4カ月待ったCLが1週間で終わるとは…/原ゆみこのマドリッド

2020.08.17 13:30 Mon
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「他人の不幸を喜んだって、自分が幸せになれる訳じゃないのよね」そんな風に私が自戒していたのは土曜日、スポーツ紙を読みながら、前夜のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)の余韻を味わっている時のことでした。いやあ、今回は前評判のあまり高くないバルサではありましたが、一応、ナポリとのCL16強対決2ndレグを3-1と制して、準々決勝に駒を進めていましたからね。それが新型コロナウィスル流行以来、ずっと自粛していた、夕方の涼しくなりかけたテラスでビールのグラスを片手に友人とお喋りという久々の気晴らしをして家に帰って来てみれば、まだキックオフから10分程しか経っていないのにもうスコアは1-1。

その後もあれよあれよという間にバイエルンの得点ばかりが増えていき、終わってみれば2-8って、え、こんなゴール量産試合、CLの、しかも決勝トーナメントであっていいんですかあ?実際、ここまで徹底的に叩きのめされると、ピケがインタビューで「恐ろしい試合だった。呪われたような感じがしたし、 vergüenza es la palabra/ベルグエンサ・エス・ラ・パラブラ(これを表す言葉は恥しかない)」と言っていたのも当然だったかと。

更に「クラブには変化が必要だ。監督とか、選手とか、誰かを名指しすることはないが、チームもクラブも構造的に改革しないと」、「ウチはもうドン底まで行っている。この最悪の流れを変えるのに新しい血が必要なら、まず自分が出て行くよ」、「ここ数年、ヨーロッパで競えていない。リーガも勝てなくなった」とまあ、厳しい言葉が続いていましたが、いやもう、セティエン監督の解任は確定として、もちろんバルトメウ会長を筆頭とする経営陣も無傷ではなし。会長選挙の1年前倒しを要求する声も高まっているため、当分、カタルーニャ(バルセロナのあるスペイン西部の州)のマスコミは書くことに困らないのでは?
その辺は私など、高みの見物をしていればいいんですが、おかげで今季のCLから、スペイン勢が1チームもいなくなってしまったのはまったくもって計算外。いえ、この日曜にはセビージャがEL準決勝でマンチェスター・ユナイテッドと戦うんですけどね。EL16強対決の一発勝負でインテルに負けた弟分のヘタフェ、CL16強対決マンチェスター・シティ戦2ndレグでも連敗したレアル・マドリーに続き、最後のマドリッド勢だったアトレティコまでが準々決勝で伏兵ライプツィヒに足元をすくわれ、13年ぶりにスペインのチームがいないCL準決勝なんて、ネット中継に投資した身としては、それこそ「とほほ」としか言えないんですが…。

ええ、木曜にエスタディオ・ジョゼ・アルバラーデ(スポルティングCPのホーム)で準々決勝を戦ったアトレティコは負けちゃったんですよ。ちなみに試合の方はカラスコのシュートがGKグラーチに弾かれたり、途中、空中戦でクロスターマンと頭をぶつけ合い、包帯をグルグル巻きしたサビッチのヘッドがあったりしたものの、前半は0-0で終了。それは彼らにはよくあることなので、別にいいんですが、まさか後半早々の6分、ザビッツァーのクロスを22才のスペイン人FW、この冬、ディナモ・ザグレブからライプツィヒに加入したダニ・オルモに頭で決められ、先制点を奪われてしまったから、さあ大変!
そこでようやくシメオネ監督はエレーラに代え、ご当地選手のジョアン・フェリックスを投入したんですが、その効果たるや目覚ましく、それまでずっと、「向こうは何度もサイドで数的優位を作り出していて、そのうちピッチ中央でもそうなっていた。En muchas jugadas no hemos estado cerca de llegar a robar/エン・ムーチャス・フガダス・ノー・エモス・エスタードー・セルカ・デ・ジェガール・ア・ロバール(多くのプレーでボクらはボール奪取から程遠かったよ)」(サウール)という状態を挽回。ええ、26分にはジエゴ・コスタのパスを追ってエリア内に入ったところ、クロスターマンに倒されて、PKをゲットしてくれたから、有難かったの何のって。

