【日本代表コラム】周到なサウジに敗れた日本、改めて感じた強化ポイント
2017.09.07 11:00 Thu
▽大観衆が集まる完全なるアウェイ、過酷な気候・環境、そして死に物狂いで勝利を目指して向かってくるサウジアラビア代表──全てが日本代表の前に立ちはだかり、ロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選のラストゲームで黒星を喫した。
▽すでにW杯出場を決めていた日本にとって、第3章のスタートと位置づけていた一戦。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、テストを行うとともに、最後も勝利を目指すメンバーをピッチに送り出した。
◆本気の相手を前にした確認とテスト
▽ハリルホジッチ監督は、GK、最終ライン、そして中盤の2名を継続して起用することで、サウジアラビア戦でもしっかりと勝利を目指す姿勢を見せた。DF吉田麻也(サウサンプトン)、DF昌子源(鹿島アントラーズ)と本大会に向けて軸となるであろうCBコンビ、そしてGKを含めた最終ラインの連携向上を実行した。
▽中盤はMF山口蛍(セレッソ大阪)をアンカーに、オーストラリア戦で代表初ゴールを記録したMF井手口陽介(ガンバ大阪)を柴崎とともにインサイドハーフで起用した。ヒザの状態が懸念される長谷部不在の状況を考えた中盤起用。この先の軸となる選手を見出す必要がある。
▽また、オーストラリア戦で貴重な先制点を決めた浅野、日本代表初招集のFW杉本健勇(セレッソ大阪)を途中起用。終盤にはFW久保裕也(ヘント)を投入し、得点奪い、勝ちに行く姿勢を示した。結果は最終予選で初の無得点で敗戦。課題が多く見えた。
◆サウジアラビアの周到な準備
▽もちろん、評価すべきはそこだけではない。日本に勝利するため、サウジアラビアのファン・マルバイク監督は戦略、戦術をしっかりと準備した。まずは、前半のゲームプラン。サウジアラビアはポゼッションを高めたののも、思い切った攻撃には出ず。セットプレーやカウンターなど手数をかけずにゴールを目指していた。後半動きが良くなったことを考えると、気候や環境を考慮して前半をセーブしていたともとれる。
▽より周到だと感じさせられたのは、攻撃の組み立てだ。日本の中盤3枚のプレスを掻い潜るかのように、プレス回避を実施。間を突いてパスを通せば、特に左サイドを起点とした攻撃を発動。前線が連動し、シュートチャンスを生み出していた。日本のストロングポイントを消しに行った戦い方をサウジアラビアは選択した。
▽後半、途中投入されたファハドが左サイドで躍動。センターバックのズレを見逃さず、待望の先制点をもたらせた。そこからのサウジアラビアは無理に得点を狙わず、確実で固いサッカーを展開。最後まで日本にゴールを与えることなく、目的を完遂。3大会ぶり5回目のW杯出場を決めた。
◆改めて感じた3つの強化ポジション
▽まずはセンターバック。6月のシリア戦から4試合連続でコンビを組んだ吉田と昌子。この2人の組み合わせには異論はない。しかし、3枚目のセンターバックが確立されていないことが、この先の日本の課題だ。今回センターバックとして招集されたのは、上述の2人の他にDF植田直通(鹿島アントラーズ)とDF三浦弦太(ガンバ大阪)だ。しかし、両選手はプレー機会が訪れなかった。この先の親善試合や12月の東アジアカップでチャンスが訪れるとは思うが、吉田や昌子が不測の事態に陥る可能性を考えれば、残り9カ月でしっかりと強化することが不可欠となるだろう。
▽そして右ウイングだ。この試合に先発した本田は、攻守において精細を欠き、特にプレスからのショートカウンターを武器としている日本にとって、この試合の本田の守備は問題点ばかりだった。所属のパチューカで試合に出場し、しっかりとパフォーマンスを取り戻せば問題はないと思うが、現時点では厳しい状況だ。オーストラリア戦でゴールを決めた浅野、2試合連続で途中投入された久保も正直物足りない。今シーズンは3名ともクラブで結果を出せておらず、このままシーズンが過ぎるようでは右ウイングは厳しい状態となる。ハリルホジッチ監督は、個々に特徴が異なる3名を招集しているだけに、現在呼ばれていない選手がハマる可能性も少なくない。右ウイングで組み立てができるプレーメーカーが、W杯では必要になるだろう。
