改めて唾吐きと飲水を考える/六川亨の日本サッカー見聞録

2020.06.11 22:00 Thu
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Jリーグは6月9日、webによる実行委員会を開催し、27日に無観客で再開・開幕するJ2リーグとJ3リーグは、7月10日から観客を入れることで合意した。J1リーグは7月4日から同じく無観客で再開し、各スタジアムはキャパシティが異なるため第4節から5000人、あるいは収容人員の50%の観客を入れることで合意した。正直、ようやくここまでこぎ着けられたという安堵感と、まだ開幕・再開までには2週間以上あるため油断はできないという警戒感の入り交じった心境だ。

気になる日程だが、今後のスケジュールとしては12日に「移動等のガイドライン」が発表され、来週15日17時予定でJ1は第2節から第13節まで、J2は第2節から第15節まで、そしてJ3は第1節から第12節までが発表される。そして翌16日はそれ以降のリーグ戦の開催候補日(週末の場合は土曜日か日曜日か)が発表される予定だ。

すでに試合前の両チームの選手による握手、ゴール後のハイタッチなどによるゴールパフォーマンスは禁じられている。プロ野球のオープン戦でもホームラン後の選手は、ベンチで祝福するチームメイトと距離をとって喜びを共有していた。しかし野球の場合は選手がダイヤモンドを1周している間に冷静になれるだろう。

しかしサッカーの場合は瞬間のスポーツだけに、選手はよほど意識しないと難しいかもしれない。実際、新型コロナウイルスで自粛中に行われたプレマッチで、ゴール後に思わずハイタッチをしていた選手がいた。こちらは、これから始まるプレマッチで慣れていくしかないかもしれない。

実際、「試合中は激しく競り合っている(密になっている)のに、ゴールセレブレーションは離れるのはどうなの」(藤村特命担当部長)という意見もあったという。こちらに関しては「適用を考えていきたい」と、Jリーグとしても検討中のようだ。

さらに、専門家からは「唾吐き、水の吐き出しは控えるように」と言われている。しかし唾吐きは自然現象だし、ウガイしたあとに水を吐き出したいのも生理現象だろう。さらに、日本選手には少ないものの片手で鼻をかむ(手鼻)選手もいるし、レフェリーも当てはまるかもしれない。

この件に関しては5月上旬にFIFA(国際サッカー連盟)が「唾吐き禁止」を検討していることで疑問を呈したことがある。その後FIFAからは何のリリースもないと記憶しているので、やはり規制は難しかったのか。

1970年代のサッカーパンツには、なぜかお尻にポケットがついていた(使ったことはなかったが)。新型コロナウイルスとして両サイドにポケット付きのサッカーパンツにして、ティッシュなどを入れてプレーすることになるのだろうか。水吐きに関しては、ピッチ外の決められた場所――選手が水分を補強する可能性が高いのはCK時のため両ゴール裏と、ベンチの指示を聞く際のセンターライン付近――にバケツなどを置くのだろうか。

Jリーグが再開・開幕する6月下旬は梅雨も明けている可能性が高い。当然、夏本番を迎えるだけに、前後半途中での給水タイムが必要になるかもしれない。その際にも密にならず飲水し、吐き出せる場所をどう確保するか。

再開・開幕に向けて、まだまだ課題は多いと言わざるをえないようだ。

【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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Jリーグ規制緩和のステップ/六川亨の日本サッカー見聞録