このPKもジョアンが自身できっちり決め、同点に追いついたアトレティコだったんですが、こういう流れになれば、16強対決ではあの、昨季王者のリバプールを破っている彼らですからね。もう延長戦に入ってでも勝てるはずと思ったファンは多かったかと。ただねえ、油断大敵、火がぼうぼうとはまさにこのことで、あと一息で後半も終了という43分、まさかアダムスの枠を外れたエリア外からのシュートがサビッチに当たって軌道が変わり、GKオブラクを破ってしまうって、そんな不運なことが起きていい?

結局、ロスタイムにはコケをヘッド要員のフェリペに代えたり、セットプレーでオブラクも全員攻撃に参加するなど、手段の限りを尽くしたアトレティコでしたが、2点目を挙げることはできず、試合は2-1で終了。うーん、元々、不幸体質のチームでしたが、この日は選手たちにどこか、覇気が欠けていたのも事実で、「Estaban mejor, más rápidos, más intensos. Cuando son mejores y uno lo intenta y no salen las cosas/エスタバン・メホール、マス・ラピドス、マス・インテンソス。クアンドー・ソン・メホーレス・イ・ウノ・ロ・インテンタ・イ・ノー・サレン・ラス・コーサス(向こうの方が良かった。ウチより速くて、プレーの強度も高くて。相手が上の時は何かをやろうとしても上手くいかないもの)」とコケも言っていたんですけどね。

でも、だからって、「Mala suerte el segundo gol. Así es el fútbol/マラ・スエルテ・エル・セグンド・ゴル。アシー・エス・エル・フトボル(2点目のゴールは運がなかった。それがサッカーさ)」(コケ)で済ませて本当にいい?シメオネ監督によると、コロナ禍でparon(パロン/リーガの中断期間)があった今季は非常に長いシーズンで、チームは再開後、来季のCL出場権を獲得しないといけないという、クラブの経営上のマストに大きなプレッシャーを抱えながら、11連戦をこなしたのだとかで、確かに3位となって、目標を達成してからの最後の2試合、ヘタフェ戦、レアル・ソシエダ戦では負けこそしなかったものの、かなりフニャフニャしたプレーぶりでしたからね。

メンタル的に疲れてしまったせいで、1カ月前にブンデスリーガが終わってバケーション、プレシーズン練習もバッチリやったライプツィヒにセカンドボール争いでも、ファール数でも負けてしまったのかもしれませんが、いやあ。「Los futbolistas se entregaron de la mejor manera que pudieron. No teníamos más/ロス・フトボリスタス・セ・エントレガロン・デ・ラ・メホール・マネラ・ケ・プディエロン。ノー・テニアモス・マス(選手たちはできる限り、最良の方法でプレーに集中した。あれ以上、ウチに力は残っていなかった)」(シメオネ監督)そうですが、世間からはジョアンを先発させなかったことに始まって、交代枠が5人あったにも関わらず、たった3人で終わらせてしまったことなど、監督采配にも疑問が投げかけられることに。

まあ、33才と若いナーゲルスマン監督にしてやられてしまったことは否めませんが、アトレティコの場合、シメオネ監督がいなくなったら、また混迷時代に逆戻りしそうですからね。マンサーノ、アギーレ、アベル・レシーノ、ビアンキ、ペペ・ムルシア、セサル・フェランドと歴代監督を並べても、タイトルを獲ってくれたのは2010年にEL優勝したキケ・サンチェス・フローレス監督だけとなれば、セレソ会長が「Quien le discuta la alineación que se compre un equipo, que haga un equipo y que las haga él/キエン・レ・ディスクータ・ラ・アリネアシオン・ケ・セ・コンプレ・ウン・エキポ、ケ・アガ・ウン・エキポ・イ・ケ・ラス・アガ・エル(ラインアップを議論する奴は自分でチームを買って、作って、自分で決めればいい)」と、シメオネ絶対擁護派に回るのは理解できなくもなかったかと。

