WEリーグ開幕戦で感じたこと/六川亨の日本サッカーの歩み

2021.09.14 12:10 Tue
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©WE LEAGUE
昨日12日、華々しく開幕したWEリーグ。味の素フィールド西が丘の東京V対浦和の試合を取材した。試合はカウンターから浦和のDFラインの裏を突いた東京Vが植木理子のゴールで先制すれば、前線に安藤梢(165cm)と塩越柚歩(166cm)の大型FWを擁し、後半からはエースの菅澤優衣香(169cm)を投入した浦和が、菅澤と塩越のゴールで2-1と逆転勝利を収めた。

開幕戦にもかかわらず、タイムアップの瞬間に東京Vの選手はピッチに崩れ落ち、浦和の選手は優勝したかのように喜びを爆発させた。それだけ女子初のプロリーグである「WEリーグ」の誕生は、彼女たちにとって画期的な出来事だったのだろう。

WEリーグのチームには15名以上のプロ契約選手を保有することが義務づけられている。そして東京Vの登録選手は20名。そのせいかどうか詳細を確かめることはできなかったが、スタメンのリザーブ選手の登録枠は7名に対し、東京Vは6名の選手しか登録していなかった。ベテランの岩清水梓や大会前に移籍した宇津木瑠美らはメンバー外だった。ここらあたりもプロとなったことで、クラブチームの運営(経営)の難しさが出ているのかもしれない。

そもそもWEリーグは、地盤沈下の著しい日本代表の強化のための環境整備、選手の地位向上、小中高生の育成など底辺の拡大を目的に創設された。

93年に開幕したJリーグもそうだったが、「昨日までアマチュアの選手が、今日からプロになりました」と言ってすぐに技術が向上するわけではない。こちらは長い時間を要する。しかしそれでも環境が整備されたおかげで徐々にではあるが、選手のフィジカル(スピードとスタミナ)強化とプロとしての自覚は促進された。選手は毎日サッカーに専念できるからだ。

そして今までは、対外的に所属クラブの親会社の社員だったりアルバイトだったりという身分が、晴れて「プロ選手」と名乗れるようになった。これまでも「プロ選手」と名乗ることはできても、社会的に認知されていなかった。その意味でもWEリーグの創設は意義深い。

底辺の拡大も時間をかけて地道にやるしかないが、昨日の西が丘サッカー場では、バックスタンド右側に水色のユニホームを着た女子小学生の一団がいた。Jリーグが成功した一因に「地域密着」がある。WEリーグも同様に、ホームタウンの女子小学生チームを毎試合招待したり、サッカー教室を開いたりして地域密着を積極的に進めるべきだろう。

すでに西が丘サッカー場の周辺には、東京Vが北区と板橋区をホームタウンにするポスターが掲出されている(西が丘サッカー場は北区にあるが板橋区とも隣接)。そして、いかに露出を増やして認知度を高めていくか。これが今後のWEリーグの一番の課題になるだろう。選手たちは子供たちにとって、憧れの存在にならなければいけないからだ。

露出に関してはもう一言。昨日の試合では東京VがA4で6ページの観戦パンフレットを無料配布していた。これまであまり女子リーグを取材してこなかったので、サッカー専門誌が発行しているJリーグのような、全チームを網羅した選手名鑑が売っていないか探したところ、残念ながら発見することはできなかった。

もしかしたらコロナ禍で、金銭のやりとりによる感染のリスクを避けるためスタジアム内では販売していなかったのかもしれない。そこでネットで検索したら、ぴあMOOKから「オフィシャルガイドブック2021-22」(1100円)が発行されているのを知ったので、早速ポチッと購入した。

どんな選手が、どのチームにいるのか調べるのも名鑑の楽しみではないだろうか。そして試合会場でも、名鑑を販売していることをアナウンスするだけでも効果はあると思うが、いかがだろうか。まずはファンに知ってもらうことがプロ選手のスタートだと思うからだ。

