疑惑のジャッジの舞台裏/六川亨の日本サッカー見聞録

2019.07.18 19:10 Thu
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©︎J.LEAGUE
JFA(日本サッカー協会)は7月18日、今年で2回目となるレフェリーブリーフィングを実施した。今回のブリーフィングまで、J1とJ2、J3にルヴァン杯のグループステージ、そして天皇杯を含めて137試合でJクラブと意見交換(疑問の残る試合について検証すること)を実施し、そのうち27パーセントがミスジャッジであることを明かした。

その上で小川佳実審判委員長は今月13日の横浜FM対浦和戦での誤審について、17日に審判委員会を開いて事情説明をしているので、今日は議題から省くと冒頭の挨拶で語った。

疑惑のシーンは、ワンツーで左サイドを突破した遠藤のクロスに、ファーサイドにいたFW仲川とDF宇賀神がもつれながら決めたゴールである。松尾一主審はゴールを認めたものの、浦和の抗議を受けて審判団は協議の上で仲川のオフサイドによりノーゴールとジャッジを覆した

しかし9分間の協議の末、再び横浜FMのゴールと認めたのだった。

その経緯を小川審判委員長は、「ゴール直後、第1副審と第4審判がクラブ(横浜FM)の運営から入手した情報(得点者が誰か)をもとに、判定をオフサイドに変更した。主審は、その後審判団と協議する中で、本来得てはいけない審判団以外の情報だと認識し、再びゴールに判定を戻した。両チームの監督に事情説明などをし、試合を再開させた」と説明した。

要するに、本来ジャッジは4人の審判団で下さなければならない。にもかかわらずピッチ外から情報を経てオフサイドと判定を覆したことは、競技規則上、許されることではない。そこで仲川のオフサイドと認めつつも、元の判定であるゴールに戻さざるを得なかったわけだ。

ちなみに浦和の選手交代はプレーに直接関係ないので、次のプレーを再開する前であれば判定を変えることはできるそうだ。

ちなみにレフェリーブリーフィングでは「オフサイド」のテーマで問題のシーンを再現し、仲川はオフサイドポジションにいて、なおかつ手で押し込んでいた。

そして問題はここからである。松尾主審は横浜FMのポステコグルー監督と浦和の大槻監督の2人と両チームの選手に対し「審判が持っている情報で変えたのではなく、変えるきっかけになった情報が外部からのものだと分かったので、申し訳ないが、最初の得点を認めた判断に戻させてください」と説明したという。だから選手らも納得してプレーを再開させたのだろう。

ところが試合後に槙野が「運営が決めること」とメディアに話したことで混乱が広がった。素朴な疑問としてジャッジは審判団が決めるのが常識だ。しかし切り取られた発言で、あたかも決めたのは「運営」との誤解を招いた。

試合後の両チームの監督も、事情が事情だけに59分のシーンについては「ノーコメント」を貫いた。不確かな情報がメディアを通じて拡散された結果、さらなる疑惑を招いたことは否めない。

ミスジャッジの被害者は両チームの選手と監督だが、観戦していたファン・サポーターも事情を知らされていないだけに「?」のジャッジに混乱したことだろう。

大相撲のように場内アナウンスで説明することは難しいかもしれないが、VAR導入までに何らかの策を審判委員会は講ずるべきだろう。

この日、説明を行った上川氏は追加副審がいたとしても、その位置では「選手の背中しか見えないため正確なジャッジは下せなかっただろう。副審からも背中越しのプレーなので正確なジャッジを下せたかどうか。もう少し主審がペナルティエリアの角あたりに移動していれば(仲川と宇賀神の競り合いを)見えていたかもしれない」と述べていた。

ちなみに審判委員会は誤審の松尾主審には1か月の割り当て停止、外部から情報を得た第1副審の相楽亨氏と第4審判の大坪博和氏に1か月の資格停止、第2副審の田尻智計氏は1試合の割り当て停止の処分を科した。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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