。1対1の球際での競り合い、いわゆるフィジカルコンタクトで互角に渡りあったのだ。 ともすれば目前のボールに先にコンタクトしたくなるところ、相手が寄せて来ている(体をぶつけに来ている)ことを察知して、ボールにアプローチしつつ自分から体をぶつけに行くことで互角の勝負に持ち込んだ。ボールを失えば奪いに行くのは当然の責任だし、FWもプレスバックで味方をフォローした。 アルゼンチンがスピードのあるレフティーのフェルナンド・バレンスエラ(背番号7)と、ドリブラーのマティアス・バルガス(背番号10)をベンチスタートにしたのにも助けられたが、日本は町田と瀬古のCBコンビが第1戦で決勝点を決めた192センチの長身FWアドルフォ・ガイチを完封。相手にほとんど決定機を作らせず完勝した。 だからと言って、東京五輪で「金メダルが獲得できる」と断言はできない。しかし、「可能性がないわけではないよね」と言えるくらいまでにはなった。 これが1年前なら、まず間違いなく「絶対に無理!」と言っていただろう。なにしろ昨年1月にタイで開催されたAFC U-23選手権では、2連敗であっけなくグループステージでの敗退(1分2敗)を目の当たりにしていたからだ。 東京五輪のアジア予選を兼ねていたため、他チームは完成度が高い。それに比べて日本は、いま思い返すと代表メンバーすら固まっていなかった。いくら地元開催とはいえ、メダルなんて口にすること自体おこがましいと思っていた。ところが……。 新型コロナは忌むべき人類の敵だが、東京五輪の延期はU-24日本にとって「プラスに作用した」と小声で囁きたい。それほどアルゼンチン戦のパフォーマンスは素晴らしく、チームの完成度も高まっていた。OA枠も含めて、選手選考は熾烈を極めるに違いない。 そしてA代表である。モンゴル戦は5-0で終えた前半から、もしかしたら二桁得点の可能性があるかもしれないと思った。なぜなら前回対戦した19年10月10日の試合でも、前半を4-0とリードして終了し、後半も猛攻を仕掛けたからだ。 遠藤と鎌田が代表初ゴールを決めた試合でもあり、吉田が「決めきるところで決めていれば8-0にはできたんじゃないかと思います」と振り返ったものの、結果的に後半は7度の決定機のうち2回しか決められず試合は6-0で終了した。このためチャンスを確実に決められれば二桁得点は不可能ではないと思った。 そしてフクアリでの試合は後半の20分過ぎから日本のゴールラッシュが始まり、伊東のこの試合2ゴール目で日本は二桁得点を記録。しかし、日本の猛攻はここで終わらなかった。 もしも森保監督がメンバー交代をせずにレギュラー組で戦っていたら、選手は負傷を避けるため無理はしなかったかもしれない。ワンタッチ、ツータッチでパスをつないで時間を稼ぐなど、負傷の可能性がある相手ゴール前でのプレーは避けただろう。 しかし指揮官は積極的に交代カードを使った。そして起用された国内組の選手は、年齢的に代表入りをアピールする数少ない機会のため貪欲にゴールを狙った。その結果、残り5分からアディショナルタイムでの6分間で4ゴールを奪い、W杯予選における最多ゴールを記録した。 モンゴルとは明らかに実力差がある。それを差し引いても後半に起用された選手は、肩の力を抜けたプレーをしつつ結果でアピールしたのはさすがだった。国内組が意地を見せたモンゴル戦の完勝劇。これも3月にインターナショナルマッチを開催した収穫と言える。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2021.03.31 21:15 Wed
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U-24日本代表は覚醒した田川に期待したい/六川亨の日本サッカーの歩み

