青森山田の強さ3原則とは?/六川亨の日本サッカーの歩み

2022.01.12 22:00 Wed
©超ワールドサッカー
記念すべき第100回全国高校サッカー選手権は、青森山田の3大会ぶり3度目の優勝で幕を閉じた。初戦の大社(島根)を6-0の大差で圧倒すると、準々決勝の東山(京都)こそ2-1の接戦となったが、準決勝の高川学園(山口)、決勝の大津(熊本)を6-0、4-0と一方的な試合内容で撃破して、インターハイ、プレミアリーグ・イーストに続く3つ目のタイトルを獲得した。

青森山田の強さは、技術的にも戦術的にも優れた選手を中高一貫指導などで育てながら、屈強なフィジカルと無尽蔵とも思えるスタミナで対戦相手を凌駕したことだ。彼らの試合を今大会で初めて見たベテランの記者は「期待していたけど、こんなつまらないサッカーなの?」と疑問を呈した。

しかし、それも彼らの“強さ"の一端である。
今大会では前回優勝の山梨学院(山梨)が初戦で佐賀東(佐賀)に、プレミアリーグ・イーストの流通経大柏(千葉)が近大和歌山(和歌山)に1回戦で敗退した。さらに前評判の高かった静岡学園(静岡)もPK戦で関東第一(東京)に敗れた。

一発勝負のトーナメントでは何が起こるかわからない怖さがある。青森山田はそれを承知の上で、極力リスクを排したサッカーで結果を求めた。東山や高川学園が5BKで守備を固めてきたら、ロングスローやCK、FKといった“飛び道具"でゴールをこじ開けた。足でのシュートは身体を投げ出してブロックできるが、ヘディングシュートは防ぎようがないからだ。
青森山田のCB丸山大和は決勝戦でニアに飛び込みGKの鼻先でヘディングから先制点を奪ったが、マーカーを振り切った時点で勝負ありだった。

そしてこのセットプレーからの空中戦は、今大会中に亡くなられた小嶺忠敏監督が国見時代に得意とした戦法であり、永井秀樹氏や大久保嘉人氏らテクニシャンを擁していても、フィジカルとスタミナ、空中戦の強さで相手をねじ伏せた。

たぶん当時の国見も今の青森山田も、ポゼッションスタイルのサッカーをやろうと思えばできただろう。しかし、あえて封印し、「球際、切替え、運動量」の3原則を徹底的に鍛えて実践した。それが最も効果的だったのが、高川学園との試合の後半だった。

前半で2点を失った高川学園は、後半になると反撃のため4BKに戻し、パスをつないで攻め込もうとした。それは逆に青森山田が最も得意とするスタイルだ。ミドルサードでのこぼれ球や、相手が抜きにかかっても、屈強なフィジカルからマイボールにする球際の強さを発揮。そしてボールを奪うやいなや、すかさず反撃に転じてショートカウンターを仕掛ける。この切替えの速さ、戦術眼の高さは特筆ものだった。

ボランチのMF宇野禅斗は視野が広いため、サイドでフリーの選手にワンタッチでミドルパスを付けることができる。すると両サイドハーフに加えてサイドバックも攻撃参加するため、例え一度は相手ボールになっても高い位置でプレスをかけてボールを奪い返し、ゴールに結びつけていた。

一昨年は静岡学園に逆転負けを喫し、昨年は山梨学院にPK戦で涙を飲んだ。このため、よりリアリストになってのリベンジが今大会の青森山田だったのではないか。そう感じさせるほど、彼らの強さは際立っていた。

とはいえ、小嶺監督の国見がそうだったように、絶対的な存在にはなれないのも歴史が物語っている。青森山田のサッカーに対し、来年はどこの高校がどんなスタイルで挑むのか。これもまた高校選手権の楽しみである。

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