ウォーキング・フットボールを初体験/六川亨の日本サッカー見聞録

2021.10.31 21:00 Sun
「ウォーキング・フットボール」という名の競技があることは知っていた。しかし、実際にプレーしたことはもちろん、見たこともなかった。そこでJFA(日本サッカー協会)が10月29日に夢フィールドで開催することを知り、初めて参加した。
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夢フィールドの芝生のピッチに集合したのは30人ほどの老若男女で、最高齢は70歳。そして初心者よりも経験者の方が多かった。集合した参加者をサッカー経験者と未経験者に段階的に分け、ミックスするようにして1チーム6人で編成。最初の1時間は初の試みとなる「ウォーキングタグラグビー」に挑戦した。こちらはタックルの変わりに腰につけたタグを取られると、ボール保持者はパスをしなければならないルール。もちろんパスは後方の選手にしか出せない。ラグビーも初めて経験するので、こちらはなかなか難しかった。
そして「ウォーキング・フットボール」である。コートは25メートル×35メートルの大きさで、まず走るのは禁止。その定義は「片方の足裏が地面に着いている」こと。このため「早歩き」はオーケーだが、どこまでを「早歩き」と認定するかは審判の判断になる。それ以外の禁止事項として「ヘディング」、「腰より上に浮いたパス」、「タックル」、「スライディング」、「ドリブラーからボールを奪う」、「フィールドプレーヤーのペナルティエリアへの侵入」があった。

例えば攻撃側の選手がドリブルをしていたら、守備側の選手はその前に立ってブロックするのはいいが、足を出してボールを奪うことはできない。とはいえ、走ることはできないので、歩いてマークを外したり、抜き去ったりするのは至難の業だ。このためドリブルは有効な攻撃手段とはならない。
そこで重要なのは、スペースを見つけて動き出しを早くして、素早くパスをつなぐことになる。ここで重要なのが、守備側の選手より先にフリーのスペースに移動していることだ。なぜなら、スペースに出されるパスは弱いとカットされるが、かといってちょっとでも強いと歩いては追いつけず、タッチラインやゴールラインを割ってしまうからだ。

「パスは足元へ」がウォーキング・フットボールの基本で、実はこれが一番難しい。ついつい前方のスペースにパスを出してしまいがちだ。そして「走れない」ことで、男女や大人と子供の体力差がなくなり、高齢者でも楽しめる。そして競技としては技術の正確性と周囲の状況判断の早さ、さらに先を読む洞察力が求められる。これが「ウォーキング・フットボール」の一番の魅力であると同時に、育成年代の選手にも効果的ではないかと思った次第である。

試合は7分のローテーションで回したが、11人制のサッカーとフットサルは強度の高い負荷がかかり、それは「ウォーキング・フットボール」の比ではない。しかし「走れる」ことで自陣に戻り、多少でも休むことができる。しかし「ウォーキング・フットボール」は走れないことで、逆に攻守にわたりずっと「歩いて」いないといけない。強度は高くないものの中程度の負荷がずっとかかっている状態で、これはこれで心地よい疲労感が残る。

もしも次に「ウォーキング・フットボール」に参加する機会があれば、万歩メータで歩数を数えてみたい。景色を見ながらのウォーキングもいいが、「ウォーキング・フットボール」は相手との競り合いなので、モチベーションも高まることは間違いない。興味のある方はJFAのHPで詳細を確認し、体験会に参加してみてはいかがだろう。


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