町田対秋田戦の2次元視野の限界/六川亨の日本サッカー見聞録
2023.05.05 13:00 Fri
ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)の森下源基元社長(82歳)が4月30日に肺炎のため死去したことが昨日報じられた。読売クラブ時代に副社長を、1994年から98年まではヴェルディ川崎の社長を務め、Jリーグ誕生前にはブラジルのサントスから三浦知良と三浦泰年の兄弟を獲得し、クラブの黄金時代を築いた。
Jリーグの川淵三郎相談役も「プロ化が決まると、三浦知良選手らスター選手を獲得するなど尽力された。国立競技場での開幕戦についても様々な難題があったが、いつも真摯に対応していただいた。華やかなヴェルディの存在がJリーグの注目度を上げ、サッカー人気に火をつけたと言っていい。強くて魅力あるクラブを育てていただいたことに改めて感謝申し上げたい。謹んで哀悼の意を表します」と故人を偲んだ。
森下さんとは、まだカズがブラジルでプレーしている頃、お父さんの納屋さんがブラジルから帰国した際に、ダイジェストの社長と4人でお茶や食事を何回か共にした。納屋さんが帰国するときはいつもお土産を持参したためで、大手町のホテルで会うことが多かった。大新聞社の出身ながら、腰が低く、「物静かな紳士」という印象が強かった。Jリーグは今年で30周年を迎えるため、開幕当時の森下さんは52歳という現役バリバリだったわけだ。そんな森下さんにとって、東京VがJ1リーグに復帰することが一番の手向けになるのではないだろうか。謹んでご冥福をお祈りいたします。
さて、3日のJリーグは久しぶりに判定が話題にのぼることはなかった。J1では横浜FCが初勝利を、柏が2勝目をあげ、残留争いも混沌としてきたようだ。J2も最下位の徳島から16位の千葉までは4勝点差に縮まった。J3もYSCC横浜が2連勝で最下位を脱出するなど、試合結果を予想するのはかなり困難な状況になっている。
そして4月末には今年2回目となるレフェリーブリーフィングがオンラインで開催された。話題になったのは町田対秋田戦のロングシュートである。実際にはゴール内に落下したものの、主審も副審もゴールとは認めなかった。このシーンについて東城穣デベロプメントマネジャーは「副審はゴールライン上で見たいが、(シュートを追って)スプリントすると動体視力が衰える」と説明。その上で「間に合わない時はGKやDFがどれだけゴール内に入っているか。ボールがワンバウンドした位置」などから判断すべきだったとし、「誤審」という表現は避けた。
さらに、このシーンで町田GKポープ・ウィリアムがゴールだと主審に進言したらどうなるかという質問に対し「選手が自己申告しても、レフェリー4人が確認できなければ(ゴールとは)認められない」というのがJFAの見解だそうだ。ドイツやイタリアなど海外では、過去に選手の申告で判定が覆った例がある。しかし日本では、一度、主審が下した判定を覆すことはないというのが大原則となっている。
とはいえ、第9節の川崎F対浦和戦では、後半25分にFW興梠慎三がペナルティーエリア内で後ろから足を蹴られて転倒したものの、VARで確認した結果、ノーファウルという判定になった。第10節のFC東京対新潟戦では、後半アディショナルタイムに入ったところで右SB中村帆高がボールをトラップした瞬間に自らうずくまった。そこでボールを奪った小見洋太がショートカウンターを仕掛けようとしたところ、主審は小見の反則として笛を吹いた。中村は右アキレス腱を断裂したが、いわゆる“自爆"であり(アキレス腱の断裂にはよくある)、中村の負傷に小見は関与していない。この2つのプレーについては、次回のレフェリーブリーフィングで報告があればお届けしよう。
Jリーグの川淵三郎相談役も「プロ化が決まると、三浦知良選手らスター選手を獲得するなど尽力された。国立競技場での開幕戦についても様々な難題があったが、いつも真摯に対応していただいた。華やかなヴェルディの存在がJリーグの注目度を上げ、サッカー人気に火をつけたと言っていい。強くて魅力あるクラブを育てていただいたことに改めて感謝申し上げたい。謹んで哀悼の意を表します」と故人を偲んだ。
森下さんとは、まだカズがブラジルでプレーしている頃、お父さんの納屋さんがブラジルから帰国した際に、ダイジェストの社長と4人でお茶や食事を何回か共にした。納屋さんが帰国するときはいつもお土産を持参したためで、大手町のホテルで会うことが多かった。大新聞社の出身ながら、腰が低く、「物静かな紳士」という印象が強かった。Jリーグは今年で30周年を迎えるため、開幕当時の森下さんは52歳という現役バリバリだったわけだ。そんな森下さんにとって、東京VがJ1リーグに復帰することが一番の手向けになるのではないだろうか。謹んでご冥福をお祈りいたします。
