本当の「地域に根ざしたスポーツクラブ」へ 塩釜から日本サッカー改造を目指し続ける81歳・小幡忠義の想い【#あれから私は】

2021.03.11 21:00 Thu
◆公職を離れ原点へ
その後の小幡氏は「地域に根ざしたスポーツクラブ」という原点に戻り、継続して塩釜市で子供たちを教えている。

震災という一大事に小幡氏が最も強く感じたことは、子供たちを「自分で考えられる」ように育てなければならないということ。「指示を待つだけでなく、主体的に考えて行動する人物になってもらいたい」ということだった。

さらに、震災以降、小幡氏はあるポリシーを改めたという。それは保護者との関係性だ。

「今まで私は保護者と一切喋ってこなかったのね。えこひいき的なこともあるから。試合に出られない人もいるじゃないですか。でも、そこから保護者と何を目的にスクールをやるのかというところから話を始めたんですよ」

「問題は、世界が近代化されてAIが発達する時代になる。そうすると機械に使われる人間というのがいる。でも、機械を使うような人間を育てるべき。そのためには、自分で考えて行動できる子供たちを育てないと、いつまで経っても駄目だよね」

そこで、小幡氏が最初に選んだのはやはりサッカーだった。しかし、子供たちが前のめりになるまでは、時間がかかった。

「当初はサッカーを教えようとしたんですよ。ところがサッカーを教えると、みんな嫌な顔をするんですよ。『つま先を固めろ』とか。技術の話ね。でも、あんまり乗り気でなかった」

「そこで、たまたま子供たちが喜ぶように靴飛ばしをするようになった。そこから、俺も含めて変化が出てきてね。一番飛ぶ子が、体の使い方が上手いんですよ。スムーズに動くんだよね」

子供たちから学んだ体の使い方の重要性。小幡氏はその後、体の使い方に着目し、偶然にも“古武術”に出会ってのめり込んでいく。海外の恵まれた体格の選手たちに比べ常々フィジカルが弱いと言われる日本人選手にとっては、“古武術”の体の使い方を覚えることがサッカーの技術にも通じてくる“最適解”になる可能性があると考えているようだ。

こうした様々な出会いや考えの変化。これも震災が1つのきっかけになったと小幡氏は語る。

「こういういろいろなこともできるのもね。震災後に会っていろいろ指導を受けたり、震災を契機に、俺の進むべき道を変えてくれた。震災で亡くなった人たちのためにもそういうことを伝えていきたい。その思いで、今は遊びまわっています」

小幡氏は現在も、塩釜で1年生1人、2年生1人、3年生8人、4年生1人、5年生5人、6年生1人で全部で16人を教えている。規模が大きいとは言えないが、本人は「今が一番楽しい」と断言する。

「地域に根ざしたスポーツクラブ」。その根幹は揺らぐことなく、震災でより確固たるものとなった。小幡氏の目は未来を見据え、自らで体現し続けている。

81歳になった小幡氏が、塩釜FC創設者になるまでの半生を綴った一冊『小幡忠義の子供とともに育つそれが私のサッカー』が電子書籍で発売中!

指導者・小幡忠義はどのようにして生まれたのか。その精神の根幹に迫る。

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