いまだ謎の多いシーズン移行の実態/六川亨の日本サッカー見聞録

2023.10.26 20:00 Thu
©︎J.LEAGUE
Jリーグは10月24日に理事会後の記者会見を開き、「シーズン移行」についてのブリーフィングを実施した。

会見では現在の問題点として次の6点を指摘した。
「スタジアム確保」。「JFL/地域リーグ/大学/高校などとの連携」。「新人選手の加入タイミング/制度設計」。「試合日程案の精査」。「移行期の大会方式」。「財源の活用方法」。

「スタジアム確保」に関しては、ほとんどのクラブが行政所有の施設を借りていて、年度始めの4月には他の競技も含めシーズンの予約が埋まっているのが現状だ。しかしシーズンを以降すると他競技との調整が難しくなる。これは90年代にJSL(日本サッカーリーグ)が秋春制になった時も問題になったが、当時と今ではスタジアムを使う競技数が比較にならないほど増加している。今後は分科会で意見を集約するとのことだった。
「JFL/地域リーグ/大学/高校などとの連携」については、JFAを中心に意見交換を実施中で、JFL側からは「移行したい」との希望があり、プレミアリーグとプリンスリーグも夏場の試合を避けるため、9月に開幕し6月に閉幕する案を希望しているそうだ。

「新人選手の加入タイミング/制度設計」については、現在と同じく基本的には1月加入の方向で、シーズン移行によって問題となる選手登録枠の期限についてはシーズン途中から増枠するなど今後詳細を詰めていくという。
また契約内容についてJPFA(日本プロサッカー選手会)からABC契約の改革を訴えられているため、Jリーグも「抜本的な改革が必要」と前向きな姿勢を示した。

残る3つの課題に関してもJリーグ側からは検討案が提示されたものの、上記と同様に具体性が乏しいものだった。このためブリーフィングに移っても、詳細が不明のため質問のしようがない。

例えば最初に「新潟の中野社長が(シーズン移行に)反対している。どう決着をつけるのか?」という質問に対し、野々村芳和チェアマンの答えは次のようなものだった。

「決着のガバナンスは理事会になる。僕は反対する人、意見が違う人がいるほうがいいと思っている。以前はもっと多くの人が懸念を持っていたのかもしれないが、ていねいに長い月日をかけて話していくなか、どうやったら成長するかという点でシーズンを変えるのが一つの方法だなと考えている人が増えている。成長するための対案も含めて、面白いアイデアが出てくるのは期待しているし、自分の中でもそんな発想が出てこないか常にチャレンジしたいと思っている」と反対意見を歓迎しつつ、シーズン移行に賛同するクラブの増加を歓迎しているようだった。

大手通信社の「年内に結論を出すと言うが、6つの課題を解消できるのか」という質問に対して担当者は「大筋ここだけ確認できていればいいよねということと、これを解決しないと移行できないよねと項目、課題を詰めて検討しないといけない」と答えた。

我々メディアが、そして全国のファン・サポーターが知りたいのはまさしく「ここだけ」と「これ」の2点ではないだろうか。しかしこれらはいつまでたっても具体的に明示されていない。

次に大手新聞社が「移行の議論はあったがなかなか進まなかった。今回ここまで進んだ要因はACL以外に違いはあるのか」という質問をした。

それに対する野々村チェアマンの答えは「いっぱいあるし、いろんな方向から考えないといけない状況に変った」とこちらも具体性に乏しい。そして「選手は世界を見て戦うようになった。成長の順番としてそう。次は僕たちが目線を高くするフェーズになったと思う。今回はACLに加え夏のパフォーマンスの低下も調べてみてクラブではっきりした。夏の過酷な環境をサッカーだけに限らず考えないといけない。成長するためには移行を考えないといけない。総合的にそうなった」と説明した。

シーズンを移行しなくても、日本はW杯でドイツやスペインを破ったし、久保建英や三笘薫といった欧州5大リーグで活躍している選手も出現するようになった。シーズンを移行することによるリスク――WEリーグのように長いシーズンオフにより注目度が下がり、観客動員に苦労するといった――は皆無と言えるのだろうか。

最後に質問したのは秋田放送の記者だった。会見は大手町のJリーグ事務局で行われたが、Jのクラブは地方にも数多く存在するため同時並行でズームによるブリーフィングも実施された。

そして記者は「反対しているクラブの数は」と聞くと、担当者は「公開はしません。移行を聞いているわけではありませんので」と答えてブリーフィングは終了した。時間にして1時間にも満たなかった。

不思議なのは、ここまで会議とブリーフィングを重ねながら、各クラブから具体的な意見が少しも漏れてこないことだ。旗幟鮮明にしているのは新潟の中野社長だけだろう。

同氏の意見は「私ども降雪地域としては12月末まで、あるいは2月の頭からというのは当然雪が降り、この施設も使えませんので、それについては『したい』『したくない』という感情論ではなくて『できる』『できない』という現実論でアルビレックスは『シーズン移行反対です』と表明しております」と首尾一貫している。

Jリーグは今年12月の理事会でシーズン移行の判断を下すようだが、実施は26年とまだ時間的な猶予はあるだろう。であるならば、今年の年末から来年の年始(3月)にかけて、シーズンを移行した際のシミュレーションを豪雪地帯で実施したらどうだろうか。ウインターブレイクの実態と、練習環境や試合開催のためには何が必要になるのか。そのための費用はどれくらいかかるかなどだ。

もしもシーズンを移行したなら、豪雪地帯のスタジアムは観客席を100%カバーするスタンドがマストになるかもしれない。クラブライセンスのハードルは高まることが予想される。

そうそう、Jリーグは24日の理事会で、八戸や福島など7クラブに施設基準の『例外規定』としてJ2やJ3のライセンスを交付した。万が一にも、ライセンスを例外的に交付するからシーズン移行に賛成するような指導があってはならないことは言うまでもない。

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