天皇杯2回戦でのジャイキリに思うこと/六川亨の日本サッカー見聞録

2019.07.04 16:30 Thu
©超ワールドサッカー
昨日3日は天皇杯の2回戦29試合が行われ、J1リーグの4チーム(名古屋、札幌、湘南、松本)が姿を消した。なかでも衝撃的だったのは、名古屋が鹿屋体育大に0-3で完敗したことだ。
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名古屋だけでなく、FC東京は桐蔭横浜大に、川崎Fは明治大に1-0の辛勝スタートで、浦和と横浜FMもそれぞれ流通経済大と立命館大に2-1と苦戦を強いられた。昨日はFC東京対桐蔭横浜大の試合を取材したが、改めて大学勢のレベルアップを痛感した。過去にも大学勢や高校勢がジャイアントキリングを演じたことはあるが、それは堅守速攻での快挙だった。
しかし昨日の桐蔭横浜大は、安武監督が試合後に「私たちは大学生で、相手はJ1で、誰が出てくるのかわからなかったので、普段通り我々のサッカーをしよう。選手も個人個人がこの試合で評価されたかったので、自分たちのサッカーをした」と説明したように、4-4-2の布陣からボールポゼッションによる“普段通り”のサッカーで互角に渡りあった。

もちろんFC東京はリーグ戦から10人を入れ替えるターンオーバーを採用したし、名古屋も外国籍選手はマテウスひとりで、リーグ戦から大幅にメンバーを入れ替えたため本来のチーム力ではなかった面は否めない。
にもかかわらず苦戦を余儀なくされたのは、大学サッカーのレベルアップに他ならないと言っていい。桐蔭横浜大で言えば、創部は1998年と歴史は浅いものの、初代監督は風間八宏氏が務め、FC東京戦にも出場した4年生のMFイサカゼインは来シーズンの川崎F入団が内定しているし、過去にもJリーガーを輩出している。

対戦相手だったFC東京のCB渡辺とFW矢島はいずれも中央大出身で、FC東京の下部組織で育ったものの、ユースやトップに昇格できず、高校サッカーや大学サッカーで頭角を現し、プロ契約にこぎつけた。

近年の高校選手権では東京や埼玉のチームがなかなか上位に勝ち進めないが、優秀な選手はJクラブの下部組織を選択し、そこで揉まれてもトップに昇格できなければ大学に進学してプロを目指す。いわば大学サッカーは違った意味でプロ予備軍となっている精鋭揃い。このためJクラブのセカンドチームでは苦戦を余儀なくされても当然と言える。

ただ、「日本最古のカップ戦」とうたう天皇杯が、それもプロリーグのトップチームが“ベストメンバー”を出さずにアマチュアに敗れていいのかという疑問も残る。

Jクラブとしては、最優先すべきはリーグ戦での優勝争いであり残留争いというのが本音なのも理解できる。大学勢にしてもトップ選手はイタリア・ナポリで開催中のユニバーシアードに参加しているため2回戦はベストメンバーとは言えないチームもあった。

お互いに“それぞれの事情”を抱えての天皇杯2回戦だったが、選手が疲弊しないよう、J1クラブの出場は4回戦からにするとか、年間の試合数を減らしてクオリティーの高い試合になるよう再検討してはいかがだろうか。

このままでは天皇杯へのJ1クラブのモチベーションは下がる一方だろう。ルヴァン杯も含めて大会の見直しが必要だと感じた昨日の取材だった。


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