FW久保裕也の不参加を受けて霜田正浩NTD「苦渋の決断」、「五輪の意義や感じ方が、国、クラブ、選手たちによって大きく違う」とも《リオ五輪》
2016.08.03 12:52 Wed
▽4日にブラジルで開幕するリオ・デジャネイロ オリンピックの男子サッカーに出場するU-23日本代表に帯同する日本サッカー協会(JFA)の霜田正浩ナショナルチームダイレクター(NTD)が、ヤング・ボーイズのFW久保裕也の不参加について経緯を明かした。
◆霜田正浩ナショナルチームダイレクター
「今日のお昼がデッドラインでしたが、ヤングボーイズからどうしても3日の試合が終わるまでは確約できないとの連絡が来ました。それを受けて、時間のギリギリまで監督以下スタッフと検討しましたが、苦渋の決断として久保裕也の招集を断念して、新たにバックアッププレーヤーの中から鈴木武蔵を登録メンバーに差し替えることを決めました」
「ギリギリまで待ってやり取りをしている中で、非常に残念な結果になりましたが、もう初戦を戦わなければいけません。チームとして、どうやって初戦のナイジェリア戦に向うか、そういった中で、最悪17名で五輪を戦うリスクは絶対に避けなければいけないということを優先し、差し替えを決定しました」
「バックアップメンバーから鈴木武蔵を差し替えたことに伴い、バックアップの補充としてオナイウ阿道を招集し、クラブにも連絡して早急に合流してもらうことになりました」
――久保選手の招集に関しては、3日の試合前に合流させることは難しかったのか
「ヤングボーイズは3日のチャンピオンズリーグでどうしても使いたいとのことでした。そこは交渉の余地がなく、試合が終わって4日にできるだけ早くこちらに合流してもらいたいというリクエストを出し続けていました。ただ、前回の7月26日の試合が終わった後に、ケガ人が出たので行かせられないと言われていました。ですので、今回は3日の試合が終わった後の4日には合流させてほしいとの確約を、3日の試合前までに取りたくて交渉を行っていました」
――久保選手本人は何か言っていたか
「本人にも話をしました。経緯は伝えていました。ウクライナの時も翌日に代表に合流できるはずだったのですが、それができなくなりって受けたショックだったよりは、本人は覚悟を決めていたようです。また、チームの人からの説明、代理人からの状況の説明を受けていたので、今日は比較的冷静でした。ただ、彼の気持ちを考えると、オリンピックに出られなくなったことは、メンタルを含めてケアが必要だと思っています。私が話した後に手倉森監督からも電話をしてもらい、2人で直接話しています」
――選手たちにはどういう形で伝えたか
「今日の昼食後、ミーティングを行って、その場でチームの決断と、差し替えの武蔵の話、バックアップの補充で(オナイウ)阿道を補充すると監督の方から伝えました。これで18名とバックアップ4名が決まり、22名で戦うぞとのメッセージを送ってもらいました。ここからは初戦のナイジェリア戦に向けて、集中してチーム一丸となって戦いたいと思っています」
――バックアップ選手の中に選択肢がある中、鈴木武蔵を選んだ理由は
「ポジションの部分で、久保裕也、浅野拓磨、興梠慎三の3人で回すというプランが崩れてしまいました。そのプランをどう立て直すかというところで、中盤ならどこでもできる野津田よりも、そのままフォワードの選手をシンプルに補充したほうが良いという監督の判断です」
――ロンドン五輪の時とは違い招集に強制力がない中で、海外組選出にはリスクがあったが、それでも久保をメンバーから外す考えはなかったか
「今回、最後の最後で残念な結果になりましたが、最終予選や1次予選ではクラブとコミュニケーションを取りながら、大会の重要性、本人の五輪への思いなどもクラブと、本人、代表で共有して、長い時間をかけてやってきました。そういう意味では、この土壇場で本人が代表に来られないというのは、僕らも痛いことですが本人も残念な思いをしていると思います。日本だけではなく、他の国も苦労している中で、オリンピックの意義、感じ方が、国、クラブ、選手たちによって大きく違うのかなと、今回は改めて感じました」