どちらにしろ、バルサ並みの大型人事異動にはなりそうにないものの、ファン的にはもっとゴールの期待できるFWとゲームメークのできるMFぐらいは補強してほしいという思いが残ったシーズンになりましたが、そんなアトレティコも金曜のお昼にはマドリッドに帰還。そのままお隣さんから1週間遅れのバケーション入りとなったんですが、マドリーのマリアーノ同様、チームの準決勝進出を信じて、コロナ陽性による自宅隔離が終わるのを待っていたコレアなどは気の毒だったかと。いえ、同じく、大会再開前にPCR検査陽性が出て、セビージャでお留守番となったグデリは晴れて陰性に。チームが勝ち進んでくれたおかげで、金曜にはドュッセルドルフで合宿中のチームに合流し、マンチェスター・ユナイテッドと戦う日曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのEL準決勝に出場できるんですけどね。

その脇で、スペインでは木曜にとうとう、リーガ1部昇格プレーオフ準決勝1stレグが行われ、ホームのジローナがストゥアーニのゴールでアルメリアに1-0と先勝。すでに最短復帰を果たした1部でのプレーに備え、プレシーズン練習を開始したウエスカの岡崎慎司選手に遅れを取りたくないだろう、香川真司選手のサラゴサはアウェイでエルチェとスコアレスドローに終わりましたが、こちらは日曜に2ndレグがあった後も来週、木・日と決勝も2試合制で、まだまだ先が長いですからね。すでにアルメリアなど2人、感染者を抱えている上にサラゴサ、ウエスカのあるアラゴン地方はコロナ再流行のメッカとも聞くと、そのうちフエンラブラダのようなクラスターが発生して、昇格最後の1チームが決まるのがますます遅くならないかと心配ではあるんですが…まあ、こればっかりはねえ。

とりあえず、ヨーロッパの大会のなかったチームのリーガ開幕は9月12日、逆に参加していたチームは9月末とも言われているんですが、実際のところ、まだ正確な日付はわからないんですよ。一応、ヘタフェは今月25日をプレシーズン練習スタートとして、残留が確認されたボルダラス監督の下、ビジャレアルから23才のエネル・ウナスを900万ユーロ(約12億円)で獲得。、ワトフォードからも、今季はマジョルカで久保建英選手と一緒にプレーしていた21才のクーチョ・エルナンデスをレンタル、更にアトレティコBの同い年、モジェホ(今季はデポルティーボでプレー)の借り受けも話が進んでいるそうで、FW陣の若返り補強に熱心なんですが、そうなると30代のホルヘ・モリーナやアンヘルの去就が気になるところかと。

一方、やはり8月末にはバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場に戻って来るマドリーでは、ウーデゴール(今季はレアル・ソシエダでプレー)、オドリオソラ(同バイエルン)、GKレニン(同バジャドリー、オビエド)、セバージョス(同アーセナル)とレンタルに出していた選手たちの組み戻し予定こそ聞こえてきても、新規の補強は期待できそうになし。いやまあ、ジダン監督のチームをCL16強対決で破ったマンチェスター・シティも土曜にはこちらも伏兵、それこそ、3月にリーグ1を強制終了させられてしまい、7月31日にリーグカップ決勝で公式戦に復帰したオリンピック・リヨンに3-1で負けてしまいましたからね。となると、それ程、マドリーに不足があった訳ではなく、今季の彼らはリーガ優勝もしていますし、来季はアザールも復活してくれるだろうとなれば、そうそう、高額補強をする必要はない?

まあ、何はともあれ、マドリッド勢のヨーロッパの大会参加も終わったことですし、私もそろそろ、来季に焦点を合わせていかないといけないんですが、はあ。CL準決勝がライプツィヒvsPSG、オリンピック・リヨンvsバイエルンとスペイン勢とは無関係となったこともあり、コロナでの中断期間中、耳タコになった移籍の噂話が早速再開して、これから1カ月間、たっぷり聞かされることになるのはちょっと、憂鬱ですね。

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