【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた



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大混戦のJ2残留争い/六川亨の日本サッカーの歩み

JリーグはJ1の優勝チームが決定し、J2では磐田が1シーズンでのJ1復帰を決めた。20日の第36節ではJ1からの降格3チームも決定。3チームが同日降格するのは史上初の出来事だそうだ。キャスティングボートを握っていたのは意外にも清水。彼らが広島に1-0と勝利したことで勝点を36に伸ばした。この結果、2試合を残して勝点27の横浜FCと仙台、同29の大分は連勝しても“勝点36”に届かずJ2降格が決定したわけだ。 3チームが低迷した原因は様々だろうが、新型コロナウイルスによる観客減から財政難に陥り、補強が上手く進まなかったり、新外国人選手の合流が遅れたりするなどのアクシデントもあったかもしれない。 それはどのチームも同じだが、王者の川崎Fは守田英正の移籍によりジョアン・シミッチを獲得しただけでなく、東京五輪後の三笘薫の移籍にはマルシーニョを補強するなどピンポイントで戦力の維持に努めたのはさすがと言える。 そしてJ1からの降格は残り1チームとなり、次節の27日には降格圏内の17位・徳島(勝点33)が15位の湘南(同36)と直接対決する。湘南は引き分け以上でJ1残留が決定する優位な立場だ。もしかしたら過去の“残留争いの経験”が生きたのか、直近5試合は2勝3分けで勝点9を稼いで降格圏から脱した。 27日には同じく残留争いを繰り広げている16位の清水(勝点36)はアウェーで浦和と対戦する。浦和にとってはホーム最終戦に加え、今シーズン限りでの引退を表明した阿部勇樹、来シーズンはチームを離れる槙野智章と宇賀神友弥のラストゲームでもある。モチベーションの高さはもちろんのこと、スタジアムのファン・サポーターも特別な思いでこの一戦を見守ることが予想されるだけに、清水にとっては厳しい試合になるだろう。 清水も徳島も敗戦なら残留争いは最終節にもつれる。徳島は広島戦、清水はC大阪戦で、得失点差も徳島は-20、清水も-19と拮抗。両チームともホーム最終戦だけに、意地と意地のぶつかり合いになるに違いない。 J2リーグに目を移すと、あと1勝で磐田の優勝が決まり、残る昇格枠の1つを勝点82の京都と同76の甲府が争っている。京都は次節の千葉戦にドロー以上で昇格の決まる優位な立場だ。一方、残留争いに目を向けると、こちらは残り2試合で14位の山口以下9チームに降格の可能性がある大混戦となっている。 第40節では21位・愛媛との直接対決を2-1で制した相模原(勝点34の20位)が降格圏を脱して18位(勝点37)に浮上したが、まだまだ危険水域にいることに変わりはない。 残留争いに巻き込まれている9チームのうち、北九州と金沢、栃木をのぞいた6チームがシーズン中の監督交代を決断している。松本は柴田監督から名波監督、愛媛は和泉監督から實好監督、相模原は三浦監督から高木監督、大宮は岩瀬監督から霜田監督、群馬は奥野監督から久藤監督、山口は渡邉監督から名塚監督といった具合だ。 ただし、監督を交代して多少の成果は出たものの、劇的な改善ができていないため現在の順位にとどまっているのも事実。28日の第41節では相模原対松本、北九州対栃木、12月5日の最終節では大宮対群馬、愛媛対山口の直接対決も控えていて、いずれにしても予断を許さない状況が続いている。 そして残留争いで、直接対決に加えてもう1つのキャスティングボートを握っているのがJ3リーグの優勝争いだ。現在は熊本が勝点51(26試合)で首位に立ち、これを勝点50の宮崎(27試合)、同49の岩手(26試合)が追っていて、J2に昇格できる2位圏内は4位の富山(26試合で勝点45)まで可能性がある。 ところが熊本と優勝争いを演じている宮崎にはJ2クラブライセンスが交付されていない。このため宮崎が上位2位以内でシーズンをフィニッシュしてもJ2には昇格できないため、J2からの降格チームは4から3に減り、19位のチームは残留することができる。 昨シーズンJFLから昇格し、初のJ3リーグにもかかわらず優勝争いを演じているのは見事と言うほかない。九州で唯一Jクラブのない県が宮崎だったが、J3で存在感を十分に発揮したと言えるだろう。熊本とデッドヒートを繰り広げているが、J2クラブライセンスがないのは返す返すも残念でならない。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2021.11.23 21:45 Tue
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守田の代役は? 酒井は間に合うのか? そして三笘を起用する勇気を/六川亨の日本サッカーの歩み

