ペットボトルのラベル問題は14年W杯でも発生/六川亨の日本サッカーの歩み

2021.07.27 23:05 Tue
Getty Images
ちょっと古いが、7月19日の朝日新聞デジタルの記事を以下に引用する。佐々木凌記者の署名原稿である。
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茨城県鹿嶋市内の小学校が、茨城県立カシマサッカースタジアム(同市)で東京五輪の試合を観戦する児童の保護者に向けて、会場にペットボトルを持ち込む場合は出来るだけ大会公式スポンサーのコカ・コーラ社製とするように文書で求めていたことがわかった。 市教委は「市として特定のメーカーを勧めた事実はない」とし、どのメーカーでも持ち込めることを学校に改めて伝えたという。
スタジアムでは22日からサッカーがおこなわれる。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、県は、学校連携観戦チケットを持つ児童・生徒に観客を限っている。

市教委によると、市内の小中学校16校が参加した説明会が9日にあった。大会組織委員会の担当者から、コカ・コーラ社のペットボトルはそのまま会場に持ち込めるが、他社製品の場合はラベルをはがすようにと指導があったという。「スポンサーに配慮をお願いしたい」との発言もあった。
市教委は、飲料メーカーでラベルの扱いを変えると混乱をもたらしかねないとして、12日に各校へ配ったマニュアルでは、すべてのラベルをはがすように記していた。

保護者向けの文書を出した小学校は、説明会に参加したうちの1校だった。市教委は「学校が、組織委の趣旨を正直に受け取った結果、誤解を招いてしまった」と説明している。

簡単に説明すると、7月22日の男子サッカーの初戦を前に、観戦に招待された小中学生が熱中症対策に「スタジアムにペットボトルを持ち込む際は、五輪スポンサーのコカ・コーラ社の飲料水にして下さいね」と忖度したわけだ。

その後、「他社製品も持ち込んでいいけど、その際はラベルをはがしてね」と変わった。しかし市教委は混乱するので「すべてのラベルをはがしましょう」という結論に達した。

もちろん五輪スポンサーのコカ・コーラ社がそんな独占的なことを指示するわけがない。そんなことをしたら逆に不買運動につながりかねないからだ。

指示した“大会組織委員会の担当者"とは、おそらく大手広告代理店の電通のコカ・コーラ社担当者だろう。

86年メキシコW杯でのことだった。旧知の知人で電通のW杯担当者は1週間前くらいからメキシコシティに乗り込んでいた。市内の高級ホテルの1フロアを借り切っての一大イベントである。

その彼が神経を尖らせていたのが、スポンサーの権利を守ることだった。いまから35年も前のことである。当時はスポンサーの権利に関して今とは比較にならないくらい認識・管理はルーズだった。メインメディアセンターを始め各地のメディアセンターのテレビはすべてスポンサーであるJVC(日本ビクター)でなければならない。

しかしメキシコシティのメインメディアセンターに設置されているのはアメリカ製のテレビだった。開幕までにテレビを総入れ替えしている時間はない。そこで彼は、全部のテレビのロゴマークに黒のマジックテープを貼ることで難を逃れた。

86年メキシコ大会はJVCの他にキヤノン、フジフィルム、セイコーと日本の4社がオフィシャルスポンサーだった。当然、彼らの権利も彼は守らなければならないし、4社が招待した観戦者のチケット確保と食事会の手配など、のんびりサッカー観戦している余裕はなかった。

そして話は変わり14年ブラジルW杯である。日本の初戦が行われるレシーフェでのこと、プレス入り口で入場する際に手荷物検査があり、コカ・コーラ社以外のペットボトルはすべて没収された。おまけにバナナ(安価で腹持ちがいい)も取り上げられた。

対応しているのは学生ボランティアのため、彼らに文句を言っても自己判断はできない(こちらもポルトガル語はできない)。

ただ、それはどの会場でもトラブルになったようで、第2戦が行われるナタウでは、コカ・コーラ社以外のペットボトルはラベルをはがせば持ち込みオーケーなので事前にはがし、スナック類の持ち込みも認められた。

今回、カシマスタジアムで起きたことは、すでに7年前にも起きていた。スポンサーの権利を守ることが彼らの仕事でもあることは理解できる。ただし、物事にはすべて“適度"というものがある。度を超した場合は、かえってマイナスのイメージにつながってしまう。その判断を誤り、辞任・解任を余儀なくされた関係者が多いのも、東京五輪の特徴かもしれない。


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