【コラム】浦和を相手に鹿島が鹿島たる所以を示した伝統の勝負強さ

2016.12.06 13:30 Tue
©︎J.LEAGUE
▽3日、明治安田生命2016 Jリーグチャンピオンシップ決勝戦第2戦の浦和レッズvs鹿島アントラーズが埼玉スタジアム2002で開催。第1戦を0-1で落としていた鹿島が敵地での第2戦で2-1の逆転勝利を収め、年間勝ち点3位からの下剋上で7年ぶり8度目のJリーグ王者に輝いた。
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◆やや不公平なCSレギュレーション
▽第2戦を迎えるにあたり、鹿島の逆転優勝には2得点以上を奪っての勝利が最低条件だった。さらに、大勢の浦和サポーターが集った埼玉スタジアム2002での戦いであったことを考えると、鹿島にとって様々な形からディスアドバンテージを背負って臨んだ一戦だった。▽しかし、ここで少し年間1位の浦和側の弁も汲んでおきたい。チャンピオンシップ決勝は2戦合計スコアで同点だった場合、総勝ち点、アウェイゴール数、年間順位というレギュレーションで雌雄を決する。つまり、年間1位という証は最後の最後で効力を発揮するだけであり、浦和の優位性は第2戦をホームで迎えられるということのみだった。
◆レギュレーションを理解していた鹿島
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▽両者の戦いに話を戻すと、鹿島の入りは最悪だった。7分に古巣との一戦に燃えるFW興梠慎三の右足ボレーから浦和に先制点を献上。開始早々にプランが崩壊したかに思われたが、Jリーグ最多17個のタイトルホルダーは怖気づくことなかった。逆に、クラブ伝統の勝負強さで試合を彩り、年間勝ち点で15ポイントも上の浦和を凌駕した。

▽鹿島の主将であるMF小笠原満男は試合後、ミックスゾーンで試合の様子を「(1点取られても)状況的には変わらない。むしろ、レッズの方が試合運びを難しくしてしまったのではないかと。僕らは冷静だったし、チャンピオンシップというちょっと特質なレギュレーションもしっかりと頭に入っていた」と振り返った。
▽冷静に考えてみれば、第1戦で浦和に許したアウェイゴール数は1点。第2戦で先に失点したものの、2点目さえ取られなければ第1戦終了時と同様のプランで試合を進めることができるシチュエーションだったのだ。

◆鹿島のしたたかさが浦和の焦りを誘発
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▽すなわち、鹿島側に焦りは全くなかったということ。逆に、アウェイゴールを1つしか持ち帰れなかった浦和には、余裕どころか大きなアドバンテージはなかったということだ。結果、2戦合計0-2にされた後も、鹿島は浦和に敢えて攻めの主導権を握らせる中で守備からリズムを再構築。徐々に試合の主導権を握っていった。

▽そんな中、40分には「主審によってはファウル」と試合後のミックスゾーンでうなだれたように、自分の中でジャッジを決めつけてしまったMF宇賀神友弥の判断ミスを突き、MF遠藤康のクロスからFW金崎夢生がダイビングヘッドで同点弾。鹿島のしたたかな戦いが2戦合計で依然とリードする浦和の焦りを誘い始めた。

◆クラブの伝統的な勝負強さ
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▽前半のうちに1点を返した鹿島は後半、石井正忠監督の采配が浦和にダメを押す。「レッズの左サイドが少しバテていたので、そこを徹底的に突く形に変えた」と試合後会見で語った石井監督は、58分に遠藤に代えてFW鈴木優磨を右サイドハーフに起用。やや息切れ気味の宇賀神に鈴木を対面させることでプレッシャーをかけた。

▽すると78分、右サイドからのダイアゴナルランでバックラインの背後に抜け出した鈴木がドリブルで持ち上がり、ボックス内でDF槙野智章のファウルを誘発してPKを獲得。PKキッカーを巡り、鈴木をなだめた金崎がGK西川周作の動きを読み切ったシュートを沈めた。これで、鹿島がついに2戦合計で形勢逆転。鹿島の試合巧者ぶりが浦和を飲み込んだ。

◆鹿島が鹿島たる所以
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▽結局、クラブの伝統的な勝負強さを見せつけた鹿島は第2戦を2-1で勝利し、2戦合計2-2のアウェイゴール差で浦和を撃破。18個目のタイトルを手中に収めた。レギュラーシーズンで大差をつけていた浦和としては納得のいかない結果だが、この1試合だけをみれば、戦力値以外の部分で鹿島に分があった。

▽個人としてクラブの18個中15個のタイトル獲得数を誇る小笠原は、「ルールの中でやり方を変えられる、冷静に何をすべきかを理解する、そういうものがこのチームの伝統にある。それがチームの力」と鹿島に根付く勝負強さを力説した。この第2戦は、まさにその鹿島の勝負強さが如実に表れた、鹿島が鹿島たる所以を示した一戦だった。

◆勝負強さを世界で試すとき
(C)CWS Brains,LTD.
▽そして、鹿島は晴れてJリーグ王者の称号を手にすると同時に、世界への挑戦権である日本で8日開幕のクラブ・ワールドカップ(W杯)2016出場権を獲得した。鹿島として初めてのクラブW杯で、伝統の勝負強さが各大陸王者を相手にどこまで通用するのか。Jリーグ最多タイトルホルダーの躍進に期待したい。
《超ワールドサッカー編集部・玉田裕太》

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