本当の「地域に根ざしたスポーツクラブ」へ 塩釜から日本サッカー改造を目指し続ける81歳・小幡忠義の想い【#あれから私は】

2021.03.11 21:00 Thu
◆塩釜を襲った大地震
こうして、ベガルタ仙台の発足にも携わった小幡氏は、後にベガルタ仙台の役員になるとともに、宮城県サッカー協会会長という地位に就く。そんな中で起きたのが東日本大震災だった。

「地域に根ざしたスポーツクラブ」であった塩釜FCは、震災直後には機能がストップした役所に代わって復興の拠点となる。

「九州から車で来たり、山形の鶴岡から大雪の中ガソリンと食料を持ってきてくれたり、岩手や秋田からも運んできてくれたり、いろいろな思いで、友達のありがたみといういか、助けられてきた」

関わってきた人々に助けられた小幡氏だが、同時に「もの凄い勉強させてもらいましたね。ありがたいとか、いろいろな嫌なこととか。人間の性を見たりさ」と、やや沈痛な面持ちで当時を回想してくれた。

小幡氏は、震災当時、なでしこリーグに所属していた東京電力女子サッカー部マリーゼの引受先探しに奔走した。マリーゼの前身は、1997年に宮城県で設立されたYKK東北女子サッカー部フラッパーズで、2004年にチームを東京電力が引き継いだ過去がある。

2005年からはマリーゼとして活動するも、活動拠点が福島県双葉郡楢葉町および広野町にあるJヴィレッジにあったため、東日本大震災と原発事故を受けて活動が停止した。当時は、MF鮫島彩(現大宮アルディージャVENTUS)やDF長船加奈(現浦和レッズレディース)らなでしこジャパンのメンバーも所属。タレントとして活躍する丸山桂里奈さんも所属していた。

最終的には震災翌年の2012年にベガルタ仙台が新たな移管先となり、ベガルタ仙台レディースに。2021年秋から開幕するWEリーグに参戦するにあたり、マイナビ仙台レディースとして今に至っている。

YKK時代からチームを知る小幡氏は、震災当時はクラブ会員が会費を払うバルセロナのソシオ方式の導入を提案していたという。

「そういうもの使ったら面白いでしょ。面白いと言ったら悪いけど、今がチャンスだと。この女子チームを助けてくれと。みんなでソシオ制度を作って、今でいうクラウドファンディング。例えば年間1万円ずつくらい出してもらってね」

小幡氏は具体的な金額まで考えていたが、その想いは「地域に根ざしたスポーツクラブ」にするため。しかし、小幡氏の発想が先を行き過ぎていたのか、その提案は受け入れられず。その後、小幡氏は自ら公職を降りることとなった。

「どのクラブも地域に根ざしたと言っている。ただ、果たして本当に地域に根ざしているのかと。そこが一番の疑問点だった」

「日本のプロスポーツは社長が金集めに奔走しなければならない。大企業におんぶにだっこだね。だからいつまで経っても本当のクラブはできないんじゃないかと思っている」



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