▽最後にアンカー。ここが一番の懸念点となる。サウジアラビアに突かれたポイントも、これまでは長谷部がカバーしていた。オーストラリア戦でも前半こそ動きに精彩を欠いたが、後半は“読み”の部分が戻り、バイタルエリアでフィルターをかけていた。ヒザの状態は一進一退であり、本大会を万全な状態で迎えられるかは定かではない。長谷部、山口、井手口というユニットを見出しはしたが、長谷部を欠くことになれば一から作り直しとなる。長谷部に代わるアンカーを見出すことは、日本が目指すスタイルには不可欠となるだろう。
◆残された時間は9カ月
▽9カ月後には、世界の予選を勝ち抜いた強豪国との対戦が待っているが、今の日本では2014年と同じ結果になる可能性もある。しかし、これまでの積み上げと変化を考えれば、ここからの9カ月でレベルアップできる可能性もある。コンディションとパフォーマンスを重視するハリルホジッチ監督だけに、各選手はまずはクラブでしっかりと結果を残すこと。10月の2試合ではどんなメンバーが名を連ねるのか楽しみだ。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
▽すでにW杯出場を決めていた日本にとって、第3章のスタートと位置づけていた一戦。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、テストを行うとともに、最後も勝利を目指すメンバーをピッチに送り出した。
◆本気の相手を前にした確認とテスト
Getty Images
▽オーストラリア戦から、ケガの影響でチームを離脱したMF長谷部誠(フランクフルト)、メンバー外となったFW大迫勇也(ケルン)、FW乾貴士(エイバル)、FW浅野拓磨(シュツットガルト)が先発を外れ、FW本田圭佑(パチューカ)、FW岡崎慎司(レスター・シティ)、FW原口元気(ヘルタ・ベルリン)が先発。また、約2年ぶりの招集となったMF柴崎岳(ヘタフェ)を先発で起用した。▽中盤はMF山口蛍(セレッソ大阪)をアンカーに、オーストラリア戦で代表初ゴールを記録したMF井手口陽介(ガンバ大阪)を柴崎とともにインサイドハーフで起用した。ヒザの状態が懸念される長谷部不在の状況を考えた中盤起用。この先の軸となる選手を見出す必要がある。
▽一方で、テストも実施している。「トップコンディションではないことはわかっていた」とハリルホジッチ監督が試合後に語ったのは右ウイングで先発した本田のこと。「リズムやゲーム勘の部分でトップレベルではない」と、これまで日本代表で不動の地位を確立していた本田に対し、公式の場ではっきりと苦言を呈した。
▽また、オーストラリア戦で貴重な先制点を決めた浅野、日本代表初招集のFW杉本健勇(セレッソ大阪)を途中起用。終盤にはFW久保裕也(ヘント)を投入し、得点奪い、勝ちに行く姿勢を示した。結果は最終予選で初の無得点で敗戦。課題が多く見えた。
◆サウジアラビアの周到な準備
Getty Images
▽サウジアラビアについても触れなくてはいけないことがある。まずは、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子がチケットを買い占め、多くのファンを無料でスタジアムに招待した。勝たなければいけなかったサウジアラビア代表の選手たちにとっては、この上ない後押しとなったはずだ。▽もちろん、評価すべきはそこだけではない。日本に勝利するため、サウジアラビアのファン・マルバイク監督は戦略、戦術をしっかりと準備した。まずは、前半のゲームプラン。サウジアラビアはポゼッションを高めたののも、思い切った攻撃には出ず。セットプレーやカウンターなど手数をかけずにゴールを目指していた。後半動きが良くなったことを考えると、気候や環境を考慮して前半をセーブしていたともとれる。
