24年ぶりの決勝へ導いた影の立役者

▽120分間を戦い終えてもゴールが生まれなかった試合は、アルゼンチン代表がオランダ代表をPK戦の末に退けた。前日に行われたブラジル代表vsドイツ代表の準決勝とは全く異なり、相手の良さを消すというプランを両国の選手が完遂した結果だった。

▽この試合のマン・オブ・ザ・マッチには、PK戦で2つのセーブを見せたGKロメロが選出された。アルゼンチンを24年ぶりの決勝へと導いた守護神が選ばれることは、至極当然だろう。メンタル面が重要となるPK戦で、ファーストキッカーのシュートをセーブしたことは大きかった。しかし、ロメロがビッグセーブを繰り出すよりも前に、アルゼンチンの大ピンチを救った男がいた。それが、ボランチの一角を務めたMFハビエル・マスチェラーノだ。

▽FWロッベンやFWファン・ペルシといった優秀なアタッカー陣を擁するオランダの前に、試合を通して体を張ったディフェンスで立ちはだかったマスチェラーノ。守備偏重のゲームとなったこの試合において、マスチェラーノの活躍は出色の出来だった。マンマークではなかったものの、ことごとくロッベンの前に立ちはだかり、突破を許さなかった。

▽ロッベンに許した唯一とも言える決定機は、90分を終えようとする間際。バイタルエリアで動き出したロッベンが、ファン・ペルシの落としを受けてボックス内に侵入し、ロメロの脇を抜くべくシュート放った。しかし、危機を察知したマスチェラーノが長い距離を走り、完璧に崩されたDF陣に代わって足を伸ばして、ロッベンとロメロの間に滑り込んだ。結果、間一髪マスチェラーノの右足が間に合いシュートをブロック。マスチェラーノは土壇場の大ピンチからアルゼンチンを救った。

▽グループステージ初戦から4戦連続でマン・オブ・ザ・マッチに選出されたFWメッシの活躍が目立っていたアルゼンチンだが、6試合を戦って3失点という堅守を支えていたのはマスチェラーノだろう。これまでの試合でも、豊富な運動量でピッチの広範囲をカバーし、球際の強さと一対一の守備の巧みさ見せてきた。この準決勝では、そのパフォーマンスがことさら際立っていた。

▽24年ぶりにワールドカップ決勝へと駒を進めたアルゼンチン。奇しくも、24年前の1990年イタリア大会の決勝では、今回と同じくドイツ(当時は西ドイツ)と対戦するも、0-1で敗れ連覇を逃した。また、2006年、2010年と2大会続けて準々決勝でドイツの前に屈し、敗退しているが、この2大会にマスチェラーノは主力として出場していた。アルゼンチンにとって、そしてマスチェラーノにとって、願ってもない相手が決勝で待ち受ける状況だ。マスチェラーノが、リベンジを果たしアルゼンチンを3度目の世界一に導くことができるのか、決勝を楽しみに待ちたい。