【カルチョのたしなみ】不振につながるインテルのバラバラ感
2015.04.10 18:30 Fri
▽ミランの次はインテルだった。ダービー前にファンのフラストレーションを蓄積させるのは新しいトレンドなのだろうか。
▽「彼らに失うものは何もない」。ロベルト・マンチーニはパルマ戦の前日、こう話した。だからこそ怖い相手だと強調していたが、まさかここで勝ち点を落とすとは、誰一人思っていなかっただろう。破産を宣言した給料の発生していないクラブに、「来シーズンはタイトルを争う」と息巻いているインテルが勝てなかったのだから、開いた口がふさがらない。
▽低迷が続くインテルだが、ミランに比べて内容が悪くないという点は救いだった。もがけばもがくほど深みにはまっていく印象だったミランに対し、インテルはチャンスをいかしきれず、ミスからの失点で敗戦、というのがよく見るパターン。だからこそ、あと少し良い方向に傾けば、結果は出始めるはずだという希望が持てたのだ。
▽だが、パルマと引き分けてそんな悠長なことは言っていられない。
▽もちろん、パルマの頑張りは素晴らしかった。感動すら覚えたほどである。「失う物は何もない」というのは格下と対戦する上位クラブの常套句の一つだが、ここまで失う物がない相手がかつていただろうか。試合後に取材に応じるパルマの選手たちの誇らしげな表情は非常に印象的で、なぜかこちらもうれしくなってしまうほどだった。さまざまな物が差し押さえられ、トッププロとは思えない扱いの中でサッカーに集中することを望み、大金を稼ぐインテルから勝ち点を奪った―― 。パルマ陣営の喜びの裏には、これまでの苦労がにじんでいた。
▽何がいけなかったのか。その原因の根本が分かるなら、とっくに問題は解決されている。ただ、今のクラブにある矛盾は、チームの不振の一因になっている気がしてならない。
▽マンチーニがたびたび来シーズン以降の話をしていて、目の前の試合を軽視しているのではないか、という声も聞こえたりするが、ファンの求める言葉が“それ”なのだから仕方ない。「ヨーロッパリーグ出場権獲得が第一」といったところで、インテルのファンは納得しないだろう。今はそれすらも難しくなっているが、それはインテルの目標だとしても、インテリスタの目標ではない。やはり、「タイトルを争えるチームに戻ること」なのだ。その意味で監督の発言は正しい。
▽現副会長のハビエル・サネッティも、9日に同様の話をしている。元カピターノの言葉はより心に響くものだったが、結局は「トヒル会長を筆頭に全員が必死に取り組んでいる」、「インテルはどんなことがあっても偉大なクラブだ」といったところがメイン。そして、クラブ全体が「このユニフォームに誇りを持っている」ということを強調した。
▽ここで疑問符だ。インテルは今シーズン終了後、大幅な入れ替えがあるとみられている。つまり、今シーズン限りでチームを去る選手が複数いるということだ。その一部は、もうクラブの決断を耳にしているかもしれない。そういった状況の選手に対してインテルの誇りを求めるのは難しいはずだ。次の所属先を探さなければいけないし、そのためにピッチでアピールをしなければならない。
▽「就職活動」といった意味では、パルマの方が断然上だ。チームが不安定な状況だった前半戦、それなりの戦力はあるのに勝ち点が伸びなかった。ただ、インテルと引き分けた後は、ホームでウディネーゼに勝っている。さまざまなものが吹っ切れて、本気で誇りのために戦ったのだろう。
▽「目標はトップを争うチームに戻ること」だが、現チームは入れ替わる。だとしたら、選手にとってマンチーニの戦術を必死になって学ぶ意味はない。どちらが試合に臨むにあたって良いメンタルだったかは明らかだ。
▽とにかく、この“敗北”がシーズン終盤戦に向けての起爆剤になることを期待したい。たとえクラブの目標と選手の目標とファンの目標が合致しなくても、試合に勝ちたいという欲求は共通だ。ヴェローナ戦を終えたら、ダービーとローマ戦。誇りを示すにはこれ以上ない舞台であり、最高のショーケースにもなり得る。ファンがこれまでため込んだすべての苛立ちを吹き飛ばすようなダービーにしてほしいと願うばかりだ。(その前にヴェローナ戦でも苛立ちの一部を取り除いて欲しいが……)(了)
【ペッピーノ伊藤】
1984年生まれ。埼玉出身。イタリアはミラノを拠点とし、インテル&ミランを中心に現地で取材や執筆を行っている。もはやジュゼッペ・メアッツァの住人と言っても過言ではない。その献身性には定評があり、ミラノでは彼が寝ている姿を見たものはいないとまで言われている。その鉄人ぶりはハビエル・サネッティと双璧を成す。