そして4月末には今年2回目となるレフェリーブリーフィングがオンラインで開催された。話題になったのは町田対秋田戦のロングシュートである。実際にはゴール内に落下したものの、主審も副審もゴールとは認めなかった。このシーンについて東城穣デベロプメントマネジャーは「副審はゴールライン上で見たいが、(シュートを追って)スプリントすると動体視力が衰える」と説明。その上で「間に合わない時はGKやDFがどれだけゴール内に入っているか。ボールがワンバウンドした位置」などから判断すべきだったとし、「誤審」という表現は避けた。
J2のためVARはないが、この試合を記者席で取材していたフリーランスの後藤健生さんと森雅史さんは、一目でゴールだと確信したという。意表を突いたロングシュートだったため、主審も副審も、第4の審判員からも町田ゴールは遠く、さらに2次元(平面)での視野のためゴールと判定できなかったのだろう。それならいっそ、第5の審判員(もしくはマッチコミッショナーでもいい)が、スタンドから両チームのゴール前でのプレーと、手元にパソコンを置いてDAZNのリプレーを確認しながら協力してジャッジしてはいかがだろうか。そうすれば、少なくともゴールに関する「誤審」は減るような気がする。
さらに、このシーンで町田GKポープ・ウィリアムがゴールだと主審に進言したらどうなるかという質問に対し「選手が自己申告しても、レフェリー4人が確認できなければ(ゴールとは)認められない」というのがJFAの見解だそうだ。ドイツやイタリアなど海外では、過去に選手の申告で判定が覆った例がある。しかし日本では、一度、主審が下した判定を覆すことはないというのが大原則となっている。
とはいえ、第9節の川崎F対浦和戦では、後半25分にFW興梠慎三がペナルティーエリア内で後ろから足を蹴られて転倒したものの、VARで確認した結果、ノーファウルという判定になった。第10節のFC東京対新潟戦では、後半アディショナルタイムに入ったところで右SB中村帆高がボールをトラップした瞬間に自らうずくまった。そこでボールを奪った小見洋太がショートカウンターを仕掛けようとしたところ、主審は小見の反則として笛を吹いた。中村は右アキレス腱を断裂したが、いわゆる“自爆"であり(アキレス腱の断裂にはよくある)、中村の負傷に小見は関与していない。この2つのプレーについては、次回のレフェリーブリーフィングで報告があればお届けしよう。
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Jリーグアウォーズで意外だった監督の評価/六川亨の日本サッカー見聞録
2024年のJ1リーグは神戸の連覇で幕を閉じた。2位の広島も粘ったものの、最後は神戸が湘南を3-0で退け自力優勝を達成。広島はG大阪に、3位の町田も鹿島に1-3で敗れて神戸に肉薄することはできなかった。 MVPには13ゴール7アシストで神戸を牽引した武藤嘉紀が選出された。今シーズンは、攻撃はもちろんのこと、守備でも泥臭く奮闘する“汗かき役”としてチームを牽引。当然の受賞と言える。 優秀監督賞には連覇を果たした神戸の吉田孝行監督(61票)ではなく、広島のミヒャエル・スキッベ監督が121票を獲得して2年ぶり2度目の受賞を果たした。3位は、開幕前は降格候補の1番手と思われていた東京Vの城福浩監督が44票を集めた。 12月9日に行われた東京Vのシーズン振り返り会見で、江尻篤彦強化部長はJ1昇格が決まったのは12月に入ってからだったため「(昇格が)決まってからだと市場に(選手も)残っていないかな」と遅いスタートを認めつつ、J1では何が大切かを城福監督と話したという。 そこでの結論は「質の高い選手がいないと勝てないよね」というもの。そこで「出場時間に恵まれていない選手をピックアップ」してG大阪から山見大登、京都から木村勇大らをレンタルで獲得。「出場機会に恵まれていない若い選手が結果を残してくれた」と総括した。 城福監督も「(6位は)我々のチームの規模、経験、選手層を考えたときに難しい戦いになることは覚悟していた。それは去年も同じで、昇格争いをすると思われていなかった。選手はまったく経験がない。そういう見られ方をしている中での6位は自負していい。昨日(の試合後)は、お前ら6位だ。たいしたもんだと選手を初めて褒めました」と開幕前の心境を明かした。 東京Vの歴史で、93年と94年こそリーグ連覇を達成したが、95年は横浜Mに敗れて2位。そこからは長い低迷時代に突入し、6位は96年の7位を上回る好成績だ。城福監督のシーズンを通してのチームマネジメント、激しく選手に闘争心を求め続けた姿勢は高く評価していいだろう。 意外だったのは、3位とJ1初昇格後に最高成績を収めた町田の黒田剛監督が16票で5位と低かったことだ。ルヴァン杯こそ決勝に進出したものの、リーグでは最終節まで残留争いに巻き込まれた新潟の松橋力蔵監督の29票にも及ばなかった。 