濃厚接触者はJが判断して試合開催/六川亨の日本サッカーの歩み

2020.08.12 14:30 Wed
©︎J.LEAGUE
先週末は無事にJリーグの全試合が行われたと思ったら、思わぬ“余波"が11日に発覚した。鳥栖の金明輝監督が新型コロナウイルスのPCR検査で陽性反応が出た。問題は、それがいつ出たかで、チームは「8月10日(月)の昼の練習で発症したと聞いている」(Jリーグ関係者)と報告したようだ。

しかし一部報道では8月8日(土)の昼に体調不良となったものの発熱や咳などは出ていなかったため同日夜の鹿島戦に臨み、翌9日の夜に発熱し、10日に佐賀県内の病院で検査して感染が確認されたという。

クラブは「保健所の指導のもとスタッフ3名の濃厚接触者の隔離、クラブハウスの消毒等」に努めていて、改めて選手・スタッフにPCR検査を実施するそうで、そちらの結果も気になるところである。
折しもJリーグは11日、NPB(日本野球機構)との対策連絡会議を実施し、午後からは臨時実行委員会を開催して一定の結論に至った。それは、いつかは議論の俎上に乗せざるを得ないテーマでもあった。

これまでもコラムで何回か触れてきたが、陽性者は隔離するのは当然だ。問題は【濃厚接触者】の判定で、これまでは保健所による陽性者の行動履歴から該当者を特定していた。
ところがJリーグは週末の土曜と日曜に試合をする。そしてPCR検査の結果が出るのはその前日の金曜日だ。そこで陽性者が出たとしても、その濃厚接触者を特定する保健所は休日になっている。このため試合を中止せざるを得なかった。保健所にしても、通常の業務で手一杯だろう。

そこで11日の対策連絡会議では「NPBもJリーグもガイドラインはしっかりしてきたつもりだが、感染と濃厚接触者の認定は(保健所が)間に合わずに試合が中止になった」(斉藤コミッショナー)ことから、「濃厚接触者を保健所ではなく我々がどう判断するか」(村井チェアマン)を探るため、「より安全な形での検査、高感度の検査態勢を詰めていく話をした」(賀来ドクター)のだった。

具体的に村井チェアマンは同日午後の臨時実行委員会後のリモート会見で現状を次のように述べた。

「直前の陽性者は除外しても、濃厚接触者をどう判断するか。保健所は休みです。Jは保健所がオフィシャルと判断するが、保健所の判断が(休日明けに)出る前に少しでも早く自主判断して、濃厚接触者を隔離することで意見交換した。あくまで暫定的な判断で、最終的に保健所の判断に従う」

とはいえ、「前提として保健所が最終にして唯一」としながらも「それまで放置していていいのか」というのが村井チェアマンの偽らざる本音だろう。

「保健所がお休みなので濃厚接触者を特定できませんでした。ですからリスクを避けるために試合は中止にします。選手、ファンの皆さんには申し訳ありませんが、今日はお引き取り願います」

そんなことを何度も繰り返していては、選手はコンディション作りもままならないだろうし、ファン・サポーターの信頼を失ってしまう。その日のために準備してきた試合運営のスタッフ、中継のための映像関係者、それらに伴うアルバイトやパートのスタッフら、多くの人の努力が無に帰してしまう。

そこで「濃厚接触者の輪郭が見えてきたので、それを文言化して保健所と詰めていきたい。その結果、リスクを排除できれば試合をしたい」というのがJリーグの次のステップだ。

具体的には「濃厚接触者の判断はクラブから行動履歴を出してもらい、Jリーグが(試合開催の)判断をする」(藤村特命担当部長)ことになる。

その際に記者から「濃厚接触者がいないとJが判断して試合をし、後から保健所が、濃厚接触者がいたと言ったらどうするのか」という質問も出た。これに関して村井チェアマンは「試合中に感染した例はないので」と答えるにとどめた。今回のコロナウイルスに関しては、過去に具体例がないことの連続だけに、仮定の質問には答えようがないのが実状でもある。

今後のこととして、Jリーグはもちろん、Jの各クラブもそれぞれの地域の保健所と緊密な関係を築く必要があるだろう。さらに試合開催の可否や有観客試合について、地方自治体の首長とも連携が必要になるかもしれない。

クリアするハードは多いかもしれないが、手をこまねいて静観するのではなく、次への1歩を踏み出したJリーグでもある。

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