今シーズンのレフェリースタンダード/六川亨の日本サッカー見聞録

2025.02.07 23:00 Fri
2025年の第1回レフェリーブリーフィングが開催[写真=六川亨]
2025年の第1回レフェリーブリーフィングが開催[写真=六川亨]
新シーズン第1回のレフェリーブリーフィングが2月6日、JFA夢フィールドでメディア関係者を集めて開催された。今回のテーマは、新たに誕生したPR(プロフェッショナルレフェリー)6名の紹介と、2025年シーズンのJリーグレフェリングスタンダードの説明だった。
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今回誕生した6名によってPRは総勢24名となったが、その理由を扇谷審判委員長は「世代交代」の必要性を訴え、佐藤統括マネジャーは「近年のサッカーはインテンシティが高くなり、レフェリーにもスプリント力が求められている」ことを明かした。その上で、日本人レフェリーがW杯でいつもピッチに立てるよう、国際審判員にはAFCにとどまらず、UEFAやCONMEBOL、CONCACAF主催の大会にレフェリーを派遣することの重要性を力説した。
そして25年のレフェリングスタンダードとしては(1)「選手生命を脅かすチャレンジ」の定義、(2)「ハンドの反則」の解釈、(3)「オフサイド」の適用範囲、(4)「GKによる得点または決定的な得点機会阻止」の際のレッドカードの提示が妥当かどうか、(5)「脳しんとうによる交代」の基本的な考え方についてレクチャーした。

いずれも、これまでのルール解釈に大きな変更点はなく、どちらかというと選手や監督に対するルールの説明と周知を今冬のJクラブのキャンプで実施したようだ。
たとえば(1)では、いくら正当にボールにチャレンジしても、それが過剰な勢いを伴っていたり、アタック後に相手選手の足を負傷させる危険を伴っていたりしたら、それは明らかな反則であり、警告や退場の対象であることを説明した。

よくあるケースとして、アタックした選手は笛を吹かれると「ボールに行っているでしょ?」と抗議することも多々あるが、例えボールに触れていてもそれが過剰な力を伴って、足の裏からボールにアタックしたら、危険な行為と見なされて警告か退場の対象行為になるという。「ボールに触れていればノーファウルではない」(佐藤統括マネジャー)ということだ。

難しいのは(2)のハンドの定義だろう。ルールが変遷していることも影響しているが、今回紹介された事象では、クロスやシュートに対してブロックに行った際に広げた手にボールが当たったらハンドであり、ペナルティーエリア内ならPKになる。

しかし、本人がボールにアタックして、意図しない方向にボールがリバウンドして手に当たっても、それはハンドにならない。具体例として、クリアに足を出したもののクリア仕切れず(クリアミス)リバウンドが手に当たっても、それはハンドにならない。同様に敵のクロスをブロックした際にそのリバウンドが近くにいた味方選手の手に当たっても、それはハンドにならないという。ボールが予期できない軌道(方向)に変わり(ディフレクション)、結果としてハンドになったものの、それはノーファウルということだ。

J1リーグの実例では、最初にレフェリーはハンドとしてPKを選択したが、VARで確認してノーファウルとしたシーンを映像で再現した。

ただし、シュートブロックに行った際に、身体に当たったボールのディフレクション(跳ね返り)が手に当たった場合はハンドになる。自分のミスや、味方のプレーからの予期できないディフレクションではなく、一連の流れから「手を広げた」結果と判断されるからだ。

(3)の「オフサイド」の適用範囲については、オフサイドポジションにいても味方選手のシュートに直接関与していなければオフサイドとは見なさず、ゴールを認めるというもの。

(4)はGKがペナルティーエリアを飛び出して相手選手を倒したら、ゴールはがら空きのため決定的な得点機会阻止(DOGUSO)として退場になる。

(5)は脳しんとうによる交代枠が1名追加され、それは対戦相手にも適用される。その際に使用される交代のカード(申請用紙)は通常の交代カードと色が違い、それは対戦相手にも渡される。

興味深かったのはアディショナルタイム(AT)の解釈だった。例えばAT4分と表示されたら、レフェリーは最低4分間プレーを続行し、4分59秒までに試合終了のホイッスルを吹けばいい。試合の流れを見て、レフェリーの裁量でタイムアップを告げることができる。

ただし、AT中に選手交代があり1分間ほど要したらトータル5分、さらにVARで3分を要したらトータル8分のATとなる。実際の試合では、勝っているチームの監督がAT4分を過ぎるとテクニカルエリアに出て、レフェリーにタイムアップを求めるシーンがよくある。しかしATは上記のような理由で延びることがあることに、佐藤統括マネジャーは理解を求めた。

さらに、J1リーグのアクチュアルプレーイングタイムは52分で、イングランドのプレミアリーグの58分と比べると6分間の差がある。「レフェリングの改善でアクチュアルプレーイングタイムは伸ばせる」(佐藤統括マネジャー)ことも課題として指摘した。果たして新シーズンのJリーグはどこまでアクチュアルプレーイングタイムを伸ばせるか。こちらも興味深いところである。

文・六川亨

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