東京V永井監督のコメント力。FC東京はミスから自滅/六川亨の日本サッカーの歩み

2021.04.12 21:40 Mon
©超ワールドサッカー
先週末の10日は久しぶりにJ2リーグの東京V対山口戦を取材した。昨シーズンまで山口の監督を務めた霜田氏(元JFA技術委員長)は、古くからの知人である。このため山口の監督に就任以来、機会があれば試合を見に行くようにしていた。

ただし昨シーズンも、この日の対戦相手である東京Vの永井監督が「非常にボールを大事にして、(ボールを)保持しながらいいサッカーをやられている。監督が代わっても同じ方向性の素晴らしいチーム」と言ったように、ポゼッションにこだわっていた。そして、そこを対戦相手に狙われてもいた。

DF陣でのパス交換からボランチを経由してサイドに展開しようとしても、ボランチが狙われてボールを失いショートカウンターを食らったり、DF陣がプレスを受けてミスから失点したりしていた。
しかし東京V戦ではベテランCB菊地が今シーズン初スタメンを飾り、柏や仙台、神戸でプレーした渡部とコンビを組んだことで、ピンチとみるや無理してパスをつながずロングキックで逃げるなどリスク管理を優先していた。

それでも東京Vの両サイドハーフの攻め上がりによる素早い攻撃を防ぎきれず、1-3の逆転負け。渡邉監督も「内容もフラストレーションのたまる試合で申し訳ない」とファン・サポーターに謝っていた。
一方、勝った東京Vで興味深かったのが、永井監督の次のコメントだ。誰かに質問されたのではなく、会見の最後の方で自ら発言した。

「あえて反省と言うと、後半に3対1で山下が運んで行って、最終的に山下がシュートを打った。我々の目的は崩すのではなく、最終的にはゴール。もう1度真剣に考えたい。今後につなげるためにも大事なプレーだった」

問題のシーンは後半36分、山口陣内でCB菊地にFW佐藤凌とFW山下がプレスをかけてボールを奪い、山下がドリブルで突進してGKと1対1からシュートを放った場面だ。シュートはゴールの枠を捕らえることができず、右上に大きく外れた。

ドリブルで突進する山下の右側にはプレスをかけた佐藤凌と、後半から出場したMF石浦の2人がフリーでいたため、山下はGKを引きつけてから2人にパスを出すという選択肢もあった。その際に注意するのはオフサイドだけ。そうすればダメ押しの4点目を奪うことができた。

もしも山下がシュートを決めていれば、永井監督もあえて指摘しなかっただろう。それでも3-1と快勝しながら、決定的な1プレーにこだわった。

かつて日本代表の監督を務めていた岡田武史氏は「勝負の神様は細部に宿る」と言ったことがある。永井監督も、勝敗はもちろんのこと、1プレー1プレーのディテールにこだわるタイプの“勝負師"かもしれない。

そして翌日のJ1リーグでは、首位の川崎FがFC東京を4-2と退けた。堅守速攻を武器にするFC東京なら、破壊的な攻撃力を誇る川崎Fに一矢報いることはできるのではないか。ディエゴ・オリベイラとアダイウトンならゴールをこじ開けられるのではないかと期待したが、残念ながら開始早々のミスによる失点でFC東京は大敗した。

FC東京はCB渡辺剛が札幌戦でのレッドカードから出場停止。右SBの中村帆高も負傷と台所事情の苦しさはあった。このためアンカーで存在感を発揮していた森重をCBに下げ、ボランチに青木と安部を置き、永井を今シーズン初スタメンに起用する4-4-2を採用した。この2トップは優勝争いを演じた一昨シーズンの布陣である。

しかし永井は肩の負傷から当時の輝きを取り戻してはいないし、移籍したばかりの青木と、夜の会食が発覚して謹慎処分の解けた安部(前節の札幌戦ではイージーなパスミスが目立った)のコンビは、やはり急造の感は否めなかった。せめてもの救いは今シーズン出番の少ない高萩のクロスから内田がJ1初ゴールを決めたこと。

それにしても、川崎Fの強さは別格と感じないではいられない。5月2日は現在2位の名古屋と対戦するが、この1戦の勝敗にかかわらず独走の予感が早くも漂っている。あまりにも強すぎるチームの出現は、個人的にはリーグをつまらなくすると思っている。

そういう意味では圧倒的な強さを誇るバイエルンやパリSG、ユベントス(今シーズンは例外)などヨーロッパのリーグに近い存在になりつつあるのかもしれない。

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