課題見えるも及第点の3バック、気になった基礎スキルの問題/日本代表コラム

2019.12.11 22:15 Wed
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J1リーグ最終節から移動日を含めて中2日。スケジュールとしては過酷なものとなったEAFF E-1サッカー選手権の初戦は、中国代表相手に1-2で勝利を収めた。
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Jリーグ勢が招集された今回の日本代表には、2020年の東京オリンピック世代の選手も多く含まれ、初招集の選手が多く経験が少ない状態での大会参加となった。いくらJリーグでプレーしているとはいえ、国際舞台、特に国の威信を懸けた代表戦となれば、多くのものが変わってくる。

森保一監督は「結果」にこだわることを招集メンバー発表の際に口にしていたが、それに加えてチームを強化、底上げすることが今の日本代表に必要なことも事実。11月に大阪でベネズエラ代表に完敗を喫したことからも言えるように、ベストメンバーが揃わなければ、まだまだ力不足は否めない状況だ。◆半年ぶりの3バックは及第点
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強化、成長の一環としては、まず3バックのシステムを採用したところに触れたい。東京オリンピック世代で採用されている[3-4-2-1]のシステムと、A代表で採用されている[4-2-3-1]のシステム。兼任監督である森保監督としては、どちらのチームにもオプションとして持っておきたい部分があるはずだ。
しかし、メンバーの特性、組み合わせもあり、別のシステムをそれぞれのチームで採用している。これでは、半年後に起こるチームの統合の局面で、やり直しが求められてしまう。そういった点に加え、東京オリンピックへのオーバーエイジも加味して採用されたと考えるべきだろう。

3バックは右から畠中槙之輔(横浜F・マリノス)、三浦弦太(ガンバ大阪)、佐々木翔(サンフレッチェ広島)の3名が並んだが、畠中はクラブでは4バックの左でプレー。三浦はクラブで4バックも3バックも経験している状況。佐々木は森保監督時代から広島で3バックの左を務めている。
純粋に3バックの経験値で言えば、佐々木のみと考えても良い状況。日本代表としてもコパ・アメリカ前の6月のキリンチャレンジカップ2試合で採用して以来、半年ぶりの3バックとなったが、まずまずのプレーだったと思う。

右の畠中は、自身の良さでもある縦パスを効果的に出しており、チャンスには繋がらなかったものの、攻撃面では及第点。守備面では、失点シーンでマークを外してしまった部分が目立つが、大きなミスもなく普段とは違う景色の中で対応したと言える。

中央の三浦は、中国の8番(タン・ロン)との競り合いでも負けることは少なく、ボールを収められてもしっかりと対応。クロスに対しての動き方という点では、畠中、佐々木とのコミュニケーションはもう少し必要だが、この準備期間を考えれば悪くなかったと言える。CKからは代表初ゴールも記録し、今大会では自信をつけてもらいたい選手の1人だ。

左の佐々木は、中国が右サイドから攻撃を仕掛ける場面が多く、後手に回る印象が強かった。守備面では慣れているポジションだっただけに、もう少し強度を持ったプレーを見せて欲しい印象はある。11月のベネズエラ戦では左サイドバックとして相手の攻撃を食い止められなかっただけに、本人としても悔しいところだろう。

ただ、1点目の起点となった縦パスに関しては、良さが出だと言える。欲を言えば、遠藤渓太(横浜F・マリノス)がボールを持った時のサポートを早くしてあげるべきだったと言える。攻撃に厚みをもたらせることができれば、この3バックシステムはモノになると言えるだろう。

◆初のA代表で輝く五輪世代
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この試合のスターティングメンバーでは、左ウイングバックの遠藤、右ウイングバックの橋岡大樹(浦和レッズ)、シャドーの一角に入った森島司(サンフレッチェ広島)が初キャップを記録した。

東京オリンピック世代のチームではウイングバックの経験があった遠藤は、シーズンを通して慣れ親しんだ左サイドでチャンスを演出。物怖じすることなく、自身の良さを発揮し、チャンスに繋がるクロスも供給していた。