Jリーグは24日、臨時の実行委員会を開催して安全のためのガイドラインを変更し、入場者に関する規制をステップ1からステップ3まで段階的に緩和することを発表した。詳細はすでに当サイトで紹介済みだが、簡単におさらいしよう。 内閣官房は9月11日に入場者の段階的な規制緩和を発表し、19日よりクラッシックコンサートは100%、スポーツイベントは5000人以上か50%以内とした。しかしJリーグは『1席』ではなく密を避けるために1メートル以上開けることで、「(実際のスタジアムで)積算すると30%になる。これを基準にしている」ことを村井チェアマンは21日のNPB(日本野球機構)とJリーグの対策連絡会議後のブリーフィングで話していた。 これは実際に踏襲され、ステップ1として『収容数17000人以上のスタジアムは30%。17000人以下のスタジアムは50%』を9月30日まで継続する。 実際の具体例を見てみよう。9月16日のFC東京対大分戦(2-3)の試合後の公式記録の下段欄外には次のような但し書きがあった。 [備考]新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き(入場者数上限「5000人以下」または収容率「50%以下」)での試合開催 それが9月19日の柏対広島戦(1-1)では次のように変わっていた。 [備考]新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き(入場可能数の「50%以下」または入場可能数が「17,000人以上のスタジアムは30%以下」)での試合開催。※入場可能数や適用時期は主管クラブが決定 そして※の入場可能数の変更を裏付けるように、ステップ2では『入場者数の上限50%』への拡大が9月30日以降に可能になる。これは座席にすると1席空けての動員が可能になることを意味する。 そしてステップ3がステップ2に加えて『ビジター席の開放』だ。こちらの施行時期10月30日以降で、全クラブが実施できるよう目標日時に設定されている。 ところが会見で多くの記者が混乱した。というのもステップ2とステップ3が部分的に混同したからだ。 その理由として、スタジアムによって「50%にならないクラブもある」(藤村特命担当部長)こと。恐らく1席空けて座ったとしても1メートル以上の距離を取れないスタジアムがあるのだろう。他にも「『1メートル以上空けてもいいからビジター席にファンを入れたい』というクラブもあり、そういうクラブは30%でオーケー」(藤村特命担当部長)と、各クラブの事情により柔軟な対応を取ったからだ。 クラブによっては「雰囲気が壊れるからホームのサポーターしか入れたくない」というクラブもあったそうだ。雰囲気といっても、ほとんどは拍手なのだけれど……。そういえば、昨夜の味の素スタジアムでは、アウェーのサポーターの手拍子が禁止になっていた。 本来ならアウェーサポーターの入場そのものが禁止のはずだから、“優しい警告"といったところだろうか。 本題に戻ると、「ステップ2で、ビジターなしで上限50%か、1.5メートル(30%)でビジターを入れるか。50%とビジターは10月30日以降にできるようにしないといけない」というのが藤村特命担当部長の結論だった。 そして、こうした段階的な規制緩和を実現するためには、さらに多くのハードルが待ち構えている。これらについてはステップ2が施工される次週のコラムで紹介しよう。 <div id="cws_ad"><hr>【文・六川亨】</br>1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2020.09.26 10:00 Sat
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J1過密日程を改めて考える/六川亨の日本サッカー見聞録

