Jリーグが決定した脳しんとうの交代枠での疑問/六川亨の日本サッカー見聞録

2021.01.30 17:45 Sat
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Jリーグは今年最初の理事会会見を、女子プロリーグのWEリーグも同様にメディアブリーフィングを28日に実施した。WEリーグの岡島チェアは開幕を9月中旬の11、12日になるプランを明かし、プレシーズンマッチを4月に開催する予定だ。

Jリーグはコロナ禍における「みなし開催」のルール、「移籍ウインドー」の期限、「交代枠5人の継続」と「飲水タイム」の変更点、「脳しんとう」に関するルールの制定などを決定した。これらはすでに当サイトの国内ニュースで報じられているので詳細は割愛する。

脳しんとうに関してJリーグは、5人の交代枠とは別に1試合1人の交代を認めた。
村井チェアマンも「選手の安全を守るために極めて重要。本人が気付かずにプレーを続けてしまう。一定期間に2度だと生命に影響があるので速やかに対処すべき問題だった。トップリーグのJリーグが啓発・予防することは極めて重要だと思う」とルールの必要性を訴えた。

おそらく村井チェアマンには18年の柏GK中村の事例が脳裏にあったのではないだろうか。
中村は18年5月の名古屋戦で、巨漢FWジョーと競った際に空中で体が1回転して頭から落下。すぐに試合はタイムアップを迎えたものの、中村は起き上がることができずに担架でピッチを後にした。その後、脳しんとうと頸椎捻挫の診断で入院を余儀なくされた。

さらに7月のFC東京戦では東のクロスに対応しようとしたところ、FW富樫の膝が中村の頭部に入り、仰向けに倒れたまま意識を失った。名古屋戦と同様にそのまま病院へ搬送されて2度目の入院となり、3ヶ月半の離脱となった。

その後、中村は無事に復帰したが、クロスを処理する際にボールの落下点に入れていないと感じるシーンを目撃した。柏ファンのカメラマンにその話をすると、彼も同様の印象を抱いていた。

元日本代表FWの原副チェアマンも現役時代は「何度もやりましたよ。1年くらい半身に痺れが残りました。後遺症が出るというのはいろんなデータを見てもハッキリと分かっていること。本人も『大丈夫です』と言ってしまう」と、骨折や捻挫と違って目に見えない症状もあることの難しさを話した。

ずいぶん昔のことだが、1982年元旦の天皇杯決勝でのことだった。日本鋼管(93年に廃部)対読売クラブ(現東京V)の試合(2-0で日本鋼管が初優勝)で、日本鋼管の日本代表でもある長身FWが空中戦で頭部を負傷した。

脳しんとうのためゴール裏で治療を受け、ドクターは交代してベンチに下がるよう促したが、本人は断ってピッチに戻ろうとした。しかし2、3歩ほど歩いたところで意識を失い前のめりに倒れるところをチームメイトに支えられ、ベンチに下がらざるを得なかった。

今回のルール化によりドクターの判断で交代させられることが明記されたのは朗報だ。とはいえ、「脳しんとうによる交代は、その前に何人の交代が行われているにかかわらず、行うことができる」としながら、「1試合において、各チーム最大1人の脳しんとうによる交代を使うことができる」と限定することに疑問を感じるのは筆者だけだろうか。

たぶんこれは、IFAB(国際サッカー評議会)の通達通りの決定だろう。しかし、90分の試合中に脳しんとうでプレー続行が不可能になる選手は1人とは限らない。「コロナ禍で3人から5人に交代枠が増えたのだから、それで対応すればいい」という意見もあるだろう。

個人的には、交代枠が3人だろうが5人だろうが、「選手の安全を守る」(村井チェアマン)ためなら、Jリーグは独自に「人数制限のない」脳しんとうの交代枠を作るべきである。そうすることで、何か不具合が生じるとも思えないからだ。

そして最後に、28日のJリーグ理事会で一番聞きたかったことは、昨年12月に参与となった元東京V社長の羽生氏の件についてである。28日発売の週刊文春はクラブを子会社化したゼビオが、羽生氏の不正会計や背任疑惑を報じた。

すでに昨年暮れから羽生氏とゼビオ側は、ネットメディアなどを通じてそれぞれの「言い分」を発信。主張は真逆だっただけに、その成り行きに注目していた。

この件に関し村井チェアマンは「オリジナル10で(この導入はさすが!と思った)、日本サッカーにとってブランド力が高く、ヴェルディとともにJリーグはスタートしました。メディアは様々に報じていて危惧しています。いまは事実確認をするしかありません。現在チームからは『事実を確認中』との報告なので待っています。1月中旬にヴェルディから内部監査に関して、事実確認をしていると監査部に報告があり、注視しているところです」答えるにとどめた。

現状、答えられるのはここまでだろう。これまた個人的な感想だが、「1月中旬に~」以降の「監査部に報告があり注視している」は、言わなくてもよかったと思う。それをあえて言ったことに、問題の深刻さと村井チェアマンの決意を感じてしまった次第でもある。

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