後半はカットインからシュートを放つなど、積極性も見られたが、もう少し強引なプレーを見せても良かったように思う。左サイドにはライバルも多い状況であり、中島翔哉(ポルト)や原口元気(ハノーファー)を筆頭に代表経験値の高い選手が揃う。東京オリンピック後に生き残るためにも、残り2試合でよりアグレッシブな姿勢を見せてもらいたい。

そして、森島はこの試合で最も輝いていた選手と言っていいだろう。クラブでもプレーするシャドーのポジションで、動き出しやボールを受ける位置、フリーランニングとシャドーとしての役割を果たしていた。先制ゴールに繋がった動きも、上田綺世(鹿島アントラーズ)の見事なヒールパスを感じ、鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)の代表初ゴールをアシストした。

A代表、オリンピック世代ともに久保建英(マジョルカ)、堂安律(PSV)が当面のライバルとなる。しっかりと森保監督の前で結果を残すということは、どちらのチームにおいても序列が変わる可能性があるだけに、持ち味であるボックス付近でのスキルと、プレービジョンを生かしてもらいたいものだ。

橋岡に関しても、浦和でプレーする右ウイングバックで、及第点のプレーを見せていた。“少林サッカー”と揶揄されている頭を蹴られたプレーがありながらも、積極的なプレーを見せ続けていたファイティングスピリットは評価できる。一方で、攻撃参加の部分では躊躇する場面も散見された。橋岡が高いポジションを取れれば、チームとして動きをつけられていただけに、積極的なプレーをこの先でも見せてもらいたい。

◆気になる基礎スキルの差
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今回の大会に関していえば、中国代表もマルチェロ・リッピ監督からリー・ティエ監督に代わり、メンバーも久々の代表招集者が多いなど、ベストメンバーからは遠い構成となっていた。力が劣る一方で、各選手のアピールという点を考えれば、立ち上がりを含めた前からのプレスなど、気持ちの部分では見せていた。

そこで目についたのが、基礎スキルの差だ。日本はハイプレスを受ける場面や、スペースのない場面でプレーするシーンが多かったが、トラップミスやパスミスが目立った。連携ミスであれば、招集してから時間もなかったことを加味して、致し方ないと言えるが、トラップミスやパスミスは個人の能力の部分。コンディションだけを要因にはできないと言える。

これまでの森保ジャパンの活動を通して、海外組が多く割合を占めていた。一方で、国内組が多く集まる試合は少なく、直近では11月のベネズエラ戦となる。

海外でプレーしているから優れていると一概には言えないが、少なくともレベルの差がある環境でプレーしていることは間違いない。そして、その差で生じる基礎スキルの部分が、代表のメンバー構成で見えてしまい、試合の内容にも表れている。

中国戦で言えば、ボールを保持する役割がいなかったため、タメを作って展開するという場面は数少なかった。また、ボールを奪うことはできていても、そこから攻撃に転じる場面では詰まるシーンが散見された。それは、細かいタッチやポジショニング、リスクを負うプレーができるかどうかの差であり、その違いを生み出せなかったことは課題と言えるだろう。

もちろん、それは組み合わせの問題もあり、プレーするポジションの問題も影響はある。しかし、細かなミスの蓄積がペースの乱れや、隙を見せることにも繋がり、流れが悪くなれば相手に優位に働くものだ。その点では、海外組が多くいる試合でのプレーとは大きく異なった印象を得たのではないだろうか。

オリンピック代表で言えば、来月のAFC U-23選手権があり、オリンピック本番があるが、その舞台でしっかりと戦えるか言えば、11月のU-22コロンビア代表戦を見る限り、まだまだ足りない部分が多い。A代表もこの先最終予選に勝ち進むと考えれば、相手のレベルも上がり、このままでは危うい可能性もある。

森保監督の言う「底上げ」ができなければ、日本はこの先の戦いで苦しむことも容易に想像できるだけに、チームとしての力だけでなく、個々のスキルのレベルアップは今大会でもしっかりと見せてもらいたいものだ。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

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