J1リーグは16日に4試合を行い、2位のC大阪はFW都倉が神戸GK前川の顔面をヒットする“勇み足"で一発退場になったものの、柿谷のヘッドによる1点を守りきって首位・川崎Fとの勝点差5をキープした。 神戸GK前川の父親は元日本代表で、広島や大分で活躍した前川和也氏である(日本が初優勝した92年のアジア杯準決勝の中国戦で交代出場し、トンネルで失点したプレーはいまも忘れられない)。 前川だけでなく、9日の第15節、FC東京対横浜FC戦では、横浜FCのボランチ安永がJ1デビューを飾った。彼の父・聡太郞氏は95年に横浜Mのリーグ優勝や、99年の清水のセカンドステージ優勝に貢献したFWである。こうした二世選手の活躍は、今後も増えることだろう。 ところで、C大阪対神戸戦はJ1リーグ第25節、FC東京対大分戦(2-3)と横浜FM対清水戦(3-0)は第24節、そして鳥栖対札幌戦(0-2)は第12節だったことをご存じだろうか。 鳥栖対札幌戦が第12節だったのは、鳥栖に新型コロナのクラスターが発生したため4試合が延期されたからだった。残りの3試合は、いずれも横浜FM、FC東京、神戸の3チームがACLに出場しているからだ。 そのACLだが、いま現在も東地区のグループステージがどこの都市で開催されるのか詳細は決まっていない。9月11日にはFC東京の長谷川監督が、質疑応答で「正式にJリーグから(日程変更などの)通達は来ていない。JFA(日本サッカー協会)からもきちんと来たわけではないので、なんとも言えない。正式に決まったら話をしたい」と、現状では対処しようのないお手上げ状態であることを明かした。 ACLの日程変更に関してJリーグの担当者は、「新しい日程だとJリーグの最終節とACLの決勝がかぶる(12月19日)。出場3チームと折衝中だが、Jリーグの最終節を後ろ倒しするのは天皇杯があって難しい」と答えていた。 彼の言う通り、12月20日の日曜日は天皇杯5回戦の2試合が、23日の水曜日には準々決勝2試合が組まれている。今年の天皇杯は変則スタイルで行われ、Jリーグ勢は23日の準々決勝にJ2とJ3の1位が出場し、J1の2チームは27日(日曜日)の準決勝から登場する。 Jリーグ勢が19日のACL決勝に出場したら、20日に最終節を移すことはできない。そこで23日に移すことは物理的に可能だ。実際、9月16日はJ1の4試合とJ2の1試合に加え、天皇杯の1回戦16試合も開催された。しかし、いくら可能とはいえJ1リーグの最終節と天皇杯の準々決勝を同日開催することは、常識的に考えても回避すべきだろう。 となるとJ1リーグの日程を前倒しするしか方法はない。現状では毎週末にリーグ戦が組まれていて、空いているのは水曜しかない。それも限られていて、10月は21日と28日、11月は11日と18日、そして12月は2日と9日だ。 恐らくJリーグはコロナの影響や自然災害などを想定して予備日を取っていたのだろう。これらに加えて「金J」を復活させるのか。 一番簡単な解決方法は、AFC(アジアサッカー連盟)が、「今シーズンのACLは中止になりました」と一言アナウンスすることだ。そうすれば、ACLのスポンサーと放映権を持っているテレビ局、そして代理店以外は諸手を挙げて喜ぶに違いない。 最後に、連戦における選手起用で監督はどんな苦労をしているのか。FC東京の長谷川監督のコメントを紹介しよう。 「基本的に3試合、4試合連チャンで出るとパフォーマンスは顕著に落ちてくる。2試合で落ちる選手もいる。そこらへんをトラッキングシステムで把握し、顔色を見ながら、普段の仕事(サッカー)を見ながら判断したり、ドクターやスタッフと話したりしながら判断している。ちょっとしたシグナルをどうキャッチするかが大事になる。選手は、誰もが(試合に)出たがるので、聞けば誰もが『大丈夫です』と言う。19連戦の、次(第16節の神戸戦)は9連戦目(2-2)でやっと半分。さらにACLを入れれば連戦が増えてくる。全試合フル出場は不可能なこと。どこかで見切りながら使うしかない」 <div id="cws_ad"><hr>【文・六川亨】</br>1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2020.09.18 10:30 Fri
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代表もACLも渡航には2週間の隔離措置?/六川亨の日本サッカー見聞録

