新型コロナとカタールW杯の相関関係/六川亨の日本サッカー見聞録

2020.10.31 11:30 Sat
Getty Images
28日はACLに出場するFC東京、横浜FM、神戸の3試合がナイトゲームで行われ、FC東京と横浜FMはそれぞれ柏と広島に1-3で完敗した。この結果、すでに横浜FMはリーグ連覇の可能性を断たれているが、現在勝点47で4位のFC東京も残り6試合を全勝したとしても勝点65どまり。すでに川崎Fは勝点65を稼いでいるため、31日の第25節、直接対決の“多摩川クラシコ”で引き分けた瞬間にFC東京のリーグ初優勝も潰える。

逆転優勝の可能性があるのは2位のG大阪と3位のC大阪だが、それも川崎Fが残り10試合で5勝すれば消滅してしまう。もはや現実問題として川崎Fの優勝は疑いようがなく、J1リーグの興味は天皇杯と来シーズンのACLの出場権を獲得する2~3位争いに絞られたと言ってもいいだろう(もしも残留争いがあれば、こちらは8位の柏以下11チームによる熾烈な争いとなる)。

そして、なかなか詳細のはっきりしなかったACLも日程が決まった。本来ならホーム&アウェーが原則だが、今シーズンは変則的に中立地での集中開催で、グループステージの残り試合は11月24日から12月4日にかけて行われ、決勝戦は12月19日にドーハでイランのペルセポリスとの対戦が決まっている。
会場はいずれもカタールのドーハで、11年のアジアカップ決勝の舞台となったハリファ・インターナショナルスタジアムや、22年のW杯のために新設されたエデュケーションシティ・スタジアム、アルジャヌーブ・スタジアム(今回は準々決勝、準決勝、決勝で使用。4万人収容で、市内からはメトロでアクセスできるらしい)などで開催される。

すでに同大会の取材申請に関してリリースが出されているものの、現状カタール入国は特別な事情(人道的な理由など)を有する者が対象であり、48時間以内に発行された陰性証明書などが必要だと外務省のホームページには書かれている。試合はもちろん練習もどこまで取材が許可されるのか、日本代表のヨーロッパ遠征と同様に不透明な部分が多い。このためACLを取材する記者、カメラマンはテレビ局を除き皆無に近いだろう。
そしてACLの勝者が出場するクラブW杯に至っては、まだ正式な発表はないがJFA(日本サッカー協会)の田嶋会長、FIFA(国際サッカー連盟)のインファンティノ会長もオンライン会見で今年の開催は中止と発言していた。それもこのコロナ禍では当然のことだ。

05年に再スタートを切ったクラブW杯は、日本とモロッコ、そしてUAEの3カ国による“持ち回り開催”と言っても過言ではなかった。近年は17、18年に開催したUAEが招致に熱心だったが、19年と20年はカタールに決まった。それというのもコンフェデ杯が17年を最後に廃止になったからだった。

クラブW杯はFIFA主催の数少ない大会だった。しかし参加国が少ないため試合数も少なく、オセアニアのようにアマチュアチームも参加するなど国際大会としての体をなしていなかった。開催に手を上げるのもアジアかアフリカの国々に限られた。このため廃止は自然の流れと言えた。

FIFAは代替大会としてクラブW杯を21年から4年に1度の大会とし、24チームに増やすリニューアル案を持っていた。その第1回大会は来年6~7月、中国で開催される予定だった。そこで困ったのがカタールである。

コンフェデ杯そのものに権威はないに等しい。重要なのは大会がW杯開催国で、W杯の1年前に開催されることだった。プレW杯ということで、大会運営、選手・関係者のセキュリティ、輸送、通信・衛星環境、スポンサーヴィレッジ、ケータリング、ボランティア、観戦者を含めた宿泊施設などなど、あらゆることを想定したテストができる。

そうした絶好の機会がカタールW杯では失われたため、FIFAは強引に19年と20年のクラブW杯をテストイベントとしてカタールで開催することを決定した。そうしたシミュレーションの数々が、今回の新型コロナで吹っ飛んでしまったのである。

メディアやファンにとっても、これまでコンフェデ杯はW杯の“予行演習”だった。もしもクラブW杯が12月にカタールで開催されていれば、W杯で使用される8会場を取材したり、スタジアムへのアクセスやホテルのロケーションなどをチェックしたりと、やるべきことは多岐に渡ったはずだ。

来夏に中国で開催予定の新クラブW杯は東京五輪やEUROと重なるため中止の可能性が高い。それを強引に12月のカタールに持ってきてW杯のプレ大会にできるかどうか。FIFAの“力業”がいまから見物である(予選が開催されることが前提になるが)。

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