11月15日、オマーンとの決戦を翌日に控えた日本代表の4選手がズームによる取材に応じた。そこから見えてきた、オマーン戦のスタメンを探ってみよう。 システムは2試合連続して勝利を収めた4-3-3を踏襲するものと思われる。その上で注目されるのは2つのポジションだ。まずはリーグ戦の負傷でベトナム戦はベンチ外となった酒井宏樹である。15日の会見でも足の付け根の負傷について「よくなってます」と言いつつ、「練習の中でやれることも増えている」と、まだ完治していないことを明かした。 そして「もっと早く治したかった。ケガというのは先が読めないので当初の予定とは違う」と筋肉系のケガのため長引いていることと、昨シーズンにマルセイユで捻挫した際、ガマンしてプレーしたことで「半年を棒に振った」経験から、「試合に出たいとか、根性で試合に出るのではなく、チームにとってプラス材料をもたらせられるかを判断している」ことで、オマーン戦の出場はほとんどないだろう。ベトナム戦に続きベンチ外の可能性もある。 そうなると右SBの候補はベトナム戦と同様に山根視来になるのか、室屋成ということになる。ベトナム戦では長友佑都、守田英正、南野拓実の3人による左サイドからの攻撃が多かった。このため山根はバランスをとって攻撃参加を控えたのかもしれないが、物足りなさを感じたものだ。 とはいえ、ベトナム戦での疲労が残っていなければ、あえて室屋を使う理由が見当たらない。順当なら山根で決まりだろう。 問題は累積警告で出場停止となり、ポルトガルへ帰国した守田の代わりに誰を起用するかだ。現状で代役候補は原口元気、柴崎岳の2人である。個人的には旗手怜央も候補に入れて欲しいところだが、オーストラリアとの2位争いに加わるためと、当該対戦成績を五分に戻す意味でもオマーン戦は勝利が義務づけられる。このため旗手はベトナム戦に続きベンチ外の可能性が高い。 そうなると選択肢は原口か柴崎か。ベトナム戦での柴崎は田中碧と交代で、逆三角形の前目のポジションに入り、決定的なシュートを2本放った。このシーンについて柴崎は「ポジションが前目ということもあり、ビルドアップ、組み立てよりフィニッシュの場面で自分の良さを出そうと思った。シュートやラストパスなど、ゲームメーカーというよりフィニッシャーという役割をより意識した」と、ポジションに応じてプレーを変えていた。 しかしベトナム戦は1-0とリードした状況だったこと。左サイドからの攻撃を担っていた南野と長友がベンチに下がり、前線には1人で突破できる浅野拓磨が、SBには中山雄太が後ろで構えたことで、柴崎が起用された時は守備への負担がかなり軽減されていた。 このためスタメンで南野と長友が起用される限り、左サイドのインサイドハーフは攻撃力が持ち味の柴崎より、「攻撃で前に推進力をもたらせるし、守備のインテンシティも強い」(遠藤航)原口の方が適任と言える。柴崎が、守田のように落ちてカバーに入り、長友を前線に押し出すようなプレーができたとしても、それは彼の能力を生かしているとは言えない。 もしも柴崎を使うとしたら、やはりボランチであり、遠藤とのダブルになるだろう。そうすると田中を頂点とする三角形の中盤になる。3人が状況に応じてポジションをチェンジし、交互にボックス内に飛び出せればそれも面白いが、3人のユニットは試合でトライしたことがない。このため現実的ではないのと、逆三角形の中盤でなければ4-3-3のメリットも生きないだろう。 やはり消去法でも原口の起用に落ち着く。原口は前回のロシアW杯最終予選のアウェーUAE戦でもオマル・アブドゥルラフルマンを完封した実績があるのも心強い。 以上が明日のスタメン予想だが、最後に森保監督には三笘薫の起用を是非ともお願いしたい。伊東純也のスピードは酒井も「純也みたいに1人で剥がせる選手は戦術を立てても役に立たない」と言うように効果は絶大だ。右サイドにスピードスターがいるのだから、南野と交代で起用するなら、同じタイプの浅野ではなくドリブラーの三笘の方が効果的なのは火を見るより明らかだ。 森保監督には三笘を起用する勇気を持ってもらいたい。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2021.11.16 18:30 Tue
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チームを立て直すには辞任しかなかった長谷川健太監督/六川亨の日本サッカーの歩み