「あらゆる可能性を探っています。10月、11月と活動したい!」 そう力説したのはJFA(日本サッカー協会)の須原専務理事だった。9月10日、JFAの定例理事会後の記者会見で、日本代表の活動について「まだ正式発表はできませんが、最終調整中で、近々に発表できる」とも話していた。 気になるのはその活動場所だ。 別の記者からは、ACLの残り試合が海外で開催される場合や、日本代表の活動が海外になった際の渡航について質問が出た。 須原専務理事の答は「現状は世の中の方々と同じです。国よって渡航できるかどうか。渡航してから2週間の隔離があるかどうか。スポーツ選手も例外は許されていません。ACLも代表も、制約を前提に考えています」とのことだった。 国内組の日本代表候補はGK大迫(広島)と中村(柏)に、有力なのは川崎Fの田中、旗手、三笘、FC東京のDF渡辺、浦和DF橋岡あたりだろう。しかし2週間も隔離されるなら、クラブが招集を認めるとは思えない。 となると以前も報道にあったように、海外組だけで、ヨーロッパでキャンプをする可能性の方が高いだろう。すでにヨーロッパ各国ではネーションズリーグも始まっていて、ポルトガル、フランス、ベルギーが2連勝と好スタートを切った。日程さえうまく合えば試合も可能かもしれないし、そうなったら是非ともテレビで中継して欲しいところ。久保や南野のプレーは誰もが見たがっているはずだ。 一方、いまだハッキリしないのがACLの開催場所だ。東地区の日程を変更し、グループステージの残り試合から決勝までを11月15日から12月13日に開催すると10日に発表された。しかし東地区の詳細な開催場所・スタジアムはいまだアナウンスがない。 そしてこの日程では、当然のことながらJリーグも佳境を迎えているわけで、これに2週間の隔離が伴うようであれば参加を辞退するのは当然だろう。なぜJFAを始め韓国や中国、オーストラリアが大会の中止を働きかけないのか不思議でならない。それとも棄権したらペナルティーなどが生じるから、AFCが自ら断念するのを待っているのだろうか。 いずれにしても、こちらは今後の状況を静観するしかなさそうだ。 さて話は変わり、今年の殿堂掲額者が決まった。例年ならもっと早くに掲額者が決まり、9月10日に掲額式が開催されるのだが、今年は新型コロナの影響で式次第そのものが中止になった影響もあったのだろう。 すでに報道されているように、投票選考で木村和司氏、特別選考で元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏が選出された。 木村氏は1985年10月26日のメキシコW杯アジア最終予選、国立競技場で開催された韓国戦の直接FKが伝説となっている。しかしそのシュートも35年も前の出来事になった。彼を始め、日本サッカー界のレジェンドを紹介する際は、そのプレーも映像で流してほしいものだ(権利関係など細かいことは抜きにして)。 ちなみにこの殿堂入り、投票選考は75パーセント以上を獲得しなければならない。今年は碓井博行氏(藤枝東高、早大、日立でプレーした大型FW)、金田喜稔(天才的ドリブラー)、原博実氏(アジアの核弾頭と言われたFWで現Jリーグ副チェアマン)、木村氏に加え、水沼貴史氏(浦和南高、法大、日産、横浜Mで活躍したFW)が新たに加わった。 碓井氏、金田氏、原氏、木村氏の4氏は昨年も投票の対象だったものの、75パーセントの得票に届かなかったため、今年に持ち越しとなった。代わりに昨年は特別選考として西野朗氏、岡田武史氏、佐々木則夫氏の3氏が選出されたが、これはこれで誰も文句は言えない選考結果だろう。 この殿堂掲額、今年で17回目を迎え、2018年の加藤久氏、ラモス瑠偉氏からJリーガーが対象になった。今後は黎明期を支えたJリーガーが候補になるのだろう。どんな名前があがるのか、それはそれで楽しみである。 <hr>【文・六川亨】 1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた 2020.09.11 10:30 Fri
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コロナ禍におけるレフェリーの憂鬱/六川亨の日本サッカー見聞録

