いよいよメダル獲得が迫っているのに…/原ゆみこのマドリッド

2021.08.07 18:00 Sat
©︎RFEF
「こんな時期に大変だわね」そんな風に私が当惑していたのは金曜日、スペイン代表のオリンピック決勝が翌日に迫りながら、世間の話題がメッシ一色になっているのに気がついた時のことでした。いやあ、実を言うと、その騒ぎが始まったのは自分がカディス(スペイン南部のビーチリゾート)から戻るAVE(スペインの新幹線)に乗っていた木曜の夕方からで、バルサが6月末でフリーになっていたメッシの契約延長ができない旨をツィッターで発表。それもその日の朝までは、もう選手との合意はできていて、サインも練習開始も秒読みと言われていただけに、夜のスポーツニュースを見た時には私も呆気に取られたんですが、ちょっとお、もうシーズン開幕まで1週間しかないんですよ。
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うーん、翌朝11時から記者会見したラポルタ会長によると、ラ・リーガの決めた人件費の上限は収入の70%。これをクリアするため、メッシに年棒50%オフを頼み、他の選手たちにもかなりの減額をお願いしていたものの、選手の売却も予定通りには進まないとあって、いまだに110%という超オーバーしているバルサだったんですけどね。メッシが抜けても95%とは、とにかくバルトメウ会長以下、前経営陣の無計画な年棒アップも問題ですが、新体制になってからもアグエロ、エリック・ガルシア(マンチェスター・シティとの契約を満了して入団)、メンフィス・デパイ(同オリンピック・リヨン)、エメルソン(ベティスから移籍)とこの夏、すでに4人も補強。永遠のライバル、レアル・マドリーは今のところ、バイエルンを卒業して移籍金なしで入ったアラバだけ、アトレティコもマルコス・パウロ(フルミネンセ)とロドリゴ・デ・パウル(ウディネーゼ)だけの緊縮財政基調というのにもしや、バルサは欲張り過ぎではない?実際、サラリーキャップは全クラブ共通ですから、ラ・リーガの至宝であるメッシだけを例外的にお目こぼしをしてほしいという、ラポルタ会長の主張も厚かましかった気がしますしね。ただ、木曜にはラ・ラーガが国際投資ファンドのCVCから、27億ユーロ(約3500億円)の資金提供を受けることが発表され、その分け前でバルサも幾分、人件費が助かるみたいな話もあったんですけどね。こちらは少々、得体が知れないのと、返済期間が40年と超長期というのもあって、マドリーとバルサは即座に反対を唱えているんですが、この辺はまだどうなるか、様子を見ていかないと。
そんなことはともかく、昨年はアトレティコが出る予定だったものの、直前にコロナクラスターが発生し、中止になってしまったカランサ杯(カディス主催の夏の親善試合)に今年もエントリーしたと聞いて、今週は私も3年ぶりの試合観戦&海水浴のミニバケーションを取ることに。いやもう、マドリッドを出ること自体、最後がいつだったか、思い出せないぐらいなんですが、まさか、宿に到着早々、これを見たら、即ビーチとウキウキしながら、観戦していた日本vsスペインのオリンピック準決勝が延長戦までもつれ込むとは。

この日はデ・ラ・フエンテ監督も準々決勝のコートジボワール戦でハットトリックの大活躍だったラファ・ミール(昨季はウォルバーハンプトンからウエスカにレンタル)に期待して、今大会初先発させていたんですけどね。やはり、チームのゴールがなかなか決まらない病は治っていなかったか、何度か、彼もシュートを撃ちながら、スペインは90分間で得点を挙げることができず。後半10分には吉田麻也選手(サンプドリア)がゴール前でミケル・メリノ(レアル・ソシエダ)を倒したとして、ペナルティが宣告されたんですが、それもVAR(ビデオ審判)により、取り消しとなり、結局、2試合連続の延長戦に入るんですから、もうこうなると、心配なのは選手たちの体力だったかと。それが何と後半終盤、ラファ・モールをスタメンに入れるため、その日は控えに回されたアセンシオ(マドリー)がペドリ(バルサ)に代わってピッチに入ったところ、延長戦後半10分にgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めているって、もしやこれって神采配?
結局、この1点が決め手となって、スペインは0-1で決勝進出を果たしたんですが、嬉しいことに今度は中3日、土曜午後1時30分(日本時間午後8時30分)のブラジル戦まで休む時間がありますからね。相手も準決勝のメキシコ戦0-0で延長戦、更にはPK戦までもつれ込んで、4-1の勝利ですから、お疲れ具合は似たようなもんでしょうが、スペインは金曜前日になって、ずっと期待を持たせていたセバージョス(昨季はマドリーからアーセナルにレンタル)の足首がやはり治らず、欠場することが決定。当人自ら、「メディカルスタッフと一生懸命リハビリして、大会に戻れるよう頑張ったけど、no ha podido ser/ノー・ア・ポディードー・セル(できなかった)」とツィッターで告知していましたが、元々、全治3、4週間のネンザなんですから、これは仕方なかったかと。