「監督交代」という負の連鎖反応が止まらない。 J1リーグでは10月23日の第33節、仙台対広島戦で0-2と敗れた広島の城福監浩督が任期途中で退任。沢田謙太郎ヘッドコーチが残り5試合の指揮を執ることになった。11月3日の第34節ではFC東京に0-4と敗れた清水のロティーナ監督が「双方合意の上、契約を解除」したと発表され、ヘッドコーチやフィジカルコーチも契約解除となり、平岡宏章コーチが新監督に就任してJ1残留を目指すことになった。 そして11月6日の第35節では横浜FMに0-8と大敗したFC東京の長谷川健太監督が、翌7日に辞意を表明し、チームもそれを受理。この原稿を書いている時点で後任監督は未定のままだ。 元々、長谷川監督は就任4シーズン目の今季は無冠に終わったため、契約満了での退任が濃厚だった。にもかかわらず突然の辞任は、やはり横浜FMにクラブワーストとなる0-8で大敗したことが原因であることは想像に難くない。 「勝負は時の運」とも言われる。その一方で「勝負に“れば"、“たら"は禁物」という言葉もある。それらを承知で横浜FM戦を振り返れば、“中2日の試合でのターンオーバーが失敗した"と言えるのではないだろうか。 清水戦ではこれまで戦い慣れた[4-3-3]で、CBにはレバノン代表のジョアン・オマリ、トップ下にはテクニシャンにもかかわらず、好判断で前線からのプレスのスイッチ役になっていた髙萩洋次郎を起用。前線は永井謙佑、アダイウトン、ディエゴ・オリベイラと不動の3人を並べ、前半の飲水タイムの前に3点を奪って勝利を決定づけた。 ところが横浜FM戦では負傷から復帰したCB渡辺剛をスタメン起用し、ジョアン・オマリはベンチにも入れなかった。そしてボランチには青木拓矢に代わって攻撃が持ち味の品田愛斗、サイドMFには東慶吾、2トップにも6試合の出場停止明けのレアンドロをスタートメンバーに送り込んだ。 ところがレアンドロはボールが足に着かず、前線で攻撃の起点になれない。品田はロングパスに非凡なものを見せたが、守備の強度が足りなかった。1点目は仲川輝人へのパスが、タイミングが合わずにルーズボールとなったが、渡辺剛は慌ててタックルでクリアしたものの、これが自陣に戻る長友佑都に当たって前田大然に拾われ突破を許した。落ち着いて対処すればよかっただけなのに、慌てたのは試合勘が鈍っていたとしか思えない。 2点目は前半18分、森重真人が仲川をカニばさみタックルで倒してPKを与えたが、2点のビハインドなら後半での挽回も可能だっただろう。その直後に青木がウォームアップを始めたのは、やはり品田では横浜FMの圧力に耐えられないと指揮官が判断したに違いない。 その後はGK波多野豪のミスから3点目を許すと、前半39分には左CKから森重が不要な反則でPKを与えると同時に2枚目のイエローカードで退場処分となる。この退場が致命的だった。ベンチに代役となる選手は19歳の大森理生しかいない。前半41分、1試合もJリーグでプレーしていない選手を、ディエゴ・オリベイラに代わって長谷川監督は送り込まなければならなかった。 そしてこの交代も疑問に思ったものだ。試合から遠ざかっているレアンドロをベンチに下げるべきで、ディエゴ・オリベイラの方が相手にとっては脅威のはずだからだ。もちろんケガをしていれば別だが……。 長谷川監督は0-3となった前半28分で右SB中村拓海に代えて渡邊凌磨を、品田に代えて青木を送り込む。渡邊を右SBに置いたのは攻撃力を期待してのことだろう。中村にとっては予想外の交代だったかもしれない。ベンチに戻ることなくロッカーへ直行した。そして退場処分を受けた森重をベンチコートで迎えたのは監督やコーチではなく髙萩だった。 [4-4-1]のFC東京は横浜FMの猛攻を耐えるしかない。そこで後半8分、前田にハットトリックを許して0-5となった時点で、長谷川監督はレアンドロに代えて三田啓貴、永井に代えてアダイウトンを1トップに起用し、東を3バックの中央に置く[3-5-1]を採用した。ボランチは青木、三田、安部柊斗のトリプルで、右ウイングバックに長友、左ウイングバックに渡邊を置くシステムだ。 すると防戦一方から徐々にではあるが反撃のチャンスを迎える。このシステム変更について長谷川監督は「トレーニングではまったくやっていないです。大森が10人で、Jリーグ初出場ということで心臓がバクバクだったと思います。その中で後半、少しでも落ち着いてプレーさせるにはキャプテンをそばに置いて、落ち着いてプレーさせたいという思いと、マリノスの両サイドが張り出してきて、4バックを新しいメンバーでやるにはちょっと辛い状況だった。 攻撃でもサイドで高い位置を取れるように、その意味では東を真ん中に置いて、攻撃時には長友と渡邊を高い位置に持ってきてワンチャンスにどうにかできればという思いでやりました。 トリプルボランチでサイドの補填と1トップに入ったときのフォローを狙いましたが、これはトレーニングでやっていないので選手たちも戸惑ったと思います。その中でも最後の最後まで切れることなくよくやってくれたと思っています」と説明した。 残念ながら結果は伴わなかったものの、このアイデアと決断は賞賛したい。森保一監督には是非見てもらいたかった長谷川監督の采配でもある。 そして監督辞任である。あまりに早い交代に中村は不満を感じ、何もできなかった品田と失点に絡んだ渡辺剛、8失点の波多野は自信を失い、森重は悔恨と同時に指揮官への不信感を募らせたかもしれない。 チームは崩壊の危険すらある。それを防ぐには、指揮官を代えるしかないだろう。長谷川監督がそう判断したとしても何の不思議はないし、正しい選択だと思う。寂しい幕切れではあるが、これが“勝負の世界"の厳しい現実でもある。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2021.11.09 17:00 Tue
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埼スタで生ビールの日常が/六川亨の日本サッカーの歩み