JFA(日本サッカー協会)は昨シーズンまで、約3ヶ月に1回の割合でレフェリーブリーフィングを開催していた。J1とJ2のプレーを中心に、「オフサイド」や「ハンド」など項目を立てて、実際のプレーからジャッジが妥当だったかどうか。ミスジャッジだったら、その原因はどこにあるのか検証する、メディアにとってはとても有益なブリーフィングだった。 しかし今シーズンは新型コロナの影響でJリーグはかつてない中断を余儀なくされた。このため2月に新シーズンのルール解説を行って以来、3回目となるレフェリーブリーフィングが9月3日に開催されたのだった。 例年のブリーフィングでは、J1からJ3まで数多くの試合が行われ、主審や副審の判断に至ってはそれこそ膨大な数になる。それらのジャッジのうち、20パーセントほどが「ミスジャッジだった」と審判委員会は認めてきた。 このこと自体、とても画期的な出来事である。JSL(日本サッカーリーグ)時代はもちろんのこと、Jリーグが開幕してからも試合後の主審に取材は許されないなど、JFAの審判委員会と医事委員会は「象牙の塔(外部からの干渉を拒絶する閉鎖的な社会のこと)」と揶揄されてきた。 ミスジャッジを認め、不運にも誤ったジャッジを下した主審に対しては、科したペナルティーの内容まで公表する「開かれた審判委員会」を実現した小川前審判委員長の功績は、改めて大きいことをここに紹介しておく。 さて今シーズンである。本来ならVARがJ1リーグに導入されるはずだった。そこでVARによりどれだけミスジャッジが減るのか秘かに注目していたが、残念ながら新型コロナの影響で導入は見送られた。こちらは来シーズンの楽しみに取っておくことにしよう。 このミスジャッジに関しては、今シーズンは審判団もリモート会議が多いため、何パーセントだったかという統計は取っていないと扇谷グループマネジャー(2020年VAR専任審判)は説明していた。 それでも、たぶん読者も記憶にあると思われるプレーがあるので一例を紹介しておこう。 8月19日の第11節、横浜FC対鹿島戦でのこと。前半25分、左サイドから攻め込んだ横浜FCは、クロスがニアサイドで混戦となり、バウンドボールが横浜FCのFW一美の左手に当たった。鹿島の選手はハンドをアピールしたものの、プレーは続行され、こぼれ球を皆川が押し込んで決勝点とした。 このプレーについて扇谷グループマネジャーは、「意図的ではなく偶発的なハンドだが、直後にゴール(もしくはチャンス)が産まれているためハンドの判定が妥当」とミスジャッジであることを認めた。 そしてその一因として、「レフェリーは、ペナルティーエリアではPKのジャッジなどDFのプレーに目が行きがちな習性がある」ことを指摘した。DFがハンドしたかどうかはPKにつながるだけに、そちらに神経を集中させるのは当然と言える。 そんなレフェリーにとっても、新型コロナの影響は少なからずあるようだ。今シーズンのJリーグの審判団は総勢154人だが、例年より少ないという。プロフェッショナルレフェリーを除けば、教員など仕事をしているレフェリーも多い。職種は違うものの、いずれも会社員であり、家庭を持っている人も少なくない。 このため、会社や家族から今シーズンはレフェリーを辞退してほしいと要請された人もいるという。地方で勤務されているレフェリーは、会社から感染の拡大している「東京、大阪、福岡の出張は認められない」と言われたり、「自家用車など、公共交通機関でなければ出張を認める」と言われたりしたそうだ。 あるいは、観客が5000人以下か50パーセント未満で、声を出しての応援が禁止されているため、「選手の声が聞こえるのが辛い」という意見や、自宅でジャッジした試合のVTRを見ていて、試合中は聞こえなかったベンチの声を聞いてストレスを感じているレフェリーが多いこともわかった。 選手や監督、コーチにしてみれば、納得のいかないジャッジに関し、レフェリーやアシスタントレフェリー、そして第4の審判員に対しても、つい声を荒げてしまうのはサッカーではよくあることだ。これまでは大観衆の声援で聞こえなかった両チームからの様々なクレームを、一身に引き受けなければならない。 こうしたレフェリーのメンタルケアをどうするかを、審判委員会でも検討する方向だと扇谷グループマネジャーは話していた。 新型コロナで長期に渡り節制を強いられているのは、監督・選手だけではないことを痛感した今シーズン3回目のレフェリーブリーフィングだった。 <div id="cws_ad"><hr>【文・六川亨】</br>1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2020.09.05 22:15 Sat
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Jの過密日程で思い出したクラブW杯/六川亨の日本サッカー見聞録

