再開するJ1を展望/六川亨の日本サッカー見聞録

2020.07.03 11:00 Fri
©超ワールドサッカー
6月27日に再開・開幕したJ2、J3リーグに続き、7月4日にはJ1リーグが開幕する。再開2試合は安全性を担保するため無観客、通称リモートマッチで開催され、長距離移動による感染拡大を防ぐため、当面は神奈川県から北にある10チームと、静岡県から南にある8チームによるホーム・アンド・アウェーのリーグ戦となっている。
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試合を重ねながら安全性が確認されれば様々な規制は緩和されるだろう。だが、変わらないことが2つある。今シーズンは「交代枠が5人」で、「降格チームはない」ということだ。この2点が果たしてチームの戦い方にどんな影響を及ぼすのか考えてみた。まず監督にとって大きいのは「降格がない」ということだ。例年の7月ならリーグ戦は半分以上を消化し、3~4人の監督が交代していてもおかしくない。しかし今シーズンはこれから開幕するようなもので、降格がないのだからよほどのことがない限り、今後も監督交代はないだろう。
試合の進め方に関して、優勝争いを演じる上位チームは例年とそう変わらない。横浜FMはボールポゼッションにこだわり、攻撃的なサッカーで連覇を狙うはずだ。FC東京は昨シーズン同様「ファストブレイク」で、ディエゴ・オリベイラと永井(昨年12月に肩を出術したが、自粛期間をリハビリに充てられたのは大きい)のスピードを生かすだろう。さらにアダイウトンとレアンドロの加入でサイド攻撃も破壊力が増した。

鹿島は開幕戦で広島に0-3と完敗したが、天皇杯の決勝まで勝ち進んだこととACLのプレーオフがあったため、例年より始動が早く、十分な休養期間を取れなかった。さらにザーゴ新監督に代わったため、コンディションだけでなく戦術面でも意思統が一できなかったのではないか。このため再開されるリーグ戦では「試合巧者」の鹿島が復活すると見ている。
昨シーズン4位の川崎FはベテランMF中村憲とFW大島をケガで欠くが、チームの若返りを図るいいチャンスでもあり、2年目のMF三笘や旗手、五輪代表候補の田中らタレントも豊富なだけに大崩れすることはないだろう。

問題は、こうした上位陣に対して下位チームがどういう戦いを挑むかだ。例年なら序盤戦から中盤戦にかけては理想とするスタイルを追求しつつ、結果も求めようとした。しかし思うように勝点を伸ばせないと、残留争いが始まる終盤戦はひたすら堅守防衛で勝点を拾いつつ、時には予期せぬ番狂わせを演じて優勝戦線をかき回した。

昨シーズンのことだ。首位をひた走るFC東京の長谷川監督に優勝への課題を聞いたところ、「当たり前のことですが、下位チームは残留に向けて必死なので、取りこぼしをしないこと」と話していた。しかし鳥栖に敗れて2位に転落すると、湘南と浦和に引き分けて初優勝は絶望的となった。

しかし今シーズンは降格がないのだから、順位を気にせずクラブと監督が理想とするサッカーを追求することも可能だ。とはいえこれは、現実的にあり得ない。どの監督も戦力に見合った戦い方で理想を追求し、対戦相手の弱点を突いて結果を求めようとするからだ。

そこで逆転の発想ではないが、再開される序盤戦から、例年ならシーズン終盤戦のような勝点を拾う戦い方をしてくる可能性もあるのではないだろうか。というのも、リーグは4ヶ月の中断により再開・開幕後はかなりの過密日程だ。加えて梅雨明けは7月下旬だが、晴天の日は30度を超えることもある。

ただでさえ選手は自粛期間中に自宅での自主トレを余儀なくされ、フィジカルコンディションは例年より劣っていることが予想される。それに加えて例年にはないハードスケジュールである。体力の消耗を避けるサッカーになってもおかしくはない。

交代枠が5人に増えたとはいえ、ターンオーバーできるのは上位チームに限られる。そこで前半はリトリートして体力を温存し、ドローを視野に入れつつ後半から試合状況を見ながら交代カードを切って勝点3を狙うチームが増えるのではないだろうか。こうしたサッカーでそこそこの成果を収められれば、それは4チームに降格の危機が広がる来シーズンにも生きることだろう。

まして東京都は、日に日に新型コロナウイルスの感染者が増加し、2日には5月2日以来2ヶ月ぶりに100人を突破した。開幕2連勝を飾った大宮の高木監督は「この先、また感染が広がって中断する可能性もゼロではない。今シーズンは何があるか分からないと常に感じている。とにかくゲームがある時に勝って、勝ち点3を積み上げていきたい」と言ったそうだ。偽らざる本音だろうし、どの監督も同じ思いかもしれない。

まずは目の前の勝点3を拾う。そうした戦い方をしてきた下位チーム相手に、優勝候補はどう戦うのか。選択肢は2つだろう。それでも力で叩き潰すか。横浜FMのポステゴグルー監督はボールを保持して体力の消耗を防ぎながら、攻撃的なサッカーを貫くに違いない。一方FC東京の長谷川監督はボールポゼッションにこだわらず、ショートカウンターに徹するのではないだろうか。

いずれにしても4日の再開が待ち遠しいことに変わりはない。


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