【日本サッカー見聞録】パレスチナ戦レビュー

2015.01.12 23:00 Mon
▽日本の攻撃をストップしてクリアすれば大声援。GKがゴールマウスを飛び出してキャッチしても大声援。判官贔屓の地元オーストラリアのファンからも、日本とパレスチナの実力差は明らかだった。8分には自陣のGK川島から長谷部、森重、乾、遠藤とつないで先制点。25分には香川のシュートをゴール前の岡崎が頭でコースを変えて追加点。そして43分にはPKから本田が3点目を奪いリードを広げた。

「新しいゲームが始まる。0-0だと思って戦え」とハーフタイムにアーメド・アルハッサン監督から指示の出たパレスチナだったが、49分には左CKから吉田にゴールを許してその差は広がるばかり。日本は後半から乾に代えて清武を投入したが、2000年のレバノン大会初戦のサウジアラビア戦(4-1)をしのぐゴールラッシュを期待したのも当然と言えただろう。

▽ところが58分、遠藤に代えて武藤を起用してから日本の攻撃はノッキングを起こす。武藤を左FWに置き、清武を右MFにコンバートしたのだが、その結果、攻撃にメリハリがなくなり、73分には累積警告で退場者を出したパレスチナを攻めあぐね、追加点を奪うことはできなかった。
▽清武に遠藤と同じことを期待するのは酷だろう。決勝までの6試合を考慮したら遠藤を下げるのは賛成だが、彼の代わりに入れるなら柴崎ではないだろうか。国際的なトーナメントで、かつプレッシャーのない状況で経験を積ませるのに、このパレスチナ戦はうってつけだったはず。ちょっともったいないと呟かずにいられなかった。

▽遠藤の後継者探しはまたの機会に譲るとして、この試合では香川がかつての輝きを取り戻しつつあるのは収穫だった。左脛(けい)打撲の影響はほとんど感じられなかったし、トラップからの反転もスムーズだった。25分のシュートが決まっていれば、より自信を取り戻せたことだろう。
▽逆に不安だったのが本田の出来だ。身体にキレがなく、トラップも“足にボールが付いて”いない。フィジカルの強さもスピードがなければ発揮できず、フィフティボールを奪われていた。2日前の練習ではゴール枠を捕えていたFKも精度を欠いた。疲労の影響なのか、コンディショニング調整の失敗なのか原因は分からないが、セスノックでのキャンプから同じ状態が続いていると友人の記者は教えてくれた。

▽16日のイラク戦までに本田がどこまで回復するか。もしかしてアギーレ監督は、本田の代役に清武を想定してパレスチナ戦で試運転をしたのかもしれない。それはそれで、あまり歓迎したくないシチュエーションでもある。

【六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

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