30歳で夢を叶える?マドリッドのリーガ2部チームで元日本代表MFを発見

2019.07.21 23:30 Sun
©超ワールドサッカー
土曜の午前9時。この時期、日中は気温40度になることもある猛暑を避け、レガネスが練習場で早朝プレシーズンマッチを開くのはこの夏、2度目のことだった。今日の相手は昨季、2部昇格を果たした隣町のチーム、フエンラブラダ。その赤いユニフォームの背番号10を着け、とうとう憧れのスペイン・サッカデビューを果たした日本人選手がいる。

その名は、加藤恒平。昨シーズンはJリーグのサガン鳥栖に在籍したものの、それ以外の大半はモンテネグロ、ポーランド、ブルガリアといった東欧の国々を渡り歩き、2017年には日本代表にも招集された異色の経歴を持つMFだ。

まだ本決まりではない。フエンラブラダ入団の話が始まったのは半年前。練習試合の後、当人に経緯を聞いたところ、「鳥栖でフェルナンド・トーレスと一緒だった時、スペインでプレーしたいと言ったら、連絡を取ってくれたんだ。彼の知り合いの代理人が間に入ってくれてね」という。
加藤自身も「選手としてはもちろん、人としても世界一だと思っていて、とても尊敬している」と言っていたトーレスはフエンラブラダでプレーしたことはないものの、この町の生まれ。スペイン代表国際メジャートーナメント3連覇などの功績を称えられ、自身の名前がホームスタジアムの名称になっている。

しかし、加藤は「去年の冬、チームが2部Bだった時にも来て、僕もクラブもお互い合意するところまでいったけど、2部Bはプロリーグじゃないから、書類関係が難しくて。結局、3月まで待ってもビザが下りなかった」という事情で入団が叶わず。スペインでプレーする夢をずっと抱いていた彼はそれまでにあったオファーを全て断っていたため、昨シーズンの残りはポーランド3部リーグのクラブ、ヴィジフ・ウッチで過ごすことになった。
夏を迎え、昇格の戦いが続く間も「ずっとコンタクトは取っていて、上がったら、獲ってよって冗談を言っていた」チームがプレシーズンを開始した7月12日から合流したが、今度の舞台はクラブが史上初めて挑む2部だ。まだ、補強が終わっていないという事情もあり、現在はテスト生として参加し、様子を見て、監督とスポーツ・ディレクターが結論を出すことになっている。

以前、アルゼンチンで7カ月間、修行していたこともある加藤はスペイン語に馴染みがあり、サッカー用語に関してはまったく不自由がないそうだ。「海外ではもちろんサッカーで越える壁はあるが、結局、言葉が喋れないと、サッカーだけでは越えられない壁がある。もう一歩、踏み込むためには現地の言葉は大事だと思う。チームには英語を話せる人もいるけど、スペイン語を話したいからなしでと言って、単語とか、教えてもらっている」と、語学習得にも前向きだ。

ちなみにサッカーの違いについて尋ねてみたところ、「日本人の選手は皆、技術があって走る。90分間、止まらず、テンションも高く保って。こっちの選手はもちろん技術もあるけど、もう少し止まっている時間、考えている時間があって、頭がいいなというか、1、2歩動くだけでスペースを作ったり、時間を作ったりしている。練習から。動きすぎるなとか、ポジションとか、スペースとか、時間とかってワードが凄く聞こえてくる。その辺はこの年になって、まだまだ成長できるなって感じている」と話してくれた。

やはり5年前に2部Bから2部に昇格、その2年後には初の1部昇格も果たし、3年目のシーズンを迎えるレガネスに胸を借りるフエンラブラダのこの夏最初のプレシーズンマッチは2-0の敗戦で終わった。
©️CWS Brains,LTD.

「90分、出るとは予想していなかった」ものの、加藤はボランチとして主に守備面で貢献。プレーでは他のチームメートたちに決して劣っていなかったが、本契約となるのかどうか、当人は「始まって1週間だし、手応えはまだわからない」という。それでも「自分にとっては年齢的にもラストチャンス。だから、このタイミングでここにいられるというのは凄い幸せなことだし、絶対に契約を勝ち取りたい」と意気込みを見せている。

冬にも練習に参加していたせいだろうか。試合中にもスタンドから加藤の名を呼ぶフエンラブラダのファンがいたのも驚きだったが、私と話している間にもサインや写真を頼んでくるスペイン人が結構いたものだ。この夏は久保建英のレアル・マドリー加入で沸くリーガだが、彼がプレーする予定のRMカスティージャはリーガ2部B。加藤がフエンラブラダに無事加わることができれば、デポルティーボに移籍した柴崎岳と共に1部のみならず、2部にも見逃せない試合が増えそうだ。

