ACL蔚山戦VARの疑惑/六川亨の日本サッカーの歩み
2020.12.15 17:30 Tue
先週末はJ1リーグのFC東京対広島、J2リーグの大宮対山口を取材した。NACK5での取材を終えて帰宅してからは、テレビでACL準決勝の神戸対蔚山を観戦したが、なんとも後味の悪い試合だった。
それでもGK前川のファインプレーがなければ延長前半で2点は食らっていただけに、激闘の立役者であることに間違いはない。蔚山との準決勝だけでなく、今大会の前川は「守護神」と呼ぶにふさわしいプレーを連発した。年内にも噂される日本代表のミニキャンプに招集してみてはいかがだろう。
そして蔚山戦は、VARについて考えさせられた。
しかしリプレーを見る限り、キム・インソンはオンサイドに見えたし、ヨハンセンもマーカーと並んでいるように見えた。というより、VTRのカメラの位置から判断するのは難しく、タッチラインから撮影された映像でないと正確なジャッジは下せない。
このためオフサイド(ゴール)かどうかの判断に関してVARがレビューを求めたのは適切なジャッジだったし、映像による検証の結果、主審がゴールと認めたのだから従うしかない。
問題は神戸の2点目、佐々木のゴールだ。
ご存じのようにVARは次の4つのケースで適用される。
ゴールかどうか(ゴールに結びつくプレーも含む)
PKかどうか
一発レッドかどうか
間違った選手への退場処分と警告処分
ハーフライン付近でボールを奪った安井が攻撃の起点となり、ドウグラスのドリブルによるカウンターから最後は佐々木が押し込んだ、鮮やかなゴールだった。一連のプレーで主審は笛を吹くことなく、一度は佐々木のゴールを認めた。
ところがVARは1)の事象から主審にレビューを求めた。最初は正直、どのプレーが問題になったのかわからなかった。そして問題があるとすれば安井のプレーで、そこまで遡るのかと思ったが、それはそれで仕方がない。ところが繰り返されたリプレーを観ても、どれが反則なのか理解に苦しんだ。
安井のプレーが反則なら、韓国人選手のボディーコンタクトはほとんど反則と言っていいくらいだ。結果として神戸の2点目は取り消され、その後の失点により試合は延長戦に突入した。
VARがレビューを求めても、最終決定は主審である。そしてVARはその頭文字が示す通りあくまで「アシスタントレフェリー」だ。その目的は「最小限の干渉で最大の利益を得ること」にある。
しかしながら蔚山戦は、主審とVARの立場が逆転したような印象を受けた。VARは上記4プレーしか介入できないため、佐々木のゴールに「余計な干渉」をしてきた。にもかかわらず主審はVARの干渉を受け入れてジャッジを覆した(と感じられてならない)。
これは昨年1月のアジアカップでも思ったことだが、今大会の中東の審判団はどこまでVARに精通しているのかということ。グループステージではディエゴ・オリベイラ(FC東京)が悪質なタックルによってプレーが続行できなくなったが、主審のジャッジは甘いものだった。
他国のチームを色眼鏡で見る必要はないが、中国選手は足裏を見せたり、足を高く上げたりするタックルが多いこと。韓国勢はボディーアタックの際にエルボーから入ることなどの事前情報をしっかりと把握してジャッジに生かして欲しい。
神戸はもちろんJFA(日本サッカー協会)もAFC(アジアサッカー連盟)に抗議文を出すそうだ。もちろんジャッジが覆るわけでも、ミスジャッジだったかどうかの判定が発表されるわけでもない。抗議文がどう扱われるかも不明であるが、AFCに影響力があると思われるJFA審判委員会と田嶋JFA会長兼FIFA理事の政治力に、ちょっと期待したい。
そして神戸についてはGK前川に加え、どの試合でも魂のこもったプレーと気迫あふれる空中戦で対戦相手のエースFWと火花を散らしたCB菊池も、ポスト吉田として日本代表