推測するに、一発勝負の繰り返しである高校サッカーではリスクを排して守備を固め、ロングボールやセットプレーから得点を狙うスタイルは容認されても、プロの“興業”としての側面もあるJリーグでは、広島や新潟のようにポゼッションスタイルを監督も選手も「理想」としているのではないだろうか。 J2は昨シーズンのプレーオフ決勝で東京Vに同点弾を浴びて涙を飲んだ清水が堂々のJ1復帰を果たし、横浜FCも1年での返り咲きを果たした。J3では大宮がダントツの成績で1年でのJ2復帰を果たした。MF小島幹敏やFW杉本健勇らは“質”からいったらJ1レベルだけに、当然の帰還と言える。 意外だったのはJ2で勝点差1により3位に甘んじた長崎が、昇格プレーオフ準決勝で1-4と大敗したことだ。新スタジアムでは無敗を誇っていただけに、ショッキングな結果だった。そして岡山が初のJ1昇格を果たした。 J2昇格プレーオフ決勝は、富山まで取材に足を延ばした。リーグ戦終盤は5連勝で4位に食い込んだ松本は、準決勝でも福島に1点をリードされながら後半20分の野々村鷹人のゴールで同点に追いつき、規定によりリーグ戦上位の松本が決勝戦に進出。しかし3位富山との試合では、前半に2点をリードしながら後半に1点を返されると、アディショナルタイムの90+3分に左クロスから失点して無念のドロー。準決勝とは逆の立場でJ2復帰の夢は幻と消えた。 タイムアップの瞬間、11年ぶりのJ2復帰を決めた富山の選手による歓喜の輪がピッチに広がる一方、あと一歩のところで昇格を逃した松本は、司令塔の山本康裕ら3人以外は仰向けに倒れるか座り込んだまま動けない。残酷なまでの勝者と敗者のコントラストだった。 文・六川亨 2024.12.12 12:00 Thu2
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連鎖したJリーグのジャイキリ/六川亨の日本サッカーの歩み
J1リーグも残り4節となったが、毎年シーズン終盤は下位チームも残留を目指して必死の戦いを挑んでくる。このため“ジャイアントキリング”が起こりやすい。とはいえ第34節は各地で波乱が続出し、優勝争いと残留争いは予断を許さなくなった。 まず“金J”ではシュート4本のFC東京が2位の神戸に2-0と快勝した。荒木遼太郎の2アシストは見事だったし、GK野澤大志ブランドンと交代出場した波多野豪も決定機を阻止する活躍を見せた。 FC東京も4試合負けなしと好調を維持していたが、いずれもホーム味スタや国立競技場、埼スタ、日産と首都圏での試合というアドバンテージがあった。しかし神戸戦はアウェーのノエスタ。にもかかわらず神戸の猛攻を凌ぎきったのだから見事というしかない。 そして、こうした“ジャイキリ”は伝播するのか、翌日は柏が細谷真大のゴールで後半アディショナルタイムまで町田を1-0とリードした。試合内容でも町田を圧倒し、勝点3はほぼ確実かと思われたが、痛恨のPK献上で1-1のドローに終わった。 しかし、この勝点1と湘南の逆転勝利により、鳥栖のJ2降格が決定したのだから、柏にとっては残留へ向けて価値ある勝点1と言っていいだろう。 湘南は、ここ2連勝で過去の残留争いの経験値からしぶといところを見せていた。とはいえ広島に先制を許した段階で、首位相手の逆転劇は難しいと思ったものだ。ところが後半開始早々に福田翔生のゴールで同点に追いつくと、後半アディショナルタイムの2分には田中聡が強シュートを突き刺して逆転に成功。このまま逃げ切って広島に12試合ぶりの屈辱を味わわせた。 19位の札幌も名古屋に、18位の磐田もC大阪に、それぞれ2-0、2-1で勝って勝点3を積み上げ、残留争いから抜け出そうと必死だ。 そして浦和である。渡邊凌磨のゴールで先制したまではよかったが、後半は東京Vの反撃に防戦一方。クリアボールを綱島悠斗に押し込まれてJ1初ゴールで同点に追いつかれると、さらにCKから綱島にヘディングで叩き込まれて逆転負けを喫した。 綱島の活躍で勝点3をゲットした東京Vは、FC東京と同じ勝点51で7位に浮上すると同時にJ1残留も確定。一方、4連敗となった浦和は勝点39のまま16へ後退し、2試合消化試合が少ないとはいえ、気付けば降格ゾーンに足を踏み入れつつある。 優勝争いは依然として広島と神戸が勝点1差で争っているが、残留争いに目を向ければ23日には順延された第25節の浦和対柏戦が開催される。勝点39同士の6ポイントマッチだけに激戦は必至だろう。同日には勝点40の新潟も第35節の東京V戦を控えている。順位がどう入れ替わるのか、それぞれのサポーターにとっては、それこそ「天国と地獄」の水曜ナイターと言える。 さらにJ2では、昇格目前の横浜FCが仙台に0-3、同じく昇格にリーチをかけていた清水もホームで山形に1-2と敗れて昇格はお預けになった。こちらも両チームはリセットしての第36節ということになる。 果たして今後も“ジャイキリ”が続出するのか。上位、下位とも目の離せないJリーグである。 文・六川亨 2024.10.21 21:30 Mon4