「ただ、そういうリスクがあるからと言って、チャレンジをしない、招集する努力もしないということで、(南野)拓実、(久保)裕也海外組をリストから外すようなことは考えていませんでした。結果としては、現場の欲しい選手をちゃんと揃えることができず、申し訳ない気持ちでいっぱいです。ただ、ここまでは粘り強く欧州のクラブとも交渉してきた結果がありますので、こういう経験を次に生かさないといけません」
――先日霜田NTDがヤングボーイズと会談し、4日に合流してほしいという思いを伝えて、ある程度の合意を得られていたのか
「そうです。全く出さないという、ゼロからの交渉でした。そこから日本代表のためにも、本人のためにもと交渉している中で、相手が譲歩できる条件として、3日のチャンピオンズリーグが終わった後にもう一度話し合いましょうとのことでした。そこで何もなければ、4日から五輪チームに合流するという少しの可能性が復活しました」
――24時間までに差し替えは可能だが、メンバーリストを完了していないといけないと霜田NTDが把握したのはいつか
「ブラジルに帰ってきてからです。スイスに行ってブラジルに帰ってきたときに、そのルールがFIFAから新しく追加されました。その時点で、久保の件、17人になるリスクを含めて、どのタイミングまで引っ張るか。その時点で、今日のタイムリミットが発生しました。ギリギリまでクラブと交渉していましたし、現場もギリギリまで待ちたいとのことでした。そういう経緯がありました」
――鈴木選手が加わることでどのような効果を期待するか
「最終予選もケガをしながらでも活躍してくれた選手ですし、やはりこのチームに縁があるんだなと監督もよく言っています。そういう縁で集まった選手たちが、最後の最後で一致団結して良い結果を出してくれるように。(鈴木)武蔵も頑張ってくれると思いますし、バックアップの選手たちも、自分たちが戦うつもりでここまで来てくれています。本当に22人で、スタッフ、選手、全員で戦いたいと思います」
――オナイウ阿道がブラジルに来るタイミングは
「今、手配をしています。もう乗れるタイミングですぐ乗って、すぐに来て欲しいと伝えています。突然の招集にも関わらずジェフさんが快く送り出してくれたので、非常に感謝しています」
◆霜田正浩ナショナルチームダイレクター
「今日のお昼がデッドラインでしたが、ヤングボーイズからどうしても3日の試合が終わるまでは確約できないとの連絡が来ました。それを受けて、時間のギリギリまで監督以下スタッフと検討しましたが、苦渋の決断として久保裕也の招集を断念して、新たにバックアッププレーヤーの中から鈴木武蔵を登録メンバーに差し替えることを決めました」
「ギリギリまで待ってやり取りをしている中で、非常に残念な結果になりましたが、もう初戦を戦わなければいけません。チームとして、どうやって初戦のナイジェリア戦に向うか、そういった中で、最悪17名で五輪を戦うリスクは絶対に避けなければいけないということを優先し、差し替えを決定しました」
――久保選手の招集に関しては、3日の試合前に合流させることは難しかったのか
「ヤングボーイズは3日のチャンピオンズリーグでどうしても使いたいとのことでした。そこは交渉の余地がなく、試合が終わって4日にできるだけ早くこちらに合流してもらいたいというリクエストを出し続けていました。ただ、前回の7月26日の試合が終わった後に、ケガ人が出たので行かせられないと言われていました。ですので、今回は3日の試合が終わった後の4日には合流させてほしいとの確約を、3日の試合前までに取りたくて交渉を行っていました」
「しかし3日の試合が終わるまでは確約できないと、向こうのGM(ゼネラルマネジャー)から直接連絡がありました。それを受けて、ギリギリまで悩んではいましたが、決断をしました」
――久保選手本人は何か言っていたか