いよいよ今日からサムライブルーとU-24日本代表のキャンプがスタートした。 といったところで、堂安律は脳しんとうで代表を辞退し、週末のJリーグでも日本代表初選出の原川力(鳥栖)と坂元達裕(C大阪)が負傷のため辞退を余儀なくされたのは残念だった。 そして、さらに残念だったのが、今シーズンは第2節の広島戦で2ゴールを決めると、その後は4試合連続得点で得点ランクのトップに立つ前田大然(横浜FM)が、17日の徳島戦で負傷し65分に交代したことだ。 19日のU-24日本代表のメンバー発表の際に横内昭展監督は、前田を招集しない理由について「今朝の段階でいろいろな情報を集めて判断している。それ以上は個人のことになるのでケガかどうかも含めノーコメント」と明言を避けたが、その後精密検査の結果、左外閉鎖筋肉離れおよび両側腸腰筋肉離れで全治 2~3週間と発表された。 昨シーズンの前田は23試合に出場したものの3得点にとどまっていた。それが今シーズンはすでに6ゴール。このままいけばJ2水戸時代の二桁得点(13ゴール)の更新は間違いない。 ストライカーとして覚醒している最中だけに、U-24アルゼンチン代表との試合も楽しみにしていただけに残念でならない。 というのも、今回招集された田川亨介(FC東京)も今シーズンはストライカーとして覚醒しつつあるからだ。昨シーズンはケガなどもあり21試合出場で2ゴールと不完全燃焼だった。 それが今シーズンはすでに3ゴール。しかも、その3得点とも0-1のビハインドから1-1のタイスコアに戻して逆転勝利につなげる貴重なゴールだ。 21日の仙台戦は森重真人とのパス交換からドリブルで突進し、強烈な左足ミドルを右ポストぎりぎりにたたき込んだ。 スピードがあり、フィジカルコンタクトに強く、さらに豊富な走力でプレスバックから守備でも貢献する。そんな田川と前田の2トップなら、いやが上にも期待は高まる。さらに右MFに久保建英(ヘタフェ)、左MFに三笘薫(川崎F)を配置する4-4-2ならどんなサッカーを演じるのか、ワクワク感が高まるのは間違いない。 そんな好調を維持している2人にはある共通項があった。 前田は自身の好調について「勝手に体が動くのは乗っているから。楽しくサッカーがやれている」と話していた。田川は仙台戦でのゴールについて「ドリブルで自分で運んでいって(左足を)振り切ろうと考えて、あとはフカさないようインパクトの瞬間に力を入れた。あまり足に当たった感覚がなくて、まれに見るいいシュートだった」と振り返った。 2人とも、いわゆる『ゾーンに入っている』状態だったのだろう。 田川が「足に当たった感覚がない」のは、スイートスポットでボールの芯をミートしたからで、そう何度も蹴れるシュートではない。 昨年末のU-24日本代表のキャンプには前田と上田綺世(鹿島)、浅野雄也(広島)が招集され、田川はメンバー外だった。 今回のアルゼンチン戦は、田川にとって東京五輪への試金石になる。ここで結果を残せば7月の試合に再度呼ばれるだろうし、メンバー入りにも大きく近づくはずだ。前田は負傷が癒えたらJリーグで結果を残すことが生き残りへの条件になる。そして負傷で出遅れていた上田も、21日の名古屋戦では途中出場からドリブル突破で「違い」を見せた。 この3人が高いレベルで競い合えば、東京五輪でFW陣にオーバーエイジを使う必要はなくなるかもしれない。それでも五輪は18名という人数制限から、FWの登録枠は2人になるケースが多い。誰か1人はバックアップに回るというシビアな戦いだ。 それでも田川と前田の覚醒は、U-24日本代表はもちろんサムライブルーにとっても好材料なのは間違いない。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2021.03.23 11:30 Tue
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川崎Fストップの一番手は?/六川亨の日本サッカーの歩み