ルヴァン杯決勝は名古屋が持ち味である堅い守備から初の戴冠を果たした。先制点がもう少し遅かったらもつれた試合になったかもしれないが、後半開始早々に1点を奪ったことで、マッシモ・フィッカデンティ監督は早くも逃げ切りの采配を次々と繰り出し、狙い通りの完封勝利を飾った。 この試合では、久しぶりに懐かしい光景を見ることができた。 いつもの埼玉スタジアムは緊急事態宣言が解除されてからも観客の上限は1万人だ。このため記者席などのある5階のスタンドにはメディアと他チームのスカウトなど関係者しかいない。人数が少ないわけだから、当然飲食などのお店はクローズされたままだ。 しかしルヴァン杯決勝は上限の1万人に加えて、「ワクチン・検査パッケージに関する技術実証」対象試合のため入場人数の制限を緩和した。そしてチケットは完売し、1万7,933人の観衆が詰めかけた。 5階の記者席の隣や上の席にも久々に観客が入り、飲食のお店も再開されたが、生ビール専用のゲートが設けられ、大きな紙コップに入ったビールをこぼさないように運ぶファンの姿を見てちょっと感動してしまった。 こうした光景を見るのはいつ以来か記憶にないほどだ。かつては初夏になれば、味の素スタジアムや等々力陸上競技場では生ビールのタンクを背負ったアルバイトの売り子が、記者席の前の通路を歩きながら声を出して売っていたものだ。 昨日行われたJリーグとNPB(日本野球機構)の連絡会議と午後の実行委員会後の会見では、Jリーグは11月から規制を緩和して収容人数の50パーセントまでの入場やビジター席の設置、さらには各自治体の判断次第になるがアルコールの販売も可能になる。さらに「ワクチン・検査パッケージ」も並行して実施する予定だ。 フラッグに関しても、下が密の状態になるゴール裏のビッグフラッグは自主的に禁止しているものの、普通のフラッグを振る行為は解禁になる。村井満チェアマンは、このままコロナが沈静化すれば来シーズンは100パーセントの入場を目指すとしている。 残念ながら声を出しての応援については解禁のメドは立っていない。ヨーロッパと違い、たぶんマスクは日常的な使用が常識になるかもしれないので、マスクを外しての応援にサポーターからどれだけ理解が得られるかどうかだろう。 その村井チェアマンも、来年3月で4期8年の任期を終える。1月31日には新チェアマンの氏名も公表されるようだ。これまでチェアマンは、現チェアマンが後継者を指名し、候補者はJクラブの実行委員(社長)と限られていた。それらの慣習を打ち破ることになったのが第5代の村井チェアマンであり(慣習を覆したのは村井チェアマン自身ではない)、現在進行中の次期チェアマン選定にも一切関わらず、公明正大性を保っている。 任期の最後の2年間はコロナとの戦いでもあった。そしてその戦いは、新しいチェアマンになっても続いていくだろう。ただ、新チェアマンには進むべき道の方向性が示されているのではないか。この2年間でJリーグが培った知見は膨大な量になるし、コロナ禍で戦ったスタッフは健在だからだ。 今日は一部スポーツ紙で次期チェアマンの有力候補が実名で報じられ、Jリーグはすぐさま否定する声明を出す一幕もあった。「火のない所に煙は立たない」というが、はたして報道通りになるのかどうか。 それよりも、いつか機会があれば、村井チェアマンの8年間を検証したいと思っている。こちらの方が意義深いものになるのではないだろうか。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2021.11.02 20:00 Tue
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ホームタウン制を再考する/六川亨の日本サッカーの歩み