というより、コートジボワール戦開始8分でケガを再発したミンゲサ(バルサ)の例もありますし、ここでムリして、まだマドリーに戻るのか、レンタルを続けるのか、先行きの決まっていない新シーズンに出遅れる方がマズいと思いますが、決勝を前に気をつけてもらいたいのは一点だけ。そう、先週日曜に宮城から戻り、再び選手村に滞在中の彼らは、ペドリなども「Te trataban muy bien cuando pedías una foto a Gasol u otro que estaba en la Villa/テ・トラタバン・ムイ・ビエン・クアンドー・ペディアス・ウナ・フォト・ア・ガソル・ウ・オトロ・ケ・エスタバ・エン・ラ・ビジャ(写真撮るのを頼んだ時、バスケのパウ・ガソルや他の選手村にいるアスリートもとても対応が良かった)」と言っていたように社交に励む機会も多いよう。

ダニ・オルモ(ライプツィヒ)に至っては、「la Villa Olímpica es increíble/ラ・ビジャ・オリンピカ・エス・インクレイブレ(オリンピック選手村は凄いよ)。このコロナ禍の中で規制がなくて、マスクもしないでよくて、透明な仕切りがあるから、食堂で離れて食べなくていいんだ」とAS(スポーツ紙)のインタビューで話していたんですが、え、そうなんですかあ?スペインの選手は皆、ワクチンを打っているんですが、試合前はもちろん、試合後に陽性だったりしたら、オリンピックは終わっても日本から、出られなくなったりしますからね。ブンデスリーガもスペインリーガ同様、開幕があと1週間と迫っているため、どの選手もお給料を払っているクラブに迷惑をかけないようにしてくださいね。

そして水曜はいよいよ、カランサ杯だったんですが、数年前に私が来た時に比べると、カディス市内こそ、往年のようにビーチは大盛況、真夜中までリゾート客でお店や街路が賑わっているのは同じだったんですが、ようやくラモン・デ・カランサ改め、ヌエボ・ミランディージャに観客が入れるようになったとはいえ、まだ州の規制により、キャパの25%のみ。クラブのアボナドー(年間指定席保有者)にこのアトレティコ戦か、ラ・リーガ最初のホームゲーム2試合、レバンテ戦かオサスナ戦を選んでもらい、チケットを購入した4500人が観戦できるだけとあって、いやあ、昔はアトレティコのチームバスから、選手が降りてくるのを待つファンがスタジアム正面入り口で密になっていたもんですけどね。

今では出入り口も裏に変わったのか、たまたまバスが来たのに遭遇し、写真を撮っているのは私しかいなかったなんて、かなり淋しい思いもしたものですが、予想通り、この日はスタメンのトップチーム選手が9人にまで増員。要は先発したカンテラーノ(アトレティコBの選手)がシメオネ監督の三男、ジュリアーノとボルハ・ガルセス(昨季はフエンラブラダにレンタル)のFW2人だけと、いよいよシーズン開幕が近づいていることを匂わせることに。先制点を挙げたのも、その日がプレシーズンマッチデビューだったカラスコで、ええ、唐突に専門外の右のカリレーロ(長い距離をカバーするSB)を任されて、序盤はミスも多かったんですけどね。41分、ジュリアーノからパスを受けると、エリア内で敵DFをかわし、シュートを決めているんですから、有難いじゃないですか。

そのカラスコ、そしてヒメネス、アトレティコデビューとなったデ・パウルが下がった後半はだんだん、カンテラーノ度が高くなっていったんですが、GKオブラクがペレアのシュートを2度paradon(パラドン/スーパーセーブ)するなど、何とか持ちこたえていたにも関わらず、残り4分、そのペレアに3度目の正直で同点ゴールを奪われてしまったから、さあ大変。おかげでこの夏、最初の親善試合、ヌマンシア(RFEF2部)戦同様、トロフィーがあるため、PK戦が始まったんですが、せっかくここ2試合、左のカリレーロに起用され、プレーのレベルが上がってきていたサウールが最初のPKをGKヒルにセーブされてしまってはねえ。

