ACL敗退もFC東京に朗報か/六川亨の日本サッカーの歩み
2020.12.09 19:15 Wed
ACL東地区のラウンド16が6日と7日に行われ、日本勢は神戸が上海上港をイニエスタの先制点などで2-0と下し、初のベスト8へ進出した(すでに西地区はイランのペルセポリスが決勝進出を決めているため、実際にはベスト4)。しかしFC東京は北京国安に0-1、横浜FMも水原三星に2-3と敗れ、ラウンド16の壁を突破することはできなかった。
北京国安戦もエースのディエゴ・オリベイラが負傷欠場したとはいえチャンスを作れていたが、「最後の決めきる力が今日は相手が一枚上手」と指揮官が脱帽したように、リーグ戦同様1点が遠かった。
昨シーズンの覇者である横浜FMも、今シーズンはケガ人が多くて苦戦を強いられたものの、ポステゴグルー監督の掲げるポゼッション・スタイルは健在だった。しかし相手をねじ伏せるような破壊力には欠けたため、水原三星戦もエリキのゴールで先制しながら「前半を2-0、3-0で折り返していれば」と悔やんだように、拙攻から逆転を許してしまった。
1点差で初のベスト8進出を逃したFC東京と横浜FMだったが、FC東京には朗報もある。試合後にキャプテンの東が「国内リーグや年明けにはルヴァンカップの決勝もある。あと3試合、しっかりやれるように個々の経験を生かしたい」と話したように、帰国後の12日と19日のJ1リーグ戦に出場できるようになったからだ。
本来なら海外から帰国した場合、2週間の自主隔離が義務づけられている。そこでルヴァン杯の決勝も、FC東京が19日のACL決勝まで進出したと仮定して、20日に帰国してから2週間、つまりは1月3日まで隔離しなければならないため、月曜であり仕事始めでもある4日という設定になった(3日の日曜は箱根駅伝と重なるから避けたという説も一部にはある)。
しかしながら今月3日、スポーツ庁はACLに参加している3チームに加え、日本代表にも、日本に帰国後14日間の待機期間中に練習や試合の参加が可能になるアスリート用東京オリパラ準備トラック(通称アスリートトラック)の適用を認可した。
これは本来、東京オリンピック・パラリンピックの強化指定選手と関係者に限られた特例措置でもあった。そこでJFA(日本サッカー協会)は日本代表の選手とACLに出場している選手の一部に五輪の強化指定になる可能性のある選手がいるとして、アスリートトラックの適用を申請していた。
今回の認可により、選手を含めた関係者は入国時に空港で抗原定量検査をしたり、14日間に最大3回のPCR検査をしたり、他にも14日間は「アスリートトラック適用ガイドライン」に沿って行動管理を行わなければならない。
しかしこの措置により、FC東京と横浜FMの選手はリーグ戦の残り試合(横浜FMは19日の1試合)に出場が可能になった。さらにヨーロッパから帰国した日本代表の選手やW杯予選などで来日する対戦国の選手もガイドラインの遵守により、練習の実施と試合の出場が可能になったのである。
FC東京も横浜FMも、残り1~2試合に勝っても3位以内には入れないため、天皇杯の出場権と来シーズンのACLの出場権を獲得することはできない。ただ、FC東京は1月4日にルヴァン杯の決勝を控えているため、12日の広島戦と19日の神戸戦は実戦を経験できる貴重な試合であり、その後も練習が可能になったメリットは計り知れないだろう(もしかしたらディエゴ・オリベイラも復帰できるかもしれない)。
新型コロナに関しては、海外でワクチンの接種が始まったものの来年の感染状況は予測不能だ。そうした状況下、3月から再開されるW杯2次予選はホームでの試合が2試合残っている。その後もアジア最終予選を控えているだけに、日本開催に道を開いた意味でアスリートトラックの適用は意義深いと言える。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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FC東京も横浜FMも、一言で例えるなら今シーズンのJリーグの試合を見ているようだった。FC東京は堅牢な守備からのカウンター、長谷川監督の掲げる「ファストブレイク」で昨シーズンは優勝争いを演じたが、今シーズンはレアンドロ、アダイウトンの外国人FWを補強しながら、決定力を欠いて相手を仕留めることができずに優勝争いから脱落した。昨シーズンの覇者である横浜FMも、今シーズンはケガ人が多くて苦戦を強いられたものの、ポステゴグルー監督の掲げるポゼッション・スタイルは健在だった。しかし相手をねじ伏せるような破壊力には欠けたため、水原三星戦もエリキのゴールで先制しながら「前半を2-0、3-0で折り返していれば」と悔やんだように、拙攻から逆転を許してしまった。
かろうじて日本勢は神戸が勝ち残り、来年2月1日にカタールで開催されるクラブW杯への出場に望みをつないだが、気になるのは上海上港戦で途中交代したイニエスタの負傷だ。準々決勝(10日)と準決勝(13日)は中2日の強行日程が続くだけに、回復具合に加え三浦監督がどのような選手起用を見せるかも注目したい。
1点差で初のベスト8進出を逃したFC東京と横浜FMだったが、FC東京には朗報もある。試合後にキャプテンの東が「国内リーグや年明けにはルヴァンカップの決勝もある。あと3試合、しっかりやれるように個々の経験を生かしたい」と話したように、帰国後の12日と19日のJ1リーグ戦に出場できるようになったからだ。
本来なら海外から帰国した場合、2週間の自主隔離が義務づけられている。そこでルヴァン杯の決勝も、FC東京が19日のACL決勝まで進出したと仮定して、20日に帰国してから2週間、つまりは1月3日まで隔離しなければならないため、月曜であり仕事始めでもある4日という設定になった(3日の日曜は箱根駅伝と重なるから避けたという説も一部にはある)。
しかしながら今月3日、スポーツ庁はACLに参加している3チームに加え、日本代表にも、日本に帰国後14日間の待機期間中に練習や試合の参加が可能になるアスリート用東京オリパラ準備トラック(通称アスリートトラック)の適用を認可した。
これは本来、東京オリンピック・パラリンピックの強化指定選手と関係者に限られた特例措置でもあった。そこでJFA(日本サッカー協会)は日本代表の選手とACLに出場している選手の一部に五輪の強化指定になる可能性のある選手がいるとして、アスリートトラックの適用を申請していた。
今回の認可により、選手を含めた関係者は入国時に空港で抗原定量検査をしたり、14日間に最大3回のPCR検査をしたり、他にも14日間は「アスリートトラック適用ガイドライン」に沿って行動管理を行わなければならない。
しかしこの措置により、FC東京と横浜FMの選手はリーグ戦の残り試合(横浜FMは19日の1試合)に出場が可能になった。さらにヨーロッパから帰国した日本代表の選手やW杯予選などで来日する対戦国の選手もガイドラインの遵守により、練習の実施と試合の出場が可能になったのである。
FC東京も横浜FMも、残り1~2試合に勝っても3位以内には入れないため、天皇杯の出場権と来シーズンのACLの出場権を獲得することはできない。ただ、FC東京は1月4日にルヴァン杯の決勝を控えているため、12日の広島戦と19日の神戸戦は実戦を経験できる貴重な試合であり、その後も練習が可能になったメリットは計り知れないだろう(もしかしたらディエゴ・オリベイラも復帰できるかもしれない)。
新型コロナに関しては、海外でワクチンの接種が始まったものの来年の感染状況は予測不能だ。そうした状況下、3月から再開されるW杯2次予選はホームでの試合が2試合残っている。その後もアジア最終予選を控えているだけに、日本開催に道を開いた意味でアスリートトラックの適用は意義深いと言える。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
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