でのプレーを見てみたい選手だ。ドーハでのACLには日本勢3チームが参戦したが、“アジアの戦い”で最も経験値を高めたのが菊池ではないだろうか。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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1-1で迎えた延長後半も13分を過ぎ、PK戦突入が濃厚と思ったところ、それまで神がかり的なセーブを見せていたGK前川がFWネグランを倒してPKを与えてしまった。キャッチングが難しいならパンチングで逃げるという選択肢もあったが、それは結果論というものだろう。前川はジャグリングしたボールをキャッチしようとしたまでは問題なかった。しかし伸ばした右足がネグランの腰に巻き付くような格好で一緒に倒れたため、押し倒したと判断されても仕方ない。そして蔚山戦は、VARについて考えさせられた。
蔚山の同点ゴール、左サイドを抜け出たキム・インソンか、それともユン・ビッカラムのシュートをゴール前でコースを変えて押し込んだヨハンセンか、どちらがオフサイドでアシスタントレフェリーは旗を上げたのかVTRを見る限りはわからなかった。
しかしリプレーを見る限り、キム・インソンはオンサイドに見えたし、ヨハンセンもマーカーと並んでいるように見えた。というより、VTRのカメラの位置から判断するのは難しく、タッチラインから撮影された映像でないと正確なジャッジは下せない。
このためオフサイド(ゴール)かどうかの判断に関してVARがレビューを求めたのは適切なジャッジだったし、映像による検証の結果、主審がゴールと認めたのだから従うしかない。
問題は神戸の2点目、佐々木のゴールだ。
ご存じのようにVARは次の4つのケースで適用される。
ゴールかどうか(ゴールに結びつくプレーも含む)
PKかどうか
一発レッドかどうか
間違った選手への退場処分と警告処分
ハーフライン付近でボールを奪った安井が攻撃の起点となり、ドウグラスのドリブルによるカウンターから最後は佐々木が押し込んだ、鮮やかなゴールだった。一連のプレーで主審は笛を吹くことなく、一度は佐々木のゴールを認めた。
ところがVARは1)の事象から主審にレビューを求めた。最初は正直、どのプレーが問題になったのかわからなかった。そして問題があるとすれば安井のプレーで、そこまで遡るのかと思ったが、それはそれで仕方がない。ところが繰り返されたリプレーを観ても、どれが反則なのか理解に苦しんだ。
安井のプレーが反則なら、韓国人選手のボディーコンタクトはほとんど反則と言っていいくらいだ。結果として神戸の2点目は取り消され、その後の失点により試合は延長戦に突入した。
VARがレビューを求めても、最終決定は主審である。そしてVARはその頭文字が示す通りあくまで「アシスタントレフェリー」だ。その目的は「最小限の干渉で最大の利益を得ること」にある。
しかしながら蔚山戦は、主審とVARの立場が逆転したような印象を受けた。VARは上記4プレーしか介入できないため、佐々木のゴールに「余計な干渉」をしてきた。にもかかわらず主審はVARの干渉を受け入れてジャッジを覆した(と感じられてならない)。
これは昨年1月のアジアカップでも思ったことだが、今大会の中東の審判団はどこまでVARに精通しているのかということ。グループステージではディエゴ・オリベイラ(FC東京)が悪質なタックルによってプレーが続行できなくなったが、主審のジャッジは甘いものだった。
他国のチームを色眼鏡で見る必要はないが、中国選手は足裏を見せたり、足を高く上げたりするタックルが多いこと。韓国勢はボディーアタックの際にエルボーから入ることなどの事前情報をしっかりと把握してジャッジに生かして欲しい。
神戸はもちろんJFA(日本サッカー協会)もAFC(アジアサッカー連盟)に抗議文を出すそうだ。もちろんジャッジが覆るわけでも、ミスジャッジだったかどうかの判定が発表されるわけでもない。抗議文がどう扱われるかも不明であるが、AFCに影響力があると思われるJFA審判委員会と田嶋JFA会長兼FIFA理事の政治力に、ちょっと期待したい。
そして神戸についてはGK前川に加え、どの試合でも魂のこもったプレーと気迫あふれる空中戦で対戦相手のエースFWと火花を散らしたCB菊池も、ポスト吉田として日本代表
でのプレーを見てみたい選手だ。ドーハでのACLには日本勢3チームが参戦したが、“アジアの戦い”で最も経験値を高めたのが菊池ではないだろうか。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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