▽より周到だと感じさせられたのは、攻撃の組み立てだ。日本の中盤3枚のプレスを掻い潜るかのように、プレス回避を実施。間を突いてパスを通せば、特に左サイドを起点とした攻撃を発動。前線が連動し、シュートチャンスを生み出していた。日本のストロングポイントを消しに行った戦い方をサウジアラビアは選択した。
▽後半、途中投入されたファハドが左サイドで躍動。センターバックのズレを見逃さず、待望の先制点をもたらせた。そこからのサウジアラビアは無理に得点を狙わず、確実で固いサッカーを展開。最後まで日本にゴールを与えることなく、目的を完遂。3大会ぶり5回目のW杯出場を決めた。
◆改めて感じた3つの強化ポジション
Getty Images
▽この試合で改めて感じさせられた強化すべきポジションが3つある。それは、センターバック、アンカー、そして右ウイングだ。この試合では、センターバックに吉田と昌子、アンカーに山口、右ウイングに本田が先発したが、この3ポジションは特に残り9カ月で変化が必要に感じる。▽まずはセンターバック。6月のシリア戦から4試合連続でコンビを組んだ吉田と昌子。この2人の組み合わせには異論はない。しかし、3枚目のセンターバックが確立されていないことが、この先の日本の課題だ。今回センターバックとして招集されたのは、上述の2人の他にDF植田直通(鹿島アントラーズ)とDF三浦弦太(ガンバ大阪)だ。しかし、両選手はプレー機会が訪れなかった。この先の親善試合や12月の東アジアカップでチャンスが訪れるとは思うが、吉田や昌子が不測の事態に陥る可能性を考えれば、残り9カ月でしっかりと強化することが不可欠となるだろう。
▽そして右ウイングだ。この試合に先発した本田は、攻守において精細を欠き、特にプレスからのショートカウンターを武器としている日本にとって、この試合の本田の守備は問題点ばかりだった。所属のパチューカで試合に出場し、しっかりとパフォーマンスを取り戻せば問題はないと思うが、現時点では厳しい状況だ。オーストラリア戦でゴールを決めた浅野、2試合連続で途中投入された久保も正直物足りない。今シーズンは3名ともクラブで結果を出せておらず、このままシーズンが過ぎるようでは右ウイングは厳しい状態となる。ハリルホジッチ監督は、個々に特徴が異なる3名を招集しているだけに、現在呼ばれていない選手がハマる可能性も少なくない。右ウイングで組み立てができるプレーメーカーが、W杯では必要になるだろう。
▽最後にアンカー。ここが一番の懸念点となる。サウジアラビアに突かれたポイントも、これまでは長谷部がカバーしていた。オーストラリア戦でも前半こそ動きに精彩を欠いたが、後半は“読み”の部分が戻り、バイタルエリアでフィルターをかけていた。ヒザの状態は一進一退であり、本大会を万全な状態で迎えられるかは定かではない。長谷部、山口、井手口というユニットを見出しはしたが、長谷部を欠くことになれば一から作り直しとなる。長谷部に代わるアンカーを見出すことは、日本が目指すスタイルには不可欠となるだろう。
◆残された時間は9カ月
Getty Images
▽初戦と最終戦で黒星を喫したものの、6勝2分け2敗で首位突破を決めた日本。ここまでの約1年間で徐々に強化を進めながら、第一の目標であったW杯出場を決めたハリルホジッチ監督には、やはり本大会でも指揮を執ってもらいたいと思う。残り9カ月、誰よりも日本のサッカーをチェックしている指揮官であれば、新たな戦力の発掘、そして各個人のレベルアップに向けたアドバイスを与えられるはずだ。そして、勝利にこだわるスピリットは、選手のコメントからも強まっていることを感じる。▽9カ月後には、世界の予選を勝ち抜いた強豪国との対戦が待っているが、今の日本では2014年と同じ結果になる可能性もある。しかし、これまでの積み上げと変化を考えれば、ここからの9カ月でレベルアップできる可能性もある。コンディションとパフォーマンスを重視するハリルホジッチ監督だけに、各選手はまずはクラブでしっかりと結果を残すこと。10月の2試合ではどんなメンバーが名を連ねるのか楽しみだ。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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