Jリーグの規制緩和でどう変わるのか?/六川亨の日本サッカー見聞録

2020.10.03 11:00 Sat
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昨日9月30日のJ1リーグでは、FC東京が鬼門となっているアウェーの埼玉スタジアムで2003年以来17年ぶりとなる勝利を浦和からもぎ取った。もちろん当時を知る選手は皆無で、チームのレジェンドである石川直宏氏も「試合には出ていました」と振り返りつつ、内容については記憶がないそうだ。
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石川氏が横浜MからFC東京に移籍したのは2002年のこと。加入したばかりでポジション争いに必死だっただけに、自身が活躍したのでなければ記憶に残っていなくても仕方ないだろう。そして10月1日にはオランダ遠征に参加する海外組の日本代表25名が発表された。ほぼ予想通りのメンバーと言ってしまえばそれまでだが、34歳のベテラン岡崎が昨年のコパ・アメリカ以来の復帰を果たした。昨シーズンはスペインのウエスカで12ゴールをあげる活躍でチームを1部へ昇格させた。
そうした活躍に森保一監督も「年齢で選ばないということはない」と明言した。もしかしたら招集できるのが「海外組」に限られたことも招集理由の1つだったのかもしれないが、岡崎の選出やFC東京の17年ぶりの浦和戦勝利についてのエピソードは別の機会に紹介するとしよう。

今回触れたいのは、先週のコラムでも書いたJリーグの入場規制の段階的な緩和についての続編である。
もう一度おさらいすると、Jリーグは9月30日まで「チケッティング」と「ファン・サポーター」のガイドラインを超厳戒態勢としてきた。それは10月1日から厳戒態勢に移行することを意味する。そして厳戒態勢にはステップ2とステップ3があることは前回のコラムでも紹介した。

非常にわかりにくいシステムだったが、その後Jリーグからは改めて整理されたリリースが出たので、それに沿って紹介しよう。原則としてステップ2で試合を実施し、安全(ガイドラインの順守)を確認したのちに、Jリーグへ感染対策レポートを提出することでステップ3へのステップアップが可能になる。

そしてステップ2には2パターンあり、「収容数2万人未満のスタジアム」のクラブは10月30日以降でないとステップ3に進めない(10月30日以降はどのクラブもアウェーのファン・サポーターを入場させなければならない。席数は全体の3%)。

このステップ2は、「入場上限50%、観客席を1席以上空ける、ビジター席なし」(ステップ2ー1)か「入場上限30%か5000人の大きい方、観客席を1m以上空ける、ビジター席あり」(ステップ2-1)に分かれていて、こちらはクラブが選択できるようになっている。

と、資料をもとに説明したものの、やはりこれでもピンとこない読者もおおいのではないだろうか。そこで具体的な例を挙げてみよう。解説してくれたのは浦和対FC東京戦を取材した際の、浦和のY広報だ。

9月30日の試合ということで、チケットの販売枚数は7000枚(観衆は5623人)。当然ビジターは入場させていない。しかしスタンドはメイン、バック、両ゴール裏の最上段まで、つまりはすべての観客席を開放した。そして観客は記者席から双眼鏡で見える範囲で、見事なまでに2席空けて座っていた。

9月23日の第18節、FC東京対C大阪戦は試合途中に雨が降って来たため、記者も屋根のある観客席へ避難して取材した。その際に広報は2席空けて座ることを依頼すると同時に、記者の座席番号をメモして、移動は禁止した。恐らく記者にコロナの感染者が出た場合の対応を考慮しての措置だろう。

そして浦和は10月4日の第20節、ホームの名古屋戦から規制緩和するものの、50%ではなく(6万3000人の)30%の1万8000枚のチケットを販売する。まだビジター席は設けず、チケットも会員のみの販売にするそうだ。

この9月中の7000枚、そして名古屋戦の1万8000枚(30%)は、いずれも自治体(埼玉県)と相談して決めた数字だという。

この浦和だけでなく、各クラブはようやく10月から11月にかけて観客増のための準備に取りかかれるようになる。そのためには自治体との入場者数の相談に始まり、それに基づいてチケット販売の準備や、オープンするエリアやゲートを決め、入場者を整理・案内し、検温と荷物チェックをする係員とスタジアム内外の警備員、試合後のスタジアムの清掃人の手配などの準備に追われることになる。

やることはそれだけでなない。予想入場者に応じてアクセスが予想される交通各社との相談、地元の飲食店やコンビニなど商店会との話し合いも必要になるだろう。昨シーズンまで当たり前だった仕事がようやく地元に戻ってくる。

そして、こうした活動が円滑に進み、観客動員数を増やすことができたら、やっと日常が戻って来たといえるのだろう。ヨーロッパ各国のリーグはいまだ無観客で行われている。どちらが良い悪いではなく、それぞれが異なる事情を抱えているからだろう。あとはACLとクラブW杯の中止が決定すれば、関係クラブのカレンダーもすっきりすることは間違いない。


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