苦戦も対応力を見せた日本代表、格下は存在しないアジアの戦い/日本代表コラム

2019.11.15 16:30 Fri
Getty Images
初めてのキルギスでの試合。前日練習の時点で想定ができていたピッチ状況だが、日本は想像以上に苦しんだと言える。

FIFAランキングでは日本の28位に対して94位と大きく離れているが、グループ内では首位と2位の対戦。日本がアウェイで2-0で勝利したミャンマー代表相手に、ホームで7-0で勝利していることを考えても、簡単な相手ではないことも想定できていた。

その中で、0-2の勝利。カタール・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選の開幕から4戦連続クリーンシート、正に無傷の4連勝と好スタートを切った。その結果は、評価すべき事だろう。
◆想定以上の出足を見せたキルギス

芝の荒れ具合、そして緩さを想定できていた日本だったが、試合が始まると、その厳しいピッチ状態がプレーにも表れる。
大きなミスこそ起こりはしなかったが、細かいバウンドの変化、ボールスピードの減速、パス軌道のズレなどが日本にとっては足かせとなっていた。

しかし、懸念されていたピッチ状態以上のエクスキューズがあった。それがキルギスのパフォーマンスだ。

日本は通常の[4-2-3-1]のシステムで臨んだが、キルギスは[3-3-3-1]と読んでもいいシステムを組んできた。このシステムは日本との噛み合わせが良く、間を突くことができるシステム。さらに、前線から圧力をかけるにはうってつけのスタイルだった。

システムに現れるように、キルギスの選手たちもピッチ上でスタイルを発揮する。キルギスが立ち上がりからプレスを果敢にかけて来たため、日本は良いボールを攻撃陣に送れない。

さらに、日本の攻撃を機能させないだけでなく、最終ラインからの攻撃の組み立てがしっかりしていた。特に前半の25分ぐらいまでは、DFバレリ・キシンからのフィードを右サイドでビクトル・マイヤーが受ける形で日本陣内に攻め込んだ。

ピッチ状態という点では、ホームという地の利を生かしたと言ってもいいだろう。パススピードが上がらない日本に対して、寄せを早めることで、プレー精度も若干落ちていた。

立ち上がりはペースが掴めず、ロングボールはキルギスの守備陣に阻まれ、縦パス、スルーパスはピッチコンディションもあり繋がらない。徐々にキルギスペースとなりかけたキッカケは、中盤の攻防にもある。

特に、セカンドボールはキルギスが多く拾い、前半から何度も攻め込まれることとなった。遠藤航(シュツットガルト)、柴崎岳(デポルティボ・ラ・コルーニャ)の両ボランチも精彩を欠いた。

◆権田の好セーブに助けられた日本

日本にとって特に脅威となったのは、背番号8のグルシジット・アリクロフだ。前半は左ウイングで、後半は右にも顔を出したアリクロフは、18歳の新鋭。このアジア2次予選からキルギス代表に招集されると、日本戦が3キャップ目だった。

切れ味鋭いドリブルを果敢に仕掛け、足元が不安定な日本の守備ラインを押し込んでいたアリクロフ。左サイドからボックス内に侵入するシーンも多く、決定機を演出した。

また、日本の4バックに対して、センターバックとサイドバックの間を狙い続けたことも大きい。サイドの枚数だけで考えれば、日本は2枚に対し、キルギスは3枚並んでいる。サイドでも、インサイドでも選手が動く可能性があるため、長友佑都(ガラタサライ)や酒井宏樹(マルセイユ)が苦しめられたことも攻め込ませた要因だ。

右に左に。日本よりピッチに慣れている上に、ミスマッチを起こさせるシステムで挑んだキルギスがサイドからチャンスを演出したが、その前に立ちはだかったのがGK権田修一だ。予選3試合を含め4試合連続クリーンシート中だった権田。クラブでは第2GKの域を抜け出せないでいるが、この日も決定的なシュートを何度もセーブし、代表では自身5試合連続クリーンシートを達成した。

もちろん、その前の守備が良かったのも忘れてはならない。0-2で迎えた後半は、キルギスが攻め込むシーンも何度か見られたが、しっかりと選手たちが戻り守備を固めた。チームとして、守備面での約束事がクリーンシートにも繋がっていると言える。

しかし、権田のセーブがなければ、キルギスが先制していた可能性は高く、PKで先制するまで持ち込めたことが勝因と言ってもいいだろう。

◆ハードワークが勝利の要因に

この試合で日本の勝因を挙げるならば、チームの特徴の1つでもあるハードワークだろう。前線からの守備はもちろん、球際での争い、相手よりもランニングするところが勝機を生んだ。

先制点に繋がったPKも、遠藤航のパスを伊東純也が流したところ、南野拓実が走り込んでPKを獲得した。ラインを割る可能性もあった中、南野がしっかりと走りきったことがPKに繋がり、先制となった。

また、得点こそ生まれなかったが、永井謙佑のプレーも忘れてはならない。裏をとる動き、相手のDFラインを下げる動きをする傍ら、ロングボールガスペーに出た際には、走力を生かしてボールに絡んだ。決定的なシーンを作るには至らなかったが、永井も自身の良さを出せたと感じる。

左サイドで先発した原口元気も同様だ。フィジカルの強さを生かす事はもちろん、上下動を繰り返して守備にも奮闘した。南野にしても永井にしても、原口にしても、攻撃だけでなく守備面での貢献があったからこそ、日本はクリーンシートという結果を残し続けている。

遠藤、柴崎岳のボランチコンビが精彩を欠いたところ、そしてキルギスのストロングポイントでもあるバレリ・キシンの正確なフィードからサイドを攻略された事は課題だ。この戦い方は、リターンマッチでも用意する可能性はあり、タジキスタンやモンゴルも使える可能性はある。それでも、要所ではしっかりと対応力を見せた遠藤、柴崎、そして長友は経験がものを言ったといいだろう。

悪いパフォーマンスでありながらも、対応力が付いてきたチームが相手との力量差に頼らずに判断してプレーできた事は、この先の予選にも大きく影響すると考えられる。結果と内容を見れば平均以下と捉えられる試合だが、上手くいかなかった部分を埋められた事は学びであり、プラスと捉えるべきだろう。あとは、ベースアップをするだけ。格下が存在しなくなってきたことも学びの1つだ。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

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