「ホームタウン制撤廃」――日曜日のスポーツ紙の一面を飾った記事に驚いたサッカーファンも多かっただろう。インターネットへの書き込みも相当数だった。そのほとんどは、報道に批判的な書き込みだった。 折しも日本代表はW杯予選で苦戦している。チームを率いる森保一監督や、田嶋幸三JFA(日本サッカー協会)会長の責任を問う声も多い。 2つは別問題であるが、ファン・サポーターに「一石を投じた」という意味で意義があるのではないだろうか。 スポーツ紙の報道に関して、問題となったのは次の2点だ。まずは「ホームタウン制の廃止」である。そして「クラブ名にネーミングライツを認めることを検討する」ということだ。 すぐにJリーグは村井満チェアマン名で『JリーグではJクラブの本拠地を「ホームタウン」と呼び、Jクラブはホームタウンと定めた地域で、その地域社会と一体となったクラブづくりを行いながらサッカーの普及、振興に努めなければならないと定めています。このホームタウン制度について撤廃・変更の事実は一切なく、今後、Jクラブの営業、プロモーション、イベント等のマーケティング活動における活動エリアに関する考え方の方向性について議論しているものです。Jリーグが創設当初から掲げている地域密着の思想が揺らぐものでは全くありません』との声明を出した。 「ホームタウン制」はJリーグの根幹であるだけに、撤廃という表現はあまりにも“過激”だった。この言葉は、Jリーグの掲げる「地域密着」と同義語でもある。これがなければ三菱や日立といった親会社を持たない地方のクラブは存続できなかっただろう。 その一方で、数々のタイトルを獲得した鹿島は新日鐵住金からフリマアプリのメルカリにスポンサーが変わり、FC東京も来シーズンから親会社の東京ガスからミクシイに経営権が変わるなど、“変革”を余儀なくされているのが現状でもある。 ホームタウン制は揺るぎがないだろう。これがなければJリーグの存続意義も問われるからだ。その一方で、かつて存在した横浜フリューゲルスが鹿児島などを「準ホーム」にしたケースは今後もないにしても、Jリーグ誕生時に川淵チェアマンが「東京をホームにするチームはない」としながら、その後にFC東京や東京Vがホームにしたように、“東京都”では変革が起こりえる可能性は十分にある。 以前にもコラムで書いたが、FC東京と東京V、さらには町田も23区内にホームタウンを拡大したい動きがある。こうした動きは葛飾区や江戸川区、北区、新宿区などでも将来のJリーグ入りを目指して活動しているクラブがあるのが現状だ。 いずれも大企業に支えられたクラブではない。そのためには試合会場の確保のため地元自治体の支援が不可欠になる。そこで「地域密着」は絶対条件だ。その上で、クラブの存続のためには将来的にスタジアムだけでなくチームにも「ネーミングライツ」を認めざるをえなくなるかもしれない。 そうした事柄を考え、意見を出し合い、議論する。緊急事態宣言が解かれたので、酒場で意見を交わしてもいい。それこそがサッカーとJリーグが持つ「地域密着」による「コミュニティ」ではないだろうか。その一石を投じたという意味で、スポーツ紙の報道は価値があったと思うが、みなさんはいかがだろう。 <hr>【文・六川亨】<br/><div id="cws_ad">1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた</div> 2021.10.19 21:52 Tue
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