ヘスス・ヒル杯では相手のPKを2本弾いた控えGKのゲルビッチがこの日は出ず、昨季終盤は2試合連続でPKを阻止、リーガ優勝に多大な貢献をしたオブラクがカディスの4人のキッカーを1本も止められなかったのも災いしたか、いえ、どんなに完璧なGKにも弱点というのはあるんですよ。彼の場合はそれがPK戦というだけで、最後はアトレティコ4人目だったジュリアーノが外して、4-2でカディスが勝利。オブラクは準優勝の小さいトロフィー、そしてカディスが3人がかりでないと掲げられない巨大なトロフィーをゲットして、2011年以来、アトレティコの10回に並ぶ戴冠となりましたが、やはり、スタンドにポツポツ状態でも、昨季は1度も得られかったファンの応援を背にすると、ホームチームが頑張れるというのは私も実感できましたっけ。

そんなアトレティコはこの日曜にプレシーズンマッチ最終戦を迎え、午後5時(日本時間翌午前0時)から、ロッテルダムでフェイエノールト戦に挑むんですが、順番から言うと、今度はコケ、マルコス・ジョレンテのスペイン・ユーロ代表組が参加できる予定。ボルフスブルクで腹痛による入院となったエルモーソもすでに回復していますし、ゴールドカップ決勝でアメリカに負けたメキシコ代表から帰還したエレーラも、こちらはカディス戦で先発したオリンピック・アルゼンチン代表帰りのネウエン(昨季はグラナダにレンタル)同様、もう実戦態勢に入っている選手ですからね。最終合流組のルイス・スアレス、コレア、ロディ、トリピアー、負傷のリハビリ中のジョアン・フェリックス、マルコス・パウロ、フェリペ、サビッチを除いて、この試合はかなり15日の開幕セルタ戦に近いスタメンが見られるんじゃないでしょうか。

そして同じ水曜日にはマドリッドの弟分たちも親善試合をしていて、ヘタフェはサラゴサ(2部)とのカルロ・ラペトラ杯うぃスコアレスドローで終わったものの、PK戦5-6で勝利。火曜に入団プレゼンがあったFWサンドロ・ラミレス(ウエスカから移籍)も出場していて、あとはククレジャが東京から帰って来るのを待つばかりに。土曜にはイギリスまで遠征して、ブライトン戦でプレシーズンマッチを締めますが、ここまで5試合全勝というのはかなりいい感じかと。一方、ホセ・ソリージャでシウダッド・デ・バジャドリー杯を戦ったラージョは3-1で今季は2部で戦う相手に敗戦。イラオラ監督のチームもここまで1勝2分け1敗と悪くはないんですが、最終戦となる土曜のマドリッド勢対決、昨季の昇格プレーオフ準決勝で下しているレガネスには格上の風格を見せることができるといいですね。

え、それで日曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)から、やはりプレシーズンの総仕上げとして、オーストリアでミラン戦をプレーするマドリーはどうしているのかって?いやあ、今週頭からはカセミロ、ミリタオ、ビニシウスのコパ・アメリカ参加ブラジル代表組がバルデベバス(バラハス空港の近く)に到着しているんですが、まだオリンピック組のアセンシオ、バジェホ(昨季はグラナダにレンタル)、セバージョス、そして久保建英選手(昨季はビジャレアル、ヘタフェにレンタル)が戻っていませんからね。ベンゼマとアラバはコロナから回復しているものの、オドリオソラは自宅隔離中。アザールがチーム練習に復帰したのは朗報とはいえ、クロースが恥骨炎を患って、しばらくお休みすることになったのはアンチェロッティ監督にとって、計算外だったかと。

どちらにしろ、メンバーはセルヒオ・ラモス(契約延長できずPSGに移籍)とバラン(マンチェスター・ユナイテッドに移籍)がいなくなったぐらいで、昨季とあまり変わっていませんからね。むしろ、メッシのPSG入りが噂されていることから、いよいよ、玉突きでエムバペが来るんじゃないかというギャラクティコ獲得への期待が高まっているんですが、こればっかりはねえ。先日のレンジャーズ戦では2-1と遅れを取ってしまったマドリーですが、あれから2週間、暑いマドリッドで練習を積み上げている分だけ、進歩した試合を見られるといいのですが…。


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