「本人にも話をしました。経緯は伝えていました。ウクライナの時も翌日に代表に合流できるはずだったのですが、それができなくなりって受けたショックだったよりは、本人は覚悟を決めていたようです。また、チームの人からの説明、代理人からの状況の説明を受けていたので、今日は比較的冷静でした。ただ、彼の気持ちを考えると、オリンピックに出られなくなったことは、メンタルを含めてケアが必要だと思っています。私が話した後に手倉森監督からも電話をしてもらい、2人で直接話しています」
――選手たちにはどういう形で伝えたか
「今日の昼食後、ミーティングを行って、その場でチームの決断と、差し替えの武蔵の話、バックアップの補充で(オナイウ)阿道を補充すると監督の方から伝えました。これで18名とバックアップ4名が決まり、22名で戦うぞとのメッセージを送ってもらいました。ここからは初戦のナイジェリア戦に向けて、集中してチーム一丸となって戦いたいと思っています」
――バックアップ選手の中に選択肢がある中、鈴木武蔵を選んだ理由は
「ポジションの部分で、久保裕也、浅野拓磨、興梠慎三の3人で回すというプランが崩れてしまいました。そのプランをどう立て直すかというところで、中盤ならどこでもできる野津田よりも、そのままフォワードの選手をシンプルに補充したほうが良いという監督の判断です」
――ロンドン五輪の時とは違い招集に強制力がない中で、海外組選出にはリスクがあったが、それでも久保をメンバーから外す考えはなかったか
「今回、最後の最後で残念な結果になりましたが、最終予選や1次予選ではクラブとコミュニケーションを取りながら、大会の重要性、本人の五輪への思いなどもクラブと、本人、代表で共有して、長い時間をかけてやってきました。そういう意味では、この土壇場で本人が代表に来られないというのは、僕らも痛いことですが本人も残念な思いをしていると思います。日本だけではなく、他の国も苦労している中で、オリンピックの意義、感じ方が、国、クラブ、選手たちによって大きく違うのかなと、今回は改めて感じました」
「ただ、そういうリスクがあるからと言って、チャレンジをしない、招集する努力もしないということで、(南野)拓実、(久保)裕也海外組をリストから外すようなことは考えていませんでした。結果としては、現場の欲しい選手をちゃんと揃えることができず、申し訳ない気持ちでいっぱいです。ただ、ここまでは粘り強く欧州のクラブとも交渉してきた結果がありますので、こういう経験を次に生かさないといけません」
――先日霜田NTDがヤングボーイズと会談し、4日に合流してほしいという思いを伝えて、ある程度の合意を得られていたのか
「そうです。全く出さないという、ゼロからの交渉でした。そこから日本代表のためにも、本人のためにもと交渉している中で、相手が譲歩できる条件として、3日のチャンピオンズリーグが終わった後にもう一度話し合いましょうとのことでした。そこで何もなければ、4日から五輪チームに合流するという少しの可能性が復活しました」
――24時間までに差し替えは可能だが、メンバーリストを完了していないといけないと霜田NTDが把握したのはいつか
「ブラジルに帰ってきてからです。スイスに行ってブラジルに帰ってきたときに、そのルールがFIFAから新しく追加されました。その時点で、久保の件、17人になるリスクを含めて、どのタイミングまで引っ張るか。その時点で、今日のタイムリミットが発生しました。ギリギリまでクラブと交渉していましたし、現場もギリギリまで待ちたいとのことでした。そういう経緯がありました」
――鈴木選手が加わることでどのような効果を期待するか
「最終予選もケガをしながらでも活躍してくれた選手ですし、やはりこのチームに縁があるんだなと監督もよく言っています。そういう縁で集まった選手たちが、最後の最後で一致団結して良い結果を出してくれるように。(鈴木)武蔵も頑張ってくれると思いますし、バックアップの選手たちも、自分たちが戦うつもりでここまで来てくれています。本当に22人で、スタッフ、選手、全員で戦いたいと思います」
――オナイウ阿道がブラジルに来るタイミングは
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