EAFF E-1選手権の歴史をおさらい/六川亨の日本サッカーの歩み

2022.07.19 09:30 Tue
Getty Images
いよいよ19日からEAFF-E1選手権がスタートする。日本は初戦で香港とカシマスタジアムで対戦するが、18日には谷口彰俉や宮市亮ら4選手がズームによる会見に応じ、キャプテンに指名された谷口は「寄せ集めのチームなので普段通りにはできないでしょう。ピッチ内はもちろんのこと、ピッチ外でもいろんな話をしようと選手には伝えています」と難しいチーム状況であることを認識していた。
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そして森保一監督は「できるだけ多くの選手を起用しながら大会に臨むつもりです」と話したが、そうなると「寄せ集めのチーム」だけに一抹の不安を感じてしまう。それでも今大会はW杯や五輪の予選と違い、特別な大会ではないだけに、“Jリーグ選抜”が東アジアの3カ国を相手にどれだけできるのか、それはそれで楽しみでもある。このEAFF-E1選手権だが、02年の日韓W杯後の03年に東アジア選手権として第1回大会がスタートした。日本と韓国、それに中国を加えた3カ国の持ち回りで、残り1チームは香港、北朝鮮、オーストラリアら7チームがセントラルの予選を戦い、上位1チームが本大会に出場できるシステムとして今日まで続いてきた。
基本的に2年に1回の大会だったが、アジアカップや五輪の関係で必ずしも「2年に1回」のサイクルが守られてきたわけではない。今年の大会も、本来は中国で昨年開催予定が新型コロナウイルスの影響で延期され、さらに日本開催へと変更された(日本→韓国→中国という開催サイクルで、前回19年は12月に韓国の釜山で開催された)。

大会の趣旨としては、東アジアのレベルアップにあった。歴史的に日本と韓国は「日韓定期戦」でレベルアップを図ってきたが、“永遠のライバル”のため、時として親善試合の結果が監督の進退に影響することもあり、1991年を最期に自然消滅した。
その代わりということではないが、90年に東アジア4カ国によるダイナスティカップが始まり、スポンサー(マールボロ)が撤退したことと、日韓W杯を契機に東アジアサッカー連盟(EAFF)が02年に設立されたことで(初代会長は岡野俊一郎JFA会長)、今大会はスタートした。

第1回大会がスタートした90年当時はサッカー専門誌の記者として、イタリアでW杯を取材中だったが、帰国したらすぐに中国で開催される大会を取材するように命じられて苦労した覚えがある。

アジアは東西に長く、生活習慣はもちろんのこと、宗教など様々な違いがある。サッカーにおいても中東の8カ国(サウジアラビア、クウェート、イラク、UAE、カタール、バーレーン、オマーン、イエメン)は1970年に中東の大会であるガルフカップをスタートさせて切磋琢磨してきた。

最多優勝は70年代に強さを誇ったクウェートで10回だ。これに続くのがサウジアラビアと近年は成長著しいカタール、古豪のイラクの3回。そして逆に石油と天然ガスといった自然資源を保たない“中東の最貧国”と言われるイエメンはベスト4にすら入ったことがない。

ちなみにイランは文化圏が違うので(話す言語も中東はアラビア語に対しイランはペルシャ語)、アラビア半島の国々とは一線を画している。

このガルフカップから遅れること四半世紀、96年にはタイガービールの協賛から東南アジア選手権とも言うべき「タイガーカップ」がスタートしている。大会は08年に日本企業のスズキがスポンサーになり、AFF(ASEANサッカー連盟)スズキカップと名称が変更されたが、フィリピン、ベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、ミャンマー、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、インドネシア、東ティモールの11カ国が参加。

東南アジアの盟主とも言うべきタイが最多6回の優勝を果たしているが、近年は監督に韓国人のパク・ハンソ氏を迎え、もう引退したがJリーグでもプレーしたストライカーであるレ・コン・ビン氏を擁したベトナムが急成長を見せている。

ガルフカップやスズキカップに遅れて始まったEAFF E-1選手権。過去の政治的な状況を踏まえれば、東アジアの4カ国(日本、韓国、中国、北朝鮮)がいくら政治とは関係のないサッカーとはいえ足並みを揃えるのは難しいことであることは容易に想像できる。その突破口となったのが、アジアで初めて開催された日韓W杯でもあることは間違いないだろう。

改めて言うまでもないが、今大会はAFC(アジアサッカー連盟)のAマッチと認定されていないため、参加国は海外組を招集できない。AFCが認定するAマッチはW杯予選とアジアカップだけだからだ。しかし、それはそれで今大会は面白いのではないだろうか。

6月の4試合に出場した日本代表の海外組、いわゆるレギュラー組が海外から帰国して試合に出場したとしても、正直代わり映えしないメンバーに食傷気味なのは僕だけではないだろう。固定メンバーの森保ジャパンに風穴を開ける意味でも、今大会の“国内組”の活躍に期待しているJチームのファン・サポーターは多いと思うがいかだだろうか。


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