Jリーグ再開に改めてチェアマン評価/六川亨の日本サッカー見聞録

2020.05.30 20:00 Sat
©超ワールドサッカー
ようやくJリーグの再開・開幕の日程が決まった! Jリーグは5月29日に第8回の臨時実行委員会を開き、J2リーグとJ3リーグは6月27日(土曜)に再開・開幕し、J1リーグは7月4日(土曜)にいずれも無観客で再開することを村井満チェアマンが発表した。
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対戦カードは移動による新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、「長距離移動を伴わないマッチメイク」(村井チェアマン)をこれからシミュレーションするという。J1リーグとJ2リーグ、J3リーグの再開・開幕を同時にしないのは、政府の緊急事態宣言の解除が遅れた1都3府県と北海道のチームには再開のためのインターバルが必要だとチェアマンは説明。と同時に、再開の際に関係者などのサーモメーターによるチェックなど、検査態勢をまずはJ2 リーグとJ3リーグでシュミレーションすることも兼ねていると思われる。今回のJリーグ再開・開幕に当たっては、冒頭に挨拶した村井チェアマンの言葉が全てを語っている。「国民に迷惑をかけない範囲でPCR検査をできる状況が整ったので報告します」と控えめながら目に力を込めて語った。
これまでも村井チェアマンは、サッカー選手が優先してPCR検査を受けることには抵抗感を表してきた。それも当然だろう。「国民の健康が第一」というのがポリシーだし、サッカー選手が優先してPCR検査を受けることで国民の反感を買うことは避けねばならないと思うのは自然な流れだ。

そこで村井チェアマンはどうしたか。政府や自治体の規制緩和を待つだけでなく、自ら動いた。PCR検査のセンターをJリーグ内に新部門として立ち上げ、難しい鼻腔からの検体採取ではなく唾液から1時間に100の検体をできる検査キットを、56クラブ×40名+レフェリー100名の計2340名を1回でできる体制を築いたのだ。
ここで村井チェアマンらしいのは、地元医療機関からPCR検査ができると言われたクラブに対してもJリーグがPCR検査を主導したことだ。その理由を、Jリーグだけでなくヨーロッパのリーグ戦も中断により中止となっているスポーツ振興くじ(toto)にも触れ、「試合出場の判断基準になる検査は中立であるJリーグが行うべきだと考え、コントロール機能をJリーグに置きました。検査の標準化、採取、収集、分析、管理は極めて重要な守秘義務ですし、プライバシーにも関わるので中立の立場であるJリーグがすべきだと思います」と述べた。至極当然である。

実際の検査は費用の全額をJリーグが負担しつつ、全国各地で委託する業者とはこれから交渉する。そしてPCR検査は潜伏期間から逆算して2週間に1回のペースのため、必要があれば地域住民にも開放する方針でいる。

さらに投資はこれだけではない。すでにサーモメーターは450台を確保した。消毒液12トンとマスク7万枚は各クラブがすでに充足しているという。JクラブとJリーグは新型コロナウイルスの発症以来、何度も会議を重ねて情報を共有してきた。その成果が、今回の「万全を期した」Jリーグの再開・開幕でもあるだろう。

最後に村井チェアマンは、いち早くリーグ戦の延期を決断したことについて聞かれると、自身のことよりも「データを蓄積していくことはオリンピックやパラリンピックに向けた強化データの一助となるのではないでしょうか。また医学界の方とも話しましたが、科学的にも重要なデータだと捉えていますので、活動を通じて恩返しをできていけばいいですね」と来年の五輪とパラリンピックについてのコメントを残した。

常に先を見すえている村井さんらしいコメントでもある。新型コロナウイルスという難局に彼がJリーグの旗頭に立ったことのメリットを改めて感じざるを得ない。


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