磐石の王者と瀕死の好敵手《バイエルンvsドルトムント》

▽ブンデスリーガ第10節でリーグ2連覇中の王者バイエルンと、優勝を争うライバルの最右翼と目されていたドルトムントが日本時間の1日26時30分より、アリアンツ・アレーナで激突する。

▽リベリやシュバインシュタイガー、ハビ・マルティネスにチアゴといった主力をケガで欠き、ワールドカップ優勝メンバーを多数抱えながらもここまで6勝3分と無敗を維持しているバイエルン。チームを率いる2季目のグアルディオラ監督は今季から3バックを本格導入しながらも21得点2失点という圧倒的なスタッツが示すように、3連覇に向けて磐石の序盤戦を過ごしている。とりわけ、ハビ・マルティネスの負傷を受けて急遽獲得した新戦力・シャビ・アロンソの存在は大きく、攻守両面でチーム力を押し上げる要因となっている。

▽一方、ドルトムントは2勝1分6敗で目下のところリーグ戦4連敗中と、クロップ監督が2008年に指揮官に就任して以降、最悪のシーズン序盤戦を送っている。ロイスやムヒタリャン、フンメルスにシュメルツァーといった主力がケガに見舞われたことや、レヴァンドフスキの後釜として獲得したインモービレとラモスがチームにフィットできずにいることで、チーム力が安定していない。3季ぶりのマイスターシャーレ奪還はおろか、CL出場権争いからも脱落しかねない危機的な状況下で、王者を倒すことによって負の流れを断ちきりたい。
▽バイエルン予想スタメン
GK:ノイアー
DF:ベナティア、J・ボアテング、アラバ
MF:ロッベン、ラーム、シャビ・アロンソ、ベルナト
FW:ミュラー、レヴァンドフスキ、ゲッツェ
負傷者: GKレイナ(ふくらはぎ)、GKスターク(じん帯)、DFバトシュトゥバー(ヒザ)、MFチアゴ(ヒザ)、MFハビ・マルティネス(ヒザ)、MFシュバインシュタイガー(ヒザ)
出場停止者:なし
▽長期離脱中のハビ・マルティネスやチアゴ、バトシュトゥバーにシュバインシュタイガーらを起用できない。そのほか、控えGKのレイナとスタークも負傷中だ。システムに関しては機能性を見せ始めている超攻撃的な3バックを採用する可能性が高いが、より安定感のある4バックで来ることも十分に考えられる。3日前に行われたDFBポカールのハンブルガーSV戦ではコンディション不良のロッベンを始め、ゲッツェやベナティアを温存したものの、大半の主力を起用。温存された3選手のスタメン起用は濃厚だろう。

▽ドルトムント予想スタメン
GK:ヴァイデンフェラー
DF:ピシュチェク、スボティッチ、フンメルス、ドゥルム
MF:ムヒタリャン、香川、ケール、ロイス、グロスクロイツ
FW:オーバメヤン
負傷者: DFシュメルツァー(手)、MFブワシュチコフスキ(太もも)、MFサヒン(ヒザ)
▽一方のドルトムントはシュメルツァー、ブワシュチコフスキ、サヒンといった主力がケガで離脱中。システムは4日前に行われたDFBポカールのザンクト・パウリ戦(3-0でドルトムントが勝利)で機能した4-1-2-3を採用する可能性が高いと、現地メディアは見ている。そして1トップには新戦力のインモービレやラモスではなく、オーバメヤンの起用を予想している。★タクティカル・プレビュー
◆ポゼッションvsショートカウンター
▽シーズン開幕前に行われたDFLスーパーカップ(2-0でドルトムントが勝利)でも見られたような試合展開となることが確実だ。グアルディオラ監督によってポゼッションを握ることを植えつけられているバイエルンがボールを保持し、ドルトムントが十八番のショートカウンターを狙う展開となるはずだ。自陣に引く相手を攻めあぐねる傾向の強い今季のドルトムントにとっては、ハイラインを保ってポゼッションを高めるバイエルン相手との試合は持ち味が出易いと言えるかもしれない。

◆ロッベンの存在
▽ゴールレスに終わった前節のボルシアMG戦が象徴しているように、バイエルンといえども自陣に引く相手を崩すのは至難の業で、ロッベンを欠く中では攻めあぐねてしまうことを露呈した。ドルトムント戦ではボルシアMG戦のようにボールを持たされることが濃厚なバイエルンだが、ロッベンがいればプレッシャーの少ないサイドライン際からのドリブル突破で打開可能なため、アタッキングサードでの崩しがより容易になることは間違いない。

◆ゲッツェ&ミュラーの得点パターン
▽そして、サイドに張るロッベンに相手守備陣が対応することで生まれる中央のスペースに、得点力を併せ持つゲッツェ&ミュラーが飛び込む形が現在のバイエルンの主要な得点パターンとなっている。依然としてレヴァンドフスキの良さを最大限に生かしきれてはいないものの、それを感じさせずにいるのはロッベンの存在を筆頭にゲッツェとミュラーがいるからに他ならない。

◆シャビ・アロンソの展開力
▽この豪華な攻撃陣を操っているのが、言わずもがなシャビ・アロンソだ。局面を一気に変えることのできる正確なロングフィードを武器に、ロッベンの足下へ的確にボールを供給することで、ロッベンが仕掛け易い状況を度々生み出している。また、守備面でも対人の強さを随所に発揮し、カウンターへのケアで存在感を示している。

◆オーバメヤンの1トップ起用
▽一方、ドルトムントとしてはこれまでのところ、新戦力のインモービレとラモスがチームにフィットしておらず、現地メディアが予想しているようにオーバメヤンを1トップで起用する策が現状ではベストだと言える。インモービレは周囲を生かすプレーに難を抱え、特長である動き出しはまだ味方に理解してもらえていない。そして、ラモスはポストプレー、動き出し、いずれも中途半端で起点になる動きもゴールに直結する動きもできていない。その点、昨季からドルトムントでプレーするオーバメヤンは自身最大の特長である走力を味方が生かす術を熟知している上、自身もスピードを生かしてディフェンスライン裏を突くランニングを繰り返し、味方のパスをうまく引き出すことができている。バイエルンがハイラインを築くことが濃厚な中、オーバメヤンのスピードは遺憾なく効果を発揮するはずだ。

◆香川の役割
▽オーバメヤンの後方でロイスと共に2シャドーの一角として先発起用されることが濃厚な香川に関しても、新戦力のインモービレやラモスとのリレーションシップが確立されていない中、動き出しが明確なオーバメヤンにはパスを合わせ易いメリットがある。シャビ・アロンソとラームに監視される中、バイタルエリアでボールを受けて決定的なパスを供給し、自らシュートに持ち込むことが香川には求められる。

◆3センターで2シャドーを監視
▽ザンクト・パウリ戦で機能した4-1-2-3の布陣で臨んだ場合、バイエルンの2シャドー(ゲッツェ&ミュラー)のケアをし易くなるメリットがある。3センター(ケール、グロスクロイツ、ムヒタリャン)でバイエルンの2シャドーを監視することで数的優位の状況が生まれ、中央のスペースをうまくケアできるはずだ。現状、バイエルンのストロングポイントとなっている2シャドーを機能不全に陥らせることで、ドルトムントとしては勝機を見いだしたい。