取材・写真:原ゆみこ

加藤恒平の関連記事

名古屋グランパスの日本代表DF中谷進之介(27)がポーランドへ移籍する可能性があるという。ポーランド『i Gol』が伝えた。 中谷は柏レイソルの下部組織育ちで、2018年7月に名古屋へと完全移籍すると、守備の要として“堅守”を誇るチームを支えている。 これまで名古屋では公式戦235試合に出場し8得点を記録。 2023.11.29 11:05 Wed
FC琉球は29日、元日本代表MF加藤恒平(33)との契約満了を発表した。 和歌山県出身の加藤は2012年にFC町田ゼルビアでプロキャリアを始めて以降、これまでモンテネグロやポーランド、ブルガリア、ジブラルタル、ポルトガル、タイでプレー。2017年5月にはヴァイッド・ハリルホジッチ監督の下、日本代表に初選出され、話 2022.10.29 12:03 Sat
FC琉球は12日、元日本代表MF加藤恒平(33)の加入決定を発表した。背番号は「37」。契約報酬の一部は琉球が発行した暗号資産FCRコインにて支払われる。 加藤は2012年にFC町田ゼルビアでプロキャリアを始めて以降、これまでモンテネグロやポーランド、ブルガリア、ジブラルタル、ポルトガル、タイでプレー。2018年 2022.08.12 14:35 Fri
タイのチェンライ・ユナイテッドは15日、元日本代表MF加藤恒平(32)をフリートランスファーで獲得した。契約期間は2022年5月31日までで、背番号は4を着用する。 2012年3月に立命館大学からFC町田ゼルビアへと入団した加藤は、チームがこの年にJFLに降格すると、2013年にセルビアのルダル・プリェヴリャに加 2021.12.16 07:30 Thu
現在フリーの元日本代表MF加藤恒平(30)がジブラルタルのセント・ジョセフスFCに加入した。クラブ公式サイトが伝えた。 加藤は、2012年3月に立命館大学からFC町田ゼルビアへと入団。チームがこの年にJFLに降格すると、2013年にはセルビアのルダル・プリェヴリャへと加入。2015年からはポーランドのポドベスキジ 2019.10.26 14:45 Sat

ラ・リーガの関連記事

ビジャレアルは21日、コートジボワール代表FWニコラ・ペペとスペイン代表FWアジョセ・ペレスが負傷したことを発表した。 クラブの発表によれば、ペペは9日に行われたラ・リーガ第13節アラベス戦で左太ももの筋断裂を負い、アジョセ・ペレスは今季のスペイン代表での活動中に右太ももの後筋膜を負傷したとのこと。 なお、 2024.11.22 07:30 Fri
アトレティコ・マドリーのアルゼンチン代表FWフリアン・アルバレス。幼馴染のパートナーがいる中、奇妙な熱愛報道が出たことで女性側が否定した。イギリス『サン』が伝えた。 リーベル・プレートからマンチェスター・シティへと移籍し、その才能を発揮していたアルバレス。しかし、ノルウェー代表FWアーリング・ハーランドという巨大 2024.11.21 23:20 Thu
株式会社コナミデジタルエンタテインメントは21日、FWルイス・スアレスが『eFootball™』のアンバサダーに就任すること発表した。 ウルグアイ代表のエースとしても活躍したスアレス。今回新たにアンバサダーに就任したことで、すでにアンバサダーであったリオネル・メッシ、ネイマールと、かつてバルセロナで“MSNトリオ 2024.11.21 17:15 Thu
ラ・リーガは20日、11月の月間表彰のノミネート選手を発表。プレーヤー・オブ・ザ・マンスの候補にレアル・ソシエダの日本代表MF久保建英が入った。 久保は今シーズンもソシエダを牽引。チームは開幕から不調が続いていたが、徐々に調子を取り戻しつつある状況だ。 11月はここまで2試合が行われ、久保はセビージャ戦、バ 2024.11.21 10:25 Thu
バルセロナのデンマーク代表DFアンドレアス・クリステンセンが手術を受けたようだ。スペイン『カタルーニャ・ラジオ』の情報をもとに『マルカ』が報じている。 今季初戦のバレンシア戦で26分間プレーして以降、負傷離脱が続くクリステンセン。プレシーズンではピポーテとしてハンジ・フリック新監督をうならせることができず、アピー 2024.11.21 06:30 Thu

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly