【J1クラブ通信簿】終盤失速で3年連続のリーグV逸…故障者続出と主力流失のエクスキューズ《鹿島アントラーズ》
2019.12.21 20:00 Sat
優勝争いから残留争いまで手に汗を握る接戦、熱戦が続いた2019シーズンの明治安田生命J1リーグ。超ワールドサッカー編集部は、J1全18クラブの通信簿(チームMVP、補強成功度、総合評価)をお届けする。第16弾は3位の鹿島アントラーズを総括!
土居聖真(27)
明治安田生命J1リーグ32試合出場(先発31試合)/5得点
今シーズンのMVPは土居聖真に送りたい。複数の攻撃的ポジションをこなし、あらゆるプレーが高水準の土居は、クレバーかつ臨機応変な立ち回りでチームの潤滑油に。ケガ人や夏の主軸流出でなかなか戦力が整わないチームを大いに助けた。得点数こそ5ゴールにとどまったが、アシスト数は8つ。ユーティリティ性を生かしてケガ人続出の苦しい台所事情を支えた永木亮太も評価に値するが、育成年代から鹿島で育った背番号「8」は大きな輝きを放った。
◆補強成功度【C】
開幕前にレンタルバック組を含めて9選手を獲得。さらに、夏の移籍期間に前倒し加入の上田綺世を含む3選手を補強した。そのなかで、伊藤翔、白崎凌兵がシーズン頭から主力として稼働し、ブエノもセンターバック陣に故障者が続出した時期に補って余りある活躍を披露。途中加入組の上田も途中出場が主だったが、4ゴールという結果を残した。
ただ、今シーズン、新たな得点源として期待された伊藤においては、もっとゴールゲッターとしての役割を遂行してほしかったのが正直なところだ。シーズン序盤こそ上々の滑り出しをみせたが、調子の波が激しく、最終的に7ゴール。タイトルを狙うチームの点取り屋としては、物足りなさを残した感が大いにある。
そのほか、シーズン半ばに名古屋からレンタル加入した相馬勇紀は、同じ時期に海外挑戦を果たした安部裕葵、鈴木優磨に代わる新たなアタッカーとしての加入だったが、出場した5試合全てが途中出場。第23節の大分戦でこそ決勝ゴールを決めたが、柏から加入した小泉慶と共にほぼ試合に絡めなかった面を考えると、大幅な後押しとはならなかった。
◆総合評価【C】
優勝に迫っただけでは許されないのがJ最多タイトルホルダーの鹿島だ。「4冠」を目指した大岩体制3年目の今シーズンは、前年と同じ3位でフィニッシュ。第30節終了時点で横浜F・マリノスとFC東京を抑えて首位に立ち、リーグ優勝を予期させたが、ラスト4試合を1勝1分け2敗と大失速。これが大きく響いて前年と同じ3位に終わり、リーグタイトルを逃した。これにより、大岩体制は3年連続のリーグタイトル逸となった。
その要因の1つは明らかで、負傷者の多さだ。毎節のように複数主力をケガで欠いた今シーズン、1年間を通して30試合以上スタメンを張り続けたフィールドプレーヤーは31試合の土居聖真のみ。安西、安部、鈴木ら主力のシーズン途中移籍もかなり痛かったが、シーズンを通じて軸としての働きが期待された主力の大半が試合に出られ続けなかったのがチームとして誤算だった。
とはいえ、今シーズンは全体4位タイの総得点「54」に対して、総失点数は4位の「30」。いずれも前年を上回る数字(50得点、39失点)であり、悪くないではなく、むしろ向上した。ただ、12得点のセルジーニョしか二桁得点者がいなかった部分は全体トップの総得点数を武器に1リーグ制覇を成し遂げた横浜FMとの差に。勝ち切れない試合も多かった今年、伝統的な鹿島の勝負強さにも影を落とした感は多いにある。
過密日程に身を置くなかで、そうした課題も見受けられた1年だったが、全体的にみると、今シーズンは4つのコンペティション全てでタイトルに迫る成績(J1リーグ3位、ACLベスト8、YBCルヴァンカップベスト4、天皇杯決勝進出)を収めた。また、ACL出場権も手中に収めており、天皇杯に関してはタイトル獲得の可能性もある。今シーズンの苦しい台所事情を鑑みると、評価できる結果という見方もできる。
ただ、J屈指の常勝軍団と呼ばれる鹿島というクラブの性質上、優勝以外は意味を成さず、それを示すかのように、1人2役的な選手起用でやり繰りの上手さをみせ、あらゆるコンペティションで上位に導いた大岩監督の今シーズン限りでの退任が決定。他クラブであれば、合格点を与えてもおかしくない成績だが、この決断は勝利への徹底的なこだわりを持つ鹿島らしいものと言えるだろう。
とにかく、来シーズンも「4冠」を目指す戦いになり、すでにいくつかの補強に関する噂も飛び交っているが、まずはまだ今シーズンのタイトル獲得の可能性が残っている天皇杯を制することが大事になる。名門の意地を見せるのか、それともこのまま無冠に終わるのか。クラブ21個目のタイトルを手にして、来シーズンを迎えることができれば、新体制への弾みになるはずだ。
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◆MVP土居聖真(27)
