Jリーグとプロ野球が進めた新型コロナ対策、両ドクターが感じた限界とは?/六川亨の日本サッカーの歩み

2020.07.09 09:45 Thu
©超ワールドサッカー
Jリーグは7月6日にNPB(日本野球機構)の対策連絡会議を、翌7日には第7回実行委員会を開催し、それぞれメディアむけにwebでブリーフィングを実施した。7日の実行委員会では前日の対策連絡会議を受け、10日(J2の岡山対北九州)から観客を入れ(ホームチームに限り、5千人もしくはスタジアムのキャパの50%)、アルコールを除く飲食も販売することで合意した。
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7日のブリーフィングでは、Jリーグ登録審判員が専従ではなく、仕事との兼業のため6月19日にPCR検査を受けられず、7月4日になったことについて公表しなかったことを一部大手メディアが批判。村井チェアマンが「一言でいうと私の失念」と謝罪する一幕もあった。絶えず考えながら走り続けてここまで来た村井チェアマンである。選手の安心安全を考えたのはもちろんのこと、審判へのフォローも疎かにしていたわけではない。メディアへ公表することを「失念」し、それを部下もフォローできなかっただけに、そう目くじらをたてることでもないだろう。
それより気になったのは6日の対策連絡会議での専門家の発言だった。Jリーグは8月1日からスタジアムのキャパの50%を上限に観客を迎えることになる。アルコールの販売も解禁となる可能性が高い。

その上で東京都は4日連続して新型コロナウイルスの感染者が100人を越えたことについて、座長の賀来満夫ドクターは「10日前の接触を反映しているのでこれからも続くし、すぐには減らない。そして今の結果は10日後に出る」ということで、8月1日の上限50%の観客入場は7月20日以降の感染者の推移を見守る必要があるとした。
そして賀来ドクターと三鴨廣繁ドクターが揃って口にしたのが、濃厚接触の定義に関しての見解だった。

「プロ野球とJリーグは柔道、レスリング、ラグビーとは違う。スポーツによって違うが、保健所と議論していく必要がある」と賀来ドクター。

そして三鴨ドクターも「プロ野球もJリーグもベンチにいない限りありえないが、ベンチではマスクをしているので少ないと思います」と賀来ドクターをフォローしながら、「保健所と相談しながらやっていくとになると思いますが、(保健所の)所長によっては(定義が)厳しいところもあるので統一見解を出して欲しい」と注文をつけつつ公的機関である『保健所』との交渉の必要性を訴えた。

さらに両者はブリーフィングの最後の方で「ウイルスの専門家と相談しながら、いろんなことで問いかけ、問題を提起したが、一朝一夕にはいかない。PCR検査でも判断に迷うことはしょっちゅうある。国の判断よりいろんなエビデンス(検査方法)、陰性でも検査を繰り返すなどを、専門家会議と国に伝えていきたい」と、賀来ドクターは3月から重ねてきた会議について志なかばだったことを暗に示唆した。

三鴨ドクターはさらに具体的だ。

「限界を感じたのは法律があること。プロ野球もJリーグも変えられず、我々も砕け散った。行政、保健所の壁がある。しかし今回の事例が法律を変えたところもある。プロ野球とJリーグの会議は国民にとって有益だった」

国政との関わりについて斉藤コミッショナーは「8月1日から50%を入れる予定で、7月10日の問題でもかなり交渉した。最終的に内閣府の了解がなければならない」と話し、村井チェアマンも「政府見解をベースに受け入れた土台がある。今後も変化があるか注視したい」と述べるにとどめた。

政府は2月に立ち上げた医学的な見地でアドバイスを行う期間、「専門家会議」を6月24日に廃止し、新たに医療関係者に加え経済・労働・法曹・自治体・報道関係者からなる「新型コロナウイルス感染症対策分科会」をスタートさせた。

その狙いは感染症対策と経済対策をいかに両立させるかだろう。果たしてJリーグとプロ野球は無事に8月1日を迎えられるのか。個人的にはまだ一波乱ありそうな気がしてならない。なぜなら今回のコロナ対策で、国は有益なリーダーシップを発揮したとは思えないからだ。

最後に賀来、三鴨両ドクターの斉藤コミッショナーと村井チェアマンについてのコメントを紹介しよう。

「プロ野球もJリーグも(コロナが)わからない時から議論してきた。これをロールモデル(具体的事例)にしないといけない。ミスはある。100年に1回のことだから。プロ野球とJリーグが先陣を切って始めた。2人の強いリーダーシップを感じた」(賀来ドクター)

「2人とも素晴らしい。我々はプロ野球とJリーグの雇われもの。『科学的に発言して欲しい。最後は我々が判断する』と言われた。経営は素人だが、経営的な発言も取り入れてもらった。私たちの方が勉強させていただいた。100%、150%言うことはない」


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