J1リーグは第4節を終了し、戦前の予想通り昨季の王者・川崎Fが5連勝(ACLの関係で第11節を消化したため)で首位に立った。これを齋藤学や柿谷、長澤ら即戦力を補強した名古屋も4連勝で追走している。 果たして川崎Fを止めるチームは現れるのか。そのヒントになりそうな試合を13日の柏が演じた(結果は1-0で川崎Fの勝利)。 この日は東日本を中心に激しい雨と落雷があった。大宮対京都戦は試合途中で中止になり、14時キックオフの横浜FC対C大阪戦は16時キックオフに、そして川崎F対柏戦も30分遅れのキックオフとなった。 それでも開始直前まで係員がピッチに溜まった雨水を、タオルやちり取りですくってピッチの外へ捨てていた。 こうして迎えた試合は、見た目ピッチは普通のようでも水をたっぷりと含んでいるため球足が遅い。そこでネルシーニョ監督が、ロングパス主体のカウンターで川崎Fのポゼッションに対抗したのは当然の策でもあった。 ピッチコンディションは万全ではないため、不測の事態が起きてもおかしくない。鬼木監督は「前半は止めていいところで、1タッチでやってミスが出た」と振り返ったように、「いい守備からカウンターで出て行く形が前半から作れていた」(ネルシーニョ監督)45分間だった。 そこで鬼木監督はベンチスタートとなった三笘を後半から投入し、19分には同じく温存しておいたレアンドロ・ダミアンをピッチに送った。すると三笘は5分に左サイドをえぐり、旗手の決定機をお膳立てする。これはGKキム・スンギュの好プレーに阻まれたが、14分にも三笘、小林、旗手とつないで決定機を作った。 三笘の投入によって川崎Fの左サイドは明らかに活性化した。 昨シーズンは大ブレイクした三笘だが、いかにして彼を止めるかが川崎F対策に欠かせない。もちろんネルシーニョ監督も策は講じてきた。それは「スピードに特長があるので名古屋戦は休ませて準備してきた」という、右サイドを主戦場にする高橋峻希の右SB起用だった。 ところがマークすべき三笘はベンチにいる。ネルシーニョ監督の秘策は空振りに終わった。 高橋峻は前半を長谷川とマッチアップし、後半はフレッシュな状態で入ってきた三笘に加え、攻勢を強める旗手とも対峙することになった。しかし5分は三笘のショルダーチャージに弾き飛ばされ突破を許した。 決勝点は35分、高橋峻をスピードで振り切って左サイドをえぐった三笘のクロスを家長がフリーで押し込んだ。終わってみれば三笘は後半アディショナルタイムにもカウンターから田中の決定機につながるクロスを送るなど、1人で4度の決定機に絡んだことになる。 そんな三笘をストップするためにマッチアップする選手には、スピードがありフィジカルコンタクトの強さが求められる。その意味で水曜の17日に対戦する神戸には、筑波大の同級生である山川がいる。大学時代は三笘との1対1の勝負で守備力を高めただけに、2人の激突は見物である。 続く対戦相手はアウェーの浦和戦。もしも元日本代表SBの西がケガから復帰していれば、クレバーな守備をする西とのIQ対決になるだろう。そして西が間に合わなければ宇賀神と対峙することになるが、宇賀神はフィジカルコンタクトの強さが特徴だけに、ハードなバトルが繰り広げられるはずだ。 この三笘だけでなく、川崎Fの進撃をどのチームが止めるかも序盤戦の焦点の1つだ。個人的には同じスタイル、ボールポゼッションで川崎Fの完成度に勝てるチームはないため、カウンターを武器にするチームであり、個の力でゴールを奪える選手がいるチームと予想する。 そうなると、試合を重ねるごとに復調しているディエゴ・オリベイラと俊足の永井を擁するFC東京(4月11日の第9節で対戦)ということになる。ファストブレイクというショートカウンターを掲げ、昨シーズンのルヴァン杯準決勝では川崎Fから2-0の勝利を収めている。 そしてFC東京戦の前に川崎Fと対戦する鳥栖との戦いも面白い。昨シーズンのリーグ戦では唯一負けなかったチーム(2試合ともドロー)で、現在は川崎Fと名古屋同様に無敗で3位につけている。豊富な運動量と球際の強さでどこまで王者を苦しめることができるか。降格候補からジャイキリで、いきなり波乱の主役に躍り出ることができればリーグ戦も面白くなるに違いない。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2021.03.16 16:30 Tue
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