明治安田生命J1リーグ32試合出場(先発31試合)/5得点
©︎J.LEAGUE
今シーズンのMVPは土居聖真に送りたい。複数の攻撃的ポジションをこなし、あらゆるプレーが高水準の土居は、クレバーかつ臨機応変な立ち回りでチームの潤滑油に。ケガ人や夏の主軸流出でなかなか戦力が整わないチームを大いに助けた。得点数こそ5ゴールにとどまったが、アシスト数は8つ。ユーティリティ性を生かしてケガ人続出の苦しい台所事情を支えた永木亮太も評価に値するが、育成年代から鹿島で育った背番号「8」は大きな輝きを放った。
©︎J.LEAGUE
開幕前にレンタルバック組を含めて9選手を獲得。さらに、夏の移籍期間に前倒し加入の上田綺世を含む3選手を補強した。そのなかで、伊藤翔、白崎凌兵がシーズン頭から主力として稼働し、ブエノもセンターバック陣に故障者が続出した時期に補って余りある活躍を披露。途中加入組の上田も途中出場が主だったが、4ゴールという結果を残した。
ただ、今シーズン、新たな得点源として期待された伊藤においては、もっとゴールゲッターとしての役割を遂行してほしかったのが正直なところだ。シーズン序盤こそ上々の滑り出しをみせたが、調子の波が激しく、最終的に7ゴール。タイトルを狙うチームの点取り屋としては、物足りなさを残した感が大いにある。
また、シーズンを通じて故障者に泣いたサイドバックにおいて、小池裕太がその穴埋めたが定位置奪取に至らなかった。2年間の武者修行から満を持して鹿島復帰を果たした平戸太貴もサイドバックで試されたが、リーグ前半戦は1試合に出場したのみで、夏に古巣の町田へ。これが1年間を通じてサイドバックのやりくりに苦労した1つの背景となった。
そのほか、シーズン半ばに名古屋からレンタル加入した相馬勇紀は、同じ時期に海外挑戦を果たした安部裕葵、鈴木優磨に代わる新たなアタッカーとしての加入だったが、出場した5試合全てが途中出場。第23節の大分戦でこそ決勝ゴールを決めたが、柏から加入した小泉慶と共にほぼ試合に絡めなかった面を考えると、大幅な後押しとはならなかった。
◆総合評価【C】
©︎CWS Brains,LTD.
優勝に迫っただけでは許されないのがJ最多タイトルホルダーの鹿島だ。「4冠」を目指した大岩体制3年目の今シーズンは、前年と同じ3位でフィニッシュ。第30節終了時点で横浜F・マリノスとFC東京を抑えて首位に立ち、リーグ優勝を予期させたが、ラスト4試合を1勝1分け2敗と大失速。これが大きく響いて前年と同じ3位に終わり、リーグタイトルを逃した。これにより、大岩体制は3年連続のリーグタイトル逸となった。
その要因の1つは明らかで、負傷者の多さだ。毎節のように複数主力をケガで欠いた今シーズン、1年間を通して30試合以上スタメンを張り続けたフィールドプレーヤーは31試合の土居聖真のみ。安西、安部、鈴木ら主力のシーズン途中移籍もかなり痛かったが、シーズンを通じて軸としての働きが期待された主力の大半が試合に出られ続けなかったのがチームとして誤算だった。
とはいえ、今シーズンは全体4位タイの総得点「54」に対して、総失点数は4位の「30」。いずれも前年を上回る数字(50得点、39失点)であり、悪くないではなく、むしろ向上した。ただ、12得点のセルジーニョしか二桁得点者がいなかった部分は全体トップの総得点数を武器に1リーグ制覇を成し遂げた横浜FMとの差に。勝ち切れない試合も多かった今年、伝統的な鹿島の勝負強さにも影を落とした感は多いにある。
過密日程に身を置くなかで、そうした課題も見受けられた1年だったが、全体的にみると、今シーズンは4つのコンペティション全てでタイトルに迫る成績(J1リーグ3位、ACLベスト8、YBCルヴァンカップベスト4、天皇杯決勝進出)を収めた。また、ACL出場権も手中に収めており、天皇杯に関してはタイトル獲得の可能性もある。今シーズンの苦しい台所事情を鑑みると、評価できる結果という見方もできる。
ただ、J屈指の常勝軍団と呼ばれる鹿島というクラブの性質上、優勝以外は意味を成さず、それを示すかのように、1人2役的な選手起用でやり繰りの上手さをみせ、あらゆるコンペティションで上位に導いた大岩監督の今シーズン限りでの退任が決定。他クラブであれば、合格点を与えてもおかしくない成績だが、この決断は勝利への徹底的なこだわりを持つ鹿島らしいものと言えるだろう。
とにかく、来シーズンも「4冠」を目指す戦いになり、すでにいくつかの補強に関する噂も飛び交っているが、まずはまだ今シーズンのタイトル獲得の可能性が残っている天皇杯を制することが大事になる。名門の意地を見せるのか、それともこのまま無冠に終わるのか。クラブ21個目のタイトルを手にして、来シーズンを迎えることができれば、新体制への弾みになるはずだ。
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