Jリーグは8月26日(水)に、神戸vs川崎F(2-2)、FC東京vs鹿島(1-2)、横浜FMvs札幌(4-1)の3試合を消化した。この3試合は、本来なら10月下旬以降に開催される第24〜29節だったが、神戸、FC東京、横浜FMの3チームは10月下旬にACLのグループステージの残り4試合があるため、前倒しで26日に試合を開催したのだった。 このため当該3チームは23日から29日までの1週間で、3試合を中2日で消化する超過密日程になっている。さらに9月は16日と30日の水曜日に試合(第24〜25節と第25〜29節)があり、10月は22〜23日からACLのグループステージ残り4試合が控えている。 そのACLだが、セントラル方式に変更され、神戸と横浜FMの所属するグループGとグループHはマレーシアでの開催が決定した(FC東京の入ったグープFの開催地は未定)。ただ、条件は他チームと同じとはいえ、4試合を中2日で消化するのはかなりハードな日程だ。それが1年を通して熱帯気候のマレーシアでの開催となると、「地獄の4連戦」と言っても過言ではないだろう。 と言ったところで、突然ACLの話題に驚いている読者もいるかもしれない。なぜACLを取り上げたかというと、今週初め、AFC(アジアサッカー連盟)から「クラブW杯の出場チームにヨーロッパからはバイエルン・ミュンヘンが決まりました」というメールが来たからだ。 ご存じのように、CLは初優勝を狙ったパリSGを1-0で下したバイエルンが6度目の欧州王者に就任した。リーグではダントツの強さで8連覇を達成したし、今シーズンのレバンドフスキのゴールラッシュは尋常ではなかった。 例年だと、CL決勝が終わればヨーロッパのシーズンも終了で、一息つくのが恒例だった。 しかし今シーズンは新型コロナの影響で、日本はもちろん世界中のサッカーカレンダーが狂っている。欧州各国リーグを特集した総集編がすでに本屋に並んでいるし、すでに開幕したロシア・リーグでは移籍したばかりの橋本拳人(FCロストフ)が早くも2ゴール目を決めた。 スペインからは、ビジャレアルに移籍した久保建英が新チームで地元ファンの注目を集めているというニュースも届いている。こちらも新シーズンの開幕が楽しみだーーといった具合に、興味の的は久保であり、移籍話が急浮上しているメッシの去就で、申し訳ないがクラブW杯に関してはAFCからメールが来るまでその存在を忘れていた。 「今年もやるの?」というのが正直な感想と言っていい。UEFA(欧州サッカー連盟)は日程を大幅に変更してCLを消化した。しかし身近なACLでさえ、日程こそ決まったものの10月下旬にグループステージの4試合、さらにはその後の決勝トーナメントを開催できるのかどうか半信半疑である。 10月は8日と13日にW杯アジア2次予選のミャンマー戦とモンゴル戦が予定されていたが、FIFA(国際サッカー連盟)とAFCが協議した結果、来年に延期された。それは11月12日と17日のタジキスタン戦、キルギス戦も同様だ。 そういう社会情勢で、マレーシアにグループGとHの4カ国8チームが入国することが果たして可能なのだろうか。開催地が未定のグループF(FC東京、上海申花、パース・グローリー、蔚山現代)も日本、中国、オーストラリア、韓国が開催地として立候補することはないだろう。 試合開催まで、まだ2ヶ月近くあるとはいえ開催地が決まっていないのは、それだけ手を上げる国がいないと推測される。AFCの本部があるマレーシアにしても、新型コロナの感染状況次第でいつ開催を返上するかわからない。 そうした状況下で、CONMBOL(コンメボル=南米サッカー協会)は9月15日よりリベルタドーレス杯のグループリーグを再開する予定でいるが、ブラジルなど南米各国は新型コロナが猛威をふるっている感染拡大地域だ。アジア以上に開催条件は厳しいかもしれない。 こうして、すでに終わったヨーロッパ以外の各大陸で試合開催が不安視されているだけに、今年のクラブW杯(12月9日〜19日・カタールで開催)は、最後の大会(今後は参加数を増やして4年に1回の開催へ変更)とはいえ、そろそろ中止を検討すべきではないだろうか。 テレビの放映権料に加えスポンサーとの契約などでも問題が生じるだろうが、これはFIFAと各大陸連盟が協力して代替案を出すしかないだろう。そう簡単に解決できる問題ではないだけに、早め早めの決断が必要になる。 たぶん多くのファン・サポーターは、今年は大会があることを忘れていると思うのだが……。 <div id="cws_ad"><hr>【文・六川亨】</br>1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2020.08.27 22:00 Thu
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