▽「彼らに失うものは何もない」。ロベルト・マンチーニはパルマ戦の前日、こう話した。だからこそ怖い相手だと強調していたが、まさかここで勝ち点を落とすとは、誰一人思っていなかっただろう。破産を宣言した給料の発生していないクラブに、「来シーズンはタイトルを争う」と息巻いているインテルが勝てなかったのだから、開いた口がふさがらない。
▽低迷が続くインテルだが、ミランに比べて内容が悪くないという点は救いだった。もがけばもがくほど深みにはまっていく印象だったミランに対し、インテルはチャンスをいかしきれず、ミスからの失点で敗戦、というのがよく見るパターン。だからこそ、あと少し良い方向に傾けば、結果は出始めるはずだという希望が持てたのだ。
▽もちろん、パルマの頑張りは素晴らしかった。感動すら覚えたほどである。「失う物は何もない」というのは格下と対戦する上位クラブの常套句の一つだが、ここまで失う物がない相手がかつていただろうか。試合後に取材に応じるパルマの選手たちの誇らしげな表情は非常に印象的で、なぜかこちらもうれしくなってしまうほどだった。さまざまな物が差し押さえられ、トッププロとは思えない扱いの中でサッカーに集中することを望み、大金を稼ぐインテルから勝ち点を奪った―― 。パルマ陣営の喜びの裏には、これまでの苦労がにじんでいた。
▽だからこそ、インテルは情けなかった。
▽何がいけなかったのか。その原因の根本が分かるなら、とっくに問題は解決されている。ただ、今のクラブにある矛盾は、チームの不振の一因になっている気がしてならない。
▽マンチーニがたびたび来シーズン以降の話をしていて、目の前の試合を軽視しているのではないか、という声も聞こえたりするが、ファンの求める言葉が“それ”なのだから仕方ない。「ヨーロッパリーグ出場権獲得が第一」といったところで、インテルのファンは納得しないだろう。今はそれすらも難しくなっているが、それはインテルの目標だとしても、インテリスタの目標ではない。やはり、「タイトルを争えるチームに戻ること」なのだ。その意味で監督の発言は正しい。
▽現副会長のハビエル・サネッティも、9日に同様の話をしている。元カピターノの言葉はより心に響くものだったが、結局は「トヒル会長を筆頭に全員が必死に取り組んでいる」、「インテルはどんなことがあっても偉大なクラブだ」といったところがメイン。そして、クラブ全体が「このユニフォームに誇りを持っている」ということを強調した。
▽ここで疑問符だ。インテルは今シーズン終了後、大幅な入れ替えがあるとみられている。つまり、今シーズン限りでチームを去る選手が複数いるということだ。その一部は、もうクラブの決断を耳にしているかもしれない。そういった状況の選手に対してインテルの誇りを求めるのは難しいはずだ。次の所属先を探さなければいけないし、そのためにピッチでアピールをしなければならない。
▽「就職活動」といった意味では、パルマの方が断然上だ。チームが不安定な状況だった前半戦、それなりの戦力はあるのに勝ち点が伸びなかった。ただ、インテルと引き分けた後は、ホームでウディネーゼに勝っている。さまざまなものが吹っ切れて、本気で誇りのために戦ったのだろう。
▽「目標はトップを争うチームに戻ること」だが、現チームは入れ替わる。だとしたら、選手にとってマンチーニの戦術を必死になって学ぶ意味はない。どちらが試合に臨むにあたって良いメンタルだったかは明らかだ。
▽とにかく、この“敗北”がシーズン終盤戦に向けての起爆剤になることを期待したい。たとえクラブの目標と選手の目標とファンの目標が合致しなくても、試合に勝ちたいという欲求は共通だ。ヴェローナ戦を終えたら、ダービーとローマ戦。誇りを示すにはこれ以上ない舞台であり、最高のショーケースにもなり得る。ファンがこれまでため込んだすべての苛立ちを吹き飛ばすようなダービーにしてほしいと願うばかりだ。(その前にヴェローナ戦でも苛立ちの一部を取り除いて欲しいが……)(了)
【ペッピーノ伊藤】
1984年生まれ。埼玉出身。イタリアはミラノを拠点とし、インテル&ミランを中心に現地で取材や執筆を行っている。もはやジュゼッペ・メアッツァの住人と言っても過言ではない。その献身性には定評があり、ミラノでは彼が寝ている姿を見たものはいないとまで言われている。その鉄人ぶりはハビエル・サネッティと双璧を成す。
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